ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
福袋は無事モルガンでした(宝具4)
周囲が暗闇に包まれた瞬間、足元に魔法陣が展開され輝きが視界を塗りつぶす。
浮遊感に包まれ、光が収まると神殿のような建造物がある空間へと転移していた。
「ハジメくん、ここって...」
「多分、メイル・メルジーヌの住処だと思うが...」
神代魔法が手に入る解放者の住処に到着したが、ハジメと香織の表情は優れないままだった。
すると、2人が出た場所とは違う位置にある魔法陣が輝き出し光が爆ぜる。その先には、巨大クリオネから逃げる際一時的に離れ離れになっていたシアとティオの姿がそこにはあった。
「あっ、ハジメ...」
「シア...それにティオ...無事だったか」
「う、うむ...」
魔法陣から現れた2人も、どこかよそよそしい。おそらく2人も『あれ』を見てしまったのだろう。
そして、先程シアとティオが現れた時のように別の位置にあった魔法陣が輝き始める。
光が収まった場所には、いつもの調子でいる弓人とそんな彼の手を握りしめ泣きそうな表情で俯くユエがいた。
「なんだ、先に着いていたのか」
「弓人...」
「ん?どうしたよお前ら」
彼の過去を見てしまった罪悪感から表情を暗くするハジメたちを見て、弓人は「そういうことか...」と呟いた後、自身の頭を掻き始める。
「あ〜...その感じだと見たのか?」
「...すまん」
「おいおい、なんで謝るんだよ?別に謝ることじゃねぇよ」
全く気にしていない様子の弓人に、何故か苛立ちを覚えたハジメは思わず呟いてしまった。
「なんで言ってくれなかったんだよ...」
「いや、昔言っただろ?ほら、樹海の時に」
「けど...あんな事を言われてたなんて...」
「それに、別に言う必要もないしな。前世の事だしお前らには関係ないだろ?」
関係ない
その言葉に香織は思わず叫んでしまった。
「そんな言い方ってないよ!」
「香織?」
「ハジメくんに...心配してくれてる友達に関係ないってそんなのないよ!」
「......はぁ」
「私だって!言ってくれたら「言って何になるんだよ」...え?」
「だから、仮にそれを言って何になるんだよ」
そう言い放った彼の表情を見て、香織は...いや、ユエを除いた全員が息を呑んだ。
その表情は『無』だった。
先ほどの調子が嘘だったかのように、その顔から表情が抜け落ちていた。
「どんな言葉を並べても、俺は
「け、けど...あれはリオンさんを助けるために...」
「人を助けるためなら殺しをしても赦されると?」
「そ、それは...」
「それとも何だ?『あれは仕方なかったんだ、だから俺は悪くない』と泣き喚けばいいか?」
淡々とぶつけられる言葉に、香織は次第に何も言えなくなる。
それを見た弓人は、今度は自身の手を握っているユエに視線を移した。
「ユエもいい加減手を離せ」
「やだ...」
「お前も見ただろ、俺はお前が思ってるような上等な人間じゃない」
「やだぁ...」
「......たのむ」
ユエは駄々をこねるように首を横に振っていたが、弓人が呟くように零した懇願に嫌々手を離した。
その様子に彼はほんの一瞬顔を顰めたが、直ぐに元の無表情に戻りハジメたちの方へ顔を向ける。
「それより、さっさとあの神殿にいって魔法と証を取ってきたらどうだ?」
「ユ、ユミト殿は来ないのかえ...?」
「どうせ行っても俺は手に入らないだろうしな...後、少し1人にしてくれ」
「わ、分かったのじゃ...」
「安心してくれ、お前たちが戻ってきた時には『いつも通りの三星弓人』になってる」
その言葉に誰も答えることが出来ず、結局ハジメたちは弓人を残して神殿の方へと歩いていった。
そして残った弓人は1人天井の水面を眺めていた。
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「かっこわり」
いずれバレる事だったのに、
目を逸らして蓋をして、
それでバレたら開き直って八つ当たり。
「ガキだな...俺って」
あの光景は、今でも夢に出る。
吐きそうになる程周囲に漂う血と死んだヒトの臭い。
徐々に冷たくなってくる返り血の温度。
そしてあいつらに向けられた視線。
あの時
あの子を殺した時
自分の中にあった何か大切だったはずのものが無くなった。
大切だったはずなのに、思い出せないなにか。
「アルテミス...君なら知ってるか?」
思わずそんな事を呟いていると、魔法と証を手に入れたハジメたちが戻ってきた。
思いだぜ、俺はどんな風に笑っていたか
思いだぜ、俺はどんな風に喋っていたか
思いだぜ、俺はどんな道化を演じていたか
「戻ってきたな。で、どんな魔法だったんだ?」
だからそんな顔をしないでくれ
ほら、