例によって独自解釈やら設定やら色々注意です
『ほ~れ、高い高い』
『ぎゃーん! ぎゃーん!』
『あー! ずるいぞ狒々王! オイラも高い高いするんだい!』
『見た目で言えばどちらも子供だろうに。ほら、貸してやるから落ち着け、オロチ王』
『よーし! せーの、高い高ーい!』
『ぎゃーーーーーーーーー、ん?』
『ふ、
思わず「たーまやー」と言いたくなる感じで空に昇っていく蛇のガキと振子雪。猿女の方は「両肩に」「大きな狒々の腕」を形成し、それを使って伸縮自在に振子雪を持ち上げ高い高いしてたンだが、蛇ガキの方は自分の尻尾を使って地面(ビルの壁面)に叩きつけ、その勢いで滅茶苦茶飛び上がって高い高いしやがってる。猿女よりも高く飛び上がったは良いが、なんならそのままバランス崩して「た、助けてーッ!?」となってるあたりはご愛敬か。
やれやれとため息をつきながら、一応「瞬歩」でそっちまで回って、振子雪だけ回収。地表(ビルの壁面だが)の猿女に目配せすると、相分かったと言わんばかりに狒々の腕で雑につかみ取った。
ぶーと不満そうな蛇のガキにかっとなって口やかましく注意する姐サン。猿の方も面倒臭くなったのか、ガキの方を鎖でがんじがらめにして放置すると、そのまま姐サンの前に転がして「煮るなり焼くなり好きに灸をすえてくれ」とその場を退散。こっちの方に来て、一応は俺とかオッサンとかに頭を下げた。
『いや、済まぬの。オロチ王の方は、卍解すると完全に子供となって分別がつかぬ』
『それ多分、合体してる時は身動きとれねェからお前のご機嫌とって動いてもらうくらいのアレなんだろーが……。いやンな話じゃねぇな。何しに来たんだお前等』
蛇のガキだけじゃなく振子雪まで正座させて説教かましてる姐サンをちらりと見てから、猿女の方は肩をすくめて苦笑いして言った。
『遊びに来た、というのが真ではあるが……。我らの使い手がどうにも「殺し合う気がない」らしいとなったのでな。暇になってしまったのだ』
『暇になった?』
『…………もとより殺し合うつもりはないのだろう?』
オッサンの言葉に「そういうことではなく、だな」と言いながら、猿女はビル壁面に映る「現世の」「一護と恋次の戦闘」の映像を見る。いまだに斬魄刀を解放せず、そして言葉に偽りなく一護の面倒を見ている阿散井恋次の姿を。
『最初は色々理由を付けてボコボコにしようくらいには思っていたのだが、少し接して考え方が変わってしまったようなのだ。完全に幼少期の仲間たち、あるいは弟分の面倒でも見るような感覚になっている』
『アンタ達の強さはともかくー、使い手のオレンジ頭のガキは全然ド素人だろー? だから恋次もフツーにケンカしながらって感じになって、詰まんねーんだよー』
『ぎゃんー、ぎゃんぎゃー』
『そこ、よそ見をせず聞きなさいッ! 振子雪も!』
『は、はいッ!?』『ぎゃぶッ!』
説教を無視して会話に混じって来た二人を叱り飛ばす姐サンはともかく。いや、実際問題真面目に恋次が一護に戦い方を教えるっつーんなら、助かるっちゃ助かるところなンだが。一護の霊圧レベルからすりゃ「紅染百式」よりは「火輪斬術」の方が流派的に合ってるとはいえ、今の今までまともに戦い方らしきものを教わってきて無かったからな。
それこそスタークとかが「本気」だったら、一発で斬り殺されてるくらいには危険な橋を渡っていた。
だがそんなこっちの事情と違い、相手方は不満そうだ。猿女は「まあ、アレの言うとおりだ」とため息をつく。
『わしらはもう、現世にくると決まってから数日の間それこそずうううううっと! 恋次の早い所朽木ルキアと再会したい、再会したい、会話したい会話したい近くで見たいと言う情念を延々と注がれ続けてきていたのだッ! 嗚呼ゾワゾワするッ、告白の一つもしていないくせに我らが使い手ながら女々しいことこの上なかろうがッ!
大体、貴族入りを止めて欲しかった心理を汲み取れず送り出して寂しい思いをさせたくせに今更なんのわだかまりもないように接しようと言うのが色々と問題があるではないか! 女心に疎いから袖白雪すらこっちに靡くと言うにッ』
『そこのケツデカ女の言う通り、言う通り!』
『なんだとこのエロガキがッ!』
『少しは学習なさい、客人ッ! もっと長引きますよッ!
大体、いくら自らの半身であるとはいえ、相手を無意味に侮辱する必要などないでしょう!』
『うっさい、
あっ。完全にヤバい地雷を踏んだ蛇のガキ。一瞬空気が凍る。なんなら振子雪すら「ぎゃ……」と押し黙って、恐る恐る姐サンを見ているくらいだ。猿女も頭を押さえてため息をついて、蛇のガキは「えっ? えっ?」と困惑気味。
まあその後、数秒もかからず氷漬けになる蛇のガキだが…………。流石に「卍解状態の」斬魄刀を呼び出して脱出するみてェな、ちょっとどうかと思うようなことまではしなかった。ちょっとビビった振子雪が空飛んで逃げていくのを、急いで追いかける姐サン。
それを見送りながら、頭を抱える猿女だった。
『オロチ王も一体どうしてああなるのやら……。あぁ済まない、話を戻そう。
まあそんな恋次が、お前たちの使い手を見た時に何を考えるかだが、想像はつくか?』
『恋敵か?』
『オッサン、もうちょっとオブラートに包めよ……。百は超えてるとは言え、青少年の純情な感情ってヤツだぞ…………(※元妻帯者視点)。
いや実際は全然違ェけどな? でも、まーなんか釈然としねェってのはわかるぜ。つまり、あー、アレか? だからもっとガチンコで斬り合いするつもりだったと』
『そういうことだ。斬魄刀も解放して、お互い死力を尽くしてという気概くらいはあった』
それがアレだ、と。……瞬歩で遊びまくって一護を翻弄して「どうやンだよそれッ!」と一護にキレられてるのを「ヘヘッ」と笑い飛ばす恋次の姿。井上織姫が「すっごーい! 忍者みたいッ!」とか言ってるが、それこそ四楓院夜一とか二番隊隊長の本気はその比じゃねぇンだよなぁ……。
『まあフラストレーション溜まったってのは理解したが、ンで実際どうするよ。こっちで俺たちは俺たちで斬り合ったところで、大して面白くも無ェと思うぞ?』
『そうか? やはり動いた方が色々スッキリすると思うのだが。話しているだけだと、どうしても溜まっている不満の根本の解決に繋がらぬのでな』
とりあえず目的のアタリはつけた。要は一護と恋次が本気で斬り合わないもんだから、斬魄刀として不満があったから愚痴りに来たし、あわよくばこっちもこっちで斬り合ってしまえという、そういうノリだ。自分の欲求にストレート素直なのは、それこそ嫌というほどに「虚」らしさを感じて嫌になる。直球で虚な俺が言えた話じゃねェけど、斬魄刀は使い手の影響を大きく受けるとはいうが、それはそれ、これはこれだよなァ……。
と、氷が砕けて蛇のガキの方も出てくる。ガキは猿女の横であぐらをかきながら「尻尾を使い」頭の高さを調整しつつ、俺とかオッサンの方を見て目をキラッキラさせやがる。
『なーなー、難しいことはどーでもいいから、さっさと
『あー、もしかしてよくぶっ壊されたりしてンのか? あるいは全然言う事に耳傾けねェとか』
『『…………』』
顔を見合わせて背け合う猿と蛇の二人に、思わず「なんか悪ィ」と謝っちまった。
いやほら、原作からして蛇尾丸って咬まs…………、強敵に対して割と簡単にぶっ壊されてる印象あるし。そこのところ無謀に突っ込むわ、壊れかけでも斬りかかるわ。なんなら斬魄刀が好戦的でも、案外理性的に言うこと利かせて不満の解消もしねェし。
ついさっき出て来てた「刀神」二枚屋王悦に言わせれば「愛が足りない」となる。
まァ基本的に一護と似たような所もあるし、自分がどうにかしないとって思い立ったら視点がそこで固定されちまって、横とか前後とかに目を向ける余裕がどっかに行っちまうタイプだろうからなァ……。で、二人とも結構態度が悪いし、妙なところで素直じゃねェから話がこじれると。
原作のオッサンとか
なんだか可哀想になってきて、思わずオッサンの方を見る。「繋がった影」を経由して「どうする?」と思念を送れば、問答無用で送り返すか? みてェなちょっと過激な思念が送られてくる。いや、それをすると後々で微妙に一護と恋次も仲悪くなりそーだから、拒否は難しいっちゃ難しいんだが……。俺達の関係っつーのは、つまるところ「潜在意識」というか「本能」での仲の良さに直結しちまいそうだし。
悩んでいるこっちを見て少し思案すると、猿女は振子雪を追いかけている姐サンの後ろ姿を一瞥して。
『そうだな。もし戦ってくれると言うならば、お前が袖白雪を孕ませた事実をわしらは恋次のやつに告げ口せず黙っておこう』
『よーしやるかーっ!』
『…………』
唐突な俺の変わり身に「そう来なくてはな」と猿女はくつくつ笑う。蛇のガキはうずうずした感じで好戦的だ。
でオッサンはといえば何とも言えない目でこっちを横目に見て来てンだが、いやこりゃ仕方ねェんだよ。原作とか今の関係性踏まえると、最終的に周り周って一護が曇ることになりそうだし、な。うん。
というか、どっちかっつーと一護よりもルキアよりも恋次の方がダメージデカそうなんだが、いいのか蛇尾丸、お前らそれで……。
そんなこっちの状況をよそに、現世の方は一護へ恋次が「まず基礎を叩き込んだ方が良いかぁ?」と一護と追いかけっこしながら白打で殴りかかっていた。
※ ※ ※
せっかく戦うならっつーことで、俺達は阿散井恋次の方の精神世界にもお邪魔した。
蛇尾丸たちいわく「重力がヘンでなんか戦い辛い!」とのことだ。まァそのあたりは一護が捻くれてる思春期真っただ中だっつーのが大きく影響してるから、正直スマン。
で、オッサンは「境界」をあっちで開いておくっつーことで留守番、姐サンと振子雪と俺の三人(人?)で一緒に出掛けるっつー流れだ。……一応こうやって「直接的な精神世界の移動」っつーのは、俺たちに関しちゃオッサンの「滅却師の力」を使って疑似的にやってる感じみてェだから、オッサンはオッサンで一護の中を出る訳にもいかないらしい。世界同士の境界を曖昧にすることで、本体がどっち側にいても斬魄刀の機能を失わせないようにするっつー感じか。
蛇尾丸はそこのところ適当に考えて来てたっぽいから、まァオッサンがいないで「無理やり」来たりした場合、斬魄刀が浅打になるとかそんな現象が起こりかねねェって訳で、そういう意味じゃ結構危ない綱渡りだったんだが。こっちは逆に俺も姐サンも現状「一護との結びつきが強すぎる」から、こうして「影」を介してもらわねェと出入りすら出来ないっつー感じだ。
『子雪、家族三人での外出は最初で最後かもしれません。存分に楽しみましょう』
『ぎゃーぶん♪』
…………姐サンのこのテンションについちゃ、もうノーコメントだ。振子雪の手を引いてニコニコ引率してる感じで、完全に保護者っつーかお母さんっつーか。ついでに振子雪の手を俺に握らせて、丁度良い感じに家族っぽい並びにしやがってる。
ほら見ろ、こっちに先行して歩いてる蛇尾丸のうち、猿女が何とも言えねェ顔してンぞ。
で、まァ辿り着いた先は山奥みてェな場所だった。とにかく夕暮れで、世界がなんとなく橙色して、そンでもっていたるところの木が適当に切り裂かれていて、丁度良く斬り合えるような開けた場所が広がっている。
夕暮れ、ねェ…………。そういやルキアと仲間の墓参りして死神になる決心したとか、あれも夕暮れ時だったか。
『
当然のように振子雪は姐サンが確保して、観戦。
蛇尾丸たちと相対する形で、とりあえず俺は「斬月を抜く」。姿形は本来俺とオッサンとが想定していた始解の方、つまり原作でいう
蛇尾丸との能力相性的には捩花か
とりあえず両手で構える俺を見て、蛇ガキの方はニヤニヤと笑う。
『狒々王とフツーに話してた感じより大味っぽいなぁ、それ!』
『さァて、そりゃどうかね』
『見た目で測れぬ力を持つのも我ら斬魄刀の性質であろうに、オロチ王。
ではゆくぞ。まずはわしから――――咆えろ、蛇尾丸』
そう言うと同時に蛇ガキの方の輪郭が解けて、そのまま霊圧の塊となり斬魄刀の形に。嗚呼よく見慣れた、あの妙な形の蛇腹剣へと姿を変えた。漫画で最初に見た時はそりゃもう意味不明な形状してンなと思ったが、実際間近で見てみるとなおのこと意味不明な形状だ。恋次の眉毛並みに意味不明な形状してンぞ。
『何か今、馬鹿にしなかったかお前!』
おっと、何か察したのか斬魄刀から蛇ガキの声が聞こえる。特に答えず肩をすくめる俺と猿女。と、ふと気になって聞いてみる。
『そういやお前ら、卍解使わねェのか? さっき肩から生えてた複腕っつーか、アレだろアンタの卍解』
『そうだな、「わしの担当分」はアレだ。だが…………、流石に卍解まで至っていない斬魄刀を相手に使うと言うのも、大人げないだろう』
『そーかい。だけどなァ――――』
言いながら俺は全身に霊圧を回し、その霊圧を「大外へと排出しながら
おそらく尸魂界でもここ百年前後では見たことのないだろう現象に、姐サンや蛇尾丸たちも目を見開く(蛇の方はわかんねェが)。そんな連中にニヤリと笑い、俺は瞬歩――――。
『――――こっちは容赦しねェぞ?』
『ぬッ』
瞬間的に目の前に現れた斬月の刃を、とっさに受ける猿女。体格通り力強く、「霊圧の」「黒い炎」でブーストしたこっちの打ち下ろしを普通に受けきった。……いや体格通りじゃねェな。微妙に手ごたえが重い。斬魄刀由来の固有能力か何かか? 押し返されかけていやがる。
『
月牙を飛ばす代わりに斬月に霊圧の炎を纏わせ、単純な出力を引き上げる。こっちが押し返されそうになってる猿女の腕力に対抗して、このブーストでむしろ押し切るように――――。
『舐めるな!』
『おっとッ』
猿女はあえて蛇尾丸を「延長し」、鍔迫り合いのバランスをくずしたこっちを蹴り飛ばして距離を取る。そのまま空中で二度こちらに中距離斬撃をかけるが、それらを斬月の側面で往なして構え直す。
三度の剣戟を終えた蛇尾丸は縮み元の長さへ戻り、それを見越してこっちも再度瞬歩――――今度は距離を放す。そして霊圧を込めた斬月を、底部の鎖を軽く持って一護よりも「気楽に」振り回し。
『
捩花でいう
『その妙な斬術を止めい!? 初見が多すぎて雑なケンカにならないではないかッ』
『そーだそーだ! 狒々王けっこう細かいこと苦手なんだから、少しは配慮しろー!』
『何だとこのガキッ! ええい、こうなれば――――』
『わー! やめろー、腹いせやめろー!』
猿女はまた蛇尾丸を延長させると、その場で腕力の限りぶんぶんと無理やり振り回す。
オイオイああいう使い方あったのか……? 軽く竜巻が巻き起こって、円形の月牙がそっちに吸い寄せられていく。蛇尾丸を狙った大量の月牙はそうしてからめとられ、適当にそれを無視すると猿女は蛇尾丸を投げ――――。
『――――そっちがその気なら、今度はオイラだぜ! 吼えろ蛇尾丸!』
空中で蛇ガキと交代するように、蛇尾丸の立場が「入れ替わった」。猿女が蛇尾丸へと変化し、今度は元に戻った蛇ガキの方がそれを手に取る。
そうすると蛇ガキはこっち同様に瞬歩を使って姿を消す。……消すって言ったって霊圧で丸わかりなんだが、要するに背後に回って上から斬りかかってくるらしい。微妙にさっきとは立場が逆になってるなァ。
『
『はァ!?』
ンでもって一番びっくりしたのはそれだ。始解状態の「伸ばしていない」蛇尾丸を打ち下ろしてくると同時に、その飛び出た刃一つ一つに霊圧がこめられ。斬月で受け止めたのと同時に、その刃一つ一つから「月牙天衝みてェに」霊圧が放出され爆裂。
それ始解で使えンのかよ!? 恋次全然使ってねェじゃねえか原作!!? あっいや、でもなんか鬼道系の技っぽいし、恋次本人だけだと扱うのに不安があるから教えてねェとかはありそうだなコレ…………。
霊圧の炎のアイドル状態も動揺したせいか思わず散って、空中で「尻尾だけを使い」器用に瞬歩で飛び掛かってくるガキのヘッドバットをモロに腹に喰らっちまった。
ぶっ飛ばされる。ぶっ飛ばされるが、こちとら元とはいえ死神歴はそれこそ
蛇尾丸は二人に戻り、こっちを見てニヤニヤと二人そろって笑っている。してやったりって感じなのは、こっちの「炎輪斬術」がよっぽど想定外だったっつーことか……。
いや、こっちの流派についちゃ300年以上前に「ほぼ」初代剣八によって根切りにされたり中央四十六室から霊術院のカリキュラムから外すように言われてたりすンだが、紅染百式よりは一護の戦闘スタイルにゃ合ってると思ってるので、そのうち何かの方法で教えられねーかオッサンと相談中だったりする。……流石にもう皆殺しされるほど「昂っちゃ」いねェだろうからな、うん、そう思いたい。
まぁンなこっちの事情はあっちには関係ねェから、とりあえず苦笑いだけ返しておくか。
ついでといっちゃ何だが「担当も」ある程度は察した。
『なるほどなァ。そっちの猿女の方が蛇尾丸の「伸縮」と「身体能力の強化」、蛇のガキの方が蛇尾丸の「切れ味」とか「霊子操作」みてェのを司ってるって感じか』
『…いい加減に狒々王と呼べ狒々王と』
『ガキって言うなー!』
文句が返ってくるのはご愛敬だ。ただ俺の言葉自体には否定をしないので、大体は合ってるっつーことだろォな。しばらくこっちに文句を付けた後、二人そろって顔を見合わせてため息をつく。何っつーか、妙に悲哀が漂っていやがる。
『……なぁ狒々王、アイツ今日ほぼ初対面じゃんか? なのにどーして恋次よりちゃんと洞察できてンだろな…………』
『……恋次は馬鹿だからなぁ。いかに獣の姿が普段だとはいえ、オロチ王の方から霊子の弾を放てば少しは察するかと思っても無駄だし…………』
どよーんとしてグチグチ愚痴りまくっていやがる。こういうとアレだが、なんとなくシンパシーを感じるっつーかなァ……。なんとなく同情的な目で見ちまうのは、一護に対してもどかしさをずっと感じてる俺とかオッサンにダブるからか。
とりあえず続きやるか? と、まァむしろ気晴らしくらにはなるだろうとこっちもヘンな気分になりながら声をかける。蛇尾丸たちはハッとした感じで俺に向き合い、今度は猿女の方が刀を手に取った。さっきと違って、今度は片方が消えていない。つまり斬魄刀だけ追加で出現しているような状態だ。
『さっきよりは本気になった、っつーことか?』
『まあ、そういう見方も出来るな』
『片方ずつ入れ替わりながら戦う方がケンカっぽいけど、なんかイライラしたから一緒に出ることにしたぜ!』
『お、おォ…………、そりゃ、アレだ。ドンマイだぜ。俺にも覚えがある』
『『『…………』』』
今度は俺も含めて漂うどんよりした空気。姐サンの声は聞こえねェが、なんとなく呆れられてるような気がする。
気を取り直して、今度はオロチの方が首から伸びる鎖を振り回し、斬魄刀を持った猿女そのものを投げ縄みてェに投擲。なるほど、ついでに蛇尾丸の刃にも霊圧がまた乗ってるから、なるほど「両方とも出ていれば」「両方とも」能力を行使できるっつー算段か。
だがまァ、そう簡単には行かないぜ、なにせ――――「離れていても」「俺とオッサンは」二人で一つの斬魄刀。
『斬月・抜刀――――』
鎖に指をかけ、刀身の峰に触れながら軽く引き抜き、剣と鞘の斬月――――原作で言えば「打ち直された」後の二本の斬月へと姿を変えさせる。いや、本当久々に抜いたから姐サンあたりはこの「基本能力」忘れてンじゃねェかね。
流石にいきなり二刀流になったのには一瞬驚いたみてェだが、それでも猿女は構わず蛇尾丸を振りかぶり、横一文字に斬りかかる。
それを「俺の方の刃」で受け。
『ぬ…………?』
その受けた状態の刃に纏わせた月牙を「置き」。空中で固定された輝く霊圧の斬月(月牙)を前に、しかし蛇尾丸を引けない猿女。少しでも鍔競り合いを崩せば月牙に押し切られるのがわかるからだろォが、俺はその金色の月牙に「オッサンの方の鞘」の切っ先を乗せて、なぞり「描き」――――。
『――――
『なん、だと――――!?』
『えっうそだろ! わー! くんなくんなッ!?』
そのまま重なった一つの月牙。さながら月牙
これがオッサンと俺が、最初に決めた「この」斬月の使い方。
月牙は飛ばすだけじゃなく書く、あるいは描く。その軌跡の形によって、いくつか異なる効果を発揮するように仕上げたのがこの斬月の能力、なんだが…………。
『……霊圧自体は手加減したから、大丈夫だよなオイ』
それこそ某雷女を相手にした原作の一護じゃねェが、思ったよりも威力がデカくて思わずビビる俺だった。
いや、蛇尾丸の霊圧は普通に残ってるから大丈夫なのは判ってるけど、絵面が完全に「無月」っぽいそれになっちまってたからさァ、オイ。地面に亀裂入ってるし。
あーあー姐サンが下の方で俺に向かって怒鳴ってら…………。とりあえず頭だけ下げたまま、しばらく空中で胡坐をかいて現実逃避する俺だった。