アンケートありがとうございました、最後にちょっとだけその関係でお話をば…
自分の無力さなど今更だと、朽木ルキアは自嘲する。
その虚は、明らかに自分を狙っていた。自らの霊圧の質が妙だと言うのは、あの
それにも関わらず、この虚の目的だけははっきりしていた。
『アバレーが私の代わりにあの人間どもの相手をしているうちに、私はあの少年を「食わねば」ならない。悪くは思わないでくれよ、死神の少女。虚とはそのような生態なのだ』
「悪く思うも、何も、無い…………」
『ほぅ、この状況で睨み返してくるとは……。中々骨がある死神だ。それだけに惜しいな、その霊圧は明らかに魂魄へと異常を来したものだ。我々が喰らえば腹を下すか、はたまた――――。いや、これは「持ち帰ってから」じっくり解体し観察するとしよう』
「くっ……、“自壊せよ、ロンダニーニの黒犬! 一読し、焼き払い、自ら喉を断ち切るがいい――――――――”」
縛道の九、“撃”。
霊子を縄状に放ち相手を縛り、霊圧をもって動きを封ずる縛道の初歩、その一つ。
現在辛うじて、失われつつある死神の力をもってして使える鬼道の、そのわずかな一つ。
せめてもの牽制にと思い、相手の顔面へと放つが――――本来なら辛うじてでもその目を潰しただろう一撃は、しかしもはやそれすら許されぬほどに、彼我の霊圧差が致命的なまでに開いていた。
否、「一方的に」ルキアの霊圧が落ちていた。
『悲しきかな、その力は私には遠く及ばない……、いや? 不可思議だな。その身体から放たれた瞬間の霊圧はそれこそ副隊長格でも不思議はないというのに、私の元へと辿り着く前に淡く解け消えゆく。さながら雪のように儚いなぁ、死神の少女よ』
「おのれ……、貴様などにッ」
無力感をかみしめるのは、これで初めてではない。志波海燕を救うに適わず、黒崎一護に負担を強い、それでも結局「罪から逃れるように」人間となりつつある今の自分の、なんと不甲斐ない事か。何と力ない事か。何と情けない事か。
「――――月牙、天衝ォ!」
そんな自分たちの前に再び舞い降りた一護に、その姿に安堵してしまった自分に、あまりにも変わり果てたその自分のあり様に胸の奥を締め付けられる。もはや自分は彼を頼る他ないと言うその状況の、あまりの至らなさに。年を見ても百は違うだろうその子供と言って良い男に、自らが憧れたあの影を重ねてしまう、その自らの弱さに。
『フハハハハハハ! 来たか死神の少年、待ちわびたぞ! 私より先にエリッサを追いかけたというのに、彼女の元へたどり着いていなかったのには大層驚かされた!』
「た、たわけがっ!? 一護貴様、まさか迷子になっていたとでも言うのではあるまいなっ!」
「迷子とか言ってンじゃねェ! 大体俺は、感知とかそういうのは苦手なンだよ!
大体ルキアもルキアだぞ、霊絡見てみたけど、何でお前の色そんな白かったんだ! 全っ然見つかんなくって探すの手間取ったぞ!」
「それは今、私に死神の力が戻っていないからで――――ッ」
ふと思い出すのは、彼の父親の姿――――そこから伸びていた「根元だけに色の付いた」、人間と変わらない白き霊絡。
浦原が語ったことが正しいのなら、つまり自分もそれに近い状態にあるのだろうと。嗚呼なるほど、それなら一護も見つけるのが大変だったろうと、その事実に思い至り。そして自らの喪失に、心が曇った。
『フッフッフ。そう悪く言うものではないぞ死神の少年よ。この死神の少女とて、君のことを心配していたのだろうからなぁ。人の好意は素直に受け取っておくべきだろう――――そう時間もかからず、二人とも私の腹の内に入るのだから』
「はっ! さっきまでの余裕こいた感じじゃなくなってるじゃねェかテメェ。チャドとか井上とかに結構ヤられたんじゃねーか? ヘリファルテ!」
「井上に、茶渡……?」
一護の口から聞いた名前に違和感を覚えるルキアだったが、そんな彼女が疑問を口にするよりも前に、ヘリファルテは一護へ向けて、ルキアを投げ捨てた。
「ぬ? 一護、もっと優しく受け止めぬか。いたいけな美少女相手に」
「なぁにが幼気な美少女だよ百歳超えたババァのくせして」
「な!? 何を貴様――――」
「それよりも何の真似だよ、テメェ」
ヘリファルテを睨む一護。それ以上に冗談を交えたようなやりとりを続ける訳にもいかず、しかしやりどころのない妙な怒りをかかえるルキア。くつくつと笑うと、異形の騎士とでもいわん姿をしたその虚は「対峙するとはそういうことだからな」と笑っていた。
『お互いがお互いの矜持を! 信念を! 生き様を! 生死を! 様々なものをかけて戦うと言うのならば、心残りがあってはフェアではなかろう。何……圧倒的強者かつ捕食者でもある私による、ちょっとした気まぐれだとも』
「……生憎俺は、テメェが何言いてェかさっぱりわからねぇ。
けどな、どうもテメェを倒さないと拙いってことには変わりねェんだろ」
そうとも、そうとも、と。言いながら虚は霊圧を両肩に溜め。対する一護も、解放した奇形の巨大な斬魄刀を地面に這わせ。
『さぁ行くぞ死神の少年! せいぜい「あの男」を殺すための、私の糧となりたまえ!』
「何言ってんだテメー?」
(何故ここで激昂せず素面の返しをするのだ一護……?)
思わず傍から、月牙を切り上げ放つ一護に横でツッコミを入れてしまったルキアであった。
我ながら安心しすぎだと、この時点での彼女は気付いていない。
※ ※ ※
『おおおおおおおおおおお! おおおおおおおおおおおお! おおおおおおおおお!』
『落ち着け、ホワイト』
『落ち着いていられるかオッサンの馬鹿! 馬鹿! 今の一護の霊格霊威とあの弓モドキで太刀打ちできるような相手じゃねェだろ! このままいくと、姐サンの封印も消し飛ぶぞ馬鹿!』
『ご、ご年配様に少々言い過ぎではありませんか、白い方……』
思わずその場で地団太を踏む俺を「どうどう」となだめる姐さんと、特にいつも通り空を見上げるオッサン。いや、状況的には「俺自身が知っている」前世? 的な知識のせいで、今の状況がどのくらい危険かっていうのがわかっている。
まず大前提として、朽木ルキアの中には「天才」浦原喜助が作り出した超厄介物質「崩玉」というものが眠っている。どの時点でルキアの魂魄に忍ばされたか判ったもんじゃねぇけど、少なくともこの時点ではルキアの内側に存在することは間違いない。
コイツがまー超厄介物質で、虚の手に渡りでもしたらどんなことになるかわかったモンじゃねぇっていうのと、ひたすらに厄介な特性を兼ね備えている。
それは、周囲の魂魄、あるいは「所有者の魂魄」を中心とした願いを、まとめて具象化するというか、まあそんな能力を持っている――――適当にまとめるなら、最大公約数的な未来へと世界を誘導するような、そんな微妙な能力を持っている。
ある意味コイツのせいでルキアや一護やらの今の状況があるようなモンだが、コイツ自体は微妙にそこまで万能なアイテムってわけでもない。場合によっては普通に奪われるし、奪われた後にもっと別な使い方をされる可能性だってある。
そんなモンを、明らかにもっと強くなろうとしてるっぽい大虚がルキアごと、
このままいけば、一護自身が「護る」ために、本能的に俺とかオッサンのストッパーを完全に無視して霊圧を解放し始め――――後はひたすら、最悪のバッドエンドだけが虎視眈々と狙っている状況だ。
どうにもならないが、どうにかしないといけない。無茶振りはまぁ「かつての一心の野郎」で慣れちゃいるが、もはやそんな次元じゃ無ェんだ。
なんかどっかで
『姐サンだって落ち着いているようだが、良いのか? 良く無えだろ、このままいくと二人とも仲良く御陀仏だぜ!?』
『だからと言えど、そう声を荒らげても何も始まりませんとも』
『だからって澄ましたまま最期の時を迎えるってか? 俺は御免だね。誇りを守るための戦いなんざ「一度で充分」だ』
『――――だがホワイトよ。一護が虚化したのならば、一時とは言えお前も具象化をすることが出来る。それを私が外側から押さえれば、かろうじて一護を「完全に虚化しないように制御しながら」戦うことが出来るだろう』
オッサンの指摘は、まぁ正しいっちゃ正しい。あの時と違って、姐サンの封が解けるとしたら、間違いなく一護の生命の危機だ。となれば俺とオッサンと、一護の間にある壁が最も薄くなるということで、それは俺もオッサンもどっちも表に出れるってことを意味している。
だが、それじゃ駄目だ。
『今そんなことになったら、間違いなく姐サン、死んじまうだろ』
『えっ?』
『………………嗚呼』
びっくりした顔で俺とオッサンとの間を行ったり来たり見ている姐サン。悪いがオッサン、マトモそうに見えて基本的に一護さえ無事なら、大体なんでもする所があるんだ。原作だってホワイトの誤解を(多分ホワイト側も納得はしてたろーが)解かないまま、最後の最後までいっちまったし。それが一護のためになるなら、どんな泥でも被り護るっていうのは、ある意味で母親の愛情に近いものがある。
『悪ぃが、そりゃ流石に出来ない。一護がルキアを護るってんなら、俺は姐サンを守る。だから一護が暴走する前に、決着をつける方法を探すしかない』
『……情が移ったか、その客人に』
『知ってるだろ? 俺は俺自身や、オッサンが思っている以上に「黒崎一護」なンだよ。こんな摩天楼作っちまうくらいのデケェ夢なんて見れなくってもな。
それでも、顔見知りの美人くらいどうにかしようって思うのは、そんなにヘンでも無ェだろ――――朽木は自分の半身ともいえる袖白雪を差し出してまで、一護の命を救ってくれてんだ。下駄帽子の悪意なんて関係なくな』
『――――――――――――』
姐サンがなんか、呆然とした顔で俺の顔を見てる。……ンだよ、普通に美人だからちょっと照れるじゃねぇか。って、こっちのが照れたら照れたで姐サンもなんか微妙に目を大きくして、手で顔とか首筋とか仰ぎ始めてるし、何だそのリアクション。肌が色白美人だからちょっと照れただけで赤くなってんの丸わかりなんだぞ、何だそのチョロさ……?
『あー、いや、まァ、あれか? 斬魄刀だからそういうタイプの気遣われ方とかしたこと無いって感じか』
『~~~~~~~~ッ! べ、別に照れてなどいませんもの、白い方! このッ!』
『あっ止めろ、ちょっと今シリアスな感じにしてんだから、両手握ってポコポコ殴りかかってくんのとか止めろ、ぐるぐるハリケーンじゃねーか!? 幼児かアンタッ』
何とも姐サンにしてはお堅さの全然無ぇリアクションだ。……いやそうでも無いか? 絵の事とか字の事でいじると、割とルキア化するし。
そんな俺と姐サンを見て、オッサンはしばらく瞑目すると。
『ならばもはや、祈るより他はないだろう。最悪の事態に陥ろうとも、客人を犠牲とせずに事が治まることを』
※ ※ ※
敵は手負い。だが、だからといって一護に状況が有利に傾くこともない。
敵の動きがそもそも早い。敵の技の威力がそもそも高い。敵の耐久がそもそも硬すぎる。
どれをとっても一護が今、相手にできる範疇を大きく超えた存在―――――解放した斬魄刀に罅が入る程に、今の一護は追い詰められていた。
『良いぞ、良いぞ。もし私と出会うのがあと数カ月でも遅ければ、また状況は違っていたかもしれないが――――ありがとう死神の少年。君は私にとって最高の食事になってくれると、ここに確信できた』
「気持ちの悪ィこと言ってンじゃねェ! 大体、勝った気になるのはまだ早ェ!」
言いながら一護は、斬月につけられた傷に霊圧を込める―――――込めた霊圧が、その斬月の傷からも噴き出し、まるで一本の巨大な刃となった。
「おおおおおおおッ!」
『フハハハハ! まだ、まだ私を楽しませてくれるかね! 良いとも、さぁ存分にその力を私に見せてくれ、死神の少年! その全てを喰らい、君を絶望のもとに両断してみせよう』
「死神の少年じゃねぇ、俺は――――」
振りかぶった斬月を、振り下ろす一護。それに合わせて、あのヘリファルテと言う虚もまた、背部に溜めた赤黒い霊圧を刃の形に乗せ、放つ。
「――――黒崎、一護だッ!」
『ぬッ!?』
その一撃を、虚閃の亜種を、一護の月牙ははじき返し、しかしそれと同時に、斬月の刃が「砕けた」。飛び散る刃と、穴の氷から零れ落ちる「袖白雪」の鍔――――。
穴の部分は、未だ凍結したまま。故にか霊圧は漏れ出ない。強制的に始解が解除されていないので、決して一護の死期が迫っている、瀕死ということではないが。今の一護の見てくれを見れば、まるで冗談のようだろう。
だが、そんな一護の一撃で。折れた斬月の刃の先端は、確実にヘリファルテへと傷をつけた――――! 背部のタンクのようになっている部分に刺さり、そこから斬月の折れた刃の部分全体から月牙が放たれ、超速再生でも追いつかないだろうほどに大きな傷が残る。
『く、くそォ……、甘く見たつもりはなかったが、伊達や酔狂で君は死神というわけでもないようだなぁ、「黒崎一護」』
「うぅ……っ、お、おぉ……!」
『ほぅ、まだ立つか! 嗚呼そうとも、死神とはそうでなくてはなぁ、「あの男たちと違って」! そんな死神だからこそ、我らが
光栄に思え黒崎一護、故にこそ――――私もまた君に敬意を表して、君をこの場にて葬るとしよう』
「な、何をするつもりだ――――」
ルキアが呟く声も掻き消される。背部のタンクのような器官を失ったヘリファルテだが、その刃のような、パイプに繋がれたような腕を掲げ、霊圧を集中させていく。
「……なん………………、だと……?」
いつか見た、一護が、大虚相手に放った月牙を思い出すほどに強大な、その重圧。
『
「グランレイ、セロ……?」
『君はもはや知る必要もないだろう。せいぜい「私の一部」となり、その躯の果てを我らが
さらばだ、黒崎一護!』
「ッ、月牙天衝ッ!」
上空から振り下ろされる、虚の血の混じった
双方の霊圧の刃が激突すると同時に、その圧力にルキアは転がされる。斬月の破片や鍔も同様で、そして――――。
「……相打ち、だと」
やはり未だ始解が解除されない一護と、対決した一撃でしかしこちらも深手を負ったらしいヘリファルテ。振り下ろした右腕は砕け形もなく、その衝撃の余波は仮面の右半分に亀裂を入れ、わずかに仮面から生前ものなのか髭と鋭い視線が覗いている。
「をのれ……っ、だが想像以上だ。これほどの死神を、いまだ『卍解に開花する』よりも先に喰らうことが出来るとは。我が虚としての生命に深い感謝を、我らが
「っ、さ、させる訳には――――」
そして立ち上がろうとするルキアだったが、しかし自分の両脚が「震えて」「力が入らない」ことに気付く。
なんと情けない、まるで本当に人間の小娘にまで心が、魂が堕ちたか? ……いや違う。これは本能だ。自らが死神であった時代ならついぞ忘れられていた、かつての生きるか死ぬかすら、まだ弱く、自分で決定できない程に振り回されていたあの頃の。そんな忘れていた恐怖の源泉すら覗いてしまう程に、もはや自分の力は失われているのだと。その事実が、ルキアの精神を鞭打った。
「こんな、こんなものなのか! 私が守ろうとして、自ら手放したその結果が、この様だというのか!」
震える手には、もはや悲しみはない。ただ立ち上がることが出来ない自らの不甲斐なさと、それを戒める強い怒りがそこにあった。
だが、今のままではどうすることも出来ない。その事実は変わりない。仮に一護を庇ってあの虚に食われたところで、今度は一護が自分の死神の力の供給を失い虚へと堕ちる。もはや何も出来ることはないのではないか、と。
しかし、それでも心の何処かが諦めない。
もはや無意味とわかっていても、それでも霊圧が堕ち切った今の自分では扱いきれぬかもしれない、より高い桁の鬼道の詠唱を考えた時。
『ルキア――――』
「……っ、その、声は」
自らの左の手元。転がり落ちていたその鍔。一護の斬月が、元が袖白雪の名残であるということを現す数少ない要素の一つ。
それを思わず手に取り。そして理解した――――本能で、理解させられた。
「………………嗚呼、そうだったな。いつだって私はお前と一緒にいた。海燕殿に見守られて解放した時も、その海燕殿をこの手で葬らざるを得なかったときも。
そして、一護に死神の力を与えた時も――――」
だから、共に戦おうと。
その鍔を、まるで鞘のように構えたルキアは、呟く。
「舞え、
瞬間、まるで一護が始解をするときのような、強い衝撃波のようなものが溢れ。一護へと一歩一歩近寄っていたヘリファルテは、その風圧に露出しかかった顔をしかめる。
『……何だ、その剣は。死神の少女よ』
煙が晴れたその場に立っていたルキアは、まるで「巨大な氷の結晶」が変形したような、そんな剣を手に持っていた。
おめでとうございます、元気な謎能力ですよ⭐︎
アンケートありがとうございました! 一応アンケをとったのですが、最終的には以下の形になりそうです。
・本作:千年血戦相当の篇で「バンビちゃんが死ぬほど(ry」のバージョンの騎士団登場(自作クロス)
・「バンビちゃんが死ぬほど(ry」:原作版のまま
あんまり経緯を長々書くのもアレなんですがクロスに変更した原因は、主に本作のパワーインフレの仕方を前提にすると騎士団側を盛るのが原作前提だけだと難しいこと、似たようなコンセプトで別な盛り方をするとネタが被ってしまうかなってこと、あたりが七割です。対戦カードとして面白いかな?というのも3割ですが、そこは盛り上がらせられるか的な、という言い訳でした汗
本作の千年血戦篇(予定)を「蒼都(ry)バンビちゃん(ry)面倒(ry)(※死ぬ)」と合流させる? する場合、こちら側の蒼都はブルーになるしイケメン滅却師の命が大勢助かる
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する
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しない