ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

119 / 119
あけましておめでとう(中田○治)

福袋は無事モルガンでした(宝具4)


81星:いつも通りの笑顔

 

 

 周囲が暗闇に包まれた瞬間、足元に魔法陣が展開され輝きが視界を塗りつぶす。

 浮遊感に包まれ、光が収まると神殿のような建造物がある空間へと転移していた。

 

「ハジメくん、ここって...」

「多分、メイル・メルジーヌの住処だと思うが...」

 

 神代魔法が手に入る解放者の住処に到着したが、ハジメと香織の表情は優れないままだった。

 すると、2人が出た場所とは違う位置にある魔法陣が輝き出し光が爆ぜる。その先には、巨大クリオネから逃げる際一時的に離れ離れになっていたシアとティオの姿がそこにはあった。

 

「あっ、ハジメ...」

「シア...それにティオ...無事だったか」

「う、うむ...」

 

 魔法陣から現れた2人も、どこかよそよそしい。おそらく2人も『あれ』を見てしまったのだろう。

 そして、先程シアとティオが現れた時のように別の位置にあった魔法陣が輝き始める。

 光が収まった場所には、いつもの調子でいる弓人とそんな彼の手を握りしめ泣きそうな表情で俯くユエがいた。

 

「なんだ、先に着いていたのか」

「弓人...」

「ん?どうしたよお前ら」

 

 彼の過去を見てしまった罪悪感から表情を暗くするハジメたちを見て、弓人は「そういうことか...」と呟いた後、自身の頭を掻き始める。

 

「あ〜...その感じだと見たのか?」

「...すまん」

「おいおい、なんで謝るんだよ?別に謝ることじゃねぇよ」

 

 全く気にしていない様子の弓人に、何故か苛立ちを覚えたハジメは思わず呟いてしまった。

 

「なんで言ってくれなかったんだよ...」

「いや、昔言っただろ?ほら、樹海の時に」

「けど...あんな事を言われてたなんて...」

「それに、別に言う必要もないしな。前世の事だしお前らには関係ないだろ?」

 

 関係ない

 

 その言葉に香織は思わず叫んでしまった。

 

「そんな言い方ってないよ!」

「香織?」

「ハジメくんに...心配してくれてる友達に関係ないってそんなのないよ!」

「......はぁ」

「私だって!言ってくれたら「言って何になるんだよ」...え?」

「だから、仮にそれを言って何になるんだよ」

 

 そう言い放った彼の表情を見て、香織は...いや、ユエを除いた全員が息を呑んだ。

 

 その表情は『無』だった。

 

 先ほどの調子が嘘だったかのように、その顔から表情が抜け落ちていた。

 

「どんな言葉を並べても、俺は()()()()()闇派閥(イヴィルス)を...あの子を殺した」

「け、けど...あれはリオンさんを助けるために...」

「人を助けるためなら殺しをしても赦されると?」

「そ、それは...」

「それとも何だ?『あれは仕方なかったんだ、だから俺は悪くない』と泣き喚けばいいか?」

 

 淡々とぶつけられる言葉に、香織は次第に何も言えなくなる。

 それを見た弓人は、今度は自身の手を握っているユエに視線を移した。

 

「ユエもいい加減手を離せ」

「やだ...」

「お前も見ただろ、俺はお前が思ってるような上等な人間じゃない」

「やだぁ...」

「......たのむ」

 

 ユエは駄々をこねるように首を横に振っていたが、弓人が呟くように零した懇願に嫌々手を離した。

 その様子に彼はほんの一瞬顔を顰めたが、直ぐに元の無表情に戻りハジメたちの方へ顔を向ける。

 

「それより、さっさとあの神殿にいって魔法と証を取ってきたらどうだ?」

「ユ、ユミト殿は来ないのかえ...?」

「どうせ行っても俺は手に入らないだろうしな...後、少し1人にしてくれ」

「わ、分かったのじゃ...」

「安心してくれ、お前たちが戻ってきた時には『いつも通りの三星弓人』になってる」

 

 その言葉に誰も答えることが出来ず、結局ハジメたちは弓人を残して神殿の方へと歩いていった。

 

 そして残った弓人は1人天井の水面を眺めていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「かっこわり」

 

 いずれバレる事だったのに、

 目を逸らして蓋をして、

 それでバレたら開き直って八つ当たり。

 

「ガキだな...俺って」

 

 あの光景は、今でも夢に出る。

 吐きそうになる程周囲に漂う血と死んだヒトの臭い。

 徐々に冷たくなってくる返り血の温度。

 そしてあいつらに向けられた視線。

 

 あの時

 あの子を殺した時

 自分の中にあった何か大切だったはずのものが無くなった。

 

 大切だったはずなのに、思い出せないなにか。

 

「アルテミス...君なら知ってるか?」

 

 思わずそんな事を呟いていると、魔法と証を手に入れたハジメたちが戻ってきた。

 

 思いだぜ、俺はどんな風に笑っていたか

 思いだぜ、俺はどんな風に喋っていたか

 思いだぜ、俺はどんな道化を演じていたか

 

「戻ってきたな。で、どんな魔法だったんだ?」

 

 

 だからそんな顔をしないでくれ

 

 

 

 ほら、()()()()()笑ってるだろ?

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ありふれた日常へ永劫破壊(作者:シオウ)(原作:ありふれた職業で世界最強)

とある「ありふれた世界」の神座の女神により、人生を翻弄されることになった主人公、藤澤蓮弥。▼Diesiraeの聖遺物とエイヴィヒカイトを女神に押し付けられ、転生させられたのは二十一世紀の平和な日本。▼殺人鬼になる運命に抗いつつも、残り少ないありふれた日常を謳歌していた蓮弥はある日、クラスメイトと共に異世界に飛ばされることになる。▼蓮弥は無事、彼のありふれた日…


総合評価:8942/評価:7.81/連載:212話/更新日時:2026年09月07日(月) 00:00 小説情報

転生して水になったので存分に楽し・・・・・・水っ!?(作者:レイ1020)(原作:転生したらスライムだった件)

ある日僕、柳生健斗はある事故で死んでしまった。だからそのまま天国にでも行くのかなって思ってた自分がいた。だが実際に行ったのは僕には全く覚えがない大自然の中で、僕も人間では無く水になってしまってたわけで。▼そんな主人公がリムルと共に異世界で頑張っていくという物語です。オリキャラも出していく予定です。▼基本的に原作沿いです。ですが、タグにもある通り、原作を改変し…


総合評価:3904/評価:7.33/連載:123話/更新日時:2026年09月08日(火) 00:00 小説情報

とある原石の神造人形(エルキドゥ)(作者:海鮮茶漬け)(原作:とある魔術の禁書目録)

 主人公は知らぬ間に死んでしまい、よく分からないうちに転生させられ、目が覚めたらエルキドゥになっていた!▼ 血潮は泥(多分)、心は硝子(実は飴細工)、▼ 幾度の戦場跡を越えて不敗▼ ただの一度も(聖地巡礼からの)敗走はなく▼ ただの一度も理解されない▼ 彼の者は常に独りヲタク部屋で勝利に酔う▼ 故に、その生涯に答えは得た(えっ)▼ その体は、きっとコスプレを…


総合評価:17197/評価:8.34/連載:149話/更新日時:2024年04月10日(水) 00:00 小説情報

ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?(作者:超高校級の切望)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

原作を知らぬまま主人公になった男の物語


総合評価:23272/評価:8.31/連載:114話/更新日時:2020年03月08日(日) 20:14 小説情報

【悲報】メラメラ食っちゃった(作者:敗北者)(原作:ONE PIECE)

メラメラの実を食った転生者がスレで勉強しながら頑張る話。なお、マグマは炎より温度が低い


総合評価:31104/評価:8.02/連載:36話/更新日時:2025年05月10日(土) 18:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>