例によって独自解釈、独自ネーミングなど注意
「…………それで、アレはどうするんだ?」
さてもう引き上げようかという流れになり、仮面の軍勢も「もう要件終わりやし目的達成もクソもあらへんわ」と言う状態。今の状況で闘争の空気と言うわけでも無く、敵意も霧散している。ラブと呼ばれたジャージの男にいたっては「じゃ、またな! ちびっ子隊長」と嫌に気安げにすらなっており、若干日番谷がキレかけたりしていたが。
そんなことより、ふと思い出したように指さしたチャドの一言で、全員がその先にある斬魄刀を見やった。
さきほどの戦闘で倒した梅針、おそらくその斬魄刀たる梅針鞭。ギザギザに刀身が削り取れたようなそれは、地面に刺さったまま堂々と鎮座している。
思案すること数秒、一護は井上に肩を借りながら恋次へと話を振る。
「まぁ確かに現世に残ってたって危ねェよな。
恋次、お前持って帰れよ」
「あぁ!? なんで俺があんな気持ち悪ィやつ」
「気持ち悪いは可哀想だろ……、いや、というか当たり前だろ! あのメラって人がそのうち持って帰りに来ンのかもしれねェけど、俺が持ってたって意味無ぇだろ。死神代行だし、尸魂界の関係者っつーわけでも無ェし保管場所も無ェし。
あとあンだけ虚の霊圧放ってた斬魄刀とか、刺さってたら近所迷惑だろ」
「馬鹿野郎ォ、トドメ刺したのはお前なんだからお前が何とかしろよっ。
そんなことより、最後まで手出ししねェでテメェの情けねぇ戦いぶりを見守ってた俺たちに、アリガトウの一言くらい無ぇのかよ!」
「情けねェ、だと……?」
「緊張感が無いね、君たちは…………」
「ま、まぁ黒崎くんたち、二人とも落ち着いて……」
(まだ落ち込みも回復していないだろうに、律義にツッコミを入れおって……)
急にいがみ合い出した一護たちに呆れる石田。織姫が止めに入るお陰で取っ組み合いにはならないが、回復させてもらって早々かなり元気である。余計な一言を言ってしまった形になるチャドだが「こっちで預かろうか」などと世迷言を言えば、流石にそれは一護と恋次共々「それは待て」とストップをかけるのだが。
ちなみに浦原は浦原で平子から確認されはするが。
「あれ、そっちで引き取るんが筋とちゃうんかい。フツーに仲介業者なんやし」
「まァそうっスけど、面白いので見ておきましょうよ」
「ホンマええ性格しとるな、喜助……」
どうやらコント時空を見守る方向性に舵を切っているらしい。
日番谷は日番谷で残りの参加者三名に通信機で電話をかけながら「何やってんだ、とっとと来いッ!」と副官に文句を言ったりと、状況はどんどん混沌としていった。
「松本のやつ、途中からサボってたな。最近真面目に仕事しているかと思えば…………。いや、確かに出来ることは少なかったが――――、ん?」
ひらり、ひらりと地獄蝶が舞う。
突然目の前を舞った蝶を前に、一護たちも一度騒ぐのを止めて、視線がそちらに吸い寄せられ。
そして現れる障子扉のような何か、俗にいう穿界門であるが、その周囲をしばらく舞ってから戸が横に開き、奥から空間を裂いて現れたのは。
「お待っとさん。…………あれ? こらあかん、視線がひゃっこいわ。
「市丸?」
現れたのは、見たこともない死神。痩身に白い髪、にやけたような笑顔が張り付いた顔が嫌に印象的な、日番谷同様「白い羽織」を羽織った死神。
誰だよ、という一護のリアクションよりも、反応が壮絶だったのは平子たち
そんな彼らを一瞥すると、にやにやとしたまま市丸と呼ばれた男は「ん?」と不思議そうに頭を傾げる。
「誰です? なんや、昔に会ったことあります、ボクら」
「平子?」
「…………チッ、一体何がどうして今日はンな意味わからんことが続くんや」
冷汗を流す平子真子に、浦原はしかし帽子の位置を整え、視線の先は見えない。
そんな彼等に肩をすくめ「いやぁ色々堪忍、な?」と言ってから、再び日番谷の方を見た。
「すんませんなぁ、日番谷隊長。ちょいと
「いや、むしろそれはこっちの方が後で雛森に色々言われそうなもんだが……。そうか、梅針の霊圧はそっちでもそれだけデカく計測されたって事か。
緊急とはいえ、隊長であるお前も送られてくるとはな。早すぎる気もするが」
「そりゃホンマ、難儀しとりますわ。急ぎましたし。
ボク今日非番やったんに、藍染隊長から無茶ぶりされとんし。上も緊急やからって『限定霊印』せんで無理やり送り飛ばされましたわ」
「何やってんですか、藍染隊長……」
「ちょっとオトモダチの癖でも
「隊、長? ってことは、冬獅郎と同じ――――」
ぴくり、と日番谷が一護の声に反応する。デフォルメすれば半眼で睨んでいるような絵面で「日番谷隊長だっ」と訂正するが、一護からすれば実際小さい子供に違いはないので、態度はあまり改めるつもりは無い。ここ2、3日で多少仲良くなった気がするし。
「あー、そっちが黒崎一護クン? 僕、市丸ギン言うんや。よろしゅう」
「あ、あぁ……?」
「ん? 何か困ってそうやな。何かお兄さんに相談してみ? ボク、結構頼りになるって評判なん」
((う、胡散臭い…………))
一護と、会話すらしていないが石田の共通の感想だった。
純粋な厚意で言ってくれてるのか、何か別な思惑でもあるのかは定かではないが、ともかく市丸というらしいこの隊長、腰の斬魄刀に手をかけながらそんなことを聞いてくる。
その斬魄刀がいつでも抜ける状態であり、その先が浦原たちに向いているのを、一護は状況がカオスな状態から続いてること、明確に戦意を出していないことから察することは出来ない。ある意味でその構えが、仮面の軍勢たちへの牽制になっていることも。
「(向こうから『明かさない』ということは、何かしら意図はあるのでしょうが……)」
「(喜助、連中どれくらい
「(それが判れば、アタシもあっちで苦労はしなかったでしょうがね。地獄蝶すら騙しているとすると、下手をすれば……)」
「おーおー、これが例の梅針って死神の。……なんや、ノコギリみたいな形しとるんね」
浦原達を尻目に、市丸は黒い軍手のようなものを取り出して手に付け、梅針鞭を引き抜く。……指先で摘まんで。あたかも道端に転がったばっちぃゴミでも拾うように。
もっと丁寧に拾ってやれよっ! と思わず一護。なお「正気か?」とルキアや恋次から見られている辺り、死神からした梅針鞭という斬魄刀の扱いがうかがい知れる。
「いや、せやかて縁起でもあらへんし。聞きかじった所によると、なぁ?」
「まあ否定はしねェが……、軍手くらいでどうにかなるのか?」
「そこはまぁ、それなりに。ふぅん…………、『鞘が無い』んやね。珍しい」
「鞘?」
ふと、手元の斬月を見てしまう一護。まだテンションを引きずってるせいで解放状態の斬月なのだが、その刀には鞘が消滅している。状態は違うが、どこか梅針鞭の今の状態とも似通っていると、なんとなく一護の中にシンパシーのようなものが浮かんだ。
ただ、わざわざそれを言及する意味が分からない。それゆえの問い返しだったが、市丸はそれに答えず、しばらく眺めたり触ったりした後、やっぱりばっちぃ物でも触るようなノリで地面に突き刺した。
「…………日番谷隊長、これもしかしてボク持って帰れとか言われるん? 何もしてへんし」
「い、いや、無理にとは言わねぇが……」
流石の日番谷にも躊躇があった。市丸にしては珍しく、ニヤニヤしながらもちょっと引いた表情に困惑が見られる。
「じゃあ
お
「――――ちょっと
再び開き、あっという間に閉まる門。そこで背中を向けて適当に手を振っていた市丸に、上空から乱菊の声。背中を向けたせいで彼の表情は見えないが、若干足早に門の奥へと走っていく姿はどこか焦っているようにも見える。
扉が閉まったと同時に乱菊が扉の目の前に着地し、「もう何なのよ~~~~~!」と関係者以外にはわからない絶叫。
わずかに織姫が「あれ? もしかして……」といつかの台詞を思い出して、何かを察したように生暖かい視線を送ったりと言うことはあったが。
結局この梅針鞭だろう斬魄刀は、最後の最後まで押し付け合いが続いた後に「アタシの店で引き受けますよ」と浦原が軽い調子で受け取る運びとなった。
最初からそう言え! と一護たち数名がツッコミを入れたのは当然である。
※ ※ ※
「Foo~~~~~~! おかえりのERIーOKAだNe、メラちゃん! さぁさぁ見せてくれないかい、ちゃんボクの浅打ちゃ~~~~ん!」
「梅針鞭じゃないの?」
呆れたようにそう言いながら投げ捨てる様に斬魄刀を手渡す燧ヶ島メラ。彼女から渡されたそのノコギリめいたギザギザ刃の梅針鞭を受け取った“刀神”二枚屋王悦は、例によって高いテンションのまま手を突き上げている。
青空の天球。より上には宇宙が見えそうなほどの高い成層圏に位置するここは、いわゆる〇番隊が守護する霊王宮の一角にある。鳳凰殿と呼ばれる此処は…………、例のキャバクラ街、一護たちが初めて見た尸魂界の風景(あまりに不適切であるが)からは、それなりに離れた位置にある。
そんな湖の上で、妙に幅広いボートの上でしばらくテンションをアゲアゲにした後、サングラスをずらして鋭い視線を刃に向けた。
「あれあれ~? オカシいNeオカシいNe、シーオカだNeェ~? メラちゃん気づかなかったのかNa? いや、むしろ『斬魄刀は』気づけないのかNa?」
「何に」
「Oh!? 着替えるの早くないKa!? さっきまで千手丸から誂えてもらった死覇装だったのにSa?」
「あんまりあの人の作った服着たくない……」
「いやいや性能は保証するから、下に行くときは我慢してくれない? ほら……、オネガイシマッス!」
「その妙な姿勢流行らそうとしてるわけ……?」
倒立とも土下座ともつかない妙な姿勢でメラに頼み込む刀神は、既にボロボロな衣服へと着替え気楽な様子のメラから軽くあしらわれていた。ちゃんボク悲しい、こんなに頑張って新しいフォーマルスタイル考えてるのにSa……、などとブツブツいじけだす刀神はともかく。
「もともとチャン
「?」
「アルトゥロ……、いや当時のならわしからして
このあたりは、メラちゃんにも話したNe?」
「……
「袖白雪はまだ良い子というか『理性』の部分だから聞き分けが良かったけどNe。
ともかく斬魄刀として今残ってる不滅王は、既にあの宝物のお陰で『時代を超過している』本体と別な扱いとして、つまりは不滅王
「羽根……」
梅針鞭に寄生したのもこの羽根さ、と刀神は目を細めて、梅針鞭を見る。
「和尚からすれば三界支配というか、ある意味で霊王狙い。霊的に成長し続ける破面なんて面倒極まりないからNe。封印されたとしても、その後に自らの破片を使って肉体を再構成し、この時代に『意識を呼び戻す』なんてことになったら、それこそ目も当てられない。
だから肉体になる要素が全部消えてる方が、和尚としては好都合! ちゃん僕的には大不評! チャン梅も梅針鞭も『本当に一つになった』ってのに散々すぎる扱いSa」
だっていうのに、そこまで彼らを追い詰めたというのに。
「この
「…………! えっ、こっちのせい?」
違う違う、と慌てるメラに刀神は笑う。実際問題本当に理由が異なるのと、それはそうとして真面目な彼女に罪悪感を背負わせることもないという当然の判断からの振る舞いであるが、ちらりと上空の宮を見て「これはあっちと和尚、どっちの意志かNa?」と微妙な表情。
「火事場泥棒なんて和尚からすれば見逃す訳はないし、どっちかの確信犯なんだろうけどNe。……千手丸だったらもっと仮説立てられそうだけど。
あー、ややこしい…………。チャン一に討伐されて『魂魄が溶けあって』もはや只の浅打に戻っちゃったしNe。それにしては魂の形がだいぶ刷り込まれてしまってるし。どうしたものかNa、君。持ち主と混じったせいで鞘も意味を失って消えちゃったし」
「…………ややこしいっていえば、あの斬月。あれ、一体何? 霊圧も変だし、解号も
「プライベートの詮索はあんまりよくないSa。ただ、解号は別に不思議じゃあない問題ない。
そもそも斬魄刀何て種類がどれだけあるかって思えば、自ずとフレーズも似通ってくる手繰るネーミング。チャン一の斬月は『
名前だって似たような音、似たような名前ってのも、そう不思議って訳でもないのSa――――――――斬魄刀同士のネットワークに年代の開きがあるならNe」
まあだから特殊な場合もあるんだけれども、と、梅針鞭だった斬魄刀を肩に担ぎながら、どこか遠くを見る刀神は。
「斬魄刀の解号被る名前被る、時代がずれれば似通うしセンスも在庫なし。
だけれども、同時代に同じ名前で同じ解号の斬魄刀が存在するのは問題がある。
そう言う場合、その片方は
氷輪丸、と。
呟いたその名前に、メラは眉間に皺を寄せて「胸糞悪い」と毒づいた。
【おまけ・滅却師白書】
睡「本日は雨竜様の兵装、ならびに
雨「ナナさん!? い、いや、この場所はそもそも一体どこなんだ……? 何だいこのプロジェクターとホワイトボードは?」
睡「滅却師としての基本的な弓に関しては、霊子兵装『
雨竜様は度重なる訓練の甲斐もあり、苦節何年目かついに半実体化から完全な実体化を果たしました。あまりに長い期間かかりましたが、それがこちらです」
(プロジェクターに投影)
雨「一体いつ撮影したんだ、こんな映像…………。というか、ナナさんの殴りかかってくる映像も映ってるんですけど、いいんですか? 深窓の令嬢みたいなイメージがあったんですが……」
睡「女中の恰好をしている時点で、特に問題はないです。
では続けて壮身霊衣。一部の滅却師が
雨「みそっかす…………? 古風な表現を使いますね」
睡「これを使用することで、どれほど才能のない底辺の滅却師であっても、空間霊子を収束して着衣装備を形成、滅却師特有の走法に該当するものなど、基礎がなってない滅却師でもある程度の効果を見込むことができます」
雨「い、いや、確かに僕自身そこまで才能があるとは思ってはいないけれど――――」
睡「そもそも
雨「さっきから聞いていたら何だ何だ!? ちょっとナナさん、その手元のカンペ見せて……、やはりか石田竜弦! この脚本を書いたのは! そんなに僕を愚弄して愉しいか!」
睡「雨竜様、落ち着いてください――――」
(もにゅん)
雨「って、わー!? 何でいきなり抱き着いてくるんですかッ!(というか
睡「父より、錯乱する男などこうすれば一発で冷静になると」
(もにゅん、もにゅん、もにゅんもにゅんもにゅん)
雨「別な意味で冷静になれないんですけれども! 一体どういう教育をしているんだ、ナナさんのお父様は――――!」
そんな映像をテレビ越しに見ながら、スタジオの外で。
竜弦「……やはり絵になる組み合わせだな」
一心「いやどんな趣味してンだよ、お前。というか……、
竜弦「…………」
メタな話、二人の父親が何とも言えない表情で会話をしていた。