メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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外から見ると深まる疑惑

花太郎の事情説明が間に合わなかったので、そちらは次回か次々回に引き継ぎます汗


#032.懐かしい呼ばれ方

 

 

 

 

 

「そこ退けって言ってんだよおかっぱ! オラッ!」

「唸れ、灰猫!」

 

 それぞれ死神化した一角や乱菊が斬りかかる中、斬魄刀に鬼道を使用しながら抜刀し「線香花火のように飛び散る斬撃で」二人を牽制する男。

 

「だーかーらー! アホかって言っとんやッ! 今の自分らの霊圧で勝てるかどうかもわかってへんのかいッ!

 破道の三十二・第二番『黄火閃香』!」

 

 おかっぱ頭に空座第一高等学校の夏服な男子生徒だが、その特徴的なおかっぱ頭に織姫やチャドは手を出すことが出来ていない。

 つい先日も当然のようにクラスメイトとして振る舞い、現在も織姫たちの前に「これ以上は命の保証はできへんから、ここで待ちぃや」と立ちふさがった彼に。

 

「平子君……」

「ッ! 井上――――」

 

『――――スーパー(ましろ)パーンチッ!』

 

 そんな彼へ何とも言えない視線を向けていた織姫だが、突如涌いた霊圧が猛烈に接近していることを察したチャドが右腕を変化させて立ちふさがる。

 そんなチャドに、白いライダースーツをまとった「どこかヒーローものを思わせるような」独特な仮面をつけた少女が、空中で回転してから殴りかかって来た。移動に若干の瞬歩が使われている。

 その霊圧のぶれをチャドは一瞬観測できなかったが。

 

『パンチからの、スーパー(ましろ)きりもみ回転シュート!』

「ぐッ!」

「さ、『三天結盾(さんてんけっしゅん)・私は拒絶する!』」

 

 空中で「物理的に有り得ない軌道を描き」そのまま飛び蹴りに体勢に入った彼女は、空中で身体を捻り回転しながらチャドの腕を蹴り飛ばした。その威力にはチャド自身すら飛ばされ、慌てて織姫が盾を張り「壁代わり」となって、彼が遠くへと投げ出されるのを防いだ。

 

『凄い凄ーい! 仮にもこの「ましろ流」白打を受けて全然折れた感じがしないよ。拳西(けんせい)もくれば良かったのに、しっかり殴り合ってもおつりきそうだし』

「けん、せい?」

「よ、よくわからないけどカッコイイー!」

「井上!?」

『ありがとー! って、今は敵対中だった、いけないいけない』

 

 相手の敵意がいまいち見えない彼女へ、困惑するチャドや微妙に戦うモードになりきれていない織姫。なお相手の彼女も仮面越しだが陽気な性格なせいか、織姫と微妙にやり辛そうな雰囲気でもある。

 

 一方「やり辛いわアホ」など文句を言いながらも、なんだかだかんだ一角の猛攻や乱菊の「無形の斬撃」を、純粋な斬術と霊圧とで捌き斬る平子。時折遠方から鬼道を撃とうとする弓親へも、鬼道を織り交ぜて牽制する。

 互いの陣営の技量の差が伺えるところだが、ぼそりと「コロコロ形変わってくる藤丸とかよりはマシか」などと言っている辺り、平子にはまだまだ余裕があった。

 

「自分らが限定霊印(ヽヽヽヽ)しとんのも理由やけど、まだ余裕あるわなぁ」

「あらそう? でもお生憎様、『殺す気が無い』相手の斬撃なんて、全然怖くもなんともないわよ」

「アホ、今下手に戦力増減して人員入れ替えなんてなったら面倒この上ないわ。当然の処置ってやっちゃな」

「…………気に入らねぇな。俺らを足止めして、阿散井たちを通した理由がわからねぇ」

「実力だけで言えば、一角と僕のコンビの方が全然上だっていうのにね」

 

 二人の指摘に、刀を担いだ平子は嫌そうな顔をする。顎をしゃくるように歯を前に出して、視線をわずかに横に逸らし後方を意識しながら。

 

「まあ、護廷隊の死神には関係あらへん話やからなぁ」

 

 ホンマ一体どういう仕掛けしとんやあの下駄帽子、と。愚痴る平子に、三人は一様に疑問符を浮かべた。

 

 

 

 その視線の先、先行する三つの人影。

 

「ああぁッ、こ、こっちです!」

「一護と戦っているこの霊圧は、まさか破面(アランカル)……?」

「よく判らねェけど急ぐぞ、ルキアっ」

 

 線の細い死神が先行する形で、義骸のままの恋次やルキアは走る。

 例によってというべきか、やはり手持ちのバッグの中でソウルキャンディがどこかに行って発見できていない恋次であるが、いい加減ルキアが死神化しない理由を「話されていないなりに」察したのか、瞬歩を使えと言うことは無かった。

 

 事の次第としては単純で。線の細い隊士、山田を名乗った死神(恋次いわく、一応は今回の先遣隊の一人らしい)と合流した恋次達。わずかに踏み込むのを躊躇したせいで一護より動きが遅れたこともあってか、すぐにその後を追おうと気を取り直した彼等だったが。

 そのタイミングで、平子真子ともう一人を含めた「仮面の軍勢」からの襲撃を受けた。

 

 早々にチャドたちはライダースーツの少女に襲撃を受け後退、平子の放った無詠唱の鬼道(雷吼炮)により分断されたルキアたちだったが、あえて平子はルキアに視線を送り「そのまま見逃した」。

 

 結果的に彼女と、近くに転がっていた恋次のみが襲撃を逃れて一護たちの元へ向かっていた。

 

(……間違いない。平子真子、あの時のやりとりでおおよそ、私と一護とにある今の繋がりを察知したのだろう)

 

 彼の言葉を借りるならば、一護は仲間であるがゆえに虚として暴走をさせるつもりはない。

 故に、外部からその制御をできうる相手がその場にいないことの方が問題だという判断なのだろう。

 結果的にルキアたちは見逃されて現場まで急行する流れになったが。辿り着いた現場は混沌としていた。

 

「氷竜旋尾――――」

『鬼火花!』

 

「クソが、雑魚が群れたところで……!」

 

 鬼のような仮面をつけたジャージ姿の男、先日見覚えのある髪型をしたその仮面の死神(ヴァイザード)と共に、白髪の少年死神、日番谷冬獅郎とが大柄な破面へと斬りかかる。

 その一撃を凍り付いた腕で往なしつつ、虚閃を放つ破面のその霊圧に、思わずルキアは怯んだ。

 日番谷隊長! と恋次の呼びかけに、日番谷冬獅郎は一瞥するのみ。と、少しだけ視線を上空へと送る。釣られて見る恋次とルキアは、空中でぶつかり合う二つの霊圧に言葉を失う。それぞれが別な理由で、である。

 

「――――月牙、天衝ォ!」

「ム? ……ッ」

 

 空中で死人のように白い肌の破面へと、月牙を放つ一護。一護は「氷に罅の入った」斬月から漏れ出た霊圧、その吹き出た霊子の波を地面であるかのように見立て、そこを斬月で切り裂くことでその軌跡を起点に月牙を放っていた。

 本来なら地面に突き刺すなど、それこそ「本来の」袖白雪のような使い方が必要であるにもかかわらず、力業で突破しようとしているようにルキアには見えた。

 

「あのたわけ……、いやそもそも、どうして解放して間もないだろうにあんな状態で――――」

「――――どういうことだよ、ルキア」

 

 手にはソウルキャンディを掴んだ恋次が、震えた声で彼女へと確認する。どうやらようやくソウルキャンディを引き当てられたようだが、そんな喜びも忘却するほどに、一護の斬月の……、そこに埋まった「解放状態の」袖白雪の鍔は、衝撃的だったようだ。

 

「ありゃどう見ても、お前の袖白雪じゃねぇか。一体何がどうして……、ッ!? いや、待てよ? ってことはまさかお前……!」

「そのようなことは、今はおいておけ! あの虚をどうにかする方が先だ。

 舞え、振子雪(スノーホワイト)――――――――」

 

 手を翳し見上げるルキアは、しかし数秒してから瞠目する。

 

 一方の一護は、そんな彼女に気づく余裕もなく破面、ウルキオラと呼ばれていた青年と斬り合っていた。

 

(コイツ、何だ……? まるで、何も感じねェ。雲でも斬ってるみてェだ)

「…………」

 

 顔色一つ変えず、一護の斬撃を躱し、往なし、鍔迫り合いを重ねるウルキオラ。

 その無感情な視線からは、まるでテレビカメラでも向けられているような、一枚壁でも挟んでこちらを観察しているような、そんなイメージすら想起する。

 実際問題、先ほどからウルキオラの剣は受けの剣であり、彼から攻めることはなかった。ひたすらに一護の動きを観察し、霊圧を観ているばかり。

 

「斬撃に合わせて霊圧を放つ能力…………、まるで虚閃(セロ)だな」

「何、だって……?」

 

 スタークの時とも違う「相手が見えない」その戦い方に、一護は妙なやり辛さを感じていた。

 

 ウルキオラは一護から「霊圧を感じない」走法で後退すると、その場にて刀を構え直す。

 それと同時に放たれた霊圧、先ほど梅針と戦っていた時程のものではないが、それでもスタークに迫ろうかと言うその霊圧に、思わず一護は息を飲んだ。

 

「成長率の測定など、ザエルアポロ・グランツのような器用な真似は俺には出来ない。

 故に『何撃持つか』をもって、お前の戦闘力を測ろう」

「……ッ! 何を、人を実験動物みてェに――――」

 

 彼の言いぶりが気に入らなかった一護だが、次の瞬間には「目の前に現れていたウルキオラ」。その刃は一護の腹を「既に射抜いており」、勢いに負けて一護はそのまま後方斜め下、地面に叩きつけられる。

 

 一護! とルキアや恋次の声が聞こえるが、彼女らが駆け寄ってくるよりも先に、ウルキオラは倒れる一護の上に立ち、胸に指を突き付け。

 その指先に収束する閃光を前に、息をのむルキアたち。

 

「腹は『わずかに防いだ』ようだが、この距離なら仮面は張れないな」

「か、仮面……!?」

 

 はっとして自らの腹部を見る一護。そこには、いつかのスタークの一撃から自らを庇ったような、ルキアに取り上げられたあの仮面が当然のように存在していた。全体に罅の入ったその仮面の様子から、ウルキオラの刃の衝撃をわずかに緩和したのだろうかと判断できる。おそらく仮面がなければ、地面にたたきつけられるどころか「腹部に風穴が空いていた」はずだ。

 ウルキオラは、それを一護が意図的に使ったものだと判断しているようだが、当の一護からすれば寝耳に水どころの騒ぎですらない。

 

 脳裏を過る、おそらく自らに眠る虚の力だろうあの白い一護自身。

 自分よりも斬月どころか、全く異なる斬魄刀すら難なく使いこなしていたあの男。

 

 無言のまま見下ろすウルキオラの指先から、ついに霊圧が放たれ――――。

 

 

 

 ――――全く、情けねぇな兄弟。

 

 

 

 そして、一護の脳裏にアイツ(ヽヽヽ)の声が聞こえ。

 一護の視界が、ウルキオラの放つ閃光ではない「黒に染まった」。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「……ム?」

 

 放たれた霊圧の余波で、周囲に砂煙が飛び散る。砕けたアスファルトや、その下の地面が霊圧で削れたのだろう。

 だが、それはウルキオラが想定していた結果と異なる。

 

「胸に風穴を開けるつもりだったが、何故だ」

 

 放たれた霊圧は、いわば「最上級大虚(ヴァストローデ)の」虚閃(セロ)。例え特殊な加工を施したものですらなくとも、その威力を「収束して」調整したのならば、周囲に無駄な余波が飛び散る訳もない。このように煙が立つことともないはずだ。

 だとするならば、土壇場で黒崎一護は、自らの虚閃を防いだということになる。

 あの状態、痛みで反応が鈍っている様子だった彼が、あの大振りで奇妙な形をした斬魄刀を振り回せるはずはないだろう。

 

 そう考えていたウルキオラの目の前に「氷の刃」が迫る。

 

 咄嗟に左手を突き出し庇うウルキオラだったが、それと同時に刃が刺さった手先が凍結。日番谷の氷輪丸ほどの速度ではないが、徐々に徐々に全身へと回るその範囲を見切り、左の肘を斬魄刀で切断した。

 

 そのまま後退するウルキオラだったが、目の前で倒れ伏していたはずの一護の霊圧、その質が変わったことに気づき、わずかに目を大きく見開く。

 

『…………こんな形で外に出なきゃならねェとか聞いてねェぞ。

 嗚呼、霊圧で頭がガンガンしやがる……! もっとバンバン月牙撃てや一護ッ!』

 

 砂煙が晴れる中で現れた一護は、右手の斬月を杖代わりに突きさし、左手の振子雪(スノーホワイト)からウルキオラの手を振り払った。腹部の傷はそこから「黒い影のような霊圧」が漏れ、一護の血を止めていた。

 遠方で凍結し、砕ける氷結した腕。それを一瞥して、何ら感慨もないように「左手を再生する」ウルキオラ。

 

 再び無感情に見つめる先―――― 一護の顔面の左側には、霊子で編まれた白い髄が収束し始めていた。

 ウルキオラを睨む眼光は、黒い。

 

「虚化…………、それは報告にはなかったな」

『有ってたまるかって話だぜ。この……、はァッ!』

 

 地面に突き刺した斬月を引き抜くと、その軌跡にそって「月牙天衝」が天まで轟く。やや曇っていた空のそれを一気に散らし、天上は快晴となる。

 

「オイオイ、限定解除した隊長格レベルじゃねェか!? 現世に影響出るぞッ」

「あれは……」

「あ、あんなのまるで虚じゃないですか……!」

 

 先ほどの余波で弾き飛ばされた恋次たちも。その「現世基準で」常識外れな威力に、度肝を抜かれた。少しは頭が軽くなったと息を吐く一護だが、その振る舞いも何処か普段とくらべ様子がおかしい。

 

 

 

 その顔の左には、まごうことなく「虚の仮面」が形成されていた。

 

 

 

『ったくよォ……、戦犯その1のくせに結果だけ見りゃ多少はマシになってるとか、頭どうかしてンだろ。誰に似たンだお前。後でオシオキな。

 おい朽木(ヽヽ)、受け取れッ!』

「へ? えっあ、ああ、お、おおおッ!?」

 

 ぶつくさと文句を言いながら振子雪(スノーホワイト)を嫌そうに見た一護は、その、まるで虚になりかかったような顔をしたままルキアを一瞥すると、彼女へ向けてその振子雪を投げて渡した。

 咄嗟の事で動転していたルキアだったが、それでも「意外と理性的な」一護に動揺し、手渡された振子雪と彼を見比べる。

 訳も判らず、意識があンのか? と呟く恋次たちに背を向け、肩をすくめ。一護は「斬月の布」を掴み、右手だけでぐるぐると回転して振り回し、何度も地面に斬撃を浴びせる。

 

「その、動きは……?」

 

 その右腕の動かし方に、何かが、一瞬何かが重なって見えるルキア。

 

『阿散井も朽木も、あと一人も離れてろ。生憎、連携して戦えるような余裕なんざ、こっちには無ェからなァ!』

 

 そして全身から「黒い霊圧」を燃やす様に噴き出した一護は、いまだ慣れていないはずの瞬歩をもってその場から飛び上がり、ウルキオラへと斬りかかる。

 斬撃の軌跡は円形の刃となり、白い回転する霊圧の斬撃として「一護の背後へと追従」。それを斬月の側面で受け、そのまま流し、ウルキオラへと円形の月牙天衝が3つほど迫る――――。

 

月牙〇字衝(げつがえんじしょう)ッ!』

「ッ――――――」

 

 ウルキオラの方も、瞬間的に霊圧が上昇し、円形の月牙を叩き、払う。

 その間隙を縫って振り下ろされる斬月も平然と受けるウルキオラだったが、それと同時に一護から噴き出した黒い霊圧の炎がさらに燃え上がり、斬月からも同様に白い霊圧が迸る――――。

 

『――――月牙天衝』

 

 まるで先ほどの意趣返しのように、ゼロ距離で放たれる月牙。これは流石に予想外だったのか、ウルキオラも一瞬硬直。

 その一瞬が、今の攻防の勝敗を分けた。

 

 霊圧の奔流に呑まれたウルキオラ。上半身の死覇装、受けた右側がボロボロなのと同様に、刀傷のようなものが走っている。それでも斬魄刀は無傷であり、ウルキオラ本人も大ダメージといった風ではない。

 

「……見くびっていたつもりはなかったが、良い報告が出来ることは判った」

「オラッ! おいウルキオラ、ボロボロじゃねぇか……。あんなゴミ相手に何手古摺ってやがんだ」

「いかんせん、ここは縛りが多いからな」

 

 そして、そんなウルキオラの横へと当たり前のように現れたヤミー。ハッとするルキアたちだが、それもそもはず。あの仮面の死神(ヴァイザード)と日番谷冬獅郎を相手として、最初の通り右腕が凍結している以外のダメージを一切負っていないように見えるからだ。

 見れば氷輪丸を構えたままの冬獅郎と、既に仮面を失ったジャージの男が、それぞれ膝をついてヤミーを睨んでいる。良く見ずともボロボロで、苦戦を強いられたことがわかる。

 

「おい虚もどき(ヽヽヽヽ)、何だあの霊圧の密度は。何か情報はないのか」

「無ぇよ流石に……、俺だって今日初めて対決したんだぜ? シンジの奴なら何かしってるかもしれないが」

「誰だそれ。全く…………梅針には逃げられるし、そのくせ本命は来るときていやがる。とんだ厄日だ」

 

 そんな彼らを一瞥してから、ウルキオラは一言。

 

「ヤミー、撃て(ヽヽ)

「お? オイオイ、良いのかウールーキーオーラーァ…………、加減なんてしねェぞ」

「構わない。それも含めて計測(ヽヽ)ということだろう」

 

「ッ! 恋次っ」

 

 状況が目まぐるしく変わっていたせいで中々死神化していなかった恋次だが、今のルキアの掛け声でついにソウルキャンディを使用。死神化したままの勢いで、ヤミーへと斬りかかる。

 ニヤニヤ笑いながら大口を開けたヤミーは、その口内へ先ほどのウルキオラの比ではない霊圧を込めていた。

 

「蛇尾丸!」

「馬鹿がッ、そのまま塵になっちまえ――――」

  

『――――テメェがな』

 

「アァッ!?」

 

 瞬間、即席の連携のように一護がヤミーの右腕を斬った。迸る月牙。切断までは至らなかったが、氷結している肘から上に、くっきりと斬撃と霊圧を刻む。

 予想外のタイミングでの一撃に気がそれたヤミー。そのせいか、恋次の振り下ろされた蛇尾丸の一撃を肩に食らった。もっとも恋次も恋次で一護の放った月牙に巻き込まれそうになっており、「危ねェだろ!」と文句を付けているが、一護も一護ですぐさまその場から離脱していた。

 

「たく、一体何がどうなってやがんだ?

 でもテメェ、思ったより大したこと無ぇな…………、って、ん?」

「フンッ!?」

「おぉ!!?」

 

 もっとも、刺さったままの蛇尾丸はヤミーの肩から引き抜けず。彼が気合を入れると同時に、刃先の尖った部分が一斉に砕かれた。

 へろへろと音を立てて戻ってくる蛇尾丸に驚愕する恋次の目の前に、一瞬で氷の壁が出来上がる。そこへ放たれた霊圧の衝撃で、恋次たちはさらに後方へと弾き飛ばされた。

 

 ヤミーへ「だから鋼皮(イエロ)から気を抜くなと」とツッコミを入れてくるウルキオラに、やはり煩いと怒鳴るヤミーであるが。そんなやりとりが聞こえる砂煙の先、何かを振り回すような風切り音がルキアたちの前に立った。

 

 その妙に規則的な周期で回転する斬魄刀に、迸る霊圧の緩急に。ルキアはどこか懐かしいものを思い出す。

 この刺すような霊圧は、違う。年齢も合わず、嗚呼だというのに。この男の容姿ばかりでない、デジャブを重ねた魂の在り方どころか――――。

 

 

 

「――――――――海燕、殿?」

『何か言ったか、朽木』

 

 

 

 ルキアの方を見向きもせず。仮面が形成されつつある一護は、特に興味もなさそうにウルキオラたちの方を睨んでいた。

 

 

 

 

 

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