ようやく山田正式?登場…(なお名乗りなし)
「――――ハッハッハッ! まったくよォ、相変わらず現世はつまらない所だなぁオイ。せっかく『死神』を見つけたっつうのに、歯ごたえの欠片も無ぇときやがった。
でも、霊子が薄い割に『濃い』匂いもしていやがるし、よくわからねぇな」
「文句を垂れるな、ヤミー。俺は一人で良いと言ったはずだ。着いてきたのはお前だ。俺一人で充分の任務だ」
「そうは言うけどなぁウルキオラ。騒ぎ起こしておびき出すって作戦、お前無理じゃねぇのか? 性格的に」
「そんなことはない」
「いや、だってわざわざ『あの外套』を用意していたし、全然目立つつもりもなかったんじゃ――――」
「そんなことはないと言っただろう、ヤミー」
「おぅ怖ぇ……。へーへー、スイマセン、スイマセンっと」
「くぅ、あ…………」
修理工事中の駅前の一角にて、一人の小柄な死神を前に、二人の男たちが並んで見下ろしている。
片方は色白の肌に痩躯。頭の左半分に悪魔のシルエットを砕いたような装甲なのか面なのかがついている。
一人は浅黒い大男。筋肉質な肉体に、後ろに流した独特の髪型が特徴的で、こちらは顎に骨のような仮面を装着している。
「それにこの死神は、回復系の技を使っていた。おそらく戦闘用に訓練した死神ではないのだろう」
「かーっ! くだらねぇ、ザエルアポロのところの連中みたいなものか。
じゃあせいぜい、他の死神をおびき出すためのエサになってもらおうか――――」
「くっ……、さっきの赤毛の子を回復させたので、いけるはず……!
満たせ、
小柄な死神、どこかなよなよとした声の彼は、斬魄刀を振りかぶってヤミーと呼ばれた大男へと斬りかかる。
その刃から放たれる霊圧は、しかしヤミー背後、ウルキオラと呼ばれた青年の放った「黒い閃光」と激突し、刃から迸った赤い霊圧もろとも相殺!
愕然とした青年を見て、ヤミーはニヤリと嗤った。
「何だよ、やれば出来るじゃねぇか」
「先ほどまで使っていなかったんだ、何かしら制限があるのだろう」
「そうかよ? じゃあもう無理ってことか」
「おそらくはそうだろう」
「あ、朱色瓠丸が、あんな簡単に……」
愕然とする青年。腰が抜けてしまった彼に、後方から「彼と全く同じ顔をした」「ファーストフード店の制服」を着用した誰かが「花太郎様、ぴょんっ」と思わずといった風に声をかけていた。
「魂吸しようにも、『あの人』から『無駄に町の魂魄を減らすな』って言われちまってるしなぁ。生かさず殺さず、とか無茶言うぜぇ、な」
「だから俺一人の方が効率が良かったと言っているじゃないか――――いや、そうでもなかったようだ」
「あ? 何言ってんだ。
まぁ良いか、とりあえずこのヒョロガリを一発ぶっ殺してやれば、ターゲットも来るかもしれねぇし――――――――」
「――――我に返れ、
青年めがけて、手元に黒い霊力を集めて放とうとしていたヤミーだったが、突如コンクリートの地面が砕け、足元から大量の刃が放出される。
とっさに「霊圧の移動を感じさせない」形で高速移動し後退したヤミーとウルキオラ。
土中から現れたのは、現在一護たちが追っているかの死神、梅針であった。
梅針に庇われる形になり、小柄な死神は慌てているのか声がどもる。
「あわわ、あな、あなたは……、何でっ!?」
「よぅ、状況は『俺の斬魄刀』経由で大体わかったが……。中々やるじゃねぇか。流石、卯ノ花の姐さんの所の隊士だぜ」
ニヤリ、と獰猛な顔にたがわぬ笑みを浮かべた彼は、今度こそはっきりと死神を庇うような立ち位置で、拳を構える。その振る舞いは、さも自らの仲間を護るための行動のようにも見え、それがますます青年の死神を混乱させた。
一方のヤミーたちの方はと言えば。
「今の何か『ゾワゾワする攻撃』…………。オイ、ウルキオラッ! コイツか?」
「嗚呼。自らと一体化する斬魄刀。大柄、そして霊圧に
…………間違いない。そいつが『最優先回収対象』だ」
「そうかよ、やっぱり俺が付いてきて良かったじゃねぇか――――
クールながらもどこか呆れたようなウルキオラと、喜色を浮かべたヤミー。
その拳を相手に、梅針は当然のように正面から殴り返す。
拳と拳、相乗した霊圧に対して、梅針の拳からは「裂けるように」現れた無数の刃が、ヤミーの腕を貫く。
「うおおおおッ! 腕が、テメェこの野郎……!」
「
両手の拳から撃ちされる無数の刃。それに紛れて梅針本人の拳もまたヤミーへと遅いかかる。
時折斬魄刀へと手を駆けようとするヤミーだったが、梅針の位置取りや攻撃のタイミングがその隙を与えない。
たまらず「霊圧を感じさせない」歩法でもって瞬間的にその場から消えたように後退するが。
「――――
「なん、だァ!?」
ヤミーが現れる先を見越してか、梅針の腕から射出されたものは先ほどよりも速度は劣るが量が多い。それこそ突き刺さった地面で、重なり合い、折り合い、花開くように、巨大なまきびしのように。
それへと向けて思わず直進してしまったヤミーは、右手に黒い光、虚閃をまとって殴りかかることで、ギリギリ事なきを得た。
ボロボロの右腕を押さえながら、今にも叫び出しそうな顔をするヤミー。
そんな彼に、どこか気安くウルキオラは声をかける。
「苦戦しているなら代わるぞ」
「うるせェウルキオラ! コイツ、そんなに強くないはずだろ! 苦戦なんてする訳がない」
「やれやれ。だから
……だがそれはそうとしても、不可解だな。死神」
「確か
苦笑いするように肩をすくめる梅針。
そんな彼を見て、ウルキオラは一度だけ目を閉じて、見開く。
「代われ、ヤミー。今のお前だと『解放しても』勝てない可能性が高い」
「あぁ? 『最強の俺』よりもコイツの方が強いってか?」
「お前の怒りは、この程度で強く揺さぶられるものじゃない。なら、俺が出るべきだろう。
幸い『刀剣解放』については『三分間だけ許可が下りている』」
「……何をするつもり、だ?」
どこか、ウルキオラから登る霊圧に冷汗をかく梅針。ちらりと後ろを見て、あの死神がいないことを確認し、少しだけ安心したように息を吐き。そして改めて眼前を見ると。
ウルキオラと呼ばれた彼は、腰から斬魄刀を抜き、片手で梅針の方へと向けて構えながら。
「
「――――ッ!」
そして、ウルキオラから放たれた「雨のような」水しぶきがごとき黒い霊圧に、梅針は一瞬目を瞑り、そして大きく見開いた。
「何だ、この霊圧――――――――」
一方、一護達と死神のグループもまた、その霊圧を前に足を止めてしまった。
恋次の震える声に、一角たちすら反応することが出来ない。
先ほど虚の霊圧に混じり、梅針の霊圧を感じた死神たちだったが。その最中、戦っている虚の霊圧で「感知能力」全てを塗りつぶされた。
そしてそれは当然、一護たち現世組も。一護ですら感知能力が弱いとはいえ、その膨大な霊圧を前に強く揺さぶりをかけられた形である。
いつかのスタークの霊圧の方が、大きさで言えばより大きいが。あちらにはこれほど、刺すような棘々しさは無かったはずだ。
「く、黒崎くん……」
「…………ッ」
井上織姫の声に、震えながら、しかし再び走り出す一護。
おい待てと続くルキアだったが、足取りは先ほどより重い。
そしてたどり着いた駅前の一角、ファーストフード店の手前。この間チャドと一緒に立ち寄ったその店の手前で、どこか見たことのある容姿をした死神がいた。容姿はどこかで見覚えはあるのだが、それが誰なのかということは不明である。どこかで見たことがあると言うのは間違いないのだが……。
「あわわわ!? は、早いところ恋次さんたちに……って、わーっ!?」
「し、死神!? まだ居たのかよ、尸魂界から来てる奴って…………。いや、そんなことはどうでもいい、お前、梅針ってどこにいるか知ってるか!?」
思わずといった風に声をかけた一護に、青年は息をのむ。反射的に自らが来た道を見て、それが一護に答えを示していた。
「ありがとな、アンタ、えっと…………」
「あの人は…………、特別任務で封印、無力化って言われていましたけど、それでも……、それでもきっと、死神なんです」
「…………」
とっさに名乗るよりも、思わずといった風に言葉を口にした青年の死神に、一護もまた言葉を飲み込む。
「だから……どうしようもないんでしょうけど、今は、あの人を助けてあげてください! 死ななければ、僕が治せますからっ」
「…………わかった」
交わした言葉は少ないが、それで一護は走り出す。そして、路地を抜けて大通りに出た丁度そのタイミングで。一護すら感じていた「巨大すぎる」霊圧は消え。
「ジャスト三分間」
「律義だなぁ、ウルキオラ」
「くそ…………、まだ、こんな形で死ぬつもりは……ッ」
白い死覇装を纏った二人の男たちと、上半身裸となり、傷だらけとなった梅針がそこにいた。傷口には細い刀の刃が這っており、それが梅針自身の防御力でも底上げしているのだろうか、うごめく刃と刃がこすれる嫌な音が響く。
咄嗟にバッグを探る一護だったが、そこでようやく今日、コンを持ってきていないこと、そしてルキアを置き去りにしてきたことに思い至る。
あまりに急いだせいで、色々な情報が頭から抜け落ちていたのだ。
「見ているだけしか、出来ないってのかよ……!」
いや、それでも何か出来ることがあるはずだと。肉体に縛られていては未だに使えないはずの霊力を絞りだそうとするように、まるで斬魄刀でも構える様に手を重ねて、意識を集中させる。
……当然のように何も出てくるわけではない。朽木ルキアが使っていた
だからこそ。
「――――
一護の都合も、梅針の都合も、ウルキオラたちの都合も何もかもを無視して、上空から一人の少年が斬撃を繰り出す。
上空から放たれる、氷の竜その息吹。おそらくは斬魄刀を解放した結果なのだろうそれを前に、一護たちは一瞬動きを止める。
氷結領域は梅針を中心に、ウルキオラたちの方へと伸びた。
舞い降りた少年は――――死覇装に白い羽織りを纏った白髪の少年は、ちらりと一護の方を見ると、何かを投げて寄越す。
「お? おおおおッ!? い、いきなり何だよテメェ……って、コン!?」
「コゴエル……オレ、コゴエル、コオル、最近こんな扱いばっか、俺が一体何をしたっていうんだ…………、
「日頃の行いが悪いんじゃねェか、それ……、って、いや普通に謝っとけよお前」
というかブラとかするほど色々あンのか? などなど思わず律義にツッコミを入れてしまった一護であるが、朽木ルキア本人がいれば一発殴られること必須な失礼発言を、少年の死神は肩をすくめて流す。
「状況は不明だが、早い所それを使って戦う準備をしろ、
「ッ!? って、子供! 何でコン持って来てんだ、お前……、いや何か言えよ!!? 状況がさっぱり判らねェんだよ!?」
ちらり、と再び一護を見て。目を細めて、ウルキオラ達の方を睨み直した少年。
この場に来たら既に梅針が瀕死の状態、そこでいきなり現れた謎の少年死神に、色々と情報不足感のある一護は混乱必至だった。
一方、ウルキオラたちはウルキオラ達で、全くの無傷とはいかなかった。……ヤミーだけが。
「……おいウルキオラ、聞いてねぇぞあんなガキの死神! 『虚もどき』の死神を捕まえて持って帰って、それで終わりじゃなかったのかよ」
「気を抜きすぎだ、ヤミー。……フッ、右腕が傷ごと凍って、良い保存状態になったんじゃないか? 少なくとも、捥ぎ取れる心配はないな」
「うるせェ!」
少しだけ皮肉気に言うウルキオラに、凍結した右腕を振り回しながら恫喝するように叫ぶヤミー。とはいえお互いに険悪な空気はなく、これはこれで仲が良いということなのか。
なお全身氷漬けになった梅針はといえば、そちらはそちらで「全身から」刃を伸ばし、氷に亀裂を入れて破壊し無理やり脱出し。一護の方を見て、どこか疲れたような笑みを浮かべた。
※ ※ ※
『ぎゃー、がるるるるるるるるる……!』
『落ち着きなさい子雪、はしたないですよっ』
『ぎゃんッ!』
氷輪丸の竜を見て何故か吼える振子雪を、姐サンが滅茶苦茶慌てたように宥めてる。その横で悪いんだが、俺は俺でそっちにリアクションをとることができない。
何せ一護の目の前の光景は、おおよそ原作の破面編に相当するスタートであって、平子が来たからいずれ来るとは思ってはいた面子だから。
いやこのタイミングでウルキオラとかヤミーとか来られても対処できねェだろ!? というか破面の完成度を上げるには崩玉が必要だってのに、どうしてお前等完全に原作の状態で来てるんだよ! さっきの刀剣解放、完全に
姐サンの制限がかかってる今の状況で勝てる訳がねェだろ加減しろヨン様よォ! 一体何がどうしてお前そんな適当なことやってんだオイオイ……。
いや、それはおいておいて、実はその霊圧すらスタークの「あの時の」霊圧ほどじゃねェっていうのが、色々と
「ヘッ、何で俺の前に出てくるんだよ。今度こそ霊圧、全部吸いつくしちまうぜ」
「今はそういう場合じゃねェだろ。それにアンタとは、色々話さなくちゃいけねぇと思う。だから今は、そこで座っていてくれ」
「…………」
ンでもって、日番谷冬獅郎がさっきから一護の方を気にしては何もコメントしないでじろっと見るだけを繰り返しているのが、妙に居心地が悪い。コンを使って死神化した一護を見たあたりも微妙に懐かしんでるっつーか、哀れんでるっつーか、またこれ微妙な目つきだったし、ちょっと一体何があったのか気になるなコイツ。さっき明らかに、黒崎医院の方に霊圧があったしさぁ……。
『というか、阿散井たちの方には、なんか平子隊長とかの霊圧がいってるし、何だこれ……。ちょっとした地獄か? 展開がまるで意味わからねェぞ』
『ヴァイザード。仮面を被りし死神といったな。…………ところでホワイト。あのリーダー格の死神を何故敬称付けて呼んだ?』
『ん? あ、あー……、あっちはあっちで、ちょっと「生前」、な? いや、生前っつー表現は変なんだろォが』
まぁ所詮は木っ端な死神の話なのだ、あんまり具体的なエピソードがどうこうって話でもない。というか平子隊長に至っては、こっちの顔は忘れてるだろうし、俺の人格も記憶はともかくおおよそ全体の四割弱は志波海燕で再構築されてる気がするから、あんまり意味のない追及だ。
「ウルキオラ、また新しいのが出てきやがったぜ、何だあのオレンジ頭」
「…………コヨーテ・スタークの報告にあった死神か。黒崎一護、要観察対象だ」
「ッ! お前ら、スタークを知ってンのか!!?」
おっと、見知った名前が出て来たモンだから、動揺した一護の霊圧がブレる。……いやちょっと待て、出力のブレ方がおかしいぞお前。横を見れば上空(※重力がおかしいのでこの表現で正しい)の向こうで、少し曇り始めてる空が微妙に「歪んでいる」。なんっつーか、まるで巨大な嵐でも今にも生まれそうみてェな、それでいて空自体はそのままの色をしてるっつーか、端的に言って色々気持ち悪い絵面だ。
何だその感情というか、気持ちの具合は。連中が敵だってのはわかってるけど、スタークの仲間かもしれねェってのはそれはそれでストレスで、どうしようもない分の感情がそのまま霊圧の上昇率に反映されてるとか、そんな所か?
『あ、あの、我が夫、あの霊圧の気流……、私の封印って大丈夫なのでしょうか? 何と言うか、こう、妙に悪寒がするというか、今にもあの渦に吸い込まれそうな予感がひしひしとするのですが……!?』
『お、俺だって流石にわからねェよそりゃ、当然つなぎ留めるとはしてもよォ……、オッサン何かわかるか!』
『あれは、一護だけのせいではないな』
『あ?』
俺の隣に寄って来て腕を取って戦々恐々とする姐サンを一瞥してから、オッサンはどこか遠い目をして振子雪の方を見る。姐サンの説教にヘコたれることなく何故かずっと氷輪丸を威嚇してる振子雪だが、そっちはそっちで霊圧がガンガン上がって来ていやがる。
…………ん? いや待てよ、そういや完現術としての
『そういうことか! 子雪、ちょっと待て落ち着けお前!?』
おそらく正解だろうそれに至った俺は、振子雪を捕まえようと瞬歩で背後に回るが、敵もさるもの引っ掻くもの。瞬時に
『お前のその「一護の潜在能力から巻きあげてる霊圧」と「一護自身のメンタル」が妙に噛み合っちまってるせいで、なんか普段よりもヤベェくらい霊圧噴き上げてンぞ!』
『えっ!? い、いえその、振子雪!』
『ぎゃん!』
『「負けないぞ」じゃねェんだよ!!? っというか一体何と張り合ってんだテメェ!』
『およしなさい! 大体、あなたは私と夫から生まれし分け身なのですから、あの
『いや姐サンも姐サンで何訳の分からねェこと言ってンだよ!!?!?!?』
「――――
そうこうしてる間に斬魄刀を解放した一護だったが。その解放された斬月の姐サンが担当している氷の封印には、この吹き荒れる嵐のせいか「最初からヒビが入った」状態だった。
いや笑いごとじゃねェよマジでヤバいぞッ!? 対決してるウルキオラの霊圧に引っ張られて、この場で一気に虚化しかねねェ!!?