メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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※過去篇系のものは基本的に捏造なんであしからずです


#038.奉仕の心にさようなら

 

 

 

 

 

『聞こえるか、一護。奴と、奴の斬魄刀の声が』

 

 ……嗚呼、聞こえるとも。

 

 朦朧とする意識の中で、一護は自らの鳩尾に刺さった梅針の刃を見て、それより遠くで大勢の死神に斬りかかられている梅針を見て、『自らの意志で』拳が握れない。

 斬月は折られこそしなかったものの、刀身にひびが入り氷が砕け、いつかのように袖白雪の鍔が露出しかかっている。

 

 つまりは、既に肉体の使用権は自分になく。

 

『牽制に使うだけじゃなく、もっとしっかり月牙撃てってンだよォ!』

(だから無茶、言うんじゃねェ……!)

  

 肉体の絶叫に、絶叫しながら全身から黒い霊圧の炎を噴き出すその相手に。

 自らの内なる虚に対して、一護は辛うじて保っている意識で文句を言う。

 

 それこそ最初の方は、梅針も余裕があった。どこか寂しげではあったが、それでも一護との闘いを愉しんでいたようにも思えた。その裏に潜む感情の類が変わらずとも、一護自身、彼の拳から感じるものは多く、だからこそ何故そんなに悲し気なのかと再度問いかけた。

 だが、それに梅針は応えず。そして急に心臓を押さえたかと思えば、一護から距離を取り、霊圧を底上げして拳をぶつけ。

 

「…………卍解、衆合(しゅうごう)梅針山鉄鼠(うめのはりやまのてっそ)

 

 その姿を、仮面のない虚めいたものへと変えた。

 

「何…………、…………だよ……? (ばん)(かい)?」

「オメェはまだ知らねぇのか。……ま、知ってたところでどうにもならねぇがな」

 

 突如言われた聞き覚えのない言葉に困惑する一護に、梅針は特に説明することはなかった。ただ、先ほどまでと比べ物にならないほど、天候すら暗雲をもたらすような、禍々しい虚の霊圧に、自分の内の虚の気配を感じて、一護は後ずさる。

 

『――――――何ビビってンだよ、兄弟』

「ッ!? て、テメェ……」

 

 そしてあろうことか、自らの虚の声がはっきりと聞こえる。気付けば自分の顔面、左側の視界が徐々に徐々に黒く暗く染まっているような、そんな感覚――。

 自らの虚は、呆れたように諭す。

 

『あーあー、これだからテメェはなっちゃいねェ。敵と自分の今の戦力差くらい、一目で判ンだろ。何も対応しねェなら、何も考えない分の代償をすぐ支払うことになる。刺されて斬られてそれで終わりだ。

 なのに足が竦んでいちゃ、それこそ色々オシマイだぜ。……代わるか?』

「ば、馬鹿言ってんじゃねェ! というか誰がビビッてなんか」

『そうかよ? だいぶ恐怖、積り積もってる気がするがなァ』

 

 ――――恐怖を捨てろ、前を見ろ。

 ――――覚悟決めたンなら、余計な恐怖に足とられんじゃねェ!

 

 斬月の言葉と、この自らの虚の言葉が脳裏を過る一護。一度だけ目を見開くと、すぐさま前方を睨み、変貌した梅針を警戒する。

 

『やりゃ出来ンじゃねェか。ただ……、拙いな。相手が悪ィ』

「何だよテメェ、一体何を――――」

 

 そして次の瞬間には、斬月を含め一護の身体に無数の刃が刺さる。その勢いで地面に叩きつけられ、背中から刃が貫通する一護。

 それこそ一護が認識するよりも素早く、梅針の身体から斬魄刀の刀身だけが、毛皮のように集まった刃の束である左肩からノーモーションで伸びていた。

 

 それだけではない。痛みを感じるよりも、一護は一気に脱力し起き上ることが出来ない。

 

「一護!? どうした一体……!」

「れ、霊力が……!?」

 

 胴体に刺さった梅針の刃。それが一護の身体を貫通し、地面に刺さり。まるで木の根のように、その地面へと一護の霊圧を放出し、梅針の元へと供給している。

 身体から流れ出る霊力を自覚しているからこそ、一護にはそのことが如実に理解できる。だが言葉を続けられる余力もなく。

 

 その瞬間に、まるで「自らを庇うために」出てきていると錯覚してしまう速度で現れた虚の仮面は、そのまま自らの肉体を使い梅針と渡り合っている。

 くしくもそれは、一護が一護自身の性能を全く掌握できていないことの証左。

 お前にこの黒崎一護という()を乗りこなす器量はないと、そう言われているようなものだ。

 

 しかしそのことに対する屈辱や情けなさよりも、一護の内側には強い違和感があった。

 

『聞こえるか、一護。奴と、奴の斬魄刀の声が』

(おっさん。……嗚呼、聞こえるとも。アイツの悲しみが。アイツの嘆きが)

 

 迸る霊圧を、以前、斬月は「想いを込めろ」と表現したことがある。

 それこそが月牙に乗る霊力そのものであり、その想い、意志が強ければ強い程、斬月はより多くの霊力を喰らい、放つことが出来る。

 

 であるのならば、交える剣と剣は。

 剣舞を踊るように斬り合うそのあり様とは。

 

 それは、すなわち心の交差に他なるまい。

 

 ケンカだって殴りかかる拳に、どれだけ強い心が乗るか。それによって一撃一撃の重さがやはり違ってくるのだと、ヤンチャな見た目通りにそういった経験豊富な一護は実感していた。

 

「ゲヘッ、ヘッ……、俺に霊力喰われるだけじゃなく、それだけ火輪(ヽヽ)で霊圧抜いてるっつーのに、全然余裕じゃねェか!? どんだけの霊力持って居やがるんだ!」

『何も考えねェで全開放したら、今のままじゃ、ひゅー、バーンッ、「し~ばや~!」っつー感じだオラッ! 今回の戦犯めッ!』

 

(花火……? だったら「た~まや~」とか「か~ぎや~」とかじゃねェのか、それ)

 

 いや、そんな内心のツッコミはともかく。斬月のおっさんも何も言わないし。斬魄刀に花火の掛け声とか感想を求めるなと言う話なのかもしれないが。

 それでも、虚の自分が梅針の拳や刃と打ち合えば打ち合うほど、梅針の方から流れ込んでくる霊圧と、自分から抜かれている霊圧との行き来のせいで、より顕著に相手の霊圧を感じ取ることが出来る。

 

 すなわち、数多の悲しみの感情と――――――――。

 

(……梅針の声の中に一つだけ、違うのがいる)

 

 ――――――――その嘆きの声を嘲笑うような、喜悦に満ちた声。

 

 梅針や、おそらくその斬魄刀の意志とは異なる、悪意のある誰かの感情。一護の霊圧を喰らうことに喜びを見出し、死神である梅針を使ってそれを為していることに対する嘲りを含んだ、その邪な心。

 

『戦っているあの男や梅針鞭とは別に、お前の霊圧を喰らう存在が居るということだ。そのせいで、おそらく連中も「本来の目的」からは遠のいているのだろう』

(本来の目的……? おっさん、何か知ってるってのか!?)

『判らぬ。だが、それでも判ることはあるということだ。我()は一人ではないが故にな』

(おっさんと、ルキアの斬魄刀…………)

 

 一人じゃない、というフレーズにおいて、当然のようにカウントされないホワイトである。

 もっともこちらの斬月も、あちらの斬月から「虚の力への警戒はまださせておけ」と言われているため、積極的に誤解は解かない。少しだけ悲しそうな目をしてはいるが、声しか届けられていない今の一護がそれを理解する暇はなかった。

 

「いい加減倒れちまえ……、梅嵐(ウメノアラシ)――――!」

『――――月牙[・]字衝(げつがてんじしょう)!』

 

 上空に飛び上がった梅針が、両腕からそれこそ大竜巻のような刃の渦を作り出して一護めがけて放つが。虚の一護は霊圧の炎を壁に見立て、そこに斬月を突き刺し、そこを起点に「直線状の月牙」を放つ。

 放たれた月牙は、見たこともない程の密度と速度で直進。さながらパトラスやスタークが使っていた妙に素早い虚閃のごときそれに、梅針はぎりぎりで躱しきれず。

 穿たれた左腕の痛みのせいか、刃の嵐の制御が間に合わず、制御を失った大量の刃。

 

(あれじゃ、井上たち全員ヤベェじゃねェか!? 何考えてンだ、あの白い俺みてェな奴!!?)

『多少は気にしているようだな。追撃で、周囲への被害を減らすために月牙を放っている』

(最初から全部薙ぎ払えって話だろォが!)

 

 悪態をつく一護だが、仮に戦闘中のホワイトに余裕があれば「結果論だ馬鹿ッ!」とキレ返されることだろう。それに、そんな威力の月牙を放てば間違いなく天変地異クラスの威力になるので、周辺被害など考えるべきことが尋常ではなくなるのだ。

 このあたりは一長一短であり、どちらが優れている訳でもない判断である。強いて言えば一護とホワイトの立場の違い、何を守るかというスタンスの違いが出る部分であろう。

 

 目先の全員を守るか、一護自身の立場も含めて守る手段を探すか。

 

 とはいえそれが一護に伝わることは無く、彼からすれば虚の自分も、梅針から感じ取れる一つの悪意ある何かも、そう大した違いはないのだ。

 

『このままじゃ千日手だな。……こっちの霊圧で無限に回復しやがって、それでいて本心じゃこっちなんざ眼中に無ェ』

 

(どういう、ことだ?)

 

 今回は一護自身と言葉を交わさない、虚の自分だが。それでも微妙な焦燥を感じ取ることは出来る。なにせ彼に言わせれば一護の霊的な身体なぞ、一護自身の霊力で毎度ガタガタになっているのだ。すなわち持久戦は、一護の側の方が不利である。

 

『表からのみで打倒するのが困難であるのならば。こちら側から働きかければ良いだろう、一護』

(……何、だ?)

 

『出来ンのかよ、オッサン』

 

 そんな一護とホワイトに、助け船を出したのは黒衣の斬月。

 彼は言う。今の一護の霊圧が梅針の側に吸われている状態というのは、ある意味で一護と梅針の霊的な世界が繋がっている状態に等しいと。

 

『奴が自覚しているかは定かではないが、結果としてこれは招待状をもらっているようなものなのだ』

 

(いや、招待状って…………、ダチの結婚式とか行く訳でもねぇンだからよォ)

『あー、まぁアレ(ヽヽ)

 

 ホワイトが意図しているのは、蛇尾丸を始めとした他の面々の斬魄刀が、内なる世界である場所へと霊圧で交信を試みているような、そんなものである。

 斬月は内なる世界を離れられない。世界と世界の扉を仲介することは出来る故、声くらいならば届かせられるだろうが、その程度で何かが変わることはあるまい。

 

 とするならば、それを実行できるのは今、只一人――――。

 

(俺が、梅針の心の世界へ?)

『まァ、俺が行ったところで意味無ェからな。姐サンは例によって踏ん張ってるし』

(姐サン!? えっお前、ルキアの斬魄刀のことそんな風に呼んでンのか!!?)

 

 一護のコメントには答えず、再び梅針へと斬りかかる虚の一護。

 何かの力関係を覗いてしまったような感じで、一瞬警戒が消し飛んだ一護だったが。しかし虚の自分に言われたことは、何一つ間違いはない。

 

 これは一護自身の戦いなのだ。

 一護が梅針の何かを知りたいのならば、一護自身が動くしかない。

 

 だからこそ、一護は己の斬魄刀へと頼み込み――――。 

 

 

 

「どうしてテメェが、こんな所に居るんだ」

『そりゃ、俺の世界だからなァ。でも、こんな状況でよく来れたモンだぜ』

 

 

 そしてその先で、梅の木のある丘から望む、アルバムのように様々な色あせた映像がほとばしる空を見て。そこに立つ「卍解していない梅針そのもの」の姿を見て、言葉を失い。

 

「それはどうでも良い。そんなことより、お前は外で今、虚の俺と戦ってンだろ? だってのに、一体これは……」

『最初に言っただろ。我は刃なり』

「刃なり……? じゃあまさか、テメェは…………、アンタは……」

 

 

 

「…………斬魄刀と本当に一つの存在となっちまってるってことか」

 

 

 

 確認するような一護の言葉に。それ即ち、斬魄刀と身も心も、文字通り「精神すら一体化」し、もはやそこにお互いの自我の境界すらないのかという、その問いかけに、

 梅針は肩をすくめて何も言わず。

 

 しかし、この場においてはそれが真実を雄弁に物語っていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

『隊長、待ってくださいよ……! ぜぇ、ぜぇ…………』

()、相変わらず体力ない。そんな馬鹿みたいに身体が大きいくせに』

『無茶、言いなさんなって…………、俺も含めて、全員倒れてるじゃないですか』

『? 初代のしごき、もっと酷い』

『勘弁してくだせェよ…………』

 

 黒髪、おかっぱ頭の女性。顔立ちは可愛らしい方だが視線は鋭く、どこか剣呑さを放っている。背はさほど高い訳ではないが、それでも彼女に太刀打ちできるものはこの十一番隊においてはいない。ほぼ全員が霊圧を纏わせぬ、白打だけで叩きのめされ「斬られて」いるのだから、悪い冗談だ。

 訓練の最中、今のようないかつい容姿でまったくなかったその男は、何でもないように不思議そうに首をかしげるその隊長に、全員の心を代弁して語り――――――――。

 

 

 

『梅、これ美味しいからお前も食え』

『何ですかい、この饅頭』

修多羅(しゅたら)研からの差し入れ、何かよくわからない成分で何かよくわからない薬効がある』

『何もわかって無ェじゃないですか!? というかあの白黒野郎の作ったやつかよ』

『でも甘い』

『甘けりゃ良いってものじゃないでしょ、隊長……』

 

 コバルトブルーに発光する謎の一口饅頭を、無表情ながら頬をハムスターのように膨らませてどこか嬉しそうに食べている隊長へと、ツッコミを入れながら吐き出させようとして腕力で拮抗している男は、しかしどこか慌てながらも楽しそうで――――。

 

 

 

『梅、現世に花見いくぞ』

『今秋だから花はないんじゃないですかね』

『細かいことは気にしない。ハゲるよ?』

『俺の斬魄刀なんか、そこそこデコ広いオッサンの姿なんで洒落になってないんスけど……。

 後、今って確か現世だと合戦してるところも多いし、あんまりそういう任務外のことは』

『うるさい、ハゲ』

『まだハゲちゃいねェっスかね』

 

 突然の無茶ぶりに説得をかける男は、しかしちょっと拗ねた風な隊長を宥めるために、一緒に茶屋へと繰り出して言ったり――――。

 

 

 

『梅――――』

 

 

 

『梅?』

 

 

『昆布はないぞ、梅』

『梅! 梅!』

 

『……梅のくせに生意気なことを』

 

『梅、行くよ』

 

『大丈夫? 梅』

 

『梅、助平では?』

 

『梅はどちらが良い?』

『梅、やはり助平なのでは……』

 

『フフ……、梅もまだまだ、だな』

 

 

 

『梅――――夕日が綺麗だ』

 

 

 

 空に映る数多の映像は、そのどれもがあの、おかっぱ頭の女性の隊長のもの。青年のことを梅と呼ぶ彼女の、様々な感情と、様々な思い出と。

 そして「卍解したらしい梅針」そのものの姿の誰かを、青年と女は打倒し。しかしそれと同時に、青年の足に、あの獰猛な姿の何物かは食らいつき。

 

 

 

『……梅、けっこう好きだったぞ』

 

 ――――そして、最期は彼女の胸部を、心臓を、自らの腕が貫通し粉砕している映像。

 

 

 

 灼熱の鎧などなんのその、彼女の全身を覆う炎にすら焼かれず、溶けず、しかし微笑んで逝った彼女を前に、青年「だった」誰かの視界はぼやけていき。

 

『あんまり見ンなよ。恥ずかしいだろォが』

「わ、悪ぃ。…………いや、けど」

 

 映像に出てくる、背が高く、引き締まった顔の青年は、おそらく梅針の「本来の姿」だったのだろう。

 嗚呼、刀神と呼ばれた軽薄なあの男が言っていたか。斬魄刀が虚化し、その斬魄刀に食われたと。であるなら今の梅針の姿とは、彼と彼自身の斬魄刀が入り混じった姿であると考えれば、わかりやすい。

 

 空に数多に駆け巡るそれらの映像のアルバムのようなものは、そのどれもが色あせて、擦り切れており。

 これが梅針の精神世界であるのだとすれば、この世界で延々とリフレインしているのだとすれば、いかに一護がその手の経験に薄くとも、察するものは合った。

 

「好きだったのか、あの人のこと」

『……ガキの淡い好意くらいだな。ンな大層なもンじゃねェよ』

 

 そうか、としか一護には返しようがない。

 そしてリフレインする映像の最中、あの彼女――――無刀(むて)を名乗っていた彼女は、梅針にこう問いかける映像があった。

 

『梅の霊圧は阿呆みたいに高い。ちゃんと使いこなさないと、身体が内側から破裂して終わり。きっと火縄銃とかの失敗みたいな、そんな感じじゃない、もっと酷い』

 

 くしくも一護の虚が言っていたようなセリフであり、そして今の梅針が何故一護の霊圧を延々と吸い上げ続けているのかという部分に、合点がいってしまった。

 

「……アンタ、死にたいのか? だから俺の霊圧を使って…………」

『――――微妙に違うのだろう』

「おっさん?」

 

『ヘッ、お前が斬月か。…………ん?』

 

 一護に語り掛ける斬月の声は、梅針にも……、梅針鞭(斬魄刀)にも聞こえたらしい。ただ何故かその声を聴いて半眼になっている彼であったが、一護は動揺が続いておりそこを追及する余裕がない。

 

『ただ死にたいというだけであるならば、そのような遠回りな自殺に斬魄刀が協力することは、余程のことでなければ起こり得ない。それでも協力しているのだとするならば、目的は分離か』

『……ま、そうだな。それが、(使い手)(斬魄刀)の共通見解ってやつだ』

 

 どこか寂し気に笑う梅針に、一護は表情が曇る。

 

(斬魄刀)は、俺自身の意志でなかったとはいえ、俺を取り込んじまった』

 

(使い手)は、俺自身の意志でなかったとはいえ、あの人を殺しちまった』

 

『そうなると、もう生きている意味は無ェんだが…………、みすみすあの人や、朱司波隊長の姉弟(きょうだい)両方ともの死因になっちまった虚の復活になんざ、寄与するつもりはさらさら無ェ』

 

 虚の復活? と。困惑する一護に、梅針は事実を突きつける。

 それ以外に、方法は無いのだと。

 

『俺自身が自刃しようにも、そうなりゃアイツは本能で俺達を乗っ取って暴走して、周囲に大量の被害が出る。このままじゃ俺たちはどっちも、死神と斬魄刀だっつーのに、只の虚として死なざるを得ない。魂魄レベルで融合した俺たちと、あの虚とは、虚の側が復活できるようになるまで切り離せねェからな。

 そんな形で死ぬっつーのは、流石に耐えられなかった』

「…………」

『ンな顔すンなよ、一護。嗚呼、だから――――俺たちは、死神と斬魄刀らしく、それぞれの矜持のままに死にたかった。一人の死神と、一人の斬魄刀として、一体の虚を倒して死にたいんだよ。

 だから、お前の霊圧を使ってお互い一つになったこの状態をバラバラにして解消して……、ついでにあの虚も一緒に殺す』

 

「…………」

「………………そんな」

 

 

 

「――――――――――そんな死に方があるかよ!!!!」

 

 

 

 叫ぶ一護の声が響き渡り、梅の花が揺らめくが。

 その涙声に、応えるものは何もなかった。

 

 

 

 

 

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