メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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描写の関係で若干前回より時間が進んでる? 感じの始まりですが、あしからずです。例によってアレンジ注意…
 
メロディは皆さんお好きなものをおかけください笑


#026.獣と化かした

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫か一護。いくら回復があったとは言え――――」

「だ、大丈夫だ。サンキューな井上」

「う、ううん! ぜーんぜん、大したことじゃないよ!」

 

 浦原商店。ルキアや恋次たちに導かれるまま、たどり着いた先は以前門前まで来ていたこの謎の店。駄菓子屋らしいというのは店内に置かれた商品から判断できたが、こんな場所に一体何があるのかというのは一見してわからない。

 もっとも「浦原はいるか!」と子供従業員? に確認したルキアの声に、ゆっくりした足取りで奥から出て来た見覚えのある下駄と帽子の男を思えば、そのあたりの疑問は消えたのだが。

 

「おやおや皆サンお揃いで。……とりあえず店の奥、開けますかね。井上サンの能力を使うにしても、多少はスペースが必要でしょう」

 

 そういった計らいから奥の客間へと通され、そこで彼女の「双天帰盾」による回復の恩恵にあずかった一護。傷は治れど霊圧までは「完全に」戻っておらず、眠りについてから目覚めるまでそれなりに時間が経っている。既に夕暮れ時であるが、律義にこの場の面々は立ち去らず、一護の起床を待っていた。

 そういったこともあり、彼が未だ本調子とは言えないことをルキアはひしひしと感じていた。故に一護自身の認識の確認だったが、強がったように言う彼には処置なしである。

 なお余談だが、未だに一角たちはこちらに来ていなかったりする。伝令神機に通信が入っていないので、恋次も放置はしているが、それはそうとちらちら時々確認していたりもした。

 

「しっかし便利なもンだなァ。回道みてェな奴か?」

「……回道とは何だろうか? 阿散井さん」

「へっ、恋次で良いぜ。一護のダチなんだろ? ケツが痒くなるぜ」

「判った」

 

 所謂高等呪術の類であると教えられた一護たち。ルキアは「どうだ恐れ入ったか!」と胸を張り、織姫は「朽木さん、すっごーい!」と目をキラキラさせている。チャドは空気感に言葉を挟めず、「マジか?」という顔をする一護に「実際、霊術院じゃ成績良かったんだよアイツ」と何ともいえない顔で一護にこそっと教える恋次。

 

「おやおや、どうやら顔合わせは済んでるみたいッスね?」

「浦原」

 

 と、そうこう話し合っているうちに戸が引かれ、店主たる浦原喜助が現れる。後ろに立つ巨漢、独特な髪型をした眼鏡の男へ「じゃあ鉄裁サン、皆サンにお茶菓子でも」と声をかける。「畏まりましたぞ店長……!」と、その身体の大きさにしては妙に素早くちゃぶ台の上にお茶菓子の入った器を数個乗せ、ペットボトルの緑茶を注いだ。まだ季節柄夏なので、冷えたものを出してくるあたり配慮が効いている。

 

 ちなみに先ほどルキアに応対した子供たち二人は、店の表の方から奥の方をおっかなびっくり覗いているようだった。

 

「さて、と。表の営業も終わりましたし、長話も大丈夫ッス。

 本日はどういったご用件で? 大虚関係の部隊についてでしたら、十番隊の隊長副隊長サンたちが遅れているという連絡は受けましたが……」

「貴様も理解しているだろう、先ほど町の方で何があったかを。知りたいのは情報だ」

「お、オイ、ルキア……」

 

 恋次が何故かルキアに微妙な表情を向けるが、「む?」と不思議そうな表情を返される。一護たち残り三人もルキア程ではないが「何故あんな顔をしてるのか」と疑問符を浮かべているが。

 

「――――阿散井殿を始め日番谷先遣隊の方々は、現世における活動援助を当商店から負担されているため、頭が上がらぬのですな……! 賃貸手配を始め義骸、服装、なにより『環』の為替などなど……!」

「わー!?」「きゃっ!」「ムッ……」

「中々のリアクション、有難うございます……!」

 

 三人の背後からぼそっと囁いた鉄裁の言葉に、その音が妙に近い所から突然発されたことにびっくりして三者三様にリアクション。ちなみに動きは小さいが、チャドが一番目を大きく見開いてるのでおそらく最もびっくりしている。

 閑話休題。

 

 浦原は浦原で帽子の位置に手をやり、影に隠れた目を片方だけ見えるように調節してから「ウーン」と悩むような声を上げる。

 

「一応、アタシ共の方でも感知はしましたし、夜一サンが今ちょうど調査中ッスけど、ちょっと情報が足りないってところッスかね。霊圧は死神をベースに『刀獣』の系統もあるとくると、おおよそ絞れますが……」

「……梅針(ばいしん)って、そう名乗ってた、アイツ。紅染月(くぜんげつ)梅針」

 

 一護の言葉に、目を丸くする浦原。ちなみにルキアや恋次も、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。当然、現世組は置いてきぼりだ。

 

「朽木さん? 恋次君?」

「ど、どうしたンだよお前等」

「……何か心当たりがあるのか」

「紅染月と言うと、その、なぁ……」

「死神やってりゃ嫌でも聞き覚えはあるっつーか……、ってそうか、一護は野良の死神だから、そういう歴史みてェのは知らねぇのか」

 

「――――黒崎サンは、斬拳走鬼という言葉を聞いたことはありますかね」

 

 浦原の確認に、一同の視線が集まる。なお当の本人は、饅頭を二つに分けて片方をつまみながら話している。緊張感の欠片もない。

 なんとなく半眼で見る一護に、彼は軽く笑い返した。

 

「いや、何回か聞いたことはあるけど…………、なんか斬月たちのあっちの方(ヽヽヽヽヽ)でも言われたし」

「ま、黒崎サンが聞いたことがあるんでしたら、斬魄刀も普通に言葉だけは覚えてますかね。

 斬は斬術――すなわち剣術、斬魄刀の扱いを。

 拳は拳技――すなわち格闘、死神風に言えば白打を。

 走は走法――すなわち瞬歩、黒崎サンはまだ使ってないアレを。

 鬼は鬼呪――すなわち呪術、死神が扱う鬼道やそれに類する術を。

 これらの総合をもって死神の力量とする、というのが死神における学校、通称『霊術院』での扱いになります」

 

「へぇ~、死神って学校があるんだ~」

「死後の世界も学校……、世知辛いな」

「結構気にすンだな、お前」

 

 冷汗をかいてるチャドへの恋次のツッコミはともかく。

 

「そのうちの斬術、剣術についてですが、現在その学校で教えているものは『紅染百式(くぜんひゃくしき)』、すなわち紅染月流百式斬術という流派がベースになっています」

「紅染月って、それじゃあアイツ……!?」

「いやー、開祖とかそういう話ではないみたいッスけどね。でも関係はあるんでしょう。

 アタシも夜一サンの実家でそういう資料はちょっとだけ見かけたことがあるくらいッスけどねぇ……、さてアレは何だったか…………」

「浦原、貴様本当に何者だ?」

 

 漫画ならばギャグテイストに半眼となっていそうなルキアのそんな確認に、これまたギャグテイストな風に扇子を広げた上で「嫌だなぁ、アタシはしがない駄菓子屋店主ッスよ?」と笑う浦原喜助。

 

「まァ、アタシのことはともかく。

 本件については、先ほど『名指しで』こっちの方に連絡がありました。曰く『王属特務』――――零番隊(ヽヽヽ)案件だと」

「「なッ――――――!」」

 

「「ゼロ番隊?」」

 

 途中途中、およびこの場に雨竜でもいれば多少なりとも死神側の部隊構造などについて考察をもとに確認が入ったろうが、いかんせん情報不足と事前の(思考)準備不足である。なんとなく「隊が一杯ある」くらいの認識にはなっている一護だが、詳細はいまいち理解できていなかった。

 

「そして名指しについてなんスけど、実は黒崎サン。『貴方もその一人』だ」

「お、俺? ちょっと待ってくれ、俺って別に尸魂界とかそういうの全然、関係が無ェっていうか――――」

 

「――――お主にその認識がないのだとしても、向こうはそうでもないということじゃろう」

 

 困惑する一護に、聞き覚えのある声がかかる。す、と引戸を少しだけ引いて室内に入って来た、小さな来訪者。織姫が「夜一さん!」とかけた声に「ウム。こんばんは、じゃな」と軽く返した。

 

 そしてその口に咥えられている白いヒラヒラしたものは…………、引戸の奥に続いており、「くっ、離してくれこれは……! ちょっと、君たち悪戯は止めるんだ!?」とこれまた聞き覚えのある声。

 なんとなく顔を見合わせた一護たち(恋次だけ状況を理解していない)。とりあえず代表で一護が扉を大きく開くと。

 

「へっへーん! 別に死神でも何でもねーけど、面白ぇからちょちょいとなーっと!」

「だ、駄目だよジン太、嫌がってる……」

「わー!? 止めてくれ、せっかく手作りの衣装だっていうのに、そんな安物の塗料で出来たペンなんかで色々描いたら――――」

 

「何してンだよ、石田」

 

 眼鏡を押さえながらマントを従業員? の男の子の方から守ろうと必死な石田雨竜に、思わず思わず半眼で一護は見下ろしながら確認した。「くく、黒崎!?」とやや裏返った声の雨竜。

 なおその間に、女の子の方が男の子の方を引きはがすことに成功。直後入り口の方から飛んできた、最近雨竜の周りにいる素顔を見せないメイド(本日はホッケーマスク)が彼を立ち上がらせ、シャツの上に羽織っていたそのマントを脱がせ、なんなら髪型を整えたり眼鏡を調整したりと世話を焼いていた。

 ありがとうございますナナさん、と彼女に軽く頭を下げた後、くいっと眼鏡を持ち上げて一護たちを見る雨竜。子供たちを睨むと、いたずら小僧の方は「やっべ!」と駆け足。女の子の方は頭を下げて彼の後を追い、その姿に思わずため息が出た。

 

「それで、一体何がどうしたっていうんだ黒崎」

「お前……、それで直前までのことリセット出来ねェからな?」

「う、うるさいぞッ! それよりそこの猫は一体何なんだ、また何か無理やり僕をこんな『死神の霊圧』が多いような場所に連れて来て――――」

 

「すっごーい! メイドさんなんて私、初めて見たよー! 現代にも残ってるんだね、わー! わー! エプロンかっわいーい! そっか、最近のメイドさんはカチューシャにホッケーマスクなんだー!」

「……いや、流石に違うと思うぞ」

「また一護のダチか? 結構多いな。っというか、ん……? 何かあの女の髪型、どこかで…………」

「何を言っておるのだ、恋次」

 

 なお石田の登場より、他の大半のギャラリーは謎のメイドの方に注意が集まっていた。ちなみにそんなメイドのナナは、口頭で会話せずエプロンのポケットから取り出したメモを使って筆談で応答している。『職務上の理由です』とマスクについて回答したり、コミュニケーション自体はしっかりと取っていた。

 

「あぁ、あまり話しかけないでくれないか。彼女、僕の父から『死神の関係者とは話すな』っていうのを雇用条件の一つにされているらしくって…………」

「あ、そうなんだ! ごめんなさい……」

「――――」

 

 お気遣いなく、というメモに「良かったー!」と素直にリアクションする織姫。そして先ほどから彼女のお下げな髪型を見てどこか訝し気な恋次。ルキアはルキアでそれに何か嫉妬心を出す訳もなく(?)、漫画ならデフォルメされたギャグテイストな半眼で見ていた。

 

「名指しはされておらんが、この町においては関係者じゃろうて。

 何、仲間外れは可愛そうという年寄りの気遣いじゃよ」

「どういう気遣いだッ! 大体、仲間外れも何も、死神と滅却師は――――」

「喜助、その饅頭の半分になっているのをくれ」「あっハイハイ……」

「無視かッ!?」

  

 ひょいひょいと人の隙間を縫って、ちゃぶ台の下をくぐり浦原の膝の上に乗った後、そのまま饅頭を要求する夜一。

 当然のように彼女(?)の口へと運んでから、その頭を撫でる浦原。少しだけくすぐったそうにしてから、夜一は一護たち五人を見る。

 

「さて、その様子じゃと梅針についての情報がないといったところじゃな」

「あらまぁ、本当に夜一サン知ってるッスか」

「ウム、儂も記録でしか知らぬがの。心して聞くと良い」

 

 紅染月梅針。元、護廷十三隊・十一番隊の第二席。

 

「今から300…………、いや、400年くらい前の記録になるかの――――む?」

 

 と、そう話していると浦原商店に「地獄蝶」が舞う。一同そろって息や唾をのむ音。メイドのナナのみ微動だにせず、目の前に現れた「穿界門(せんかいもん)」の引戸を見る。部屋の奥、入り口とは反対の壁の側に現れた扉がゆっくりと引かれ、開かれ。

 現れたのは赤毛の少女。片方をモヒカンのようにやや適当にまとめている独特な髪型だが、全体的には可愛らしい。もっとも「適当に羽織った」死覇装が彼女の所属を現しているのだろうが、それにしてはルキアたちが「誰だろう」という顔をしているのが気になるところ。

 

 彼女の登場に「おやぁ、もういらっしゃいましたか……」と肩をすくめる浦原を一瞥すると、彼女は懐に手を入れる。突然の登場とその挙動に一同警戒するが。

 

「な、何だ…………、ビデオテープ?」

 

 困惑する一護に、彼女は掲げたVHSのテープを見せ乍ら左手を腰に当て、半眼で言った。

 

燧ヶ島(ひうちがしま)メラ。零番隊第三官西方神将“刀神”の親衛隊の一人。

 黒崎一護とかあんたらにメッセージ持って来たんだけど、テレビとかデッキとかないの?」

 

 いやいきなり過ぎンだろ!? というか誰ですかっ!!? などなど一護や石田あたりからツッコミが入るものの(チャドは冷汗)、そのあたりは「まーまー落ち着いて~」と浦原が流し、鉄裁が言われた通りに再生機器の類を準備する。なお織姫は穿界門を見たのが初めてだったのか「ほへ~」と魂げた様子だ。

 そして死神二名については。

 

「ルキア、あいつ今“刀神”って……」

「い、一護! こっちに来いッ!」

「あァ!? 何だってんだ一体――――」

「ば、馬鹿野郎ォ! 聞いて無かったのか、刀神だぞ刀神! 刀の神て書いて刀神!」

「な何そんなビビってンだ恋次……?」

 

「――――あの者は『全ての斬魄刀を作りし神』、すなわち唯一(ヽヽ)の斬魄刀の作り手たる者の遣いだと言ったのだッ」

 

「ッ!?」

 

 流石にここまで言われれば、一護も理解が少し追いつく。とにかくそのあたりがさっぱり理解はできないが、偉い人の遣いが来たということなだろう。加えて先ほど名前が挙がった零番隊。

 

「零番隊とは『霊王』を守る死神の部隊だ。通常、我ら護廷十三隊と関わることはない。……」

「霊王? 尸魂界って王様とか居ンのかよ――――」

 

「……皆様、再生準備が終わりましたぞ…………!」

 

 死神たちで話していたのもつかの間、鉄裁の声につられて後ろを振り向けば、オンボロ気味なアンティークそのものと言えるレベルの古いカラーテレビに、最新と思われるビデオデッキが繋がれている。そこに「HOU☆OHU☆DEN」とマジックで書かれたビデオテープを入れるメラ。

 最初にノイズ交じりの暗い画面。メッセージと先ほど彼女は言っていたか。知らず、思わず目を瞠り集中する一護。

 

 流れて来た映像は……………………、ピンク色のライトだった。

 

「はァ?」「ぬ?」「これは……?」「……?」「えっ?」「何がどうなってやがんだ?」「おやおや……」「何じゃこれは」

 

 でかでかとした看板「鳳凰殿」の文字とともに、多くの着飾った美女たちが画面に映る。暗い部屋はピンク色のネオンとミラーボール照明で怪しく順々に照らされ、その中で美女たちは各々リズムに合わせてノリノリで踊っている。

 その中でカメラの映像が徐々に移動していき、ある男の前で止まった。赤と青のスポットライトに照らされた男は…………、独特のゴーグルにモヒカン、色黒の肌を持つDJ的なスタイルをした何者か。なんなら応援団長的な黒いロングジャケットをまとい、マイク片手に音楽を調律していた。

 

『Hey! Do you know? you know?

 The secret behind the Zanpakuto yours♪

 Hey! do you know? you know?

 The original form of Zanpakuto yours♪

 I'll tell it only to you.

  Yes!So, I am the No. 1 ――――』

 

 ぴっ。

 メラが半眼になりながら早送りのボタンを押す。

 

「「「って今の何!!?」」」

「ディスコかキャバクラにしか見えなかった……」

「そ、尸魂界って――――すっごい面白そうだね朽木さん!」

「ち、違うぞ井上!? 流石にその勘違いはいくら何でも問題があるぞッ!」

 

 一護、恋次、雨竜渾身のツッコミやら何やらはともかく。ブツブツと「御屋形様また変なビデオにダビングしやがって……」と言いながら早送りして映像が途切れ、今度こそ真面目な調子に戻るのかと居住まいを正す一護たちだったが。

 

 

 

『十・九・八・七・六・五枚! 終い(四枚)に三枚、二枚屋王悦(Oh-etsu)! 万緑一紅(ナンバーワン)斬魄刀クリエイターのチャンボクがァ、君たちにスペシャルな任務(ミッション)を言い渡しちゃうぜ、YOROSHIKU☆』

 

「「「って結局アンタかッ!!?」」」

 

 

 

 先ほど謎の歌を歌っていたDJらしき人物が、死覇装をまとった状態で先ほどのテンションのままに映像に映り、思わずといった風にツッコミが入る。

 どうやら最後まで締まる気配はなさそうだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「なぁ真子、結局『ひよ里』とか呼ばんであたしだけ協力させとんの、理由くらい聞いても良かあ?」

「理由言ったって、そのまんまや。敵討ちや、敵討ち。ま、そんなに私怨は重要視してへんけどなぁ」

「復讐とかそういうの、あんまり関係ないんだよな。第一部世界にいきなり第三部のDI〇が現れるみたいな話で」

「あたし、そんなジャンプジャンプした例え出されてもわからんわ」

「えっ!? J〇J〇は現世の基礎教養じゃねーのかっ!?」

羅武(らぶ)、悪いけど俺もやわ。せめて六部で例えてくれへんと」

「くっ…………、この場に拳西さえいれば……!」

 

 梅針たちを追跡していた平子たち三人だったが、見失った後は特にやることもないらしい。そのままコンビニ帰りという風に、弁当やらおにぎりやらサンドイッチやらスパゲッティやらを複数持ち、三人仲良く(?)帰路(?)に就いていた。

 なおリサと呼ばれた少女は、男二人の物言いに半眼になる。

 

「あんま無意味に護廷十三隊に干渉すんのはアカンって、そーゆー方針やあね? そう皆で話し合ったやん。無駄なこと(だだくさ)してリスク増えるんは本末転倒やあらすかん」

「アホ、無駄っちゅーこともあらへんわ。梅針っちゅーんは…………、ある意味『最初の』仮面の軍勢(ヴァイザード)みたいなもンやからなぁ。色々総合すると」

「えっ?」

 

 ちょいと話したるわ、と。平子は少し上を見て記憶をたどる。

 

「あー、『こっち来てから』百年くらいは経ったか? せやったら、400年くらい前か。

 当時フェニーチェっつったか? そーゆーものごっつい最上級大虚(ヴァストローデ)の破面がおったんや」

「は? えっ? えっ? エロメガネの仕業?」

「時系列おかしいだろ、リサ……」

「天然モンや天然モン。当時も今も意味不明やけどなぁ。

 で、それ倒すために五代目剣八を始めとする十一番隊とか、俺とか羅武のおった五番隊、七番隊とか、他にもほとんど全軍でガチンコしたんや。恐ろしいことに瀞霊廷目前まで侵入された上で。

 あの日は、今でもよう覚えとるで――――」

 

 

 

『卍解、雲意占紫電菩薩(くもいとしでんぼさつ)……、ッ! 姉上ッ』

『これしかないのでしょう……、十六崩熾水鏡(じゅうろくほうしすいきょう)――――!』

 

 

 

 平子の脳裏に思い起こされる、赤毛の姉弟。弟は自らの隊の長であり、天井から幾条もの斬魄刀を垂らす菩薩。しかしそれでもかの狐とも孔雀ともつかない砕けた面をした虚には対応しきれず、やむなくその姉が特殊な神器を使い――――。

 

「結局、封印しか出来ひんかったんや。ただその時の戦闘の霊圧が、どうも良くないものだったらしい。その場であのゴリラ(ヽヽヽ)の斬魄刀は具象化して出て来て――――おまけにソイツは虚になっとった(ヽヽヽヽヽヽヽ)

 

 平子の説明に、リサは理解が追い付いていないのか「いきなりやあね、何で虚になったんか説明ないん……?」と眉間のあたりを摘まんで聞き返した。

 

 

 

 

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