メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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今回は久々に石田回?


#035.やっぱりお前等友達だろ

 

 

 

 

 

 ここは廃工場か、それとも教会か。崩れたコンクリートの上層階と、それに不釣り合いな整備された窓。差し込む月光に照らされながら、半袖の制服姿な平子と他の二名は、その拠点へと帰還した。

 ……主に平子は、両手のビニール袋にカップ麺を大量に詰めて。

 

「――――よぉ、ただいま帰ったでー? ひーよー里ーちゃん……、ドァブッシッ!?」

「何がただいま帰ったでや!? 全然目的一つ果たせてへんやんけこのハゲッ! タコシンジッ!」

 

 そして気楽な挨拶も早々に、ジャージ姿な金髪の少女にスリッパで殴り飛ばされる平子であった。あーあーやってるねぇ、とウェーブがかった髪のスーツ風の恰好の男が肩をすくめ、以前一護たちの前に現れたセーラー服に眼鏡のリサが、ひよ里と呼ばれた彼女の背後に回り、一緒についていく。

 ちなみに殴られた勢いで取り落としたビニール袋は、白いライダースーツの少女が回収していた。

 

 頬を押さえながら絶叫する真子に、彼と同じくメンチを切るひよ里。

 

「た、タコは言い過ぎやろタコは!? ハゲも許せへんけど言うに事欠いてタコはッ!?」

「はっはー? タコタコタコタコタコタコタコタコタコタコタコタコタコ、シンジなんてタコで充分や、いや? もっと端折ってタコのタで充分やこのタ!」

「もはや原形あらへんやないかいッ!」

「あーそういや真子、前にめちゃんこあのエロメガネにつるっぴかにされたことあったんけ? ロン毛の頃。どえりゃあ、ハゲやしタコやあね」

「リサお前、それどっから聞いたんや!?」

「真子ん所に居た双子やあよ」

「おのれ藤丸にまつ梨め……! 何ちゅーこと言ってくれてんねん、仮にも俺、師匠やぞアイツ等! 兄貴分とか育ての親言う程手間は掛けられへんかったにしてもッ!!?」

「それよりあたしの自転車(けったマシン)知らん? 昨日(きんのう)までそこにあったんやけど――――」

 

「たっだいまー拳西ー♪ って、何で背負い投げするのさー! ひっどーい!」

「瞬歩の勢いのまま腰に抱き着こうとするな、普通に危ねぇだろうが。

 あ、それから羅武。ジャンプはちゃんと買ってきたんだろうな」

「モチのロンだぜ」

「ムフ!」

「ムフ!」

「男同士で気持ち悪いー! ゴリラみたいな笑い方っ」

「うるせぇ! ジャンプの方が大事に決まってンだろ!」

 

 サムズアップをしてキラリと友情的な何かを交わし合う、ジャージにサングラスの男と、コンバットナイフを腰につけた筋肉質な男。ぶう、と不満そうなライダースーツの少女は、つまらなそうに手に持っていた袋からカ〇プヌードルを取り出し、そのまま蓋を開けてバリバリと食べ始めた。身体に悪いよ!? とウェーブ髪の男が止めに入ったりと、集団にまとまりがない、自由気ままな有様である。

 

 ぜーはーと肩で息をする平子とひよ里。リサは手元のレディースコミック(妙に描写が肉感的なもの)をチラチラ見ながら両者へと視線を送っていた。

 

「ま、まぁええわ。状況的に色々アレみたいやしなぁ」

「アレって何や。梅針っちゅーよく判らん奴どころか、黒崎一護まで全然確保できてへん()が」

「まだ続けるんかいそれ!? いや、まぁそれは置いておくわ。

 一護についても、何やちっと変やったしの」

「変? あのエロそうなオレンジ」

「虚化しとった言うのは電話で聞いとったけど、何かあったん?」

 

 ひよ里の方はともかく、リサには「それ一護、普通にえらい可哀想やから止めたれや」と一護の呼び方にツッコミを入れつつ。斬魄刀を何処からか取り出し、それを背負って窓から月を睨む。

 

「ちーと遠くから見ただけなんやがなぁ。

 俺の内の(ホロウ)はともかく、逆撫がえらい嫌がっとったんや。一護から漏れ出た虚の霊圧」

「あたしの鉄漿蜻蛉かて、虚の霊圧に対しちゃそんなもんやあよ。内在世界壊れ(こわけ)る可能性もあるし」

「そういうことやない。逆撫はエラい性格が悪い斬魄刀でなぁ。俺に害をなす存在の方をむしろ気に入って大事にするような、しょーもない奴っちゃ。

 あのメガネ最初に見た時から、ずっとアイツのことを気に入っとったくらいやし。そんな逆撫が嫌言うてることが何を意味するかって話や」

「アホやのうて馬鹿やないん? その斬魄刀」「(たぁ)けとん」

 

 うっさいわっ! と女性陣二名からのツッコミに叫ぶ真子。その声が響いたことで、仲間たちの視線が彼に集中する。羅武、と声をかける真子に、ジャージ姿の羅武は軽く応とこたえる。

 

「俺らより近くで一護の方、しっかり見とったやろ。どうやった」

「どうって言われてもな……。んー、戦い方も暴走してるっつーより。普通に斬術使ってる感じだったし、何だありゃ。

 浦原たちは普通に封印してたが、ぱっと見た感じ『俺ら』とそう変わりないように見えたぞ」

「それは……、妙だな。胡散臭い」

「えーっ! 私も遠くからだけど見たもん、あの子と虚がまるで『対話してる』みたいなやりとりしてたの」

「虚の側から対話してたっていうとなると、ますます信じ難いところだけどね。……いや、(ましろ)は内在虚の屈服が一番スムーズに済んでるから、逆の感想が出るのかもしれないけどね」

「もうちょこっと勘考しようにも、情報(すけ)ないんや、なも?」

「…………精神世界に溶け込んだ虚に理性があるて、むしろそっちの方がヤバいやつやないん? えっ、私らせいぜい巨大虚(ヒュージ)かそんくらいでコレ(ヽヽ)なんに、それって相当ヤバいやろどう考えても。

 喜助(ヽヽ)、ちゃんとそのあたり分析とかしとんよな、なぁ? ……今度会いに行ってスーパーひよ里キックで射敵込(いてこ)ましたろか」

 

「――――――――ともかく、次で梅針も決着つけるわ。出てくる条件もなんとなく判ったしなぁ。そしたら護廷隊から一護を引っ張り出して、こっちで様子見せざるを得んわ。あっちに任せたらそれこそ虚モドキってことで処断されて終いや。

 アイツ(ヽヽヽ)が何考えてるか思惑も見えへん以上は、こっちも最低限出来ることをやるで」

 

 いくら何でも怪しすぎるからなぁ、と。

 酷く真面目くさった平子の一言に、反論の声は上がらず。

 

「……そういやハッチ、どこ行ったんや?」

「地下やで」

「真子が買い出しのたんび、カップ麺ばっか買ってくるから栄養バランス偏るって、あっちの調理場でキャベツとにんじん炒めとん」

「真面目か、アイツ…………」

 

「いや、せっかくだしそのまま焼きそば入れるだろ。オ〇フクも常備してあるし」「今日はたこ焼きの気分なんだがなぁ……」「白米は一昨日焚いて冷凍したやつあるよね~」「カロリーお化け……、ダイエットも横着できんね」「ハッ! リサも最近太ももがよーハムみたいになってきてるんやないんか?」「こらこら……」「ひよ里んはもっとおっぱい大きくなるといいよねー」「何や愚昧しとんかワレッ!?」

 

「あーもう、シリアスに決めたンやから、ちったぁシリアスのままで締めさせんかいッ!?」

 

 そしてイマイチ締まらないあたりも、この彼等の空気感だった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 夜の空座町。

 心霊スポットか、はたまたSFか、どちらにしても怪現象の目撃情報が増えたことにより、有名になりつつある空座町であるが、とはいえ住民はそんなことおかまいなしである。

 

 だから浮遊霊などに限らず、一般市民とて突如出現する虚に捕食されるようなことが、最近は多発している。

 黒崎一護たちの奮戦によって抑えられはしたが、ここ数年にないほどに今の空座町は虚が寄ってきているのだ。

 

 ただ、今日は少々様子が異なる。

 

『――――――――』

「…………、ふっ」

 

 ミニスカートにメイド服。スタイルの良い美女ないし美少女が、三つ編みの後ろ髪を振り乱して、自らに襲い掛かる虚の腕や顎を避けている。

 時に殴り飛ばそうとするも、鈍い打撃音が鳴るばかりで敵を倒してはいない。

 彼女の周囲には、虚が3体。それぞれ横に広い仮面をした虚と、タツノオトシゴのように空中に浮かぶ虚、四足歩行のオーソドックスなタイプの虚。

 虚たちに襲われながらも、彼女はわずかに霊子を振りまき。それは、黒崎一護のような圧倒的なそれではないにしても、虚たちからすれば良い撒餌のような役割を果たし。

 それにつられてか、更に周囲に十数もの虚が集まってきている。

 

 流石に敵の数が多いせいか、メイド服の彼女は肩で息をしていた。疲労が蓄積してきたのだろう、豊かな胸元を軽く押さえ呼吸を整えている。

 

「損傷軽微、せいぜい衣服と肌が少しですか。……これならわざわざ手を加えずとも自然治癒が見込めます」

『――――――――!』

「ふっ」

 

 動きは軽々としているものの、徐々に徐々に鈍くなっていく事実に変わりはない。

 そして不思議なことに、死神側の介入も見られない――――。それはすなわち、彼女がジリ貧であるということ。

 

 そして、それを見逃せない男が一人、いた。

 

 

 

「――――我に返れ、梅針鞭!」

 

 

 

 空中より叫び声とともに、無数の刃が降り注ぐ。雨のように注がれた斬魄刀の刃により、一気にメイドの周囲にいた虚は駆逐されていく。

 どさり、と彼女のすぐ手前に降り立った男。大柄な体躯に、刃がびっしりと生えた右腕を持つ死神。

 

巨大虚(ヒュージホロウ)も居ねェじゃねえか。こんなもん、現世の担当の管轄だろうが。どうして来ねぇんだ……? いや、大虚(メノス)とかも来てたし、地獄蝶も少しくらいは計測が狂うか。

 よっ。俺が見えるか、お嬢ちゃん」

 

 腕の刃を消すと、男はニヤリと微笑んでメイドに声をかける。

 いかつく、威圧感を与える容姿だが、浮かぶ表情は純粋に彼女を気遣ったもの。

 

 そんな梅針に、メイドは無表情のまま。

 

「あー、死神とかは知らねぇか? いや、知らないなら知らないで良いか。

 多分後で俺みてェな恰好した奴が来ると思うから、それまで待っててくれよな。

 それじゃぁな――――、って、はッ!?」

「逃がしません」

 

 そして空中に飛び去ろうとした梅針の足首をメイドは「直立したまま高速移動し」つかみ取り、そのまま地面に叩きつけた。

 おごッ!? と普通に痛そうな声が上がるが、そんな声を無視してメイドは梅針を蹴り飛ばす。意外にもフィジカル強めなメイドの一撃!

 

 とはいえ梅針も、すぐさま体勢を立て直す。片膝を地面につき右手の拳を打ち付けるような、いわゆるスーパーヒーロー着地めいた体勢で前方を見る。訝し気なそれは、ただいま綺麗に足を振り上げたメイドに注がれていた。

 ちなみにスカートの中は絶妙に見えない。

 

「…………まさか本当に出てくるとはね」

「今までの傾向から、間違いないと判断しておりました。雨竜様」

 

 雲に覆われた月光が徐々に徐々に降り注ぎ、それと同にメイドの背後から、一人の青年が現れた。

 眼鏡に長袖のシャツ姿。色合いは上が白、下がグレーに縦縞の柄模様。

 そしてシャツの袖口には青白く十字が縫われており、そこはかとない何かの自己主張が強い。

 

 訝し気な目をする梅針に、彼は手首に取り付けられた十字の意匠のある腕輪を見せた。

 

「おぉ…………、久々すぎてわからなかったぜ。滅却師か。てっきりもう絶滅させられたと思ってたが、まだ生き残りがいたのか。良かったじゃねぇか。

 で? その滅却師が、俺に何の用だよ」

「用というほどの用はない。こっちのナナさんが君の動向を計測し、出現条件を確認していてね。その実験に付き合ったまでだ」

「へっ。なら俺は、まんまとその実験に引っ掛かったっつーわけか。

 …………いや、でもそんな美人を囮に使うんじゃねぇよ。お前、コレか?」

 

 小指を立てる梅針に「だだだ、誰がッ!?」と絶叫する石田。

 なお当然のように無表情なままのメイドである。

 

「ご期待にはそえません。

 雨竜様は、同じクラスの井上織姫様に懸想しておりますので――――私程度の肉体ではとてもとても、あの肉感溢れる肢体には及びません。よく脚や胸元に視線を感じますが」

「へっへっへ」

「何でそんな話になってるんだナナさん!? というか、別にそんなに見ていないじゃないか僕は!」

「そうです、顔の方が見てる頻度は高いです」

「ま、美人相手にゃ思春期じゃ仕方ねぇだろうがな、ハッハッハ!」

「そこ笑うなッ!? というかリアクションがいくら何でも気安すぎるぞッ」

 

 どこまで本気かわからないメイドのボケっぷりに振り回される石田と、そんな彼らをどこか楽しそうに笑う梅針。何なら近所の子供でも相手にしているような、そんな生暖かい目だ。そんな目を向けられる謂れはないと反発しそうになる石田だったが、続く梅針の一言に、むしろ背筋を正して眼鏡の位置を調整した。

 

「お前、どうせ一護の友達か何かだろ。見た感じ『霊的にも』年、近そうだしなぁ」

「友達? 勘違いしないでもらおうか。彼は死神代行、僕は滅却師。状況次第で仲間になることはあるが、そう馴れ合う様な関係じゃないよ」

「腐れ縁ってところか? ……いやお前、アレだな。どうせ素直になれない物言いしか出来ねェ性格だな。本当は友達大好きな奴。

 よくウチの隊で見たからわかるぞ、そういう性格は」

「はッ!?」

 

 慌てる石田に「それで何だよ」と、やはり生温かな視線を送ってくる梅針。

 そんな彼に、石田は右手に取り付けたブレスレットの十字を指でなぞりながら。

 

「……別にあれほど周りに死神が溢れてる、今の黒崎を僕が気にする話ではないのだけれどね。それでも彼が気落ちしている様を見るのは、それはそれで鬱陶しいんだ。

 不幸にも事情を教え込まれてしまったからね――――仮にここで倒せないにしても、手傷の一つでも負ってもらうよ」

「へぇ……、そういうのは嫌いじゃねェぜ」

 

 言いながら、正拳突きの構えをとる梅針を前に、石田はその右腕を自らの顔の手前に掲げ。

 

 

 

操霊子(ハーツマニューバ)起動(スタート)――――聖隷(スクラヴェライ)

 

 

 

 その一言と同時に、さきほど降り注いだ梅針の斬魄刀を中心とした、虚の消滅しきっていなかった破片も含めて「分解され」、石田の周囲へと収束していった。

 分解されていった霊子は、白いコートのようなものを形成して彼の上半身を覆う。所々に青白いアーマーが展開され、青白い霊子で構成された弓は一気に白と黒の実体を持った弓へと変貌。

 

 ほう、と驚いた様子の梅針に、雨竜は胸元で左手を軽く開く。

 それと同時に、コートの裾の部分が分解され、その手元で矢の形を作っていく。

 

「いかにもな感じじゃねぇか、その射魂柱(しゃこんちゅう)滅霊弓(めつれいきゅう)も実体を持ってるっつーことは……」

「おそらく、想像通りだ――――」

 

 瞬間、石田の足元に収束した霊子が振動し、彼の身体がぶれる。

 その残像を追い、月を見上げるように拳を構え、突き出す梅針。それと同時に、雨竜も矢をつがえ放った。

 

光の線(リヒトリニア)――――」

「――――松礫(マツノツブテ)!」

 

 放たれた一条の光は、梅針の腕から射出された無数の刃を衝撃波で粉々に蹴散らし、彼の元へ向かう。想像以上の威力に思わず息をのむ梅針だが、そこで瞬歩をして後退するだけの余裕はある。

 

「何、だ?」

 

 もっとも、引いた瞬間に石田に背後を取られ、背中越しに自分の心臓を狙う位置で矢を構えられていたのだが。

 引き絞った矢を解き放つ石田と、その一発が背中に直撃する梅針。明らかに今の移動速度は、先ほどの移動速度以上のそれであった。そのため梅針も石田の動きの予想がつかなかったのだが、今の矢の一撃で、しかし倒れない。

 

 先ほどの刃を粉々にした威力が出て居れば、間違いなく梅針とてひとたまりもなかったはずだ。

 それにもかかわらず、軽い火傷を負った程度の痛みで済んでいる。

 

 そして自分から離れていく石田の動きが、今度は明らかに減速しており、わざわざ注視するまでもなく軌跡を追う事が出来る。

 

「まだまだッ」

「接近戦は得意じゃないんだけれどもね」

 

 言いながら再びコートの裾を、今度は剣のような形状に形成する。もっとも尾部に指をひっかける箇所が存在しているので、これもまた「剣の形をした矢」ということなのかもしれないが。それを構えて、石田は殴りかかる梅針の白打を受ける。

 受け流そうとしてはいるが、霊圧とパワーとが釣り合っていない。こればかりはどうしようもなく、明らかにダメージが蓄積している。

 どうしたそんなものか、とむしろ「発破をかける」梅針に、視線を鋭くした石田は再び「目で追えない速度で後退」し、手元の剣を弓につがえた。

 

「これで――――」

「お?」

 

 放たれた刃を、正面から殴り飛ばす梅針。拳自体は刃で硬化しており、この一撃自体が無数の刃を敷き詰めた突きと同義のそれだ。

 そしてその拳によって、今度は石田の剣は粉々に砕かれる。

 

 その状況を見て、そしてどんどん裾が短くなり布地が減っていく石田のコートを見て、そういうことかと梅針は納得した。

 

「なるほどな。その腕輪……最低限、霊子の収束の補助はするが、それだけか。

 集めた霊子の配分や霊圧の再放出、そういったモンが全然安定しちゃいねぇ。下手すりゃ制御できねぇ霊圧のせいで、お前自身が爆発すんぞ。

 止めとけ止めとけ、一護共々(ヽヽ)、ダチと一緒に同じような死因みてぇのを作る必要はねぇだろ」

「だから友達じゃないと……ッ! いや、そんなことはどうでもいい。

 悪いが爆発だけはないよ。そこだけは最低限、扱えるようになってから実戦に来ている」

「それでも、何でそんな状態で俺と戦いに来てんだ。扱い切れちゃいねぇ力で戦いにくるとか、殺してくれって言ってるようなもんじゃねぇか」

 

 ニヤリと笑いながら、しかしどこか気遣う様なニュアンスが含まれた言い回しを取る梅針に、石田もまたニヤリと笑い返す。

 

「黒崎が妙な顔をして、君との闘いの事を振り返っていたからね。ああもやり辛そうな顔をしていたってことは、それ相応に理由があるってことだ」

「ほぅ?」

「そして今、戦っていて何となくわかった――――――――君は、僕どころか黒崎すら『殺すつもりは無い』。違うかい?」

 

 言いながら、再び矢を形成して弓を構える石田。今度はその底部にさらに霊圧が収束し、周囲の空間を圧している。

 なんなら物的な衝撃も出ているらしく、風圧でひらひらめくれ上がりそうなスカートを押さえるメイドのナナ。

 

「ただ、それとこれとは話が別だ。今の君に到底僕が及んでいないという自覚はあるが、少なくともここ最近の虚の出現率に関係しているのは君に違いない。

 そのことにだけは、しっかりとケジメをつけさせてもらう」

 

「勝てねぇなりに手傷を負わせるつもりってか。……そこまでして俺から報復が無ぇって確信してんのは、一護の顔を見てそう判断したっつーことかよ」

 

 やっぱり仲良しじゃねぇか、と呟きつつ、梅針は「仕方ねぇな」と両手の拳を腹の前でぶつけあい。

 

「卍解――――――――」

「……!? 光の線(リヒトリニア)ッ」

 

 そして梅針から大きく吹き荒れる霊圧を前に、石田は動揺しながらも光の矢を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……霊子計測妨害装置搭載の義骸(ヽヽ)、現状いまだ正常に動作中です、マユリ様」

『あの浦原喜助が似たようなものを作っていたという情報は心底腹が立つが、まァ私は寛容だからネ。せいぜいそれが動作している間に、あの滅却師から情報を抜き取るんだヨ、ネム(ヽヽ)

 

 

 

 

 

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