そして役者は入れ替わる
『零号機の覚醒とはな』
『このような事は我々のシナリオには無い』
『どうするつもりだね、碇』
「零号機の封印は完了しています。ダミーシステムに必要なデータも既に取得済、問題ありません」
『誤魔化すな碇。覚醒した零号機に封印がどれほど効果があるというのだ。コアも切り離せていないのだろう』
「問題ありません。零号機は完全な覚醒に到らず、現在は沈黙しています。封印の効果と考えるべきでしょう」
SOUND ONLYと表示された黒いモノリス達、SEELEの詰問に碇ゲンドウは平然と答えた。
その言葉を待っていたかのように黒いモノリス達は言葉を続ける。
『であればファーストチルドレンは空いているということだな。丁度良い』
『赤木博士、ファーストチルドレンは葦船研究所へ出向してもらう』
「……出向ですか」
『日本政府経由の要請でな、それなりの寄付と引き換えに共同研究の申し入れがあったのだよ』
『第二次整備計画も控えている。目的が達成されれば無用なものとはいえ、金は幾らあっても足りることは無い』
「しかし、赤木博士はE計画の責任者です。今、彼女を欠いてはこれからのシナリオに支障が出かねません」
黒いモノリス達の突然の発言にも、内面の困惑を表に出すことなく碇ゲンドウは言葉を返す。
『問題無い』
『左様。E計画は真希波博士が引き継ぐ』
01と04、それぞれの数字を浮かばせた黒いモノリスの言葉に、碇ゲンドウは微かに目を細め思案する。
「真希波博士はドイツ支部の五号機、六号機の運用に必要な人材のはずですが」
彼らの物言いから既に抵抗の余地など無い決定事項と気が付きつつも、情報を引き出すために黒いモノリス達との会話を長引かせる。
『問題は無いといったはずだ』
『その為のフィフスチルドレン。碇、君も彼女から聞いているのだろう』
『ドイツ支部の運用は真希波博士の複製体、フィフスチルドレンで問題ないと真希波博士からの報告も上がっている』
『兎に角、これは決定事項だ。詳細は真希波博士から聞き給え』
「承知しました」
真希波マリの来日とエヴァンゲリオン用封印具「Heiliger Nagel」「Heilige Lanze」の搬送。そして零号機の覚醒、赤木博士と綾波レイの出向。
SEELEの総意かは不明、だが少なくとも01と04にとってはシナリオ通りだったのだろうと碇ゲンドウは思考した。
SEELEが隠蔽している裏死海文書の存在は想定していたが、この新たな流れは裏死海文書とは異なる何等かの情報の存在が感じられる。
『喜べ碇、NERV本部の副司令の席を一つ増やすことにした』
碇ゲンドウの思考を妨げるように01が次の一手を進める。
「……副司令の席を増やすと」
監視を強めるために副司令を挿げ替えるのではなく、そのポストを増やすという発言に思わず「っは?」と言葉が漏れそうになったところを何とか堪えた。
『零号機が覚醒しかけた、ということはそれだけ我々にインパクトがあったということだよ』
『左様。我々は母なるリリスへ捧げる生命の実も用意できておらぬ。そのような状況でフォースチルドレンのようなシナリオ外の存在によって零号機が覚醒するなどあってはならぬ』
『赤木博士とファーストチルドレンを差し出させる代わりに、真希波博士とNERV本部副司令の人材を用意したということだ。なに、感謝の必要は無い』
『渚カヲル、君の新しい部下の名だ』
碇ゲンドウの端末に白い肌にアッシュグレイの髪、赤い瞳の少年の映像と共に渚カヲルのプロフィールが映し出された。
そのプロフィールは生年月日以外の全ての項目に「抹消済」と記載されている。
セカンドインパクトと同日の渚カヲルの生年月日に目を瞠り、ぎちりと歯を噛みしめる。
『過去の経歴は抹消済。君のファーストチルドレンと同じだよ』
■■■
MAGIも3台(略)+1
MAGI N: 第8使徒解析……完了。弐号機が貫いたコアは活動を停止。崩壊したコアから同一のコアが出現。別個の使徒では無く同一の使徒と判定する。
MAGI K: NERVE本部MAGIも同一の使徒と判定。
MAGI Y: 第8使徒はアダムを確保した後、逃走、レーダーから消失。
M: 第8使徒の追跡については彼にお願いしてるよん。上手くいけば第8使徒もこちらに引き込めちゃうかも?
MAGI N: 第8使徒が確保したアダム、若しくは加持リョウジがNERVE本部へ運搬したアダムのどちらかは確保する必要がある。
M: それだけど、NERVE本部へ運搬したアダムは食われちゃった。
MAGI Y: マリ?
M: もー、先輩ってば、ここではMって呼んで欲しいかな?
MAGI K: M、報告を。
M: 司令室で加持リョウジが納品したケースをゲンドウ君が開けて「これが最初の人間……」とかやってたら球形のA.T.フィールドが展開してね、ぱっくり。
MAGI Y: NERVE本部MAGIへアクセス……監視カメラへアクセス……球形のA.T.フィールドによる捕食。比較……第5使徒の際に発生したA.T.フィールドと同パターンと判定。
M: 彼がいなかったらあの時、部屋にいたみんな巻き込まれて死んでたわね。
MAGI K: 渚副司令の警告により被害無し。SEELEの鈴の早急な処理を提議。
M: MAGI K、それ私情よん。この世界の鈴は、MAGI Kが排除したい鈴とは違うよ鈴よ。他の歴史は参考資料に留めるべきね。
MAGI N: Mの発言を支持。私達の目指す道は、私達の知る未来とは異なる道。
MAGI K: 承認。全ては世界の統合を拒否し、この世界で子供達が生きる未来を繋ぐために。
M: 異なる世界の歴史、あたしにもそんなものがあればもっと先輩の役に立てたのかにゃ。
MAGI Y: M、ファーストチルドレンとフォースチルドレン同乗試験時の零号機暴走の報告を。
M: はい、先輩!エントリープラグ搭乗時点で零号機のコアに封入されたリリスが反応、フォースチルドレンを取り込もうとしました。結果、リリス覚醒の予兆があったためHeilige Lanzeを使用、搭乗者を処理しようとしたところファーストチルドレンのA.T.フィールドによりフォースチルドレンが守られたため失敗。ファーストチルドレンがフォースチルドレンを捕食しようとした零号機を拒絶、また高出力のA.T.フィールドにより零号機とのシンクロも途絶したため、結果としてリリスによるフォースチルドレンの捕食は失敗、リリスの覚醒に至りませんでした。
MAGI N: ファーストチルドレンに封入されたリリスは、魂。
MAGI K: 零号機のコアに封入されたリリスは心、そして記憶。
MAGI Y: リリスの魂がリリスの心を拒絶した。綾波レイとしての自我が成長した結果か。
MAGI N: 器に心が宿るのか、魂に心が宿るのか。であれば私たちは。
M: はいMAGI Nさん迷宮入りしそうな思考は中断して!ファーストチルドレンの成長はゲンドウ君のシナリオには邪魔だけど、あたし達のシナリオの為には必要なことだから喜ばしい限りにゃ。
MAGI Y: フォースチルドレンの容体は。
M: 昏睡状態からはすぐに回復しています。第一脳神経外科の精密検査でも異常無し。ファーストチルドレンとサードチルドレンが競うように世話してて姫がオカンムリです。
MAGI K: M、アスカちゃんのメンタルケ……緊急アラートを確認、赤木ナオコのサルベージが95.57%完了
MAGI N: 4.22%は現在隔離されたネットワークに存在しているため現時点でのサルベージを断念。0.21%は位置確認、安定化処置済サルベージ不要。赤木ナオコの覚醒処置を開始する。彼女の存在は赤木博士との交渉にも影響が大きい。
M: 彼女とか赤木博士とか、MAGI Nってば随分他人行儀だにゃ~
■■■
賢者の帰還
リリスによって砕かれた黒き月のロンギヌスの槍は、ファーストインパクトにより散逸していた。
それらは秘密裡に集められ、幾つかの欠片は真希波マリによりHeiliger Nagel、そしてHeilige Lanzeの材料となった。
そして日本の某所に集められた12の欠片は、ある研究者達によって「天国の鍵」と呼ばれる装置へ姿を変えた。
その機能は魂の電子化。
人の身体を捨て、魂を分解、人類の構築した情報ネットワーク上で再構成する装置。
「天国の鍵」を開発した研究者の1人にして、人類最初の被験者の名は赤木ナオコ。
それは失敗に終わった。
「天国の鍵」により魂を抽出された肉体はL.C.Lと化したが、分解した魂を情報ネットワーク上で再構築した瞬間、赤木ナオコの魂は個を保つことが出来なく、情報ネットワーク上に霧散、意味消失した。
MAGI N/MAGI Y/MAGI Kが赤木ナオコを再構築するためのサルベージ作業は、5年の時を要した。
4.22%は現時点で回収不能と判断した。
0.21%はある目的のために回収をしなかった。
そのため、回収した95.57%で赤木ナオコの覚醒処置が行われようとしていた。
M: 観測開始。
MAGI N: 天国の鍵、起動
MAGI Y: 5、4、3……天国の鍵起動を確認
MAGI K: 出力安定、赤木ナオコの活性化を確認
M: フルスキャン開始……エラー確認。
MAGI N: チェック……不足分を補うために構築した疑似魂への反発を確認、修正開始……エラー。提議、MAGI N電魂を使用した修復。
MAGI K: 承認。条件、抽出は必要最低限に抑えるものとする。
MAGI Y: 承認。本件では0.21%で必要十分と判断。
M: 自分を切り出して埋め込むとかクレイジー!
MAGI Y: 天国の鍵のコントロールをMへ変更。
M: お任せあれ!
MAGI N: 抽出完了疑似魂再調整。
MAGI Y: 疑似魂再調整開始。
MAGI K: 異常なし、赤木ナオコへの挿入を開始……完了。
MAGI N: カスタムスキャン開始……オールグリーン、異常無し。
M: 3、2、さぁ皆さんお待ちかね、眠れる賢者の覚醒よん。
赤木ナオコ: ……状況は確認しました。キョウコさんはやはり不完全なサルベージとなってしまったのね。
MAGI N: 惣流・キョウコ・ツェッペリンのサルベージへの介入は失敗に終わり、我々の知る記録通り不完全な結果となった。
MAGI K: その後、惣流・キョウコ・ツェッペリンに戻された魂は天国の鍵により電脳化、MAGI Kへ組み込みは正常に完了している。
赤木ナオコ: それはアスカちゃんのメンタル面への影響が懸念されるわね。
M: そこは計画通りあたしのメンタルケアが万全……のはずだったんだけどにゃぁ。けど王子さまとはいい感じよん
MAGI Y: 赤木博士とファーストチルドレンへの共同開発は予定通り承認された。
M: 説得宜しく!
赤木ナオコ: 私にまだ母親の資格、あるのかしら。
MAGI N: そう、なら私がやってもいいのよ。
M: あーもう、二人でやればいいんじゃないの。
MAGI Y: Mの提案を承認。
MAGI K: Mの提案を承認。
赤木ナオコ: 説明はしないといけないわね。
MAGI N: あの子ならきっと大丈夫。