メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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現状の戦力でスタークぶつけたら、まぁこうなるよねってことで……。


#017.オールスターでも薄い勝ち目

 

 

 

 

 

『がーう! がーう! がーう!』

『おぉ何だ、アイツ気に入ったのか? あの金髪おかっぱ』

『ハゲ!』

『えっいきなり言語しゃべった、怖……』

『彼の者も禿げてはいないだろう、振子雪(ふりこゆき)

『くそじじぃ!』

『――――――――』

『おーおー、ちょっと感情が死んでるぞオッサン。「影経由で」伝わってくるからな。

 というか、あんまりそう何でもかんでも噛みついてやんなよ。只でさえ俺みたいなのになついてる時点でアレなんだから』

『ぎゃう?』

『そんな無邪気な笑顔向けられてもなぁ……。姐サンはどう思う?』

 

『……………………………………………………………………………………』

 

『あー、駄目だ。まだ帰ってきてねーわな。仕方ねぇか』

 

 とりあえず姐サンがそこで膝抱えていじけ始めたので、俺は振子雪を肩車してあやしてやりながら一護たちを観戦している。

 というか普通に肩車をせがんできたので、仕方ないとばかりに持ち上げてやった。「死神時代は」自分の子供とかそういうのは縁遠かったのもあり、妙な気分になってくる。

 

 いや、まぁ「コトに及んで」生まれた子供ってわけでもないんだが。

 

 ほーら、姐サンが身に覚えのない自分の子供の存在に色々と脳を破壊されていらっしゃる……。

 まあ俺の方は俺の方でさっき一護が普通にピンチだった隙をついて「無理やり」具象化し、あのスタークの一撃を防いどいたんだが。いやでも、ちょっと待ってくれって気分とこれはこれで大丈夫かもしれないっていう微妙な心境なんだよな……。

 

 コヨーテ・スターク。最上級大虚(ヴァストローデ)の破面にして、どう見てもラスボスなヨン様こと藍染の手を借りず「自力で」進化、あるいは変化した特殊個体の大虚だ。原作破面たちの戦闘力、序列においては一応ナンバー1。虚時代はその霊圧だけで雑魚虚なんて一瞬で影も形も残らず消し飛んでいた、俺ともまた違うとんでもない奴だ。

 その本質は、自らの圧倒的な力により並び立てる者も群れることもできない孤独にさいなまれた、当時は(ヽヽヽ)たった一人だった存在……、みたいなのだった気がする。いや、流石に死神時代の経験が数百年とか普通に長すぎて、細かい所は覚えてないんだよなぁ…………。主要ネームドキャラは特徴的だったし、原作初期のノリは好きだったからそっちは覚えてるんだが。

 まあそういう話をし出すと、アメリカで大量のゾンビに追い回されたりとかヘンな経験もあったりするが、そのあたりは割愛。

 

 重要なのは、どーもスタークと一護が剣を交わし合った際、お互いにお互いの気持ちを理解しちまったっぽいってことか。ぶっちゃけ「俺たち」斬月越しに感じている以上は、俺達もまた一護とスタークの両方の内心みたいなのを察しちまう訳だ。

 なんだかんだ根底のチョコラテ具合が似てるようなところはあるし、お互いやりにくいったらありゃしねぇな……。

 

 そんでもって、丁度良い所に現れたのがあの平子だ。

 

「アンタは……、一護やその死神のお嬢さんの仲間か?」

「仲間ァ? うーん…………、別に素性も全然明かしとらんし、何か義理でもあるか言われるとなぁ。うん、とりあえずクラスメイトでええやろ!」

「雑だな……」

「いや、そういうことじゃ無ェだろルキア。

 おい平子!? お前何を……って、斬魄刀ッ」

 

 既に始解を解除して通常の刀に戻した平子。肩に担いで「あ?」と口を変な風にして一護たちの方をみると、こっちもこっちでルキアの手の振子雪(スノーホワイト)見て「何やねんそれ!?」とびっくり仰天してやがる。

 

「わたしもよくわからぬ」

『ぎゃーうん!』

「む? そうか……、そうか? えっ? 私の斬魄刀の子供、だと…………? 袖白雪の? えっ?

 …………よし、聞かなかったことにしよう!」

「頭めっちゃ痛い……」

「あー、何かこう、ドンマイ…………」

「おおきにな、一護。って、お前もお前で頭痛の種やアホッ!」

「何で俺まで怒鳴られてんだよ!? というか俺からしてみりゃ、お前の方が謎だっての!」

 

 そして、そんな風にくっちゃべってる一護たちを、スタークが微妙に寂しそうな目で見ていた。既に地上に下りてるんだが、いや一応お前は敵なんだからさぁ……。気持ちはわからなくも無ぇけど。

 おおかた、なんとなく自分と似た感じに甘ったるい相手と、もしかしたら友達になれたかもしれないような優しい相手と知り合っちまって、見た目じゃわかりづらいが情緒がぐっちゃぐちゃなんだろうな、スターク。

 

 それこそリリネットがいたら一護的には戦う理由が失せそうだし……。そうするとスタークは「全力で戦える理由」が出来ちまうから、それはそれで問題なのか。

 そしてパトラスみたいに存在感を出すわけでもなく、黙ってこっちのやりとりが終わるのを普通に待っていてくれるのは良い奴すぎて胃が痛い…………。なんでコイツ、ホワイト時代の俺と遭遇しなかったんだろうホント。遭遇したらBLEACHのシナリオ崩壊まっしぐらなんだが。

 

「ぜー、ぜー、……、まあええわ。その辺は後であの下駄帽子の奥歯ガタガタ言わせて全部吐かせたる。

 それよりも、待たせてしまったみたいやな? 破面(アランカル)のオッサン」

「「破面?」」

 

 一護とルキアの反応に、スタークは少し悩んでから。

 

「いや、大して待ってない。それより…………、もうちょっと待った方が良いか?」

 

 いやホント、お前アレだろ将来的に味方になるやつだろ? 俺知ってるんだからなその甘々対応するタイプの敵キャラ強ボスの末路。第1(プリメーラ)十刃(エスパーダ)の姿か、これが?

 

『ぎゃんぎゃ、ぎゃん』

『おー、お前もなんかそう思うか。言葉はわかんねぇけど、言いたいことは何かわかんぞ。…………いや、何でわかるんだ? それもそれでおかしいな』

 

 こっちもこっちでこの振小雪がなんとなーく何を言いたいか察することが出来ていて、微妙な気分なんだがオイオイ。明らかに何かの「能力」とか使われている感じがするんだが、大丈夫かこれ? 思わずオッサンの方を見るが、オッサンはオッサンで孫でも見るような目で振子雪のことを見ているので、駄目だこりゃ。

 まあ楽観的に考えれば、オッサンが駆除しない時点で善性の存在っつーか、一護を害する存在というわけじゃ無いんだろう。ならまぁ良いかと、一護の斬魄刀たる俺としちゃなっとくしても良い。

 

 だからいい加減、機嫌直しちゃくれませんかねぇ雪の姐サンよォ。

 

『…………別に拗ねて等いませんとも』

『ぎゃう?』

『いえ、出会った初日で貴女のことを嫌うも何もありませぬから……、というかどうして言っていることがわかるのでしょうか? せめて人の言葉で話しなさい、しゃべれるでしょう子雪』

『ぎゃんっ!』

『嫌って言ったな』『わがままを言うのではありません!』

 

『うむ。仲良きことは良きことかな。私は争いごとを好まぬからな』

 

 オッサンの何かどこかで聞いたことのある感想はともかく。現世も現世で状況が少し動き始めた。手始めに平子が破面(アランカル)と言う存在について軽くレクチャーというか説明だけする。

 

「なんや、霊術院で習わへんのかい。…………いや普通は遭遇せーへんか。せいぜい副隊長の卍解修得目前っちゅーあたりか?

 まぁええわ。……破面(アランカル)っちゅーんは、簡単に言えば『死神の力を手に入れて』『仮面が剥がれた』(ホロウ)や。ああやって斬魄刀を持っとるんが何よりの証拠やろ?」

「死神の力だと……!?」

「じゃあ本当に、スタークの持ってたアレは、俺の斬月みたいなものなのかよ……」

 

『また微妙に俺と一護的には間違ってもないよォなこと言いやがって……』

『うぎゃー!』

『痛っ! テメッ、止めろ禿げるだろ俺がッ!』

『白い方の髪を引っ張るのをおやめなさい。ほら、私が預かりますから……』

『ぎゃーう! ぎゃーう!』

 

 とりあえず頭にへばりついた振子雪を姐サンに手渡して……、あー、微妙に完全復帰とはいってないな。後でちょっと話す必要がありそうだ。まぁそれはともかく、再び画面をみれば。ちょうど朽木ルキアが平子相手に「何故貴様がそれを知っているのだ」と問うところだ。

 

「知ってるも何も、()やからな」

「逆……? まさかッ」

 

 振子雪(スノーホワイト)を構えようとするルキアと、困惑したままの一護。そんな二人を背に庇うように「安心しぃ」と平子は肩をすくめる。

 

「ま、間近で(ヽヽヽ)見とったら警戒するのも仕方ないんやろうが……、『今回は』敵ちゃうわ。

 なぁ? オッサン」

「…………スタークだ。それはそうと『逆』って言ったな。じゃあアンタは何なんだよ」

「何でもええやろ。でも、なんなら『帰りたい』言い訳くらいにはなったるわ」

「そうかい。…………フッ」

「……何でやねん、何安心したみたいに(わろ)ぅとるんや」

「何。本当にそうしてくれるなら――――こっちとしては願ったり叶ったりだ」

「おっと」

 

 瞬間、再び「霊圧を感じない」走法にて平子の目の前に現れ斬りかかるスターク。それをひらりと躱すと、斬魄刀を構えて距離をとらせながら後方にルキアもしていた「霊圧を爆発させる」ような走法で後退。直後に飛び上がり、空中で「自らの霊子を」霊圧で固定して足場とした。

 

「どうせアイツ(ヽヽヽ)から何か無茶言われて来とるんやろ? なのに真面目に戦うんか」

「確かに思う所はあるが、それでもあの人は『恩人』みたいなものだからな。俺や、多くの大虚(メノス)にとっちゃ。たとえその先に、破滅があったとしても―――――」

「――――全く。普通に真面目な()っちゃなぁ」

 

 呆れたように言いながら手を顔に当てる平子。その時点で『まさか』と姐サンがびっくりした声を出す。ついでに振子雪は「きゃーっ!」と楽しそうだ。

 特にそのまま何かある訳でもなく、原作みたいなノリで霊子を集めて仮面を形成する平子。取り付けた瞬間に放たれた霊圧が一気に重くなり、一護とルキアが震える。

 

「そっちは『仮面をつける』んだな」

『ああ。「仮面を剥いだ」オッサンらと違ってな――――オラッ!』

 

 先ほどよりも素早く移動した平子が切り付ける。それを「あえて」受けるだけのスターク。とはいえ手加減してるっぽいままに平子に押されているのは事実で、虚閃の霊子収束をする暇もなく延々と斬られ続けている。

 

『――――破道の三十二・黄火閃(おうかせん)

 

「鬼道まで操るというのか、あの男……!」

 

 実際鬼道は、まぁ余程のことでもないと「正規の死神」でもないと扱えない技術だからな。平子の場合は文字通り「元護廷十三隊の隊長」その一人なわけで、素性を知ってる側からすると「大盤振る舞いだな」くらいに思うんだが。

 そしてどうも、振子雪は平子のあのファラオっぽい仮面がお気に入りらしい。『ぎゃぼー!』とかやっぱりよく判らねェ感じで声を上げてテンションが高かった。

 

 ともかく。解放していない斬魄刀から黄色の霊圧を放ち、斬撃に沿わせてスタークにぶつける。見た目は月牙天衝をライトにした感じだが、威力は明らかに劣っている。スタークも当然のように見切っているのか、黄火閃に関しては刀すら構えず死覇装めいたあの格好に直接受けた。

 

『やっぱり余裕ないわこっちも。オッサン、アンタ本当に強い。

 せやから――――加減無しや』

 

 そして先ほどのスタークみたいに、俺からすりゃ「原作のグリムジョー戦みたいに」斬魄刀の手前に霊子を収束させ始める平子。

 流石にこれにはスタークもびっくりしてるが、それより何よりルキアの顔がヤバイ。もう平子よりも一護の方を見て、気が気じゃないって感じだ。それにつられてか姐サンも俺の方を見てるんだが、いや別に一護も生命の危機じゃないから「出ていかない」ぞ。

 

 そして平子の放った虚閃を前に、スタークは斬魄刀を構えて。

 

「――――速虚閃(セロ・ヴェンダヴァル)

 

 パトラスみたいに何かモーションをすることもなく、そのままノーモーションで虚閃を放った。

 あ、霊圧乱れたから平子もビビってるなこりゃ。

 

 激突する双方の虚閃。グリムジョーみたいにぶっ飛ばされるようなこともなく、徹底的に余裕で捌いていやがる。

 流石にここまで暖簾に腕押しみたいなことになっているのには平子もびっくりしたのか、仮面をずらして改めて、煙が晴れたその場に立つスタークの姿を見た。

 

「もう少し、だな。このままだと俺が撤退するに足る理由には、まだ足りない」

「………………まさかアンタ、ひょっとしてアレか? 最上級大虚(ヴァストローデ)大虚(メノス)だったりするんか?」

「さてな。教えられるほどは、馴れ合えねぇよ」

「嘘、やろ……? あの眼鏡(ヽヽ)、一体何考えとんねん」

 

最上級大虚(ヴァストローデ)……!? 大虚(メノスグランデ)の最上級階位ではないかッ」

「最上位、だって…………?」

 

 最初の大虚やらパトラスを前提にして、自分と戦ったスタークの戦闘力を正しく見積もれていなかったことを理解した一護。手を抜かれていたのか、という感情が俺とかオッサンとかにも伝わってくる。くやしさ? というか、それと同時に絶望し始めたのかまーた雨が降り始めた……。今回ちょっと小雨だな。

 アレか、状況の絶望っぷりに雨は降るけど、それでもスタークが「悪い虚じゃない」みたいな微妙な共感をしちまってるから、水没するまで話は拗れないと。

 

「じゃあ、本当にやりたく無ぇが…………」

 

 そう言ってまた、周囲に複数の霊子の球を生成するスターク。量が今度はもっと多い。ありゃ虚弾(バラ)の方だな。

 

 万事休すか、みたいな顔してる平子と、無理やり立とうとする一護。それを横から入って肩を支えながら振子雪を構えるルキアときてる。

 状況的には絶望的っつーか、それこそ「漫画的には」色々と無理がありそうな状況なんだが……。あー、一護の中にいるから「ある意味で」状況を俯瞰的に見てしまえるせいもあるんだが。この「こっちに迫ってきている」隠しもしない霊圧のお陰で、いまいち緊張する必要性も感じられなかった。

 

虚弾(バラ)……、ん?」

 

「――――火無菊、梅厳、リリィ!」

「な、何や?」

 

 一護や平子たちの前方に、霊圧で出来た盾なのか壁なのかが形成されて、それがスタークの虚弾の雨霰を防ぐ――――というか「防ぎ切った」!? いや、ちょっと待て、この時点で織姫ってこんなに強かったか? いくら手加減してるって言っても、「あの」スタークの虚弾だぜ?

 

『ぐあーっぎゃん!』

 

 と、隣で振子雪が何かまーたテンション上げていやがる。……ってよく見ると、織姫の作った三天結盾(さんてんけっしゅん)の盾に対して、氷の膜が張っていやがる。その膜が上手い事霊圧の衝撃を和らげて、ダメージを軽減していた。

 えーっと、朽木が何かした風でもねェし、お前こっちから遠隔で外の武器自体を操れるのかよォ!? 明らかにお前がリアルタイムで何かやってんだろォ!

 

『ぎゃう?』

『だからそう可愛いリアクションとられてもな、オイ』

 

「――――(インパクト)、夜一さん!」

 

 おっと、今度はチャドの野郎だ。そうか、さすがにあれだけ霊圧散らして戦ってれば、残りの中級大虚の連中が「回収された」後ならこっちに合流もするか。

 

 そして後方から、チャドの霊圧を高めた右ストレートに乗る形で射出されたっぽいのは……、いやいやちょっと待てちょっと待て、何だその恰好は。四楓院夜一元隊長(ヽヽヽ)なのは間違いないが、ゲームにある猫耳パーカー衣装っつーか、ハロウィンっぽい衣装のそれから色々削ぎ落してより黒にゃんこっぽい恰好になっていやがる。

 

「はぁ――――ッ」

「おっと」

 

 しかもその拳の一撃を腕に受けて、ビリビリ来ているっぽい自分のダメージ具合を見て、なんかちょっと嬉しそうにしてて……。一護がまた若干曇ってるのか、空の色がもっと暗くなってきた。

 そうだよな、もしかしたら友達になれるんじゃ的なシンパシー感じちまった相手が、撤退する理由見つけられそうで嬉しくしてるんだもん。心境は複雑極まるよな……。頼むから水没は勘弁してくれよお前…………。

 

 そして牽制とばかりに霊子の矢が飛んで来るあたり、もうこれオールスターっつうか、ほぼ全員そろってるだろ。

 そしてそんな少年漫画的に盛り上がりそうな状況で一切ダメージを受けた様子のないスタークが、いかに規格外かっていうのを、改めて思い知らされる。いやいかに鋼皮(イエロ)が堅いからって言ったって、もう少し容赦ってモンがあっても良いんじゃないか、あいつ。

 

 そのまま夜一の連撃、石田の弓、後ろから走って行ったチャドの拳を受けても、本当に一切ダメージを受けた様子がないという恐ろしさ。四楓院元隊長も何かしら霊圧を縛ってはいるんだろうが、それにしたって並の破面ならある程度対処できるはずなのだから、「平常時最強の破面」っていうのは伊達じゃないっつーことか。

 

 もっともスターク本人は、ちょっとホクホクしてそうな感じだ。

 

「こりゃあ、有難いな。……俺がそう言うのもヘンな話なんだろうが」

「たわけ、貴様いったい何を考えておるのじゃ、破面!

 まったく、喜助は喜助で『志波の方に』行っておるし……」

「あー夜一サン、もう大丈夫そうやで? オッサンももうやる気ないやろ」

「む?」

 

「って、夜一ってあの猫! な、何がどうなって……」

「そうだよー、黒崎君。あっ朽木さん、私も反対側から持ち上げるね、よいしょっと!」

「お、おぉ……」

「す、すまぬ井上殿」

「一護、いまいち状況が読めないんだが……」

「僕もだよ茶渡君」

 

 あー、あー、お前等一斉にしゃべりだすな、場が混沌とするだろうがッ!

 そしてこの状況に収拾を付けるためにか、現れるべき下駄帽子はいまだ現れず。

 

 ただスタークだけは、パトラスがちゃんと自力で帰ったのを確認した上で、目の前の一護たち総勢6人の戦力を見て、「これなら大丈夫だろう」と呟いて。

 

「目的は達成した。……帰るぜ」

「逃がすか! この距離なら――――(たまわ)れ、天針鞭(てんしんべん)ッ!」

 

 おっと、知らない斬魄刀だぞ!?

 何処からともなく「大きな簪のような」斬魄刀を取り出す四楓院元隊長。それでスタークの死覇装の上に被ったローブを斬りつける。後退するスタークだったが、その切り付けられたところから「形状が変化し」、まるで大きな縄みたいな形になってスタークの上半身に絡まりついた。

 

『どういう能力だ? 一応は鬼道系っぽい動きしてるが……。発動条件、本人の霊圧に触れたら、みてェなのもありそうだな』

『ぎゃ! ぎゃ! ぎゃ!』

『何をそんなに慌ててるのです、子雪――――――ッ!?』

 

 そして、次の瞬間「事態が一変した」。それこそ、俺も全く予想していなかった形で。

 

 

 

 スタークが自らの霊圧で、ローブが変形した縄を引きちぎり。同時にあのローブが「抑えていた」スタークの霊圧が、一切の容赦なく解き放たれたからだ。

 

 

 

「な…………、なん、だよ………………? これ……ッ」

「これが、最上級の大虚の霊圧……!」

「まさかこれ程とはの……!」

「アホかいっ、こんなん抑えて手ェ抜いて戦ってたとか、遊んでたんちゃうんかッ!」

 

 しゃべれたのは一護、一護の霊圧を中継している朽木ルキア、四楓院元隊長に平子。

 後の三人は、言葉を続けられる余裕もなかった。ただただその「強烈な」霊圧を前に、言葉を失い、戦意を喪失しかかっていた。純粋な恐怖は、時に本人も気付かない形でその意志を曲げる。今が多分そんなモンだ。

 

 その強大な圧の発信源、スタークは一護を一瞥して。

 

「じゃあ、またな(ヽヽヽ)。…………できれば次に会う時まで、死ぬなよ。一護」

「――――――ッ、スターク!」

 

 言葉を続けるよりも先に、スタークの頭上に黒腔(ガルガンタ)が開き。その奥へと、スタークは勢いよく飛びあがり、呑まれて、消えていった。

 

 後には、当の本人が消えて未だ警戒を解けない程に、生物的な本能が警戒をとかせない面々だけが残っていた。

 

 

 

 なお、そんな表の連中と違い空気を読まない振子雪は「ぎゃん♪」と楽しそうに姐サンの手をバシバシ叩いて興奮してて、思わず顔を見合わせて何とも言えない気分になった。

 

 

 


【おまけ】

 

 

 

「……浦原、何だ今の霊圧」

「…………おそらくは()の作った実験体の一つ、ってところでしょうか」

「もっと具体的に言え。竜弦の奴に何て説明したらいいか判らない」

「いや、アタシにも判らないことの一つや二つありますからね? 実際に目にしたら『それっぽいこと』いっぱい喋れる自信はありますが」

「勘弁してくれよ……、只でさえ見て居られなかったから、自分のガキ助けるよりも先にアイツの雨竜君の救援に入ったっていうのに」

「いや一心サン、それ間違いなく…………」

「何だよ浦原」

「………………ヘタレ、ましたね?」

「――――ッ!? そ、そンな訳あるかッ! だだ大体俺だってなぁ、色々とまぁこう、考えることとかぁやることというか、言うべきことを整理したりとかこう…………、アレだ、まぁ、色々あンだよ」

「その言い訳をそっくりそのまま、黒崎サン、というか一護サンに出来るなら、アタシからは何もないッスかねぇ」

「おぅ何だお前、ケンカ売ってるのか? だったら俺もお前にケンカ売るぞ、具体的には『夜一さんのあのコスチューム』とか。絶対お前の趣味だろ」

「アタシの趣味もゼロじゃないっスけど、夜一サンのオーダーがその……。猫っぽい恰好ってオーダーはあったっスけど、それ以上に『脱ぎやすい恰好』っていうオーダーが結構厳し目でしてね………‥」

「裸族か何かなのか? あの人」

「割と小さい頃からそうッスねぇ……」

 

 その後も約二名、一護たちから離れた遠方でグチグチ言いながら、しばらくしてから「何事もなかったかのように」解散し。

 

「ば、ば、ばばば、バアアアアアアアッドスピリッツ……ッ」

「観音寺ちゃん!? どうしたのミサオちゃん!? おーい!」

 

 番組収録の打ち合わせ中、テレビ局某所でとある霊媒師が思わず椅子から転げ落ちたとか何とか。

  

 

 




※夜一さんの捏造斬魄刀については追々です
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