メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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当初はもうちょっとホワイトがやかましい感じだったんですが、テンポが悪くなるので色々圧縮しましたのであしからずです汗


#040.最初で最期の共闘

 

 

 

 

 

「ゲッヘッヘ…………、やっぱり、駄目か」

 

 笑いながらも、梅針の表情はどこか(うつ)ろ。

 変化した自らの身体を再度見直し、そこに「鳥の羽のような」模様が一瞬走ったのを見て舌打ちをする。

 眼下を見れば、小さいガキのような隊長を始めとして、顔見知り二名、そして一護とその仲間達。

 

 一護も一護で自分のように、虚の力を宿しているが。それでも平子たちとは何かが違うと、梅針は理解していた。

 

「……どっちかっつーと俺と梅針鞭みてェだよな。目的に対して協力的っつーのは」

 

 刀をぶつけ、力を交差させ、魂を通わせたからこそ、戦ったからこそわかることもある。梅針の今の姿は斬魄刀と一体化した本質が現れていることもあり、よりひしひしと、生身の時代よりもはるかに濃密に相手の霊圧と、そこに込められた意志を感じ取ることが出来た。

 だからこそわかる。一護はどう思っているか知らないが、あの虚から感じるものは純粋な親愛。それこそ家族に向けるような、どこかくすぐったい感情の機微。

 

「とすると、一護の斬月も――――」

 

 

 

「――――上、等ッ! おおおおおおおおおおおおッ!」

 

 

 

 上空で思案していると、ふと下方から吹き荒れる虚ではない霊圧。

 一護の霊圧が、刻々と変化している。どうやら形成された仮面を無理やり剥がしているようだが、肝心の虚の方はその動きに一切反抗する素振りが見られない。

 単純に吹き荒れる霊圧に、身体が飛ばされそうになっているのをこらえるための、気合の絶叫らしい。

 

 その阿呆みたいな量の霊圧すら、同量以上を吸い上げたはずの梅針からして未だ底が尽きないというその超ド級の霊力の穴。黒崎一護と言う存在は、それ「だけ」でも十分に規格外の化け物なのだと、梅針は理解した。

 だからこそ苦笑いを禁じ得ない。呆れるを通り越して、むしろ笑ってしまう。

 

アルトゥロ(ヽヽヽヽヽ)が俺達を食い破る暇を与えねェ程に霊力、供給してくれンのは良いが、火輪で放出してもまだ制御できちゃいねェぞ一護。ありゃ、まだ虚のお前の方が扱いきれてたんじゃねェか?」

 

 一護の全身から迸る霊力のゆらめき。炎のように見えるその火輪(かりん)は、先ほどまでの虚のような誰かが表に出ていた時は黒。

 だが、仮面が砕けた瞬間からそれは青白く輝き、さらに安定しない出力はそれこそ一護の一部どころか全身を飲み込むような有様に。

 

 あれでは、一護が持たない。一護の身体が、器子霊子そろって一護自身の肉体に耐えられない。

 まだしも斬魄刀からも吹き荒れる霊力が、かろうじて氷の破片と刀の白い鍔のようなものが残っているのに制御されて、斬魄刀自体の崩壊を防いでいるように見えるのが、嫌に皮肉だった。

 

「お前は倒れとけ――――もう、徒に命を散らす段階じゃねェ」

 

 ぼそりと呟いた言葉は一護たちの誰にも聞こえず。しかし殴りかかる梅針を、一護は斬月で受ける。

 拳がぶつかった瞬間、その箇所すら「霊圧の炎」が「霊圧の鎧」のような役割を果たし、硬質な音を立てて彼の拳を弾く。

 

 後方に跳んだ梅針はそのまま腕から刃を射出するが、それすら斬月をひと振りしただけの、その動きの軌跡に追従した「霊圧のひげ」が、超極太超軽量かつ超質量のような物体として有り得ざる軌跡を描いて叩き落した。

 

 血色の障壁越しに「あれは……?」と帽子の男が目を見開く。

 平子たちは平子たちで「一護、戻ってきたんか…………?」と困惑している。

 

「……悪ィ、皆。まだ力余ってるし…………、決着はついちゃいねェ」

 

 その動きに、井上織姫が息を飲み、胸元で両手を重ねる。

 

 一護は少しだけ後ろを振り返り微笑み。

 目を閉じて、意を決して梅針を睨みつけた。

 

「……なんとなく、じゃねェ。はっきり判った。『我は刃なり』っていう、アンタが何したいのかって」

「……だったらどうする。一護、お前も時間、無ェんだろ」

「ハッ! アンタだって、俺が倒れたら終わりだろ」

「まぁな」

「お互い、もうどうしようも無ェんだ」

 

 一護自身と虚との会話が聞かれたわけではあるまい。ならばこの暴力的な霊圧の放出は、梅針の目から見ても「一護自身が」危険極まりないものなのだろう。

 それをこうして気遣う時点で何かがおかしいと、一護の仲間たちの誰もが気づかないわけではない。

 

「……、まさか、あの男は?」

「どうしたンだよ」

「…………」

 

 何かを察したチャドが、一瞬目を見開き、そして強く食いしばる。恋次が聞き返すが、チャドはそれに答えず一護たちを見る。

 

「だったら、どうする?」

 

 梅針の確認に。一護は少しだけ俯く。視線の先は見えず、一文字に結ばれた口から感情は読めず。だが沈黙はそう長くは続かない。

 お互いが、お互いに今できる精一杯は何か。この目の前の男が、最愛の誰かを殺し、あまつさえその原因となった何者かに乗っ取られるのを防ぐため、その何者かごとの死を覚悟してことに臨んでいたと。それを理解した一護だからこそ、そこに絡みつくやるせない感情を抱えたまま。

 

 ――――それでも斬月を。己の心の切っ先を、向ける。

 

 

 

「……望み通りにしてやるよ。そうすることでしか、アンタがもう報われねェっていうのなら!」

 

 

 

 ニヤリと、あえて笑い、いっそ好戦的に梅針を睨みつける一護。目元が若干赤いことに気づいた梅針は、むしろ笑みを浮かべながらもどこか申し訳なさそうで。しかしそれを口にはせず、それ以上の言葉はもはや不要とばかりに飛び上がる。

 一護もそれに追従するよう瞬歩で続き、お互い、再び空中で「腕」と「刃」の鍔迫り合い。

 

「オイオイ…………、あんだけ霊力垂れ流しにしちまって、一護のヤツ大丈夫か?」

『むしろ虚の霊圧は抜けてるな、うん』

「それ全然安心材料ちゃうで……。下手すると命削ってへんか? あのハゲ」

「黒崎くん……、私たちも何か…………」

 

「……任せよう。ここは、一護が戦うと言ったのだ」

 

 朽木さん? と、動揺する織姫。ルキアは何も言わず、ただ上空を見上げて、戦いの推移を見守るばかり。そこに映る焦燥をみてとり、しかしそれでも「一護が戦う」という決意のもとに立ち向かっている状況ゆえに、手を出さないのだと。

 それが正しいのかはともかく、今は一護も、それこそあの梅針も望んではいないのだと。

 

 しかし……、震える朽木ルキアの拳を見て、井上織姫は悲しそうな顔をして、そっとルキアの両肩に手を乗せて、共に見上げる。

 

 

 

 ――――あっちのお前に任せちまった方が、色々楽だったろうによ。

 ――――いや、それじゃダメだろ。

 ――――本意じゃねェってか。だが、出来る(ヽヽヽ)のか一護?

 

 剣閃、交わす刃の速度と威力は、激しさを増していく。

 お互いがお互いに笑みを浮かべ、お互いの全力で以って己の霊力()をぶつけあっている。

 そうであるが故に、一護も、梅針も、どこか今にも泣きだしそうな笑顔で。

 

 ――――今の俺に何が出来るのかとか、そういうのは判らねェ。

 

 言葉は交わしていない。だがお互いがお互いに、お互いの意図する心は明白だった。

 

 ことここに至り、二人の虚と二人の死神は、会話を交わすこともない。

 

 ――俺に出来ることは……、斬月のおっさんが貸してくれた力に、全力で応えるだけ。

 

 ただでさえ放出される霊力が尋常ではない斬月に、さらに霊力が込められる。袖白雪の鍔を固定している氷もあとわずか、それにすらヒビが入る程に、一護は一切の霊力()を容赦しない。

 

 ――――ありったけの力を乗せて、アンタを斬るだけだ。

 

 対する梅針は。一護のそのあまりにも巨大な斬撃にもなりそうな霊力の束となった刃に。思わず怯み、両腕を前に構えて防御の姿勢となる。だが、それすらビリビリと焼き付くような霊力の奔流が、梅針の腕を貫通して胴体ごと薙ぎ払うように切り裂き。

 

「…………月牙天衝」

『――――月牙×字衝(げつがじゅうじしょう)

 

 放った月牙、刀傷から拡大したは、梅針の身体を両断する程の霊圧で。しかしそれでも切断までできないだけ、梅針も梅針で規格外と言うべきか。

 しかし、瞬間。自分の声に重なった誰かの声に気を取られる一護。一瞬だけ脳裏に、あの梅針の精神世界で白い虚の自分が、「二本の斬魄刀」で梅針を切り裂いているようなイメージが浮かび、消え。

 

 それと同時に、梅針の卍解たる全身に罅が入り。

 

「悪ィ……な…………。ありがとよ、一護(斬月)

「――――――――ッ!」

 

 その声に振り替える余裕もなく、一護は瞬歩でその場を離脱。

 

 ほんの数瞬遅れ、梅針の絶叫と共に巨大な霊圧が梅針の内側から全身を飲み込み、空中で巨大な閃光を伴う大爆発を巻き起こした。

 

 

 

 そして……、一護はピンチだった。

 

 

 

『―――――うおおおお!? 早く、もう霊力止めろテメェ、一護!? 火輪解除しても霊力止まらねェとかどう考えてもはしゃぎ過ぎだお前ッ! ヘンな癖ついちまってるぞ! この馬鹿がッ! 

 あぁ姐サン、意識をしっかり持てよ……! オイ子雪もとっととこっち来てつなぎ留めろやッ! オッサンもちょっと限界だぞこりゃ!』

「は、はァ!? って、誰が馬鹿だコイツ! というか止めろってどう止めんだよそもそも、前だって何かルキアがよくわからねェ感じで……、つーか何だこれ!? と、飛ばされる……!?」

『つべこべ言わず朽木ン所行けッ! 行きゃ最悪あの下駄帽子が何とかすンだろ!』

 

 梅針を倒してしばらくして、突如また視界の半分が黒くなり、虚の自分が出てくるのかと思いきや。何故か大慌てな様子でまくし立てるその虚の自分の様子に、一気に毒気を抜かれる一護である。

 というか姐サンは冗談でも何でもなく本当にその呼び方なんだな、などと現実逃避する暇もなく、一護は一護で、ルキアや浦原たちのもとへ急行する。……急行過ぎて霊圧の調整が上手く行かず、解除されない火輪による霊力ブーストでもされたように地面に下半身が刺さる一護だが。

 これには恋次もからかう余裕すらなく、一護から立ち上る霊力の奔流の柱を前に「馬鹿一護、テメェなんて状態で帰ってきやがンだ!?」と文句を言いながら蛇尾丸を地面に突き刺す。

 井上織姫は盾を構え「一護ー!?」「黒崎くーん!?」とルキア共々飛ばされるのを我慢しており、チャドはチャドでそのフィジカルを生かして接近を試みている。

 

 ちなみに平子をはじめ仮面の死神たちは、既に飛ばされて森の木に叩きつけられている。位置的にむしろ着地した一護に近かったせいで、思いっきり弾き飛ばされた流れだ。日番谷隊長も姿が見えず、おそらくは似たような状況なのだろう。

 

『こっちもそっちも状況が混沌としていやがる……。シリアスに締めろよお前、梅針鞭あっちにちゃんと落ちたっつーのに』

「何でそんな呆れた感じの声出して、俺にクレームつけてやがんだよ!? 俺、別にそんなに悪く無ェよな!! 確かに無茶はしたけど!」

『オメーがそうやってクソボケかますから、たつきの奴はいまいち接し方がわからなくなっちまったし、井上だって怖ェ印象と優しい人っつー印象がグダグダになって本心が上手くとらえきれねェし。朽木は……、何だアレ?』

「俺が知るかッ!」

 

「…………あそこまでいくと、まるで斬魄刀との対話ッスね」

「何を悠長に構えておる喜助!? このままでは一護を中心としてこの一帯が消し飛ぶぞ! 梅針の比ではないわッ!」

 

 そして空中に退避した浦原喜助と、彼に抱えられた猫の夜一である。浦原は何やら冷静に一護の様子を観察しているが、夜一は夜一で気が気ではない。早い所弁を起動させねば、と同じく空中に霊子を固定して立っている鉄斎に、浦原は「あ、そこは大丈夫ッス」と軽い調子で言った。

 

「先ほどお父様から連絡がありましてね。……こんな状況ですが、任せちゃってもある程度は大丈夫だと思いますよ。

 ねぇ、石田サン(ヽヽヽヽ)

 

 

 

「……操霊子(ハーツマニューバ)起動(スタート)

 聖隷(スクラヴェライ)――――――――ッ」

 

 

 

 そして、上空から一護めがけて落下するのは、石田雨竜である。額に包帯こそ巻いているが身体の傷はほぼなく、十字のあしらわれたシャツとズボンを着用しているあたりは相変わらずの自己主張と言うべきか。

 石田!? と下から驚愕する一護の目の前に落下した雨竜は、そのまま手を上空に掲げる。

 

偽大滅弓(ぎだいめっきゅう)天陽弧雀(てんようこじゃく)!」

「石田、お前それ……!」

「いつかの時と同じだよ、黒崎。今度は――――最後までやりきるッ」

 

 一護たちが見たことのない装束に身を包んだ石田であるが、手を差し向けた上空に言葉の通りか巨大な弓が形成される。つい先日、梅針と戦っていた時に構えていた弓を何倍にも拡大したそれは、所々に妙に凝ったディティールが形成されており、なんとなく製作者たる彼の趣味を感じさせる仕上がり。

 その全体に無数の矢を形成すると、手元に形成した小さな弧雀の弓を引き、空に放つ。

 

 同時に上空へと連なる数多の矢。それらは空中で霧散するが、何度も何度も雨竜が射出を繰り返すため、あたかも花火のような光景に。一護の溢れる霊力を無駄に消費した連撃であるが、時期的に丁度良いイメージの絵面であった。

 

 うわー綺麗! と素直な感想の井上に、こればかりは流石のルキアも困惑が勝っていた。

 

「これだけ撃てば、僕の霊子操作が安定せずとも君のその無駄な霊力くらいは抜けるはず……!」

「無駄なって何だよ!? これなきゃ、梅針の奴だってヤバかったんだぞ!!?」

「生憎事情はほとんど知らないよ。察するところも、多少はあるけれどね……ッ! 本当にじゃじゃ馬だな君の霊力は、見ろ! 霊子で編んだ外装が焦げてしまってるッ!」

「だから俺じゃどうにもできねェって!」

 

 なお、コントのようなやりとり自体は数分で収まるが、その間ずっと罵り合う様な仲良しさを発揮した一護と石田に、織姫やチャドもすっかり危機感の抜けた笑顔を浮かべていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

『し、しし……死ぬかと思いました……、今回ばかりは我が使い手のもとに戻れず、この場で海に飲み込まれて死ぬのかと……』

『あー、あー、頑張った! 姐サン頑張ったから、な! うん! ほら、ハグくらいなら……』

『うぅぅ…………、うぅ……』

『ヤベェな、マジ泣きじゃねェか……。都でもこんな泣いたの見たこと無ェぞ』

 

 いやまぁ、あっちはあっちで結構心が強い女だったつーのは「志波海燕」としても「志波都」としても両方の視点から心情を理解しちまってるンだが、だからといって姐サンの心が弱いとかンなことは言わねェ。誰だって生命の危機にさらされりゃ、こうもなるよなァうん。

 とりあえず表から帰ってきて、石田が協力して一護の霊力放出の暴走を止めたり、改めて朽木の奴が一護に栓をしたりといった一連のことが終わって、とりあえずこっちもこっちで落ち着いた。

 

『がう……、がう……』

『ホワイト。お前もご苦労だったな。一護と同時に梅針鞭を斬って来たのだから』

『オッサンも、こっちとあっち繋いでたのお疲れ様だな。…………つーか、子雪の奴完全におねんねじゃねェか。遊び疲れでもしたか?』

『これで客人が、一護の涙の海と霊力の渦の中心に巻き込まれるのだけは徹底して回避していたのだ。遊びもしていたが、頑張ってはいたのだ』

 

 そう言いながら、オッサンはオッサンで丸くなりながら空中で寝る(ヽヽヽヽヽ)子雪の頭を撫でている。いや、地面に寝るんじゃなくって浮かんでるっつーか、このあたりなんとなくドラゴン要素みてェなのを主張してる感じで何とも上手く感想が出てこねェ。

 姐サンは姐サンで命からがらの状況があまりにもアレだったのか、俺に抱き着いてさっきからずっと会話が成立しねェし。

 

「どういうこと、だったのだ」

 

 朽木の確認の言葉に、一護は自分が見たことを続ける。梅針は斬魄刀と一体となり、自らの内に斬魄刀と一体となった虚を抱えていた。その虚ごと死ぬために、その方法と、死に場所を探していたのだと。

 俺としても何と言うか……。「虚化した斬魄刀」という点で、アイツとは微妙に立場が似通っているのもあって、心中複雑だ。ほぼ介錯だから殺したっつー訳でもねェが、一護自身の意志で梅針を殺したっつーのも含めて。

 

 坊や(ニーニョ)の一護に背負わせるには、そこそこ辛いモンを寄越してくれやがったなァ、アイツ等。

 

「だァから一護の霊力使って、贖罪代わりに自殺したがったっちゅー話かいな。……何や、とんだピエロみたいな役回りやなァ、俺ら」

 

「だが、アイツが巻き起こした被害だって馬鹿にはできねェ。自分が消滅するのを対価とするにしても、少なくとも俺達護廷十三隊相手には、止める義務がある」

 

 まァそこは判らないでもないわ、とか日番谷に言う平子元隊長は本当にコイツ何というかなァ……。胡散臭そうな言いぶり振る舞いに反して完全に本心なのが解ってる立場としちゃ、姐サンあやしながらでも眉間に皺が寄っちまう。

 

「それじゃ、梅針さんは……」

 

 井上の確認に、一護は地面を見る。朽木の視点からすりゃ、全員に自分の表情をさとらせまいとしてるのがよく判るンだが、こっちにゃまたポツポツと雨が降り始めてるから正直もう勘弁してくれ……。

 姐サンの蓋が完成しちまったから外に出れない分、こっちから揶揄って少しでも気を逸らしてやるのも出来ねェし。

 

「……死んだよ。残ったのは、アイツの、アイツ自身だった、斬魄刀だけだ」

「それじゃあ……」

「……、一護…………」

 

 あぁ……、まぁ、あー、何と言うかなァ……。

 一護たちの見つめる先には、妙にギザギザしちまってる斬魄刀が地面に刺さってる。常時開放型だったのか、あるいはアレが普段の姿なのか。ともかく、梅針鞭の本体だろう、斬魄刀だけが地面に突き刺さっている。

 

 それを見て、また顔を地面に向ける一護に、阿散井は微妙に居心地が悪そうだ。

 阿散井から見ると、ちょっと泣いてるのが見えちまう位置関係だし、励まし方がわからねェ感じだな。阿散井の奴は朽木もそうだが「殺し殺されうる」場所で育った経験がデケェから、今の一護が抱えてる痛さっつーのには鈍感だ。ただ「そのことが判る」くらいには、アイツも死神だ。今の自分がどう言葉を重ねても、上手く励ますのは難しいって思ってンだろう。

 

 こういう時、チャドや井上ではなく、石田の言葉が刺さる。

 なにせ石田は立場としちゃ、ある意味で一護に最も近いからなァ。

 

「……だったら、君はそんな顔をするべきじゃないだろう。黒崎」

「…………石田?」

「彼とは一度戦っただけだが、だからこそ判ることもある。きっと黒崎、彼は死に際、君に感謝したはずだ。じゃなければ、君もそんな顔はしないだろう」

「…………」

「だったら胸を張れ、死神代行。

 君は仲間ではなかったにしろ、それでも、共に戦う誰かとして、彼と共に『虚を倒した』。そして街を守ったんだ。

 少なくとも、そのことだけは事実だ。間違いなんかじゃない」

「……おう」

 

 まだスッキリとはいかねェが。それでも石田の微妙な慰めの言葉で、一護は少しだけ顔を上げて、疲れたような笑みを浮かべた。

 

 

 

『あたし、こういう男同士の素直になれない友情好き…………』

『って子雪、テメェ何普通にしゃべってンだ!? びっくりしたろォが!』

『きゃッ!』

 

 

 

 さっきまで寝てたくせに、一護と石田のやりとりをニヤニヤ生暖かい目で見守ってる子雪に、反射的にツッコんじまった。

 いやお前そこまでナチュラルにしゃべれたのかよッ!!? 普段からそうやって話せコイツッ!

 

 

 

 

 




次回、梅針関係のエピローグと何かのフラグ予定
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