ブルアカ始めたらホシノ先輩が可愛かったので書きました
現実の大学にホシノ先輩がいたら
にわかオタクの駄文 下ネタありです


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ホシノって名前、苗字みたいだよね

「ねぇ、お互いの初めて(バージン)、交換しない?」

この人は本当に何を言っているんだろう。おれは十中八九、先輩のこの言葉が嘘であるということを見抜いていた。この自称おじさんことホシノ先輩は、おれの一年先輩で、大学三年生である。彼女は普段から飄々としていて、言葉巧みに人をだまくらかしてからかうこともままあり、追及を煙に巻くのもうまい、いわゆる口賢い人だ。しかし、彼女は突拍子もない言動をすることはなかったし、シモの話題についておれと話したことはめったになかった。内容も意味不明である。

それに、女家庭で育ったおれは、男女の貞操の価値の違いについて理解していた。男と違って女の子が貞操を捨てるには痛みが伴うし、ごまかしがきかない。そう易々と捨ててしまっていいものではないのだ、と口酸っぱく教えられた。だから先輩の言葉が嘘であるとおれは判断できた。

だからこそわからないのだ。彼女は嘘をついて、挙動不審にうろたえる相手を観察して楽しむことは絶対にしない。だからといって、これが嘘でないとは言い切れない。内容が内容だ。信じて飛びついた挙句、大学中におれの悪評が広まってしまっては目も当てられない。おれがかの自然界の性豪、ボノボをもしのぐ性獣だということはトップシークレットである。おれは、ほどよく落ち着いた大人の男であらねばならない。おれは童貞だけれども。

「おれ一応童貞じゃないですけど大丈夫ですか」

とはいえ、せっかくのチャンスを棒に振るのはいただけない。もしあの時、とシャワーを浴びるたび後悔を繰り返すのはナンセンスだ。

嘘をついたのには訳がある。一つ、万が一先輩の言葉が嘘であった場合、おれが栗の花香る童貞だと噂が広まるのを防ぐため。二つ、相手の出方をうかがうため。三つ、見栄。

「そっか、ま、それでもいいや~」

これはどっちだ。今行くか。いや、まだか。

大学に入学して、先輩と出会ってから二年たつ。二年間一緒にいて、年もさほど変わらないのに、おれはこの人のことがわからない。おれは未だに、先輩の苗字しか知らないのだ。先輩は自分のことを話そうとしないし、聞けば消えてしまいそうで、おれも尋ねることはない。それでも、ほぼ毎日のように一緒にいて、レポートを手伝ってもらったり、おれの家でゲームをしたり、ご飯を食べに行ったりする。つまるところ、おれは先輩のことが気になっていた。だからこんなにも頭を悩ませている。女の子はエッチと恋愛を同列に考えないらしいが、おれは脈なしなのだろうか。

「おれ、未だに先輩の名前も知らないんですけど、いいんですか」

「ああ、よく言われるんだよね。ホシノは苗字じゃなくて名前だよ。

 おじさんの苗字は小鳥遊、小鳥遊ホシノだよ」

衝撃の新事実。おれは今まで好きな人を名前で呼んでいた。

「でも先輩、お金持ちの大人な男をひっかけるっていうのはどうしたんですか」

なんとか考える時間が欲しくて、おれは尋ねた。

「ま、それはおいおい見つけるよ」

おれはほどよく落ち着いた大人の男として認識されていなかった。

これは本格的に脈がないのではなかろうか。「理想の男はおいおい見つけるとして、とりあえずはお前で妥協してやる。」という風にも聞こえる。こんな非道な思惑、先輩に限ってありえないが。

そうなると、やはり先輩の意図がつかめない。おれのことが好きなのか。日夜、熱心にアダルトな漫画を買いあさっているおれは、似たようなシチュエーションを思い浮かべていた。いやいやありえないだろう。勘違いをして轟沈すれば、おれの大学生活は地獄の拷問へ変貌を遂げる。おれはリスキーな賭けには乗らない主義だ。しかし、ノーリスクの勝負でいくら勝利を積み重ねようが成長はないのは事実。おれの童貞はすでに腐敗寸前だ。もうぐずぐずで臭い。童貞臭とはすえたチーズのような腐敗臭なのである。

「結局、どうなの?」

ここまで前のめりな先輩を見るのは初めてだ。つかみどころがなく、特別物事に情熱を抱くように見えない先輩がこれほどムキになっている。理由がどうであれ、あの言葉が嘘ということはない筈だ。

もういいだろう。先輩とより仲を深められるなら、リスクを負ってでも踏み込むべきだ。

さらばだ、おれの童貞(大学生活)。おれは先輩のお誘いに快く応じた。

 

◇◇◇

あの後、おれ達はすぐさまホテルに向かった。道中、それとなく先輩もおれのことを好いてくれていると伝えてくれた。先輩の言葉は嘘ではなかった。しかし、おれの童貞は無事生還した。それはなぜか。単純な話だ。おれの息子はでかすぎた。初めてだということもあって、おれの図体ばかり大きく育った息子は、140cm半ばの先輩には大きかった。期待しすぎた半面、おおきな絶望に襲われたおれは、それをおくびにも出さず、次の約束を取り付けて、先輩をしっかりとケアしてから家に帰した。おれは家に帰って、日本の年間ティッシュ消費量を一箱増やした。片がついてから、本来なら今経験しているであろう光景を思い浮かべて、泣いた。童貞のおれには、我が息子の大きさだけがひそかな自慢だったのだ。自慢の息子の大きさを、これほど恨んだことはない。大きくなれるんだったら縮めよ、ドラ息子が。

明日は必修科目がないので、大学に行く必要はない。別れたときのあの様子では、先輩から会いに来るということはないだろう。次に先輩と会うのは早くとも明後日か。いっそ、こちらから訪ねてしまおうか。楽しみだ。

おれの童貞の寿命は、あとほんのわずかだ。




恥ずかしいので読まないでください


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