はい!
本日はプラグスーツによるシンクロ補助無しのハーモニクステストです!
素っ裸になってエントリープラグに搭乗しないといけないから、前準備が面倒くさいのなんの。
既にシャワーを浴びたり強風に晒されたり謎の液体に漬けられたりされて疲労困憊です!
だが、減菌処置工程はまだまだ中盤だ。
しかも、次は俺にとって最大の難関が待ち受けている。
扉が開くと、防護スーツに身を包んだ2人の男が部屋の中で俺を待ち構えていた。
その脇には大小様々なブラシやホース、剃刀等が吊るされている。
防護スーツを着てる奴等の性別がなんで分かるかというと、これから俺に対して行われる悪魔の所業に対する配慮として、同性の職員が対応することになっているからだ。
防護服NERV職員×2 VS マッパ俺
ふぁいっ!!
俺は部屋に一歩踏み込むと先制攻撃を仕掛ける。
こういうのは先手必勝だからな。
「ものは相談だけどこの部屋の減菌処理はもう終わったことにしない?」
『『却下だ』』
防護服内のマイクを通して発せられる音声が、同に部屋の中へ響く。
ハモんなよ仲良しかよ。
うん、オレヨクワカラナカッタナー。
なんか、容赦なく俺の提案を切り捨ててくれた気がするけどきっと気のせい……。
いやいや、現実逃避してても状況は悪くなるだけだ!
俺だってここで引くわけにはいかない。
「リツコさん個人授業の音声データでどうだ!」
『な……んだと』
『駄目に決まってるだろう』
ダメ元の交渉だったが、片方がまさかの反応。
これは……いけるか!?
『カイ君、後で没収します。大人しく提出しなさい』
「あーーーーーーー!!」
リツコさんの容赦ないお言葉に俺はその場に崩れ落ちる。
そんな俺を慰めるように防護服達が俺の肩を叩いてくる。
「同士よ……」
『誰が同士だ』
『つ か ま え た』
「ヒィ。や、やめろ!やめてくれ!」
『あ、こら、暴れるな!』
無駄な抵抗と知りつつも何とか逃れようとするが、大の男2人にがっちりと掴まれてずるずると引きずられてしまう。
そのまま椅子に座らせられると、手すりや椅子の足の拘束具で身体が固定された。
「な、なんだよこれ!ひでえよ!!お前らシンジ達にもこんなことしてんのかよ!」
『他の2人は大人しく処置を受けてくれてるからな。こういう器具は必要無い』
『クックック、前回は随分暴れてくれたからな。諦めろ、大人しくしてたら悪いようにはしない』
「っく……殺せ!」
仁王立ちになって俺の事を見下ろしてくる防護服に思わずくっころしてしまう。
うむ、イケテル男子はいつだって遊び心を忘れないものだ。
『こら、お前ら悪乗りするな。というか君はどこでそういうのを覚えてくるんだ』
「てへぺろ」
『てへぺろってお前なぁ。ほら、始めるぞ』
「あ、やめて……ちょ!やめ、摘ままないで引っ張らないで!いやーーーーー犯されるぅーーーーーー!!」
そして俺は、ただひたすらに天井の染み無心にを数えていた。
いや、天井に染みなんてねーよ真っ白だよ!
目を閉じて、開いた時には全てが終っていた……。
なんて都合よくいかないですよねーーーーーー。
死ぬ死ぬ、心が殺されていく……ああ……俺の身体……汚されちゃった……
為す術もなく下やら中やらの洗浄後、そのまま下やら脇やら体毛をツルツルに剃られて無事俺のメンタルは死亡しました、ちーん。
とはいえ髪の毛の生存はなんとか許されている。
いや、リツコさんは最初は髪も全剃りでいくつもりだったらしく、ニコニコしながらウィッグはどれが良いか聞いてきたんだけど、もう全方位泣きついた結果、レイという女の子もいるということでそこはご勘弁いただけた。
その代わりといってはなんだけど、その他がもうホント容赦なくて、もうお婿にいけねぇよ!
そんな地獄を体験してぐったりした俺は、上半身の洗浄を大人しく受けている。
今はブラシで頭部の細かい所のお掃除をされているのだ。
「あぁぁぁぁぁ……耳裏気持ちいいれす……」
耳をそっと抑えられ、マッサージするように動く柔らかいブラシの感触に思わず声が漏れてしまう。
これが……わからせ!?
『ほら、口開けて。次は口内洗浄だ』
「んぁ……」
『ちょっとしょっぱいけど我慢しなさい』
「ん……」
防護服は手にした器具を俺の口の中にそっと差し込むと、歯の隙間等々丁寧に掃除していく。
俺が大人しくしてるからか、口内洗浄をしてる防護服が優しい。
紳士防護服と名付けよう。
区別のためにもう一人はチャラ防護服だな。
リツコさんの音声データに反応してたからな。
あー、それにしても口ん中しょっぺぇなぁ。
『ほら、口濯いで。水はこっちに出しなさい』
紳士防護服に差し出されたストローを咥え、水を口に含んで濯ぎ、差し出された桶にペッと吐き出す。
『大人しくしてりゃ可愛いもんだな』
「え?ショタコンなん?さすがにショタオジにこんな事されると性的な問題があって危険がすぎるのでチェンジで」
『ちげぇよ!』
「あいた」
チャラ防護服を揶揄ったらチョップされてしまった。
こんなお仕事を任されるぐらいなんだから、防護服ズは2人とも綺麗な性癖なんだろうな。
頼むから綺麗であってくれ。
というか綺麗な性癖ってなんだよ。
『よし、これで終わりだ』
防護服ズは全ての道具をラックに掛けると椅子の拘束具を解除する。
『次の部屋行って来い!』
「りょーかいっすー……っと……こ、このまま?」
椅子から立ち上がった所で、色々された事により反応してしまい、すっかり元気になってるソコを見下ろす。
うーん、敏感な中二男子の主張が激しい。
俺の言葉に防護服ズも俺のソコを見下ろす。
防護服ズにはあんな事やそんな事をされた後なので、彼らに見られても最早恥ずかしくもなんともない。
『あ、あれだ。まだ冷たいのと熱いのとかあるから収まるだろ!』
『余計な事をしたら洗浄のやり直しだから我慢してくれ』
手をばたつかせて慌てるチャラ防護服に対して、紳士防護服は若干申し訳なさそうな感じだ。
「うぃっす……行ってきまっす。けどさすがに見られてるかと思うと恥ずいかも」
うーん、けど股間を手で覆って歩くのもカッコ悪いか……堂々と見せびらかしてくかーちくしょー
『あー……プライバシーに配慮してだな、映像は映ってないぞ』
という事を言ってるけど、がっつりモニターしてるって知ってんだかんな!
アニメで見てたし!
「そうでした。それじゃ気にしないで堂々と見せびらかしつつ行ってきます!」
『その、なんだ……ほ、ほどほどにな?』
防護服ズの気遣いが辛い!!
全ての減菌工程を終え、テスト用のエントリープラグが設置された無菌室に辿り着く。
服を脱いでからここまでに出逢ったのは防護服の2人組だけだ。
正直ここまでやる必要あるん?っていうのもあるし、ダミープラグのためのデータ収集かと思うとやる気もゼロっすってヤツである。
折角の土曜日にこの仕打ちって何?
俺、帰ったら揚げ物とビールで堕落した休みを過ごすんだ……
心の中でフっと笑いながら華麗に死亡フラグを立てて遊んでいると、室内に設置されたスピーカーからリツコさんの声が響いた。
『カイ君、減菌処置工程は全て完了しているわよ。シンジ君とレイを待たせてるからエントリープラグに登場して頂戴』
「おっとすみません。シンジ達は早いっすね」
『そりゃシンジ君達はカイ君みたいに抵抗しないもの~』
おっと、自称俺とリツコさんのピロートークに闖入者がやってきたぞ。
「男子たるもの望んでもいないのに大事な所を引っ張られたり、突っ込まれてお掃除されるなんで暴挙を黙って受け入れるわけにはいかんのですよ」
俺だって脱毛とか健康法とかで、望んでやる人たちを否定するわけじゃーない。
下を永久ツルツルにしていた穴が合ったら入りたい系の知人が「終わったらサッと吹けるから楽」みたいな事いってたけど、当時の俺も整えるぐらいだったんで、全剃りは慣れん。
「あ、リツコさんがやってくれるなら大人しく」
『サードチルドレン!遊んでないで早く搭乗してください!!!!』
俺が欲望垂れ流そうとしたら、スピーカーから室内が揺れるかと思うような怒声が鳴り響く。
あー……潔癖オペのおねーさんっすね……。
向こうでは「不潔です!!」って言われてそうだなぁ
シンジ達も待たせてるしさっさとテストすっか!
■■■
「不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です不潔です」
伊吹マヤは、人を呪い殺せそうな低音で只管に呟いていた。
伊吹マヤ自身、あの減菌処置工程を自身がやれと言われれば確かに答えは「No」だ。
だがしかし、それは淡島カイが憧れの先輩に対してセクハラをしていい理由にはならない。
例え、赤木リツコが気にしていなかったとしてもだ。
「マヤ、集中しなさい。私は気にしてないわよ」
「すみません、先輩」
「それに、私は人に倫理観を求める事が出来るような人間ではないわ」
「そんなことありません!」
声を荒げる伊吹マヤに、何事かと周囲のオペレーターや葛城ミサトが顔を向ける。
そんな伊吹マヤに対して、赤木リツコはディスプレイに映し出される数値に目を向けたまま冷静に対応をしていた。
「これまで私達がしてきたことも、この実験の意味も、わかっているでしょう?私達のしている事はそういう事なのよ」
「自分がしている事は分かっています。けど、納得しているわけではありません」
「直ぐにとは言わないけど考えを改めなさい。この先、辛いわよ」
「……」
赤木リツコの言葉に、伊吹マヤは言葉を返すことが出来ずにいたが、一度目を閉じて、気持ちを切り替えると、最初に赤木リツコからかけられた言葉通り、今自身が為すべきことに集中した。
葛城ミサトは、2人に会話で重くなった室内の空気を完全に無視して、珈琲を片手に赤木リツコの傍に移動した。
「オートパイロットシステム……ダミープラグだったっけ。正直どうなの」
「まだプロトタイプのためのデータ収集の段階よ。今日の模擬体でのテストが終ったら、実機でのテストに移れそうね」
「パイロットが3人いてエヴァも2機あるんだからそこまで急がなくてもとは思うけど。カイ君とレイの同乗テストもまだ出来てないじゃない」
葛城ミサトは、手にした珈琲に口を付けるが、冷めてしまった珈琲の味わいに思わず顔を顰める。
「そうなのよね。カイ君がレイと同乗出来るなら、シンクロ率が高いシンジ君は1人で乗ってもらった方がいいわ。シンクロ率だけを見れば、だけど」
「リツコはシンジ君1人だと不安?第7使徒の時は大丈夫だったじゃない」
「カイ君がシンジ君のメンタルケアをしているような所もあるでしょ。第6使徒の時の事を考えるとカイ君とシンジ君はセットで運用した方がいいのかもしれないわ」
「それはまぁ、確かにそうね。けどずっと一緒じゃ成長もないのよね~、難しいわ」
赤木リツコは思わず溜息を吐く。
葛城ミサトの言うように、時間とパイロットの体力が許すのであれば、カイとレイの同乗テストも含め各種実験、検証を実施したい。
しかしパイロットもデータ収集のためのテストだけではなく、エヴァに用意した武装に合わせたパイロット本人の武術や射撃訓練もあるため、時間の確保が難しい状況だった。
さらに、碇指令からはダミーシステム対応の優先度を上げるよう指示されている。
とはいえ、パイロットに無理を強いればエヴァとのシンクロに影響が出かねないため、パイロットのスケジュールに何もかもを詰め込むことも出来ない。
時間がいくらあっても足りない状況だ。
「原因不明の自律稼働をするエヴァに、オートパイロットシステムって不安しかないけど」
「米国のNERV支部で建造している3号機と4号機に使いたいらしいわ」
「そういえばみんなパイロットも選出出来てないのによくこんな金食い虫建造するわよね。そんなお金があるなら福利厚生として毎日ビールでも支給してほしいわ。」
エヴァの建造費や維持費を頭に思い浮かべた葛城ミサトは、頭を振りながら自らの欲望を口にした。
「ドイツ支部でも5号機、6号機を建造中。だからパイロット不要のダミープラグも急かされているんでしょうね」
「ドイツは第3支部でも弐号機を組み立ててもらったから、バチカン条約ギリギリね。それで5号機と6号機はどんな感じなの」
「状況については私の権限でもアクセス不可」
「リツコでも?何よそれ……」
「私より上位権限を持つ真希波博士により機密情報として制限されているのよ。あと聞かれる前に答えておくけど、米国のNERV支部はドイツ支部で修復中のS2機関の提供を要請しているわ」
赤木リツコの言葉を聞いた葛城ミサトは冷めて味も風味も落ちた珈琲を口につけたまま静止してしまう。
しばらく後、再起動をした葛城ミサトの顔には「呆れた」という表情が張り付いていた。
「はー……まだ不安要素も多いエヴァによくもまぁ、解明出来ていないもの積もうとするわね」
「本当よ。辞めるように言ってるのだけど、米国内の圧力もあるみたいね。ドイツで建造中のエヴァに使われるぐらいなら自分達が使うって考え方みたい」
「一応聞いておくけど、5号機と6号機に搭載予定なの?」
「さっきも行ったように情報は未開示、アクセス不可。だから疑心暗鬼になってるのかもしれないわね」
「あたし、プロトタイプとテストタイプでも、パイロットがいて運用出来てる零号機と初号機が配備されている日本にいて良かったって心底思うわ」
葛城ミサトが最後に漏らした言葉に、室内のオペレーター達は心の中で同意していた。