もうなんというか本当色々注意です
ヘルフォーク・ムーロムーラン。
そもそも黒崎真咲を名乗っていた彼女が本当に黒崎一護の母親であるかなど、石田雨竜には全く分からない。故に最初の段階から警戒していたのは必然。とはいえその物腰の柔らかさや、どこか井上織姫を思わせる雰囲気。
上手くは言えないが、なんとなく「それらしい」と。警戒をしながらも、何かが納得できてしまう程度には彼女は自称の通りの雰囲気を持っていると言えた。
だからこそ。こうしてメイド越しに自らのみぞおちより上側、鎖結めがけて攻撃が飛んできても、まあそうなのだろうと警戒の域からは逸脱しないはずだった。
予想だにしていなかったのは、それをしでかした彼女の表情だ。
「え……? 雨竜、くん? ちょっ、何これ…………!?」
驚愕。その一言で片づけられる。暗所、どこか実家の病院にある半地下の訓練室のようなそれを思わせるこの空間にて、とても滅却師のものと思えない虚のような霊圧の弓を構えた彼女が。同じく、虚の光線のような矢を放ってきた彼女が。
その表情。心の底からの困惑と、今にも雨竜の側に駆け寄ろうとするような焦燥に駆られたそれ。言葉と実際の動きとが全く釣り合っていないその挙措のせいで、あまりにも咄嗟の判断が遅れてしまった石田雨竜であった。
背部から矢を一気に引き抜くメイドのナナ。一瞬の激痛に声を荒げる雨竜だが。彼女は気にした様子もなくどこからか取り出した純白の布と包帯を彼に巻こうと……、彼のお手製たる滅却師衣装を脱がせようとしてきた。
何やってんですか!? と叫ぶ雨竜の当然の反応に、治療を、とだけ答えるナナ。
「というか僕なんかよりも、貴女の方が重症でしょう!? 滅却師的な特性がほとんどないってあの男からも聞いていますよ!!?」
「何らかの形で責任を取っていただけるのでしたら問題はないかと」
「はいッ!!?!?!?!?」
眠ナナは無表情のままそんなことを言ってくるので本意がどこにあるか定かではない。
なお、向こうで「あら大胆」とか言っている黒崎真咲は一体何がどうしたというのだ。空気を読んでか攻撃の手も止まってるし、なんだか嫌な笑顔を浮かべていそうな声音だ。雨竜の背中越しに聞こえる声な状況が良いやら悪いやら。
とはいえ途中で包帯を諦めたのか、何だか微妙に人体に悪そうな青い発色をした薬品の注射を取り出し、雨竜が何か言う前に「ぷすっと」刺して注入したりするあたり、雨竜の抵抗をそらすための方便の可能性もあるが、それはさておき。
意外と手慣れた動きで注射を終えるナナ。背中側、服の傷越しで地肌にテープだけ貼る彼女に何かを言おうとした雨竜だったが、「止血完了しました」とだけ返されると何も言えない。というかその注射薬は一体何だというのだ。滅却師秘伝の何々とかそんなのかったろ。
そしてそんな風に微妙な顔をしていた雨竜も、再び空気を読んで(?)撃たれる真っ赤な3本の矢には流石に反応出来た。メイドの彼女を抱えて、飛廉脚を用いて後退。ちらりと黒崎真咲を見れば、やはりその表情はすぐれない優れない。
「あ~~~~ ……、何これ? すごい、気持ち悪い」
ごめんなさい逃げて! と言いながらも、とても嫌そうな顔をする黒崎真咲。表情に反して手元の攻撃は止まらない。
その霊圧が虚に由来しているというのは間違いなさそうだが、基礎の技術は滅却師のそれのように見えなくもない。先ほどのやり取りで、彼女が滅却師ではなさそうだと類推している雨竜故に、その見た目には違和感がある。
少なからず慣れてないというか、無理やり身体を動かされているようなぎこちない弓遣い。
まるで身体の内側から
(……今の井上さんがいれば何とでもなりそうだけど、流石に難しいな)
少なからず外部からの介入が望め無さそうというのは、外で大きく変動している虚や一護たちの霊圧から察する雨竜。
……それはそうと先ほどからずっとお姫様抱っこで運搬されているメイドのナナは、特に照れるでもなく無表情のまま両手を握って驚いたようなポーズで固まり、左右の胸を寄せて上げていた。何故?
とはいえ完全にそちらに気を向けることなく、雨竜は射られる赤い弓矢に意識を集中していた。
「……っ、
「黒崎のお母さん────」
「雨竜くん! タイミングを合わせて! ……
事情を聞くよりも何よりも、真剣な目で雨竜にそう叫ぶ黒崎真咲。
この状況でお姉さんを自称するのはボケてるのか天然なのか微妙なところだが、少なからず彼女の意思が作用しているのか、弓を番えるのに腕が振るえ、構えも先ほどよりぎこちない。引き絞った指先が中々話されず、雨竜の挙措を観察しながら何かのタイミングを計ってるらしい。
彼女の言葉に、雨竜は即答できなかった。もとより敵であるなら戦うのに異論はないが、彼女自身の雰囲気は何一つ言動から外れていない。他者を操るタイプの虚というのもいるのでそちらを警戒するも、彼女はそんなことより
「雨竜様」
「…………ッ」
人間の女性を……、現在が虚の身体を持っているのだとしても人間の女性を。
ましてやそれなりの仲、良くも悪くも
必要があるならば「そう」せざるを得ないのだとしても、そこを嫌がり、ためらう程度には雨竜の倫理観は常識的な範疇にあった。つまりは、一般の男子高校生らしい範囲に。
故にこそ自分をじっと見つめるメイドのナナの視線が。常に変わらず、自分の命すら雨竜の判断に委ねているような。そんな彼女は上体を起こして雨竜に抱き着くように両腕を彼の首の後ろに回し。
彼が動きやすいようなそのサポートに、その彼女の姿勢に押されるように。雨竜は右手を構えた。
銀嶺弧雀。正面から見て四方八方に延び重なった弓の中仕掛けを弦で固定したような、奇形のやや大振りな滅霊弓。
ナナの膝下から霊子収束をし、伸ばした
「
雨あられの様に矢を降らせる
タイミングを見計らって矢を解放した黒崎真咲の手元から同時に放たれる三つの矢。その射出の瞬間、彼女の動きが完全に止まるタイミングに合わせ、そこめがけて一射。
同時に飛廉脚で滑るように横にスライドし、矢を躱していく雨竜。
ちょうど彼女の側面に回り……、その左手首の
「……お、お見事。さっすが竜ちゃんの子」
「…………あの男の名前を挙げるのは止めてもらって良いですか?」
「あ、あら……、仲、悪いの? 反抗期?」
「だからそういういじり方を止めてくださいと────ッ!?」
そして、雨竜は見た。痛みをこらえながら、気を紛らわすように卑近な話題を繋げていた黒崎真咲の頬と顎に
さながらパペット人形のようなそれが徐々に浮かぶと同時に、彼女のその分割線の箇所が裂けているのか、赤黒い血が流れ。
「……? どうしたの、雨竜く────ッ!?」
「な……!?」「雨竜様ッ!」
その変化に気を取られていたが故に、反応が遅れた。
手首から貫通し肘を貫通していた青白い射魂柱。その個所を起点に分割線が入り、ぱっくりと割れ────腕の中から
あまりに咄嗟のこと、思わずその場で90度回転しナナを放り出す雨竜。避けるという発想に繋がらないあたりは地の性格が出ているかもしれないが、この場でそれが良い方向に働くことはない。
背中を中心に両足、両腕へと糸に被弾すれば、その瞬間に急速に力が抜けて転がり落ちてしまう。力は入る。感覚はある。だというのに一切のコントロールが効かない。
「霊力を奪われてる訳でもない……、これは…………?」
「────処置します」
足を引きずりながら、ナナは雨竜に近寄る。手には先ほど霊力を貯め直していた"
それはそうと、切断されたところで雨竜の動きが改善したわけではない。そもそも糸のようなそれに被弾した時点でどうしようもないということか。
それでも片肘を無理やりついて、首で後方を見れば。
ぱきん、と黒崎真咲の開いた腕が閉じられるのと同時に声が響く。……硬質な音を立てて閉じられるという状態も甚だ異様なものであるが、それよりも響いた声の方に三者の意識は向いた。
『────ふむ、無駄なことを。
「……誰、だ?」
「一体どこから…………っ」
困惑する雨竜と真咲。ただ、そう言った瞬間彼女ははっと何かに気付いたように自らの口元を抑え。吐き気をこらえる様に背を折り、がたがたと震えだす。
明らかに尋常ならざる様子であるが、気遣えるだけの余裕は雨竜にはない。同様にナナもまた、ゼーレシュナイダーを構えて彼女の様子を見る。
震えながら黒崎真咲は目を大きく見開き、涙袋から血が溢れ。激痛をこらえているのか歯を食いしばる様な音が聞こえる。やがてその目は上を向き白目のまま目から血の涙をあふれさせ。
分割線はさながら骨をデフォルメしたような線のように、横一直線ではなく耳の下側に入るように上向きに亀裂が入り。力なくだらりと両腕を垂らした彼女の口が、異様に大きく開く────分割線を起点にさながら、
「なん…………、だと?」
「────」
現れ出たのは目に隈取のある壮年の男性の顔。
それを雨竜が視認すると同時に彼女の身体が膨れ上がり、爆散するように周囲に霊圧と白亜の砂埃が舞う。
思わず目をつむり薄目を開けて確認した雨竜の目に映ったのは、もはや黒崎真咲のどこか愉し気な女性の姿ではなかった。
人間の歯と歯茎のような襟巻をした、どこか中華風を思わせる髄の死覇装。でっぷりとした体格で膨れ上がった腹部や腕などに、仮面紋のような縦線が幾重も入っている。その袖は異様に長く、手先は見えない。両肩には象の牙を思わせる肩鎧のような牙が、前後にそれぞれ2つずつ伸びる。
身長は黒崎真咲よりは大きく、2メートルに届くか届かないか。枯草色の毛皮のようなものが襟巻から覗き、先ほどの壮年の男の顔が見える。長く伸びた髪は異様にうねり、後頭部から地面に垂直には垂れていない。
頬および側頭部。頭の左右に隈取以外の仮面紋、巴模様が3っつずつ。
そして、左の額から頭頂部にかけて「9」の刺青のような刻印────。
「では、改めて自己紹介をしておこう。
儂が
「────な……っ何だ、お前は……!?」
あまりに変貌しすぎた風体に、雨竜は目を見開く。
女性どころか、巨体かつ肥満体の中年男性のような姿。何もかもが黒崎真咲と一致する部分のないその変貌に、衝撃と困惑が勝る。
そんな雨竜を小莫迦にするように鼻で笑う彼、ムーロムーラン。
「直近に言ったではないか。その耳は飾りか? 滅却師。儂がヘルフォーク・ムーロムーラン。……嗚呼この腹か?
しかし先ほどの滅霊弓……、銀嶺弧雀か。石田宗弦が使っておったようじゃがさて? わざわざ継承するようなものでもあるまいに。その腕の装身霊具のよう、また妙に古い道具を持ってくる」
視線を鋭くする雨竜。明らかにこの破面は、滅却師の知識を知っている。滅却師というよりも自身の家庭についてか。少なからず自分の戦闘方法についての知識は間違いなくあるだろう。
そして雨竜の警戒に関係なく、冷静にややしゃがみ込むように刃を構えるナナである。……スカートがタイトでミニなせいでちょっとお尻のお肉がはみ出ているが、そんなことが気になるような状況ではない雨竜。
一瞬頭を振って睨みつける、そんな雨竜を鼻で笑うムーロムーラン。
「フッ。先ほどのように戯れれば良いではないか。いや? 計算した上でとはいえ油断と慢心があるが故に、醜態をさらしておるわけじゃが。
滑稽じゃなあ! だからこそ貴様らは儂の腹の内にそろって収まることになるわけじゃが、さて────おお」
「────────ッ!」
「ナナさんッ!?」
ムーロムーランに斬りかかるナナ。
同時に自分の髪を掴み、
「無駄なことは止め、そのまま儂に喰われるが良い女────ん?
「……フッ」
「────っと、これは滅茶苦茶であるな」
受け止められたと見るや足を引きずりながらも機敏な徒手空拳に移行するナナ。
それに対して首を戻したムーロムーランは一切の抵抗をしない。彼女の拳が強烈なのか、そのふくよかな体型に沈み込み貫通しているが。当たった傍から
流石に驚いた顔をするナナもその場に転がされ、高笑いしながらそんな彼女を足蹴にするムーロムーラン。壁に激突しないよう、身体を投げ出して受け止めようとする雨竜であるが、身体の自由がほぼ利かない状況であるゆえに、結果的にナナに足蹴されるように鳩尾を蹴られる形に。
悶絶する雨竜と、謝罪するナナ。そんな両者を破面は嗤い、そして深くため息をついた。
「やれやれ。……
「────何、だと?」
そしてその物言いと、状況証拠から。黒崎真咲の語った内容を踏まえた上でその破面のあの糸から、導き出される最も現実的な回答を口に出した。
「お前は……! 黒崎に訊いた、グランドフィッシャー!」
「じゃからムーロムーランと言うておるに。……死神共の付けた通称など、もはや何ら意味などない。世界の秩序において、儂は儂として確固としてここに存在している故にな」
かか、と高笑いするグランドフィッシャーあらため、ムーロムーラン。
グランドフィッシャー。疑似餌として人間の魂魄を模した姿を用い、霊力の高い人間を選別。わざわざ強力な霊体を喰らうことで力を蓄えていたらしいと聞いていた雨竜は、合点がいった。合点がいってしまった。
黒崎一護の母親を喰らったのはグランドフィッシャー。黒崎真咲もそれを発言していた。故に彼女は、よくは判らないが自我を失わないまま、瀕死だったグランドフィッシャーを乗っ取ったと言っていたが……。
「演技だった訳か、僕を、僕らを欺くための……!」
それこそ黒崎一護に対して、あの黒崎真咲の姿は特攻といえるだろう。致命傷と言えるかもしれない。その振る舞いが演技であったとしても、少なくとも第三者として色眼鏡抜きに、先ほどの黒崎真咲は一切の違和感を抱かせなかった。
その言葉にどれほど真実が含まれているかすらもはや定かではない。石田の家に引き取られていたというのも、自らの父の婚約者扱いだったということも、眉唾の話になっている。
だがそうであったとしても、全く違和感を抱かせないその演技力は驚嘆に値するだろう。
故にこそ怒りが満ち溢れる。間違いなくこのグランドフィッシャーを前にした一護は、激昂するだけで済まない劇場に駆られるだろうことは必須。
だがそんな雨竜の言葉に、ムーロムーランは大笑いだ。
「かっかっかっか──ッ! 無知とは悲しいのぅ。いや、滑稽よな。良い、見せてやろう。儂は今気分が良い故、丁寧に絶望を教えてくれる。
────幕開けよ、
そして自分の頭部から伸びる長髪を掴み、再び頭を持ち上げ
少しでもナナを庇おうと傷む腹部を抑えながら体を起こそうとする雨竜であるが、周囲の状況はもはや異様の一言だ。
霊圧は雨竜たち周囲一帯を覆い、晴れるころにはムーロムーランの姿はなかった。
その場にあったのは複数の霊体────
「バカな……!? 一体何が…………っ」
「こう囲まれていては、対処が…………っ、雨竜様」
雨竜たちを囲むようにしている彼女たちは、仮面を取り付けられている。とはいえその顎元からは血が滴っており、どういった表情をしているかは先ほどの変貌を思えば想像に難くない。
全員か肩からだらりと力を抜いて、頭を下げて立っている様はさながら糸でつながれた操り人形のようで。
『さて、わかるかな?』
ムーロムーランの声が四方八方から響くと同時に、彼女たちはいっせいに赤い霊子兵装の弓を形成した。
いつでも撃てる体勢のまま、矢を作らずあえて何もしないのは余裕の表れか……、雨竜たちを絶望させるために、丁寧な手順を踏んでいるということか。
「虚の霊圧…………けど、これは?」
恐怖よりも困惑が勝つ雨竜に、ムーロムーランは問う。
『先ほどの黒崎真咲を演技と言ったな? 石田、雨竜』
「……違うと言うのか」
『嗚呼。お主は知らぬかもしれぬがな…………、
どういう意味だ、と周囲を睨む雨竜に、くつくつと堪えたような笑いが響く。
『儂は……、現
「……それが、何だ」
『じゃが、儂は今こうして9の数字を与えられた。何故かわかるか?』
くつくつと堪えていた声が、盛大に大きくなる────。
『それは────儂が現存する破面の中で唯一、
目を見開く石田雨竜に、あざ笑う様に続ける。
『儂が取り込んだ、残骸になったおったとある虚。かつての
黒崎一護の前にて儂の疑似餌のコントロールを奪い取った黒崎真咲の魂魄も! その能力も、記憶も、感情も、心も!
「再、利用……だと…………?」
そうじゃ、と。雨竜の言葉に答えながら、傀儡となった一人の黒崎真咲は仮面をずらす。
そこは能面のように色と造形の個性を失った、かろうじて女性のような……能面のようになった目から血の涙を流す顔と。黒崎真咲らしい栗色のセミロングウェーブが混在した、ある種のマネキンのような異質さがそこにあった。
その口が出来の悪いマリオネットのようにカパカパと開き、内側からムーロムーランの声が聞こえる。
『儂の進化した能力。我が真なる名は「
「────待て、それじゃ……ッ!」
そうとも、とムーロムーランは高笑いする。
『ここにある全ての
儂はただその記憶を少し改竄し、制限をかけ、自由に振舞わせておっただけのことじゃ!!』
それは、つまり。
先ほどまでの黒崎真咲は演技などではなく────たとえ本人は死した後であったとしても、再現されたものであったのだとしても、黒崎真咲そのもので。
今ここで弓を構える全ての黒崎真咲も、それを話したムーロムーランに操られている黒崎真咲さえもが、その全てが先ほどの黒崎真咲と同じ存在で。
現在も身体の操作さえもさせられず、苦痛に意識を犯され────その在り様をこの虚に侮辱されていると。そういうことか?
なんなら今こうして滅却師の霊子兵装のようなものをしているのさえ、彼女ではない別な、おそらくこの破面が食らった滅却師の生き残りか何かの魂魄を素材としている?
それだけじゃない。もっと大勢の魂魄をより集めて、フランケンシュタインのような状態にしていると……、その全てが、あの破面の手の内側で。
自然と、力の抜けたはずの拳を強く握っている雨竜。
『理解したか? つまり、
貴様を利用すれば、さぞ黒崎一護たちへの接触は簡単になるじゃろうなあ。何せ、
そして、その言葉が最後の引き金だった。
轟、と。衝撃を伴った霊圧が雨竜から放たれる。
かぱりと開いた口元からわずかにムーロムーランの目が覗き、見開かれている。雨竜の様子に驚いているらしい。
それもその通り────全身の自由が利かなくなっているはずの雨竜が、立ち上がろうとしているのだから。
彼の背部に出現した霊子の帯が、そこからほどけたいくつもの糸が彼の身体に巻き付き、編まれ、その体を強引に動かす。
「……まさか、朽木さんを助けに来たついでに、お前のような相手に出会うとはね」
「雨竜、様……?」
立ち上がる雨竜はメガネの位置を直して、ぼそりと。井上さんがこの場に居なくて良かったと苛立たしく呟いた。
「井上さんには、とても見せられる戦いが出来そうにない。そして何より黒崎が、貴様にこの場で出会わなくて本当に良かった」
睨みつける視線は、真っすぐにムーロムーランの視線と重なり。
「
「──かかっ。活きが良い、活きが良い」
壮絶な雨竜のその怒りを前に。しかし、ムーロムーランはエサを見る目を止めることはなかった。
という訳で、変貌前と変貌後の両方のデザインです。ざっくりこんな感じと言うことで・・・