後半(?)の話は、仮に雑誌連載だったら載ってはいない部分です。
色々細かい所の独自解釈注意
「全く状況が読めぬのですが……。日番谷隊長、何ゆえ一護の家に?
…………む、今日のカレーはスパイシーさが足りなくて中々良い味ではないか。つけあわせも、きゅうりの漬物とは気が利いている」
「冬獅郎に合わせたンだろうよ。夏梨のヤツ、どーも年下のガキンチョみてェに思ってそうだし、辛いの苦手に思われてんじゃねェのか?」
「身長はそう変わりあるまいに、難儀な……。む、というか一護。貴様いま私が子供舌だと愚弄したか?」
「いや、お前って確か百何年前の生まれとかだろ? 明治頃じゃねェか。そんなにスパイスとか香りとか味強ェやつって、今みてェに入って来てなかったろ。苦手でも変じゃねェよな? 俺の誕生日の時のケーキとかも匂いが甘い甘いって、持ってきてやったのに煩かったし」
「そう言われればそうだが…………、それはそうと私が子供舌と言ったかどうかは、否定しなかったな」
「ぎくっ」
「まぁ良い。そこに直れ一護?
「いや、お姉さんって。年、無理があンだろ。どう考えてもババ――――ぷぁいとっ!!!」
「……いや、お前等の状況の方が意味不明なんだが…………?
あと、日番谷隊長、だッ!」
薄紫色なワンピースのミニスカートすら気にせず一護に空中前回転蹴りを放つルキアと、黄金のダブルキック(?)を顔面に食らい倒れる一護に、日番谷冬獅郎は頬が引きつっていた。なんならルキアとの一護の掛け合いに「ね〜さぁ〜ん……」とガタガタ押入れの方から声(?)も聞こえ、困惑は加速する。
気を取り直し、一護の自室にて。皿に半分のカレーを前にした日番谷は、わざわざ「おかわり!」ともう一皿要求してから部屋に上がった一護と、その一護が持って来たカレーを特に何の警戒もなく食べているルキアを前に、困惑の一言。半眼で、漫画ならデフォルメされているような表情だろう。
もとは一階のリビングにて「本気か? 本気なのか!? テメェ、本気でウチの夏梨のこと……!」などと焦燥感やら何やらにかられて暴走する一護に「てめえの家族、一体何なんだ!?」と夏梨にキレる冬獅郎という状況が発端である。流石に色々な感情が暴走していた一護であるが、一抹の理性が我に返ったことで「詳しくは上で聞き出してやらァ!」ということになった。何分、彼の正体が死神であることを前提とした話も、下では難しく細かい確認もできないだろうという判断である。
流石に閉口して「付き合ってられねェ」とその場を後にしようとした日番谷冬獅郎だったが、家の玄関めがけて全力疾走し「ここは通さんぞう! 父さんだけにな、ハッハッハ!」などと高笑いする黒崎一心の姿に、ギャグマンガのような顔で唖然とする。「アンタが一番何考えてるかわからねェですよ!」「心臓に毛でも生えてるんですかッ!」と丁寧語交じりにキレてかかれば、一心は一心で「いやまぁ、事情くらいは聞いておかないとな、大人としては」とか「それはそうとして夏梨はやらんぞ!」などと叫ばれる。
もはやどうしようもなく、仕方なしに食べかけのカレーを片手に上に登って来て……、室内に入って早々、一護が床でゴロゴロしているルキアを猫のように首根っこから掴みベッドへ投げて現在に至る。
ガミガミと「乙女に対する扱いかそれがー!」とキレるルキアと仲良く(?)喧嘩する一護は、そっとカレーを渡して地面に座る。
ルキアもルキアで、慣れたようにベッドの上に座り「わざわざスマヌな」と盆の上のカレーに手を付けていた。
阿散井は連れてこれねぇな、とボソリと呟く日番谷のコメントは、二人には届いていない。
「まあ、お前等が良いなら俺から言うことは無えが…………」
「どうした、冬獅郎?」「どうされたのです、日番谷隊長?」
「いや、もう良い。ある意味で大本命に迫ってることになっているから、俺もメリットがない訳じゃない」
「テメェまさか、本気で夏梨を……ッ!」
「そのボケはもう良いッ!」
というかしつこいぞ、と怒る日番谷に「けどよォ」と不満そうな一護である。そんな一護の様子に朽木ルキアはニヤニヤとして「うむ、うむ。しつこい兄は嫌われるぞ、もっと
なお、一護の内在世界では「朽木との距離感ぶっ壊れてンだよなァ……」とホワイトが愚痴りながら振子雪を羽交い絞めにしていそうなものだが、聞こえないのでないものとして扱う。
「あっ、それから……、一応コイツのことは内緒にしといてくれよ? バレたらヤヤコシイことになるし、家族の記憶をあんま書き換えられたくねェ」
「…………」(※もしかしてコイツ等一緒に住んでるのか? という疑問の目)
「ヤヤコシイとは何だ、ヤヤコシイとは! 古来より押し入れに住まう存在は神聖なものだと、漫画に描いてあったぞ!」
「参考にするものが間違ってンだろ。というか仲間来たンだから、とっととウチから出てけよ。一応、俺だって男だぞ?」
「たわけ、が。対象外というやつだ対象外、このガキめ。
大体、袖白雪が貴様の内にある以上は、我らは一蓮托生なのだぞ。有事の際にこんなうら若きか弱い乙女一人でどうしろというのだ。もっと合理的に考えろ。……せっかく押し入れの中も色々入れて充実してきたというのに」
「うら……、若き…………?」
「反応するところがそこかー! もっと言うべきことがあるだろうに、このたわけーッ!」
「おぉ、おおおおお!? く、首は止めろ! 脚細ェから巻き付いて締めてくンじゃねェ、外しにくいだろォが……!!?」
「何を雑に乙女の柔肌を触ろうとしているのだ貴様ァー!!」
とにもかくにもきゃっきゃうふふと戯れる(?)二人に、もそもそと適当な表情でカレーを食べる日番谷。漫画ならテキトーな描き方のデフォルメ顔であろう。押し入れから「くぉっら一護ォ!」という声も聞こえ一瞥するが、ガタガタいって出てくる気配はない。「何なんだ一体……」と冷や汗をかきつつも、一護に「お前……、そのうち刺されねえように気を付けろよ?」とだけぼそりと言った。
なお、一護の内在世界では「苦労性がにじみ出てンな、すまねェ……」とホワイトが(以下略)。
何度目か気を取り直して、日番谷から事情を聞けば、案外大したことはなかった。
「広場の占有権巡って、サッカー勝負で助っ人だァ?
……いや、何か悪ィ。世話かけたみてェで」
数日前に遭遇した黒崎夏梨。彼女から物凄い雑な流れで「あんた、サッカー得意じゃないか?」と誘われ、紆余曲折あり彼女のサポートに入った日番谷。子供同士の縄張り争いと言っても、彼個人の過去と比較してもあまりに平々凡々な事件で、とりたてて何か意見がある訳ではない。
「本当に大したことじゃねえから、別に気にするな。
まあ、気になることは他にあったがな」
「気になる事、とは?」
おそらく一護のマグカップと思われる大き目のそれで珈琲をのみながら、ルキアは日番谷に確認した。
日番谷冬獅郎は続ける。その後、サッカーの試合で勝った後に
「記憶置換のかかりが浅いように見えた。つまり、アレに抵抗できるくらいの霊圧が育ちつつあるってことだ。それにそもそもアイツ……、
「なん…………、だって……?」
「それほどまでに霊感、霊力が強くなっている、と?」
驚く一護と、何かを警戒するルキア。両者を見て、日番谷は思う。血筋を考えれば、そこまで特殊なものではあるまいと。
浦原喜助がこの場にいたのなら「死神となった黒崎サンの霊力の影響を強く受けているのなら、ない話じゃないっスかね。井上サンたちのように」とある事ない事続けていそうなものだが、この場の彼等にそういう
「死神になる以前のお前もそうだったかもしれないが、霊力が高い人間は虚から狙われやすい。ましてや死神の霊体すら確実に視認する
とにかく、ちゃんと気にかけてやれ」
「当たり前だ」
特になんら気負いもなく、堂々と首を縦に振る一護に、日番谷も少しだけ笑みを深くした。
ただ、それはそうと。
「……で、結局ナンで冬獅郎がウチに来ることになってんだ? 今の話の中に全然なかったろ」
「…………仕方ねえだろ、ガキの相手は得意じゃないんだ」
「えっ?」
「今てめえ人の事、ガキが何言ってンだこの豆粒ドチビとか思いやがったか?」
「い、いや、そんなこと微塵も思っちゃいねェよ俺ァ!!? 冬獅郎、ルキアより年上なンだったよな、そりゃー、ガキじゃねェよな、あ、あははー!?」
「(動揺しすぎだぞ一護……)」
突如「豆粒ドチビ」のフレーズと共にお茶の間に流せないような鬼の形相を披露した日番谷に、流石に冷や汗を流して誤魔化しにかかる一護。やべェ洒落にならねぇと本能が察知したのか、とにかく下手な事だけは言うまいと汗タラタラである。
詳しく聞けば、流れ自体はなんのことはない。冬獅郎の運動神経を見た夏梨含む子供達からの質問攻めで、どこに住んでいるのかという話題に上手く答えられなかったのが原因だ。
「浦原商店のスペースを借りる時、契約で外部にその話はしちゃいけないことになっていたからな。催眠誘導の結界に何か支障が出ると問題があるらしい」
「そんなことしてンのか、あの下駄帽子……?」
「あやつもしや、税金とか払っていないのではないか……?」
「ま、そーゆー話は知らねえが。結果的に『行くとこないならウチ来なよ』とか言われて、まあそんな感じだ」
何だやっぱ遊子の早とちりだったか、と肩から力を抜いて微笑む一護に、「いやさっきまでの本気の殺意は何だったんだお前……」としらーっとした目を向ける冬獅郎。
ともかくそんな流れで、数日は黒崎家に世話になる運びとなった日番谷であった――――のだが。
「……で、何かわかったことはあったか? 氷輪丸」
深夜。黒崎家の屋根上にて、義骸姿のまま日番谷は氷輪丸を膝に乗せ、遠くを眺める。刃禅と呼ばれるその姿勢により、しかし彼は自らの内へ潜ることはしない。
代わりに彼の背後から、冷気と声だけが響く。姿は見えずとも、そこには確かに何かしらの霊的な存在がいるのだった。
「お前が言っていた通りに、隊長や黒崎たちに霊圧を少し放射してたが……、それで何が探れるんだ?」
『――――探ると言うより、招かれるが近いか。まあ、
「逃げていた?」
『大方、持ち主同様に余計なことを口走る自覚でもあるのだろう。こちらの霊圧を完全に無視している様は、いっそ滑稽ですらあったな』
やや、しゃがれた声が日番谷の耳を震わせる。同時にすこしばかり、季節外れの北風のようなものが吹きすさぶ。
「で、本題は朽木ルキアと黒崎一護だ。何かわかったか?」
『袖白雪の方は、完全に斬魄刀が抜け出ていたな』
「そこは本人に確認した通り。こちらとしても『死神』黒崎一護に『死神』朽木ルキアが、自らの死神としての霊力を注いだ。そう結論付けられるなら、人間への霊力の譲渡にあたらないと言い訳が立つ」
『そう細かいことはわからぬ。わからぬが……』
「黒崎一護の方は、どうだった?」
『…………四つほど、魂魄らしきものがあったな』
「…………は?」
思わずテキトーな表情になり、日番谷は膝から自らの斬魄刀を手に取り、持ち上げ刀身をまじまじと見る。特に何ら変わりないことを確認してから再度膝に乗せ、自らの霊力を同調させた。
「四つ?」
『四つだ。朽木ルキア由来が一つ、黒崎一護由来が二つ、朽木ルキアと黒崎一護の双方の由来が一つ』
「何だよその最後の一つは」
『子供でもこさえたのではないか?』
「馬鹿言え、黒崎一護が阿散井に血祭りにあげられるだろ」
『まんざら冗談ではないが……』
「だが、これでハッキリした。黒崎一護は冗談抜きで、
アイツが死神としてその力を振るえるのなら構わないだろうが――――。
渋い顔をして続ける日番谷は、氷輪丸を持ち上げ、曇る月夜に掲げ。
「――――場合によっては、斬らなきゃならないかもしれねえ。その判断をさせねえように、連中とは手短に決着をつけなきゃならないな」
『――――肩入れするのは、やはり「血」ですか? 主』
と、かかる若々しい声に一瞬、日番谷は目を丸くし。斬魄刀を背中の鞘に仕舞ながら、ちらりと横目で背後を確認し、少しだけ微笑む。
日番谷の背後では。その身に冷気をまといながら、顔の正面に横十字傷の跡が残る長身の男性が、片膝をついて頭を垂れていた。
※ ※ ※
「おはようさん、って言ってみましたけど全然夜半過ぎやねぇ
「
「何ってあかんやん、おいでやすくらい言うてくれんと。そんなつれないこと言わんといて。今日の
「……厚意だけなら有難くいただく。だが
「ボク、そんなえらい扱い受けなあかんの? 毒とか全然入ってへんのに。
××隊長からも何か言って……って、何してはるんです?」
「嗚呼、よく来たね××。先日はお使い御苦労だった」
「まあ基本『触るだけ』やったし、大したことはしてへんです。…………で、それがあの、えらい気味の悪い
「それも含めて、また実験といったところだよ。」
「いや実験て……、
「そもそもコレ自体、友人からの指摘がなければ歯牙にもかけなかったかもしれない逸品だ。天へと至る座興の一つとしては、丁度良いだろう」
「んな仰山ギョロギョロしとるの、見てるだけでだいぶ心病まへんなら、まあええんやないです?」
「これでも勝算は七割以上とみている。友人に言わせれば『九割超えても十割超えないと、ひっくり返ることも多いけど』となるが、その程度は私の運命力で覆さねば、目指すべき頂きのその後に疑問が生じるからね。
ある意味で、私への試練という側面もあるのさ。むろん、千事万事尽くした上での話だがね」
「どえらい高度すぎてちょっと何言うてはります? ってけったいなこと聞いてええです?」
「
「
「それは……、ありがとうございます」
「アカンて、やっぱり何言うてるかちょいわからへん……」
「まあ、これは成果が出るのはもう少し先だろう。その頃になればあちらに送り込むことになるから、せいぜい今の内に霊圧に慣れておくとよい。
……戯れついでだ。以前聞きたがっていた、朽木ルキアと黒崎一護について少しだけ教えてあげようか」
「お? 確かに少し気になりますわ。日番谷隊長が何か報告誤魔化してるみたいですけど、全体のは
「山本元柳斎重國にまで完全に手を回すのは、やや骨が折れたがね。
「そんで? バレる危険を冒してまで、何でルキアちゃんと一護君をくっつけとくんです? 当初の計画通りに手を回して、魂魄燃やせばええやないですか」
「そこは私も少々計算違いがあったがね。それこそ浦原喜助すら気づかない、ある意味で最も致命的なミスだ。とはいえ彼も彼で、本当に
ひとえに浦原喜助に足りなかったのは、状況に対する積極的な挑戦と、致命的な情報といえる」
「致命的な情報?」
「朽木ルキアが真に
――――崩玉の『意志』が既に目覚め、黒崎一護と朽木ルキア双方の霊圧を受けながら育っていると言う事実をね」
……ぎゃう?
※コン関係の描写すっかり忘れてたのご指摘いただきましたので、微妙に追記