メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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ハゲ(ハゲじゃない)と、冒頭下ネタ?ちょと注意


#016.仲間と……

 

 

 

 

 

「く……っ、ずっしりと重い、重いぞこれは……。どれほど濃いものを溜めたというのだ、今の一発で。それに太く、大きく、あまりにも長い……!

 おまけにあれ程の威力を為して未だ硬さに衰えが見えぬとは、流石に――――」

「ルキアお前、その言い方止めろォ! 正確に言え馬鹿ッ!」

「む? 何を言っている一護、振子雪(スノーホワイト)の一振りが大量の霊子と霊圧によって重く、拡散する一撃が太く大きく広がり、そして射程範囲が長いというようなことを言っていたのだが」

「最初からそう言えお前…………」

「一体何を気にしているのだ、貴様……?」

  

 何故か足元で赤くなりながら絶叫している一護に疑問符を浮かべた後、ルキアは振子雪(スノーホワイト)をもう一振り。放たれる冷気を斬り払い、ヘリファルテの姿を見た。

 

 放たれたのは霊圧の剣閃、その軌跡。本来の斬魄刀である「袖白雪(そでのしらゆき)」と色々な面で造りが異なる振子雪(スノーホワイト)であるが、剣から「伝わってくる」能力を意訳するならば、自らの霊圧を氷結領域に変えて、剣閃として飛ばす、といったようなものだ。

 その結果何が起きたかと言えば、ルキアの一撃を左腕の剣で庇ったヘリファルテの「腕から肩にかけて」、軌跡の範囲に沿って、それを中心として完全に凍結していた。

 

『これは……ッ、痛みもなく動かない? まさか、私の霊圧をもってしてもだと!? いかに副隊長格の霊圧といえど、このような――――』

「ああ、そうだろう。『私だけの』霊圧ならば、貴様とてもっと楽にこの振子雪(スノーホワイト)の一振りを斬り払うことが出来るだろうな」

『何だと?』

 

 次の瞬間、ルキアの姿を一護は「捉えることは出来なかった」。瞬間的に、彼女の足元で霊圧が「爆発したような」錯覚を覚えると同時に、続けざまに2回の「霊圧が破裂する」踏みこみだけを感知。いつの間にかヘリファルテの背後へと回りこんだルキア。

 

(そめ)の舞、(つき)――――、ぬ、ぬのおおおおおああああああああっ!?」

『何、だと……?』

 

「って、何やってんだルキア、お前ぇええええええッ!?」

 

 そして何かしらの技を出そうとしていたようだが、明らかに自らの発した霊圧に「振り回されていた」。具体的に言うと、最後のステップ後に斬りかかる直前までの踏みこみが、抑えきれなかったようだ。足の動きをみるに、どうも「想定以上の勢いで」投げ出されたような、そんなマヌケさがある。

 これには敵であるはずのヘリファルテとて、罅割れた仮面越しに目を見開いて困惑。思わず一護がツッコミで絶叫する程に、パンツ丸出しで転がっていた。色気の欠片もない……。

 

『制御出来ぬ、身の丈に合わぬ力……、今相対している私が言うのも妙な話だが、時期を間違ってはいないだろうか? 死神の少女。

 今の君では精々が犬死も良い所だろう。何故立ち上がる』

「……くっ、い、言ったはずだ。私は、勝てる勝てないではないのだ。

 それに一護が…………、む? 一護、何故私から顔を逸らして………、ん? ――――ッ!? ッ!!? ッ!!!?」

 

 流石にスカートが酷いめくれ上がり方をしているのに気づいたルキアは、珍しく赤面してその裾を直し、若干挙動が怪しいながらも「と、とにかく!」と気を取り直して振子雪(スノーホワイト)を構え直した。

 

「今の私が貴様を倒せればそれで良い。問題はないが。

 たとえそれが叶わずとも、今はそれでも良いのだ」

『ほう』

「貴様とて私などに葬られるのは興が削がれるであろう? もっともそこまで行けるとは限らぬがな。何、私とて一介の死神だ。死神ならば虚の一つ、倒してみせるのが筋というものだろう」

『フッフッフッフ、言うではないか。だがその傲慢さあってこそだ、死神の少女よ』

 

 あえて「時間を稼ぐ」ような余計な言い回しをしながら、ルキアは全身の霊力に意識を集中する。今度こそ、ルキアはその踏み込みを完全にモノにした。瞬間、それに合わせてヘリファルテもまた「姿を消すような」踏みこみによる、瞬間移動めいた動きをする。

 両者が姿を消したと同時に、空中で再び氷結の軌跡が舞い、赤黒い閃光がそれを討ち果たす。かと思えば「炎の一撃が」ヘリファルテの背中を焼き、その一瞬で体勢を立て直すために地面へと舞い戻る。

 

 それを見越して、ルキアは振子雪(スノーホワイト)を構え。

 

「改めてだ。

 (そめ)の舞、――――」

 

 そう言った彼女は、振子雪(スノーホワイト)を持ち空中で円を描くように一周回って「空を切る」。と同時に、その剣の切っ先その軌跡が冷気の跡を残していき――。

 危険だ、と唸ったヘリファルテは、一護と相打ちになった時の特殊な虚閃を構える。この時点で一護にはよく見えた。ヘリファルテは自らの凍り付いた腕の根本に片側の腕の剣を一閃。それにより吹き出した血、そこに自らの霊圧を込める。

 そしてルキアが周り終わるよりも先に、虚閃を放とうとするのと同時に。

 

『はァッ!』

「――――月白(つきしろ)!」

 

 一周回り終えたルキアが、振子雪(スノーホワイト)を地面に向け。それと同時に、円形の氷の輪がその先へと向かい、同時にその落ちていく軌跡に沿って「氷の柱」が形成されていく。 

 虚閃との激突。激突した箇所から凍気が走り、霊圧ごとその余波を含めてまとめて凍結されていく――――。

 

『ふ、ふざけるなッ! 虚として自我を取り戻してから幾年月、この域に至るまでにどれほどの魂魄を喰らってきたと思う! どれほどの()()()喰らわねば生きて来られなかったと思う! それを高々200年も生きていないだろう死神の子供に負けることなど、あってはならない……! 許されてはならない…………!

 く、おぉおおおおおおおおおッ!』

 

(よん)の舞・白弦(しろづる)!」

 

 月白の氷結領域から逃れるように動こうとするヘリファルテだが、その先に待ち構えていたかのように飛来、落下してくる氷の斬撃。

 どちらからも逃れること敵わず、そしてヘリファルテは――――。

 

 

 

「――――それはちょっと待ってもらおうか」

 

『!?』「ッ!」「何……?」

 

 

 

 そしてこの場にて聞き覚えのない声が割って入り、ルキアの攻撃の到達点たるヘリファルテの目前で、大きく氷が砕け霧散する煙が立ち上った。

  

「何だ、アイツ……?」

 

 朽木ルキアの攻撃を防いだ何者かは、ヘリファルテの前に立つその男。氷の柱と斬撃を蹴散らした男は、死神の遣うそれとはまた違うが剣を手に持っている。

 黒い外套の下には白い死覇装めいた洋装。腰には金色の鞘。姿かたちはやや髭の生えた長身の成人男性。だが明らかに異なる様が二つ。

 胸の中央に開いた円形の(あな)と、首元に下げられた「顎のような」骨の仮面。

 

『ロス・ロボス……? 何をしに来た、貴様ァ…………!』

「せめてリリネット(ヽヽヽヽヽ)スターク(ヽヽヽヽ)の方にしちゃもらえないか? ………まあ、今はコヨーテ・スタークなんだが」

 

 ぐぅ、と唸り声をあげるヘリファルテ。彼にスタークと名乗った謎の男は、ちらりとそちらを見る。どうやらスタークが斬り払った氷の余波なのか、右腕もまた肘から先が凍り付いているらしい。それくらいなら霊圧差で剥がせそうなものだが、どういうわけか「外側から」無理やりその氷の霊圧が分解されるのを押しとどめているようだ。スタークはそう判断し、少しだけため息をついた。

 

「このパトラス(ヽヽヽヽ)は『進化を拒んだ』結果こんなナリのままだが、それでも簡単に身動きを封じられるような奴じゃない。さっきの一撃を喰らったら、確実に全部駄目になっていたろう。

 やったのはアンタか、死神ちゃん」

「ちゃん……、と呼ばれるような歳ではないのだが」

「そうかい? 悪かった」

「あァ、それより、パトラスって…………、そっちのヘリファルテのことか?」

 

 一護の確認に、ぬぐぅ、とうめき声をあげるヘリファルテ。痛い所をつかれたような、知られて欲しくなかったことを知られたような、そのような声だった。

 軽くため息をついたスタークは、ヘリファルテ……、否、パトラスの方を向く。

 

「未だに大虚(メノス)の名前をそっちで積極的に呼ぶのはアンタくらいなものだよ。グリムジョーみたいな新しい世代に、無理に合わせろとは、言わないけどな」

『馬鹿にして……! 「あの男」が我らが虚圏(ヴェコムンド)(アロガンテ)を折りし後、一番最初に尻尾を振った犬めがッ! 真の虚のなりそこないがッ』

「しゃべりすぎだぜ、パトラス。……それにそもそも、俺は望んでこうなったからな」

『望んでだと? わざわざ仮面を砕き、「醜い」死神の姿など象りたかっただと? そんな男が何をしに来たッ!』

「何って言ってもな……。俺はこれでも、アンタのことも『仲間だと思ってる』んだぜ?」

 

 さて、と。片手で刀を構えたその男は、一護とルキアとをそれぞれ一瞥し。

 

「コヨーテ・スタークだ。そこのパトラスよりも強い虚だって言ったら、わかりやすいか?」

「!?」「仮面のない虚、だと?」

 

 一護の脳裏に情報が走る。あれは井上織姫の兄が変じた、中型の虚を斬ったときのことか。一時的に理性を取り戻しはしたものの、姿形は異形のまま。それをして、一護は魂魄の変質をある程度は不可逆であると考えたものだが、しかし目の前の相手は訳が違った。

 ほぼ完全に人間の姿――――いや、武器や格好を掛け合わせて考えれば、死神の姿と言えば良いか。

 

 そして忘れもしない、ルキアの脳裏に過る一護の姿。虚の仮面に乗っ取られかけたままに斬魄刀を解放した、仮面を被った一護のあの姿。

 

「一応、俺くらいの存在がこっちで好き勝手に暴れると『誤魔化しきれない』から抑えろって言われちゃいるがな。パトラスたちを引き取らせてもらうぜ」

 

 本能的にルキアは察してしまった。勝てない、今の自分の霊格でも、以前の自分の霊格でも。震え、足がすくみ、身動きができないことはない――――既にその段階は過ぎて、剣を手に取っているのだ。だがその上で、ルキアの本能が勝ち目のなさを、彼我の力の差を如実に感じ取ってしまっていた。

 

『私は、黒崎一護を喰らわねば――――』

「どっちみち今のままじゃ問題があるだろ。ウルキオラに頼んで反膜(ネガシオン)の準備はしてもらってるから、早い所逃げろ」

『哀れみか! 同情か! どちらにせよ要らぬ!』

「そんなモンじゃねぇよ。……それくらい元気があれば自分で帰れるか。だったら黒腔(ガルガンタ)を自分で開けておいてくれ。俺は、足止めするからな」

 

 待て、逃がすか、と。一歩踏み出ることが出来ないルキア。状況的に何か一歩間違えればそれだけで、あのスタークを名乗った虚らしい男は、こちらを殺すことが出来る。

 それ故に振子雪(スノーホワイト)に「一護の霊圧」を流し込み構えたまま、警戒していることしか出来ないルキアであったが――――。

 

 

 

「――――待てよ、テメェ……、お、おおおおおおおおおおッ!」

 

 

 

 大声を上げながら立ち上がる一護。そこから漏れ出る「スタークにも負けない」霊圧に、瞠目するルキアとパトラス。ほぅ、と目を細めたスタークは、「いつの間にか元に戻った」斬月を支えに立ち上がる一護へと、「霊圧を感じさせず」走り、眼前に現れてから剣を振り下ろす――――。

 激突。とっさに庇うように構え、斬月の側面に叩きつけられたスタークの剣。その一刀で周囲へと霊圧の衝撃が走り、ルキアも思わず地面に振子雪(スノーホワイト)を刺して飛ばされぬようにした。

 

「おぉ、らッ!」

「フッ」

 

 弾き飛ばす一護に、体勢を崩されずそのまま「宙に立つ」スターク。そんな彼目掛けて地面に這わせた斬月を斬り上げる。

 

「――――月牙天衝!」

虚閃(セロ)――――」

 

 地面に残した傷から立ち上がる斬撃の軌跡、その巨大な霊圧の刃。対するスタークは、丁度胸元……というより首の少し上のあたりに「自らの霊子を収束させ」、球状の塊から太く伸びる光線のように、自らの霊圧を放った。

 

 再び激突する両者の力。もっとも今度は空中だったこともあり、先ほどのレベルで地上への被害は出ていない。それを見て、一護は瞬間的に「周囲の霊子で足場を作り」、そこを起点に飛び上がった。

 対するスタークも「自らの霊子で」足場を再形成し、一護へと向かっていく。

 

 お互いの剣をぶつけて、鍔迫り合い。離し、斬りかかりを何度か繰り返し、ぎりぎりと拮抗する両者の剣。ただし、若干だがその剣から、お互い「鋭さが失せていた」。そして、一護の表情には困惑が、スタークの表情には陰鬱が浮かぶ。

 

「全く、アイツ(ヽヽヽ)を連れて来なくて正解だった……。『解放しない』言い訳が出来た」

「何の話だ?」

「関係ねぇよ。……一護(いちご)って言ったか。じゃあ、これはお返しだッ」

 

 剣を振り払い、今度は一護が後方へ飛ばされる。それと同時に左手の指先を銃のように構え、その先端に霊子を収束するスターク。

 

虚弾(バラ)

 

 収束された霊子は、六つ。それらがやや時間を置きながら、まるで銃のリボルバーを回転させるかのように、順次射出。対する一護は、それに月牙を放つようなこともなく、斬月の側面で受けるばかり。

 着弾により飛び散る霊子が煙のようになったものを、斬月で振り払い視界を晴らす。

 

 一護とスターク、それぞれの表情は違ったが、どちらも共通するのは。お互いがお互いに、どこか居心地が悪そうな顔をしていることだった。

 

「スタークって言ったか、アンタ……、なんで本気で戦わないんだ」

「……そりゃこっちの台詞だぜ、一護。そっくりそのまま返す。どうして途中から、俺を殺すための刃が鈍ったんだ」

 

 いや、お互いに思っていることを口にはしたが。それでも、何故かお互いにそれが「本来聞きたいこと」でないことを理解してしまっていた。

 他ならぬ己の剣を見やり、そして相手を見やり。そこから伝わってきた、お互いの霊圧に込められた意志のようなものが、お互いに刃を躊躇させてしまった。

 

「アンタの剣からは…………、戦意はあっても、殺意が無い。敵意も感じられなかった」

「判るのか、()()()。………………俺は今回、仕事として来たような訳でもない。むしろ何で『許可が下りた』のかすらわからないくらいだ。ただ、それでも仲間が意味のない死に方をするんじゃないかって、気が気じゃなった。

 他の二人は『もう逃がした』から、後はパトラスさえ帰せればそれで終わりだ」

 

 虚は基本的に個であり、群れることもない。そこには捕食の本能が働いているからというのを、ここ数日の「共食い」狩りで理解させられていた一護だったが。おそらくその頂点のような、そういった、ヘリファルテ改めパトラスすら置き去りにするような高みに居るだろうこの男が、こんなことを言うのか。

 

「現世のこの街には、俺達の想像もつかないような奴がいるって聞いていたものでな。どうしても心配になった。…………笑いたければ笑えよ」

「…………笑わねェよ」

「……そうか」

「ああ………………」

「…………やりにくいか、一護。だが戦いっていうのは、そういうものだろ」

 

 そしてスタークは剣を構え。

 

「ここからは少しばかり、速さのギアを上げさせてもらうぜ――――」

 

 言った次の瞬間には、一護はスタークを「見失った」。姿ばかりか霊圧すら、スタークを感知できず。そして何か反応をするよりも先に、スタークは一護の背中を切り裂いていた。

 それをさらに知覚するよりも先に、スタークの刃は一護の腕を切り裂く。激痛により取り落とす斬月を蹴り飛ばし、確実に一護の息の根を止めようと――――。

 

 

 

『――――――――――あァ?』

「――――――――――、ッ!」

 

 

 

 そして、「目が合った」。一護の右目の色が一瞬「黒く染まり」、その眼光の先にあった目が、何者かの目が自らと重なった。

 それに動揺したせいで、わずかにスタークの切っ先は逸れる。一護の心臓を貫かんと突き出された一撃は、一護の右の背を突き抜けるに留まる。

 

「……ぁ、ぐ……はッ!?」

「何、だ…………? 今のは、一体――――」

 

「――――(よん)の舞・白弦(しろづる)!」

 

 一護に刺さった自らの刀を抜く間もなく、混乱するスタークにめがけて、地面の方から氷の霊圧の刃が飛ばされる。それをパトラスと異なり「見てから」躱すスタークである。生半可な一撃は通用しないとばかりに、その身は一護の返り血以外の汚れや傷を許していない。

 

 しかし抜いた自らの剣を見やりながら、頭から落下していく一護の追跡はしない。ゆっくりと、足から出力する霊圧を調整し、霊子を緩めて高度を下げて行く。

 

 一護が地面に激突するよりも先に、ルキアは彼を抱きしめる様に倒れ、そのまま「霊圧を足に」収束して走り、距離をはなす。その間どうしても、あのパトラスが「空間の裂け目のようなもの」を作るのを見送らざるを得ない。もっとも向こうとしても不本意なのか、意識がもうろうとしているような一護を射殺さんばかりに睨みつけている。

 

 一方の一護を離し、ルキアはその腕と背の傷を振子雪(スノーホワイト)で止血しようとし――――。

 

「血が既に止まっているだと? それにこれは……、ッ!?」

 

 そして背を斬られた一護の、その死覇装の切り口から。ごとりと、まるで「一護の顔面にぴったりのサイズ」の、赤い模様が左側に描かれた仮面が落ちた。左頬のあたりから斬り上げられており、それがスタークの一刀から一護を守ったことがわかる。

 

「私が一護から死神の力を借り受けたからこうなったとでもいうのか……? いや、だが未だ一護は自らを失っている訳ではない。これは一体――――」

 

「気が変わった。一護には悪いが、二人とも殺すぜ」

 

 スタークの声が上空から聞こえたのと同時に、ルキアは感じたことのない重圧を感じる。

 さきほどの一護が放っていた霊圧に留まらない、より強烈で、どこか身震いするような恐怖。まるで「世界の全てが消え去り」「自分一人だけが生き残ってしまった」ような、そんな錯覚を覚える程の、周囲の霊圧を感じ取る事すら出来ない程の、大量の霊圧。

 

 見上げたルキアは、朦朧としながら同じように見上げた一護は、共に見た。

 上空を埋め尽くさんとばかりに、両手で数えられない程に形成された霊子の球の数々を。

 

「……出来ればもっと違う出会い方をしたかったよ、お前に」

 

「スター、ク……!」

「な……っ! や、止めるのだ一護、いかに貴様といえど、あれには太刀打ちできまいっ! 私の振子雪(スノーホワイト)ですら止せと言って『煩い』のだ!」

「だからって何もしないでいいわけ、無ェだろッ!」

 

 立って一護を庇うように剣を構えた彼女を、さらに庇うようにフラフラと立ち上がる一護。

 そんな光景に目を細め、眉間に皺をよせ、どこか辛そうにしながらスタークは「虚閃」と口にし――――――――。

 

 

 

「――――――――倒れろ、逆撫(さかなで)

 

 

 

 その言葉が聞こえた瞬間、スタークは「失敗した」。自らが放った虚閃(セロ)が、自分の意図した「正しい方向に」放たれなかった。

 思わずその在らぬ先、「下に落とすつもりだった」はずのそれらが向かった「上空へ」視線を向ける。

 

 当然のように、そこに一瞬感じたはずの霊圧の主は姿を見せず。

 というよりも、果たして自分が感じた霊圧はそこから来ていたのか? 既に一護とあの死神の少女の霊圧すら、地上から感じるべきであるにもかかわらず、上手くその場所を指させる自信がない。自分の見ている認識と、感じる認識と、そこに微妙な乖離を感じ、本能的に体外へ「霊圧を放ち」、それを振り払った。

 

「……ゲェ、ホンマかい。逆撫の能力を無理やり破ったとか。いやまぁ『掛かりかけ』だからしゃあないけど、何か対策せーへんとな」

「貴様は……?」

 

 そして、ルキアと一護は困惑していた。

 なにせそこに制服姿で現れた男は。

 

「…………平子? 何でお前……?」

 

「やぁれやれ。ホンマは護廷隊ん死神の戦いに手ェ出すんとか、嫌やねんけどなぁ…………、()()()の言い訳できんモン出てきよったし、しゃあないか」

 

 転校生、平子真子(ひらこしんじ)は。一護の足元に転がった「虚の仮面」のようなものを一瞥して、ため息をつきながら肩に「斬魄刀」を担いだ。

 

 

 

 

 

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