もし あたしが太陽だったなら
雨に沈み呼吸さえ忘れた一輪の花を
光や温かさで励まし育めるように
誰かの背を押してやることができただろうか
「……あー、また雨か。ランニングできないし、面倒!
一応傘持ってきてるけどさ、まったく最近地球もどうかしてるよホント」
有沢たつきはそんな独り言をつぶやきながら、折り畳み傘を開いてぱらぱらと振り始めた雨にぼやく。
早朝、といってもまばらに学生たちが行きかう時間帯。クラスメイトの顔はまだ見当たらず、特に何かあるわけでもない。いつも通りの日常といえば日常であるが、ふいに目の前を過った「黒々とした蝶」に、一歩足を止める。
まるでこちらの存在など気にも留めていないような、そんな蝶。あと一歩で鼻先からぶつかるタイミングだったこともあり、やや不自然な体勢で止まらざるを得なかった。
「痛ってて……、ちょっと腰痛めた。まったくついてないじゃんかっ」
傘を上に掲げながら、ぐぐっと擬音がつきそうな風に伸びをして腰をさするたつき。振り返れば既に蝶の姿はなく、普通に運が悪かったのだろう。誰に当たり散らす話でもないと思い、ため息をつくたつきであった。
「一護のやつも、何か最近付き合い悪いからなー。織姫も織姫で『ちょっと超能力の特訓!』とか意味わからないこといってるし。まー浅野とかはともかく、チャドもいるから大丈夫? かな? んー、浅野とか居れば全然余裕なんだろうけど。アイツ、一護には凄い重いし……。
って、それを言ったらあんまり人の事いえた話でもないか」
はぁ、と再度ため息。ため息の多い日常である。
と、そんな道中。商店街のとある店の裏側、通学路ショートカットのための裏道を通った際に、少しだけ足を止める。少し視線を下にずらしたそこには、首輪で繋がれている訳でもない犬が一匹。茶系の仔犬。人懐っこそうな顔で、舌を出してへっへっへっと彼女を見てお座りをしていた。
「おう、ワンコ。元気してるか?」
また会ったなーと言いながら気安い笑顔のたつき。わんこの方は表情を変えず、しかし彼女を見上げて「へっへっへっ」と息をしていた。
「お前、最近あたしが学校にいくときよく見かけるけど、どうしたんだ? 野良っぽい割にはほぼ毎日遭遇してるし。
……ひょっとして毎日、出待ちしてる?」
『――――――――』
「って、そんなワケないでしょ! ってか。ははは……。じゃ、またな~」
ひらひらと手を振るたつきに、犬は立ち上がって尻尾を何度かふり、頭を下げる。まるでたつきの言葉にわかった上で応じているような振る舞いだが、その尾に少し違和感を覚えるたつき。
「あれ? ……ん? 茶色っぽいのに、なんで尻尾がきらきらして……、何か刺さってるのかな?
って、あ、おーい! 行っちゃったよ…………。何なんだろうあのワンコ、本当に」
きらきらと、まるで「刃物のような」何かが光っていたように見えたが、気のせいだろうと肩をすくめて、たつきは表の道へと再度出た。
また傘を傾けて肩にかかる雨の具合を調整していると。
「た~~~~! つ~~~~~! き~~~~~! ちゃ~~~~~んッ!!!」
「どわぁア!? お、織姫! どうした、テンション朝から高くない?」
るんるんステップで背後から抱き着いてきた井上織姫である。たつきの言及通り朝早くからだというのにテンションが高く、表情がだるんだるんに緩んだ満面の笑みであった。ついでに浮かれっぷりが表れているのか、はいている靴下の柄が左右逆で、ついでに首元のリボンも上下逆であった。
いや流石にそれはないだろとツッコミを入れつつリボンだけは結び直すたつき。「ありがと~!」とやはりテンションが高い織姫は、にへらっと笑ったままたつきに抱き着いていた。
「あーもう、暑い! 離れな織姫、汗疹になるじゃん」
「そんなには気にしないけど、ただ何となーく今日はたつきちゃんとベタベタしたいなー♪」
「本当にどうしたのさ織姫……。何か良いことでもあったの? 昨日。流石にそこで小躍りされるのとか、あたし友達として恥ずかしいんだけど」
「えぇ~? わかる? えへへ~、うん! ちょっとね!」
朽木さんとも仲良くなれたし~、とルンルン気分といった様子の織姫に、たつきは少し呆れたように肩をすくめる。
「朽木さん、ねぇ……。織姫あんたそれで良いの? 下手すると、一護とられちゃうんじゃない?」
「え? 朽木さん? うーん…………、その時は皆で黒崎君を囲んじゃえばいいかなーって」
「あの話まだ生きてるの!?」
「でもたつきちゃん、黒崎君のこと今でも好きでしょ?」
「違うってーの! あーもう、アレはそういうんじゃなくってーッ! 大体そんなことしたら、あたしアンタの恋敵とかになっちゃうし!」
「じゃー、皆で仲良く黒崎君を胴上げしよー!
それでー、たつきちゃんとかみんなで黒崎君をわーっしょい! わーっしょい! ってしてぇ、優勝! 優勝! きゃっ、黒崎君優勝賞金で世界一周だなんて大胆……!」
「一体今の話の、どことどこがどう繋がってその結論になったのよ、あんた……」
テンション高くボクシングの素振りをするような動きから万歳三唱、そして突然の赤面。急展開する織姫の百面相に、たつきはついていけないとばかりに遠い目をし。
「一護のやつもよく判らないんだよね。突然早退したかと思えば『真っ黒な和服』に『馬鹿みたいに大きな刀』背負って、朽木さんと一緒に走って行ったりとか」
続くその一言で、井上織姫は目を見開いて絶句した。
「たつき、ちゃん? それって――――――――」
「ん。どうしたのさ、織姫?」
何と言うことのないように言ったたつきだったが、織姫は少し逡巡してから、やがて力の抜けた笑みを浮かべた。
「……そうだよね、私よりたつきちゃんの方が、黒崎君と一緒にいた時間って長いから」
「な、何の話!? 別に幼馴染ってだけだし。
ただの幼馴染だし。…………あの雨の日に、何もしてやれなかったような」
空を見上げて、どこか遠くを睨むように。それでいてどこか辛そうに、寂しそうにするたつき。織姫は隣を歩きながら、そんな彼女の横顔をじっと見てる。
「だから、雨ってあんまり好きじゃないっていうかさ。色々偉そうに言ってたくせに、結局肝心なところでアイツの心ってのを、守ってやれなかったし」
「たつきちゃん…………」
「って、朝っぱらから湿っぽい話してゴメン。織姫じゃないけど、元気出していかないとね――――って、むぎゅ?」
唐突に織姫が、たつきを抱き寄せ抱きしめ、その頭を撫でる。身長はほぼ同じくらいだが、わずかに織姫の方が高い。
「大丈夫だよ、きっと。それに私は雨って好きだなー。雨があるから、野菜さんも元気にダンス出来るんだよ?」
「何でダンス……」
「悪い事ばかりじゃないよ、たつきちゃん。お兄ちゃんだって、きっとそう言ってくれると思う」
「織姫、でもお兄さんって…………」
言葉につまるたつきから離れ、傘を適当にさしながらその場でくるくる回り。満面の笑みを彼女に向けて、織姫は笑った。まるで何てことない日常の1ページのように、しかしその笑顔はどこか太陽を連想させ。
「ボハハハハハーッ! スピリッツ・アー・オールウェイズ・ウィズ・ユー!! 心はいつでも私たちと一緒に、なんちゃって」
「…………いきなり良い感じのシーンでドン観音寺やんなってさ」
「ううん、だから観音寺さんなんだよー。――――お兄ちゃんだってきっと、『会えない』けれど。それでもきっと傍で見守ってくれてるって思ってたから、私は頑張ってたし、お兄ちゃんに良い所見せたいなーっていうのがあったからさ」
「………………」
「たつきちゃん?」
織姫のそのセリフを聞き。一瞬表情が死んだたつきは、ふと頭痛を感じ自分のこめかみのあたりを軽く押さえ。
「……な、なんでもない。大丈夫だから、うん」
「本当? 大会近いんだよねー、何か無理してたりとかあったら――――」
「あー大丈夫大丈夫、そっちは楽勝のはず。よっぽどアレな事でもされない限り」
ニヤリと笑って二の腕を叩き、力こぶをアピールするようなたつきに、織姫は「そっか」と元気に笑い返し。
「じゃあ頑張って、目指せ世界一周!」
「だからその話ってまだ続いてるわけ!?」
どうにも締まらないが、これも含めて日常というやつであった。
――――その頭上の先で、まるで「引戸のような」何かがガラリと開き、黒い和装の人影がいくつか現れていたこと以外は。
※ ※ ※
「月牙、天衝ォ! って、おわッ!?」
「何をしておるか、一護!」
地面を這わせた自身の斬月、その放った霊圧の余波でバランスを崩した一護。後方からルキアが走りながら、その一護の月牙で半身を切られながらなお一護に襲い掛かろうとする
「破道の四、
手元から放たれる霊圧、それに乗り飛ぶ白い稲光。しかし虚の外殻たる髄を貫くには至らず、思わずルキアは舌打ちをした。
「くっ……、やはり
「お前、戦う準備が出来てないなら出てくるんじゃねェよ」
「たわけ! 貴様の斬月に
「いや別に逃げちゃいねーだろ!?」
そう言いつつ「ほらよ」と斬月の側面を差し出す一護。しかしそれを前に、ルキアが手を伸ばすよりも先に当然攻撃が入る。肩に彼女を担ぎ上げて退避する一護に「もっと丁寧に運ばんか貴様!」とぷりぷりと怒るルキアであるが、そう言いつつも斬月の方へ向けて手を伸ばす。
「舞え、
その解号のようなものと同時に、斬月の
それを見計らいルキアを肩から「投げる」一護。そして「当たり前のように」振子雪から降り注ぐ霊圧と霊子を使用して足場を固め、空中に留まるルキア。同様に周囲の霊子を固めて足場を作った一護と、眼下の巨大虚を見下ろす。
「っていうか、何だあのゴリラの出来損ないみたいな虚」
「『ゾンビランペイジ』と伝令では来ているな」
「ゾンビ要素どこにも無ぇじゃねーか」
「それは私も思うが……。まあ良い、早い所片づけるぞ」
「応!」
ルキアから後方に離れる一護。と、その場で舞を舞うように一回転し、切っ先の軌跡を一周させ円を作るルキア。舞い終わったのを見計らい、一護は斬月に霊圧を込める。
「初の舞、月白――――!」
「――――月牙天衝ォ!」
その作り出した円形の「氷結結界」を投げるように斬り払うルキア。その軌跡へ向けて、発生した氷をさらに斬り払うように、斬月を振る一護。
果たして何が起こったかと言えば、一護たちの言った通り巨大なゴリラ型モンスターのような虚、その全身が一瞬で凍結し。同時に月牙天衝の霊圧の刃が、そこに一気に亀裂を作り出し粉々に砕いたということだ。
遠距離から相手を凍らせる空間を投げることのできるルキアと、斬った事物の切り口から霊圧の奔流を走らせることのできる一護。
ある意味コンビネーション技として完成されているのだが、お互い特に気にした様子もない。当然、激励しあうようなこともなく、当たり前のようにそのまま地面に下りた。
「むぅ……」
「どうしたルキア? 何かあったか?」
「いや、妙だな。ここ数日でようやく『共食い』の出現率こそ減りはしたがこの虚も霊圧の質が何か違うような…………」
「…………どうやら僕の出番はなかったようだね」
そんな一護たちに声をかける青年が一人。包帯こそ取れたが若干手の動きがぎこちない、石田雨竜だ。
と、一護が気軽に「何だお前も来たのか」と声をかける。「止めてくれないかな、呑み友達でもあるまいし」と言いながら眼鏡のつるを押さえてから、ふと動きを止めて周囲をきょろきょろ見回した。
「一体何をしておるのだ、あやつ」
「夜一さんが居ないか探してるんだろ? ありゃ、まあな……」
つい先日、スタークを始めとした大虚による襲撃から一週間程。いつの間にか姿を消した平子はともかく、一度情報共有と事情説明をという流れとなり、浦原商店まで案内された際の出来事である。
『……ね、ね、猫がしゃべってるううぅぅッ!? い、一体何がどうしてどうなって……!?』
『だよな! やっぱりそういうリアクションになるよな!』
『嗚呼、俺もトラウマになりそうなくらいびっくりしたぞ、一護! 石田!』
浦原商店につくやいなやいつの間にやら猫の姿に戻っていた夜一に対する、石田のリアクションである。これには一護とチャドも共々納得して妙に仲良くし、夜一からは「お化けを相手にしておるくせにワシみたいなのは怖いのか、コヤツら」と呆れられていた。
「貴様ら、けっこう
「いや普通はビビるだろルキアお前…………」
なおその時にお互いの能力やら「改めての」自己紹介やらの時だが、他にもルキアが人間の状態の一護から
「そ、そんなことより! 井上さんと茶渡君たちはいないのかい?」
「あー、普通に授業に出てるよ。どうあがいても早退するしか無いからな、日中に虚が出てきたら。俺達だけで何とかなるくらいだったから、ちゃんと勉強した方がいいだろ」
「確かにその通りなんだけれど、君からそういう話を聞くとちょっと変な気分になるね」
「こやつ、見た目がこれだから『まともな男子高校生』的イメージ戦略とやらを立てているのだぞ? 石田」
余計なこと言うんじゃねェ! と怒る一護。石田も石田で「バケツの中に一滴だね」と肩をすくめた。
「いや、普通に『焼け石に水』とかでいいだろ、何でわざわざ英語の方で言ったんだよお前」
「……意外と詳しいんだな、黒崎」
「親父だってアレで専門の洋書とかフツーに読むし、俺だって小さい頃から、けっこうシェイクスピアとかそのまま読んでたからな?
…………って、そういう話はどうでもいいけど、お前も早退か?」
「ああ。だけど勘違いしないでくれるかな、一応は病欠扱いにした」
「俺より性質悪いじゃねェか」「それは良いのか貴様……?」
「病院に行ったのは本当だからね。……というより君の家に行った後の帰りだぞ、黒崎。この手の調子を診てもらいに」
「マジで!? えっ何でウチの親父の患者になってんだよ。確かお前の所の実家って――――」
「じ、事情があるんだよ事情がっ! 全く。…………仲良く出来るなら、お父さんは大事にしろよ、黒崎」
「あァ? お、おぉ…………」
いまいち何故それを言われたのかわかっていない一護だが、石田雨竜はどこか遠い目をして、そして深くため息をついた。
「………………あっ、そういえば夜一さんで思い出した。ルキア、結局あの人とか何なんだ? 下駄帽子もそうだけど」
「夜一殿については知らぬ。浦原は……、素性は判らぬが、尸魂界と現世との仲介業者のようなことをしておる者だ」
「仲介業者ねぇ」
「死神は出来高制なのか……?」
「歩合制といえ歩合制と。もっとも今、私は尸魂界に帰ることができぬから、浦原を仲介してあちらの品を購入したりといったことをする他ないのだが」
「あっちの品って何だよ」
胡散臭げな眼を向ける一護に「聞きたいか? ふふん」と一護と石田双方にニヤニヤと笑うルキア。漫画ならデフォルメされたギャグ顔である。石田もおそらく漫画なら眼鏡で視線が見えない形で、何とも言えない胡散臭げな視線を向けていた。
「見るが良い、これが我が十三番隊隊長・浮竹十四郎殿が描かれた冒険活劇! その名も……『双魚のお断り』!」
「朝のテレビ小説かよッ!?」
「朝の連続テレビ小説か!?」
思わずツッコミを入れた一護と石田。「何を言う、冒険活劇だ!」と堂々と表紙に描かれた二匹の魚と右手の絵に、達筆風に印字された作品タイトル。「瀞霊廷通信協賛」など側面に書かれていたり、著者近影に思いっきり白髪の男性(年齢不詳)が描かれていたりする。
それに続けて「瀞霊廷通信(※金髪美女グラビア表紙)」やら「女性死神協会会誌(※わかめらしきキャラクターが表紙)」やら、以前のコンの時のソウルキャンディ以外にも出るわ出るわ謎の妙に卑近な本やアイテムの数々。一護や石田のそれまで持っていた尸魂界に対するイメージが、色々と崩壊した。
「な、何なんだ尸魂界って……? あんなにこう、なんつーかコッチみたいな感じなのか? グッダグダじゃねーか!?」
「師匠からはもっと殺伐とした殺し屋集団のように教わっていたが、一体これは…………? 何があったというんだ!?」
「貴様ら息ぴったりではないか」
言葉こそ違うがそっくり、まるで血縁関係者のように似たリアクションを取り続ける一護たちに、ルキアはため息一つ。
とりあえずこれ以上の虚の追加はないと判断し、石田と別れた一護とルキア。道中、生身の肉体のまま一護は遠い目をする。
「なぁルキア。結局、平子って何なんだ? 斬魄刀持ってたってことは死神なんだろ? 結局今日学校来てねーから事情聞くのも無理だし。アイツどこ住んでるんだ?」
「教師に聞けば教えてもらえぬのか」
「俺、そっちはイメージ戦略あんま上手く行ってねーからなぁ」
最近早退がちだし色々あったし、と肩をすくめる一護。
「というよりも、私に色々聞くでないこのたわけ。
わかっていたら既に何かしら説明しておるわ。……全く。こちらに来てからと言うもの、判らないことばかりでどうにかなってしまいそうだ」
振子雪含めてなというルキアに、しかし一護はそれで話を終わらせなかった。
学校のバッグの中から取り出した仮面――――鼻から上の、砕けた「虚のような」それを見て、ルキアは血の気が失せる。
「前にも一回なんか出て来てたけど、何なんだコレ」
「あ、ああ……。その割れ方は、おそらくあの
「ふーん。スタークの剣からねぇ。そういや平子も何か『付けてた』なこういうの。
……ちょっと虚みたいな仮面だけど、意外と縁起が良いものだったりすんのか――――」
「――――っ、一護。それは、私が預かろう」
「えっ、何でだよ。せっかくだしお守り代わりにでも――――」
「ならぬ。口答えをするな一護」
言葉につまる一護。鬼気迫る表情のルキアを前に、そこに込められた只ならぬ気配に応じざるを得なかった。お、おう、と。言って差し出したそれをひったくるように奪うと、ルキアはその仮面をコンビニのビニール袋に入れてからバッグにしまい込む。
「平子のことも気になるが、仮面のことなど忘れろ。これは貴様にとって――――――――」
「――――何や、ごっつい嫌われとるな。でも『仮面』と『オレ
「「ッ!?」」
背後からかけられた声に、驚き振り向く一護とルキア。
そこには、ピラミッド遺跡の写真のような絵がプリントされたシャツ姿な平子真子が、帽子をくるくる指先で回転させてニヤニヤ笑っていた。
「お前、なんで今日学校来てないんだよ平子? 色々知りたいことがあったっていうか」
「アホ、判っとらんのか『色々来てる』のが。下手に今見つかるとヤヤコシイ話になるから、わざわざ色々気を遣って隠れとるんや」
「来てる? あー、悪ぃけど俺って死神代行だからな。死神の事情とか、あんまり知らねェんだ」
「おー、それは意外と好感触? まー、せやな。そろそろ時間的にアレやし、話し込むんならファミレスにでも入ってメシでも食いながら……って、えーッ!? ど、どどど、ないなっとんねん、ルキアちゃんそれッ!!?」
「うわー!? だから止めろルキアお前それッ!? 井上くらいしか喜んで無かったじゃねーか!」
平子を前に普通に会話をしようとしていた一護。そんな彼の胸部にルキアが横から「左手を突っ込んだ」。触ったとか、服の下に手を入れたではなく、手品か何かのように一護の心臓部を貫通しているような、そんな絵面になっている。
その状態のまま「舞え、
「いや、いきなり何やってんだよルキアお前……?」
「良いか一護、私が平子に斬りかかっている間に貴様は自宅まで逃げろ。あそこならば何かあれば私より強く『護る者がいる』」
「いやだから、何でそんな敵みたいな感じで……。よく判らねーけど、庇ってくれたんだろ? あの時は。それに斬魄刀持ってるし、死神の仲間なんじゃ――――――――」
「――――死神? ハァ、吐き気がするわ」
「ッ!」
一護の、本人は知り得ない「不用意な発言」に。思わず平子は霊圧を解き放った。スタークにこそ及ばないが、おおよそ以前のルキアの霊圧よりもはるかに上のものである。それこそ、ヘリファルテことパトラスくらいならば容易に倒してしまえるだろうそれを、一護は明確に識別できた。
どういうことだよ、と。一歩後退した一護と警戒を解かないルキアを見て、ため息をついてから平子は笑った。
「……まー、せやな。どうせ護廷十三隊だったら爺さんとか眼鏡とかアレなこと吹き込まれるのが来るだろうし、こっちで色々言ったところで意味ないわな。
それだったら一つだけ。
「逆? それって…………ッ!」
ようやく合点がいったらしい一護。そんな彼に見せつける様に、右手に斬魄刀、左手に仮面。
「――――オレは虚の力を得て仮面を被った
言ったやろ? 仲良うしてくれって。オレとお前は――――」
同類や、と。
それだけを一護に向けて言い残して、平子真子はすぐさま「霊圧を爆発させる」ような足踏みをし、その場から姿を消した。