赤の息子と、青の子、そうしてウタ   作:幽 

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「・・・・クルーン。」
「なんだい、君。」
「兄でも親権って取れると思うか?」
「・・・色々意味が違うと思うけど、面白そうだから協力するね!!」


クルーンに関して特殊な設定がありますのでご注意ください。





少女の罪

 

こつりこつりと、クルーンは廃城のように見えて、実のところそこそこ綺麗にされていた廊下を歩いた。

それにクルーンはどうしたものかと内心で悩んだ。

何故って、城の内部を見れば、どうも人が残っているのは察せられた。ならば、このまま引くことを選ぶのも手だろう。

が、そうも言ってられない。

トットムジカの楽譜、それの廃棄はクルーンにとっては何よりも優先順位だったのだ。

こつり、こつりと歩いていると、ふと、己の背後に気配を感じた。それにクルーンはふむと、考え込み、そうして、そっと己のペットの毒蛇であるヨルムガンドに指示を出した。それに暗い廊下の中、クルーンのコートの裾から小さな蛇が忍び寄る。

 

「あ!?」

 

その言葉にクルーンは微笑み、振り返った。そこにいたのは、大柄な男だった。クルーンはそれに上機嫌で近寄った。それはにこやかにその男に話しかけた。

 

「ごきげんよう、この島の方。いえ、後ろに急に回られて、恐ろしくなってしまって。うちのヨルムガンドの毒、よく聞くでしょう?」

「き、きみは・・・」

「ああ、毒、といってもあくまでしびれ程度のものです。このヨルムガンドは食べた毒を腹の中で分解し、未知の毒を生成するという特殊な個体で・・・」

 

そこまで喋った後、クルーンはいけないいけないと、首を振り、ヨルを回収した。そうして、にこやかに話しかけた。

 

「ところで、おじさま。あなたは?」

 

そう言いながらクルーンはちらりと男を見た。その衣服は非常に上等なもので、目の前の存在の地位を物語っていた。けれど、細部で妙なほつれがあり、手入れは行き届いていない。そうして、倒れた男の手を見た。音楽というものに長い間触れていたクルーンには理解できた。それは、楽器の引く人間の手であると。

 

(・・・これは、早々に当たりを引けましたね。)

 

男は黙ったまま、ちらりととある方向をやけに気にする。クルーンの記憶が正しければ、そこは逃げるような通路などなかったはずだ。

それにクルーンはほくそ笑む。

 

「・・・あなたに聞けないのなら、そうですね。さっき見た、あの可愛らしい子に聞いてもいいんですが。」

「ウ、ウタに何をする気だ!?」

 

クルーンは穏やかな微笑みの下でガッツポーズをした。どうやら、自分が思ったとおりに魚は釣り針に引っかかったようだ。

 

「さあ?ただ、あなたは何も話してくれなさそうなので。なら、教えてくれる人に聞いた方がいいでしょう?」

 

そう言えば、男はうめき声を上げて言った。

 

「・・・私は、このエレジアの元国王、ゴードンだ。いったい、何が望みでこの滅びた国にやってきた?」

 

ああ、ああ、ああ!

何という行幸だろうか!目当ての存在がこんな所にやってきた!

 

「おや、それならばそれ相応の扱いをせねばなりませんね。」

 

その言葉と同時にヨルはまたするりとゴードンに近づき、その腕に近づいた。そうして、噛みついた。

 

「つっ!」

 

そんな声を出したが、今まで感じていたしびれは消え、ゴードンは立ち上がる。それと同時に、ゴードンの首にヨルが巻き付いた。

 

「さて、それでは陛下。」

 

トットムジカの楽譜のありか、教えていただけませんか?

 

甘い声だった。まるで、魔性の者が、悪魔が己に語りかけてくるような声だった。

 

 

「おや、おやおやおや!」

 

薄暗い地下室の中、クルーンの嬉しげな声が響く。ゴードンはカンテラの光を頼りに周りを見回した。トランムジカの楽譜は地下室に隠していた。

クルーンを騙して適当なところに連れて行くことも考えたが、不審がられてウタに危害を加えられることをゴードンは何よりも恐れた。

地下室の中、楽譜や歴史書の詰め込まれた書庫の中、クルーンは心の底から嬉しそうに本を眺めている。

 

「これ、昔出た、カルロイのアレンジした楽譜じゃないですか!!政府を批判する曲を書いて、禁書扱いになったのに!さすがはエレジア。ちゃんと残ってるじゃないですか!」

 

クルーンははしゃいだ声で楽譜の一つ一つを見ていく。それにゴードンは少しだけ肩から力が抜けた。

クルーンの言葉からして、相当の音楽への知識があった。はしゃいだ声からは音楽への親しみがあった。

それに、音楽を愛した男であるゴードンは少しだけ、それに対して警戒心を解いた。

クルーンはそのまま暗がりの中でもすいすいと奥に入っていき、そうして、更に希少な楽譜や書籍にはしゃいだ声を出す。

そこでふと、ゴードンはそんなにも暗がりの中でなお、楽譜を読めているクルーンを疑問に思った。

そこで、クルーンがゴードンの方に歩いてきた。

 

「いやあ、さすがはエレジア、希少なもので埋まっている。ええ、ほんとうに。」

 

トットムジカの楽譜も、確かに存在していましたし。

 

そう言って、カンテラの光に照らされた範囲に、クルーンが入ってくる。その手には、古びたボロボロの楽譜が数枚。

 

「そ、それは!」

「いやあ、やはりさすがですね。私が用があるのはこれだけです。」

「すぐに返すんだ!」

「ご心配なく、お返ししますよ。中身に関しては暗記済みですから。」

 

ゴードンはそれに慌てた。トットムジカはウタウタの実の能力者でなければ呼び出せない。だが、その内容が知れ渡るのは危険だ。それによって何が起きるのか、ただの伝承が確かな事実であったというそれがゴードンに焦りを生み出す。

 

「頼む、その内容をけして外で広めないでくれ!」

 

ゴードンの慌てた様子にクルーンはふむと納得したように頷いた。

 

「あなたのその様子からして、やはり、エレジアの滅亡はトットムジカが関わっているのですね。」

「・・・な。なぜ、そんなこと。」

「簡単な推論です。あなたは確かにこの譜面を恐れている。ええ、ただの紙切れ、ただの旋律、ただの、紙切れ。トットムジカはおとぎ話だった。そう記録が残っているとして、悪魔の実なんてものがあるとして。その恐怖には、確かな実感がある。」

 

なら、簡単な話でしょう。

クルーンはそう言って、譜面で口元を隠し、とびっきり愛らしく微笑んだ。

 

「・・・楽譜の、場所も、どうやって。」

「あそこはあなたの匂いがべったりと張り付いていたので。」

「悪魔の実の・・・」

 

ゴードンの言葉にクルーンは目を見開き、そうして、けたけたと笑った。

 

「ふ、ふふふふふ。ねえ、エレジアの国王陛下。知っていますか。昔、この世界には、太陽と月の神様がいたそうですよ?」

「太陽と、月?」

「ええ、太陽の神様はそれはそれは自由で。けれど、今はお隠れに。月の神様は政府に狩られてほとんど滅びてしまったそうですが。でもね、面白いことに、天使と呼ばれるものたちも存在していたんですよ。」

 

ゴードンはふと、クルーンの口調がやけに女性的な物になっていることに気づいた。そうして、その体が、明らかに縮まっていることにも。

それと同時に、ばさりと目の前のそれから、その背中から空色の美しい翼が現れた。ゴードンは目の前のそれが何であるのか理解した。

人魚や、巨人族のような希少種族の存在をゴードンは知っていた。

その種族は、男にも女にもなれる両性であり、悪魔の実を持たずとも翼と、そうして動物の姿を持つ。

ゴードンが何よりもその種族を知っていたのは、彼らが皆一様に音楽の才を持つことで有名であったから。そんな彼らをどこかの滅びた国では天使と崇め立てていた。

 

「カナ、リヤ。」

「ええ、そうです。我が身はカナリヤ。昔、神の使いと呼ばれながら、今では奴隷狩りが最も追い回す少数側。」

 

クルーンは持っていた楽譜を懐から取り出したライターで燃やした。

 

「な、なんてことを!」

「ひどいなあ。災厄の原因をなくしてあげたのに。」

「だが、この音楽にも確かに意味があったはずだ!これには・・・」

 

クルーンはそれににっこりと微笑んで、燃えかすを足で踏みにじった。

 

「馬鹿ですね、ゴードン陛下。所詮、音楽に力なんてありませんよ。」

何かを変えるのは、いつだって人間なのですから。

 

そう言って、愛らしい女はゴードンを醒めた目で眺めた。

 

 

 

ローゼンはどうしたものかと考えていた。

先ほどから、自分につかみかかってきた少女はぴくりとも動かない。なんとか、幾度か話しかけて、ウタという名前だけは聞き出せた。が、その後は浜辺に座り込んでそのままだ。

別に放っておいても構わない。それが何者であっても、自分に関わりなど無いのだから。

ただ、シャンクスのなしたことに関係しているというならば、なんとなく、放っておくことも出来なかった。

が、そろそろ帰らなければクルーンが五月蠅いだろう事は予想できた。

 

(・・・どうしたものか。)

 

そんなことを考えていると、自分を呼ぶ声がした。それに振り向けば珍しくその羽を羽ばたかせたクルーンがこちらに飛んでいるのが見えた。

ウタもさすがにそんな存在の登場に驚いたのか立ち上がり、距離を取る。ローゼンは動く元気があったことにほっとしてクルーンを見た。

 

「珍しく機嫌が良いな。」

「ええ。もちろん!目的も達成できましたし!あ、そうだ、ローゼン。君にも朗報がありますよ。この国を滅ぼしたの、やっぱり赤髪のおじさまじゃありませんでしたよ。」

「え!?」

 

その言葉に何よりも先に反応したのは、ローゼンではなく、ウタだった。クルーンは少女の存在に不思議そうな顔をした。

 

「おや、島の方ですか?」

「ねえ、それ、どういうこと!?赤髪海賊団が、この島を滅ぼしたんじゃないって!だって、私、見たのに!確かに、あいつらが宝を奪って逃げるのを!」

「ああ、あなた、あの生き残りの方ですか。まあ、そうですね。なら、真実を知る権利もあるでしょう。この島にはトットムジカという、まあ、一に災害をもたらす存在を呼び出す楽譜があるんですが。これがまた特殊で、ウタウタの実という悪魔の実の能力者でないと呼び出せないんですよ。」

 

それに少女の顔が強ばったことをローゼンは見た。けれど、それは新たな真実のためだろうと思い、クルーンの言葉を聞いた。

 

「先ほど、この国の国王だった方の反応からして、トットムジカが現れたのは事実ですね。」

「違う!」

「違うって。」

「あいつらは、奪うために滅ぼしたの!私は見たの!だから。」

「うーん、なら、聞きますけど。エレジアに奪うようなものって何があるんですか?」

 

それにウタの動きが止まった。それにローゼンはクルーンの言葉を引き継ぐように口を開いた。

 

「・・・この島は確かに裕福だが、わざわざ襲う理由もない。赤髪海賊団は基本的に一般人に手を出したりしない傾向がある。実際、赤髪海賊団の仕業とされることの事件の幾つかはデマだったことは調べ済みだ。」

「大方、ウタウタの実の能力とトットムジカの関係性を知らなかった能力者を庇うため、ですかね?」

「そんなところじゃないか?」

 

ローゼンはクルーンがそう言っていると、ウタはまた、どさりと膝から崩れ落ちた。

 

 

 

自分の人生とは、何だったのだろうか。

ウタはよく考えた。

歌うことは好きだ。だって、歌う自分をいつだって、彼女の愛した人たちは愛してくれたから。

歌おう、唄おう、うたおう。

笑ってくれる、喜んでくれる、愛おしんでくれるから。

だから、ずっと、うたって。

 

思考の中に紛れる、ノイズ。

燃える国、滅びる世界、死にゆく人々。

ああ、なんて笑える話だろうか。

その光景は、ウタの愛した人たちの罪業だ。

 

愛していたのに、笑ってくれたのに、喜んでくれたのに。

それは、全部嘘だった。

なら、ウタの人生は?

 

ゴードンは国を滅ぼした赤髪海賊団の忘れ物であるウタを慈しんでくれたのだと思う。

うたうことを、奏でることを、旋律や言葉を紡ぐことを、彼は教えてくれた。

学ぶことは楽しかった。だって、そうだろう。

ウタは歌うことを愛していたから。

 

本当に?

 

だって、ウタが歌って、この島に受け入れられたから、国は滅びたのに。

歌って、唄って、うたって。

 

(私の、歌はまた何かを壊すのかな?)

 

愛していたのに、歌うことを、音楽をこんなにも愛していたのに。なのに、何もかもが楽しくない、己の存在だった歌うことが恐ろしくてたまらない。

なのに、歌わずにいられない己のあり方が嫌でたまらなかった。

一人で歌った。

いつもいた観客はもうおらず、聞こえた喝采は存在せず、誰かの笑顔は見えることなく。

空を見て、夜空を見て、己の幸せだったいつかを思った。

憎んだ、愛していていたが故に。笑うことはなくなった、全てが嘘だったのだから。喜ぶことはなくなった、その象徴は己を捨てた。

 

(私は、人殺しだったの?)

 

憎んでいたその事実が、まるで逆光のように己を焼く。ただ、トットムジカというその単語、そうして、自分能力、それに、今までうっすらとした記憶が蓋を開けたかのように騒ぎ出す。

あの日の狂騒、魔王の音楽、満ちて、溢れて、それはウタにのしかかる。

 

「私だったの!私が、私のせいだった!?シャンクスが、私の罪を全部被ったなら、なら、私が全部悪いのに!!娘だって、言ってくれたのに。なのに、わたし。」

 

痛みに耐えるような声でウタはぐちゃぐちゃに泣き叫ぶ。それにローゼンは驚いた顔をした。クルーンはそれにやってしまったと口を覆った。

 

「・・・・どーも、この国を滅ぼしたの、この子だったみたいですね。目の前で言っちゃいましたよ。」

 

ローゼンはそれに目の前の少女が何であるかと改めて整理した。

それはどうも、シャンクスの養子のようで、そうして、今、能力によってこの島を滅ぼしたらしい。

ふむと、ローゼンはそれを見た。

 

(妹、か。)

 

目の前で泣く少女にそんな関係性を定義しても、特別な愛着は湧いてこない。強いて言うならば、己の罪にのたうち回る幼子への哀れみ。

ローゼンはその場で座り込み、泣き叫ぶ彼女の前に跪いた。

クルーンはそれを少しだけわくわくして見つめた。自分のやらかしにウタを慰めなくてはいけないと思ったが、それはそうとしてあまり感情を表に出さないローゼンの対応が気になった。

ローゼンは何のためらいもなく、己の刀を引き抜いた。

 

「へ?」

 

クルーンの間抜けな声をバックにローゼンは刀を地面に突き刺した。

 

「ウタ。」

 

それにウタはのろのろと顔を上げた。

 

「・・・・事実の通りなら、お前は人殺しだ。己の命を脅かされたわけでもなく、命をつなぐためでもない。ただ、無意味に人を殺した。その罪にお前は押しつぶされようとしてるのかもしれない。もしも、耐えられないのなら、この場で殺してやる。」

(え、え、ええ??)

 

その光景を眺めていたクルーンは状況が理解できずに固まった。自分の突き立てられた刀にウタは恐怖に顔を歪ませて、その場から離れようとした。

けれど、ローゼンはそれを赦さない。

 

「い、いや、離して!」

「ウタ!」

 

掴まれた自分の腕にウタは恐怖したが、その、シャンクスによく似た声に固まった。そうして、改めて、己の罪を被った人と同じかんばせを仰ぎ見た。

 

「だめだ。逃げるのは良いだろう。だが、いつかはその罪と向かい合わなくていけない。なら、ここで決めるんだ。償うか、それとも、放棄するのか。お前は今、死から逃げようとした。なら、生きなくてはいけない。」

お前はお前のために贖罪を定めなくていけない。

 

それは厳しい言葉だった。厳しくて、恐ろしい言葉だった。

ウタは固まる、どうしていいのかなんて、彼女にはわからないのだから。

ぼたぼたと涙を流す彼女は、ぶんぶんと首を振る。わからなくて、怖くて、どうすればいいのかと。

そこに正気に戻ったクルーンのげんこつがローゼンの頭上に振りかぶられた。

 

「っが!」

「はあ、そうでしたね。君、覚悟ガンギまり系の人だもんね。なら、こうなるよ。期待した私が悪いよ。」

 

はあとため息を吐き、クルーンは頭を押さえるローゼンを尻目にウタを見た。

 

「・・・さて、お嬢さん。君は、きっととても辛いね?自分のしたことに対して罪悪感、恐ろしさ、それに押しつぶされそうなのだろう?」

 

それはウタにとってなじみのない、優しい女性的な声だった。ウタはそれに頷いた。

どうすればいいのだろうか。

だって、何の罪もない人たちを殺して、そうして、それをシャンクス達にかぶせてしまったのだ。

ああ、赦されない。ああ、どうすればいいのだろうか。償い方なんて、わからないのに。

泣きじゃくる少女のことを、その人はそっと撫でてくれた。

 

「ねえ、お嬢さん。人の命なんてね、簡単になくなってしまいます。例え、あなたが償いのために死を選んでも、それで奪われた命の重さが報われるわけでもない。」

 

それはとても重たい言葉だった。己の罪も重さを、如実に表しているようだった。

 

「まあ、でも、あなたは償いたいと願うのでしょ。当たり前のように。だから、そうですね。今のあなたにも、この島にいるだけは見えないこともあるかもしれません。」

 

そういってクルーンは海の先を指さした。

 

「自分の殺した存在への贖罪をどうするのか、どうやって生きていくのか。そうして、そのためにあなたに何が出来るのか。そんなこと何も知らないあなたに決められるはずがないでしょう。」

だから、外を見てみるのはどうですか?

 

海の先、青の果て。己の愛したものと反対のその人はそう言って、天使のように、美しく微笑んだ。

 

ウタは、それに綺麗だと思った。漠然と、本当に心から、綺麗だと思ったのだ。

 

「ローゼンも、極端すぎるんですよ。言いたいことはそうじゃないでしょう。」

 

頭を殴られてもだえていたローゼンはばつの悪そうな顔をする。

 

「ああ。俺が言いたいのは、そうだ。ウタ、お前が悪いことをしたのなら、俺も一緒に謝ってやる。」

「あなたも?」

「・・・・お前の罪はお前だけのもので、俺はそれと背負ってやれない。それでお前の心は軽くはならないだろう。ただ、その側でお前の償いのために一緒に歩いてやれる。」

 

彼はそう言って、そっと、その両手を差し出した。

 

「ウタ、お前は今、誰に謝りたい?」

 

それにウタは反射のように答えた。

 

「・・・・シャンクス、に謝りたい。あいたいよ。」

 

会うのが怖くて、赦されるかもわからなくて、それでも、ウタは言った。

シャンクスに、己のなした業のために、ごめんなさいとせめて、言わなければいけない。それに、ローゼンは少女を見た。

目の前で泣く少女、哀れな子供、寂しい女。

それを見ても、ローゼンはやはり、少女を愛しているかと言われると悩む。自分の妹に当たるらしい、それ。

ただ、ひどく、哀れで。

兄という存在は、そうしてやるのだろうとぼんやりとした思いで口を開けた。

 

「わかった、なら、兄ちゃんが一緒に謝ってやる。それなら、怖くないだろう?」

 

ああ、ああ、それはウタにはこれ以上ないほどに優しく聞こえたものだから。

 

「うん・・・・・!」

 

たった一言だけそう言って、彼女は強く頷いた。

 

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