蕃神   作:名無しの海

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2ー2 命の洗濯後の命の水は最強

 個人的には難癖とは思っていない指摘と要求を突き付けてシンジと一緒に第三新東京都市に残ることにしてしまった。

 う……後悔しかないぜ……。

 ミサトさんやリツコさんに対しては正直含むところなど何も無くて、前例や事前情報の無い使徒との戦闘がスムーズにいかないなんて仕方無い所もあるよなと思わなくも無い。

 画面の向こう側からぽてち片手に批評する立場なら幾らでも指摘できるだろうけど、現実はそうもいかないっしょという生暖かいお気持ちだ。

 ちなみに俺の右腕はまだ痛みが取れないのでアームホルダーを付けているが、これは肩がこりそうだ。

 

 シンジの迎えがミサトさんじゃなかったこともあり、俺達のお家はどうなるんだろうか、奇跡的にリツコさんに引き取られたらラッキ~とか考えてた時もありました。

 俺とシンジの保護者は安定のミサトさんです!

 つまり残念ゴミ屋敷へご招待~と覚悟を決めていたら、結構な大きさの一軒家に連れていかれた。

 

 そしたらお出迎えがまさかの冬月さんとペンペン!

 シンジは初めて見るペンギンに衝撃を受けて固まってたけど、ミサトさんはなんか固まってたな……

 どうやら冬月さんも俺とシンジの保護者らしいんだけど、まさか一緒に住むとは思ってなかったらしく、玄関での蘇生に失敗!そのまま灰になってしまった。

 

 「くぅ~、生きてるぅぅ~」

 

 そう。

 灰になっていたはずのミサトさんはすぐに復活た。

 今はゆったりとしたノースリーブにデニムのショートパンツ姿という完全リラックスモードになりペンペンと晩酌をしている。

 復活はええよこの人、心臓に毛でも生えてんのかな?

 あー、畜生、それにしてもペンペンまでビール吞んでやがる俺にも寄越せ!

 

 「食事の準備はまだかかるからシンジ君もカイ君も先に風呂に入ってきなさい」

 「そうよ~風呂は命の洗濯よ~」

 

 冬月さんはこの後またNERV本部に戻らないといけないらしく、制服の上にエプロンという姿で夕飯を準備してくれている。

 それに比べてミサトさんのあの姿よ。

 

 「だってさ。シンジどうする?先に入るか?」

 「何言ってんのさ、その腕で一人で入れるわけないだろ。一緒に入るんだってば」

 「あー……なるほど確かに」

 「えー、恥ずかしがったりしないのね。つまんないわ~」

 

 ミサトさんはちぇ~と言った感じでスルメを齧ってる。

 

 「ミサトさんひょっとして僕たちのことおもちゃにしようとしてます?」

 「えっ?い、いやぁねぇ、そんなことあるわけないじゃない~。ほら、思春期だと色々あるでしょ?」

 

 を、シンジ君のミサトさんへの評価がマイナス1ポイントだぞ!

 

 「まー、ちびの時からお互いの裸とか見慣れてるんで、そういうのはないっすね。ほら、シンジもさっさと風呂いこうぜ~、洗ってくれるんだろ?」

 

 不満気なシンジを左手で押しながら浴室に向かう。

 ちらっとミサトさんの方を見るとごめ~んといった感じで手をあわせていた。

 まぁ、あれもミサトさんの良さだしシンジもすぐなれるっしょと思い、全然おっけ~という気持ちを込めて笑顔を返しておく。

 

 

 

 「はーいお客さん痒い所はないですか~」

 「頭頂部おねがいしまーっす」

 

 シンジに髪を洗ってもらってると、突然美容師さんみたいな事を言い出した。

 それにしても人に髪の毛洗ってもらうのってなんでこんな気持ち良いんだろうな。

 最後にざぱーんと髪やら身体についた泡を残らず流してもらう。

 

 「よし、先に湯船はいってて」

 「え?洗ってもらったし、俺も洗おっか?」

 「何言ってんの。その腕でそんな事させれるわけないだろ。ほら、邪魔だからさっさと湯船はいって」

 

 お礼に洗い返してやろうと左手をワキワキさせたら呆れた顔で湯船に追いやられてしまったちくしょう。

 それじゃ一足お先に湯船にーっとそろりそろりと足先から入る。

 うん、いい湯加減。

 よっしゃと後はがっつり身体を入れると湯船のヘリに顎を乗せると、身体を洗ってるシンジに目を向ける。

 シンジは服を着ている時は分かりにくいが、結構筋肉ついてるんだよなー、ぶっちゃけ俺よりついてる気がする。

 合気道もなー、俺が誘ったけどシンジの方がセンスがいいんだよな~。

 ほんとサラブレットって感じだ。

 

 「何じーっと見てんの?」

 

 いつの間にか身体を洗い終わったのか、シンジも湯船に入ってきた。

 

 「や、シンジの筋肉うらやましいなーって」

 「へ?カイだってついてるじゃん」

 

 コ、コイツ俺のこと「何言ってんの?」って顔で見てきやがる。

 

 「シンジの方がついてんの!イケテル筋肉もしてるし、顔も良いからお前のがもてんだよー!!」

 「はぁ」

 

 モテる者はモテない者の気持ちがわからないらしい。

 どうでも良さそうな返事に若干イラっとする。

 いや、凡人な俺がシンジにイラっとしても仕方ないけど、俺だって中一からラブレター貰って女の子というか女教師ときゃっきゃうふふする生活してぇよ!

 シンジ君は貰ったお手紙を「こういうの良くわかんないんだよね」って全部スルーしてたけどな!

 俺は痛みの無い左腕を駆使して、シンジの肩に手を回すと顔を寄せた。

 

 「うわ!何するんだよ」

 「いや、男子トークでもしようかと」

 「この態勢、必要?」

 「や、雰囲気作り。これから男子トークするぞーって」

 「はぁ」

 

 っく、またどうでも良さそうなお返事をいただいてしまった。

 

 「いいからいいから、こんな風に近づいて声を潜めるもんなの!」

 「風呂場なんて僕たちしかいないのにそんな事する必要ある?」

 「だから雰囲気作りなんだろ。それで、シンジはさ、誰狙いなの?」

 「へ?」

 

 シンジは何の話題かわからないらしく口をぽかんと開けながら目をぱちくりしている。

 

 「だーかーら、女の子!あ、俺はリツコさんね。頼むから手ぇ出すなよ。やっぱお前はミサトさん?」

 「ミサトさん……だらしなさそうだし苦労しそうじゃない?」

 「シンジはさ~、仕事はバリバリだけど私生活は抜けてるぐらいの子がいいじゃない?」

 

 俺はぶっちゃけ、ミサシン推しである。

 いや、加持ミサも嫌いじゃない。リョウちゃんもリョウジ君もいい奴だ。

 ただ、ミサシンの、漫画と旧劇で描かれた2人の最後は正直涙腺がヤバかった。

 漫画版でシンジの鞄につけられていたミサトさんのクロスペンダントは泣いた。

 あれは泣く。

 あ、けどシンアスも好きだぞ。

 王道だよな!

 

 「いや、そもそも僕たちとミサトさん、リツコさんの年齢差わかってる?」

 

 一人でエヴァ作品に想いを馳せてたら冷静な突っ込みをシンジが入れてくる。

 

 「え?シンちゃん年齢気にするタイプ?俺は全然いけるけど」

 

 思わずシンジの下を見ると、揺らぐ水面に隠されてはいるが、話題につられて若干反応してるのが見えた。

 中学生だもんな~!わかるわかる!

 俺はもうガンガン行こうぜ!ってなってる!!

 身体中学生だし!

 

 「っちょ!こういう話してる時にマジマジとソコを見ないでよ!」

 「照れんな照れんな。俺達もこうして大人になってくんだって~」

 

 まぁ大人になんか成れねーけどな。

 

 「っていってぇぇぇ!なんで脇腹つねんの!?」

 「いや、なんかムカついた」

 「離してぇぇぇええ!」

 

 痛みですっかり萎えましたとも!

 

 

 

 風呂から上がるとシンジに身体の水気をさっと拭ってもらいトランクスを装着すると、シンジが止める声を無視して脱衣所の熱気から逃げるようにリビングへ向かう。

 いや、風呂上りの脱衣所ってあっちーんだよね。

 さっさと涼しい空間に逃げ出したい。

 あ、ちなみに俺は夜は開放的なトランクスで昼間はがっちり固定してくれるボクサータイプ。

 

 「お風呂あがりました!あっち~っすね~」

 

 そのまま冷蔵庫を開けるとEBICHUビールを取り出して左手でプルタブおーぷんしてーからの一気!

 キンキンに冷えたビールが喉を通りすぎる爽快感、たまらん!

 

 「くあぁぁぁあぁぁあああああああああ!この瞬間の為に生きているぅぅぅぅぅぅうううううう!」

 「はぁぁああああああカイくんそれ今日のあたしのラストビールぅぅぅ!というか未成年でしょーーー!!!」

 「あ……」

 

 やらかした?

 いや、ついね?

 本当は冷たい麦茶を一気の予定だったのよ?

 普段冷蔵庫にビールとか入ってないから、ほんと自然な動きでね?

 はい……ギルティやらかしました……。

 

 「あーもう知らないっすよー。ペンペンかんぱ~い」

 

 床に胡坐をかいて、ペンペンの缶ビールに俺の缶ビールをコチンとぶつけると「クェェ」ってお返事してくれる。

 

 「お、ペンペンお前良い奴だな~」

 

 などとやってるとシンジが俺の服をもって脱衣所からやってきた。

 裸で。

 

 「カイ!家じゃないんだからちゃんと服着ないと駄目だろ!」

 「今日からここが家だしー、俺は家ではパンイチ派なんですー。ところで……」

 

 俺はニヤニヤしながらミサトさんと目を合わせると同時にソレを言葉にした。

 

 「前、隠したら?」

 「前、隠せば?」

 

 一瞬の沈黙。

 

 「へ?……あ、うわ!ご、ごめんなさいっ」

 

 シンジは自分の下をみると慌てて脱衣所に引っ込んでいく。

 俺とミサトさんは同時に缶ビールを呷る。

 

 「あ、カイ君!それ寄越しなさい!」

 「1缶だけー!後生だからー」

 

 ミサトさんは俺から愛しのEBICHUを取り上げようとするが、俺はなんとか死守しながら、缶に口を付ける。

 こうなったら取り上げられる前に呑み切るしかない。

 

 「まったく賑やかで良い事だな」

 

 そんな俺達を見ながら冬月副指令が苦笑しながら呟いた。

 あ、ちなみに冬月副指令と交渉の結果、この家でなら最高1日1缶呑んでいいことになった。

 だってミサトさんが毎日呑んだくれてる中で禁酒なんてやってらんねーよなぁ!

 冬月副指令は神!

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