メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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本当に悪意はない状況である
たぶん・・・
 
文章量ちょっと多めですがご了承ください汗


#044.ただ一人を含め悪意はなき状況

 

 

 

 

 

 

 黒崎一護の視点からして、それは唐突な出来事だった。

 

 今日の分の特訓を終え、以前より新たに使えるようになった能力(ちから)をより高めるため。仲間たちと切磋琢磨しながらも虚退治もかかさない。夏休み、おおよそ学生らしさとは皆無といえるそれであったが、数々の経験を経た一護にとってそれはさほど苦ではない。

 

 例えばグランドフィッシャー ――――自らの母の仇である、非道なる相手。

 例えば破面(アランカル)のスターク――――大きな孤独を抱えた圧倒的強者。

 例えば紅染月梅針――――()()()()()()()()()()()()()()先人。

 

 自らの内の、虚は言った。一護はその霊圧で、自らが爆発しかねないと。定期的に霊圧を抜かねば、自らが抱える膨大な霊力によって押しつぶされると。

  

 だからこそ、その上でこの先の事を考えれば。これまでの経験からより加速していくと予想できる自らが戦うだろう相手を鑑みれば、実力を上げることは必須。それこそグランドフィッシャーのように逃がすことも、スタークの実力に応えることも、梅針に手を差し伸べることすら出来なかった、その情けなさは。ひとえに自分に護るだけの力がないからこそ。

 

(俺は…………、弱ェ)

 

 決して認めたくない程に憶病に、そして大きな罪の意識として。今の一護には、その感情がのしかかっている。朽木ルキアを始めとした周囲が気付いていないはずもなく、それこそ「死神と慣れあうつもりはない」と断じる石田雨竜ですらそうなのだ。

 だが、その感情に負けるにはまだ早い。早いのだ。故にこそ思春期らしい飢餓感に襲われ、一護は日々を費やす。

 

 そんなある日の、浦原商店からの帰り道に彼等はいた。

 

『――――よぉ、一護と愉快なお友達』

「平子……? って、何でてめェ等いきなり仮面被って――――」

 

 それは唐突に現れた。

 明らかに、明らかに「直前まで霊圧を感じさせず」、ごくごく一般人のようにふるまっていた集団が。突如として平子を中心に仮面を被り、一護たちの前に立ちはだかった。

 総勢、5名。

 異様に長いネクタイを締めた平子、いつか見たセーラー服の少女、ジャージ姿に独特なパンチパーマのサングラスの男、タンクトップ姿にコンバットナイフのようなものを持っていた青年、ライダースーツ姿の少女。

 一様、異様な「虚の仮面」を表出させ、圧倒的な霊圧を前に迫る。

 

 息を呑むチャド。井上織姫が一歩下がり震え、朽木ルキアが一護の胸元にいつでも手を突っ込めるように寄り。

 恋次や花太郎は浦原商店にいるせいか、こちらに急行する気配はまだない。

 

 各々が各々に臨戦態勢をとるなか、しかし連中は既に「斬魄刀を手に持っている」。うかつに動けばそれだけで、致命までの手数が異なることなど一目で誰にもわかる。

 

「……何が目的だ、貴様等」

 

 場を代表するようにルキアが口を開けば、平子は仮面をずらし「わからん言うことはないやろ」とため息をついた。

 

「当然、一護や。もう悠長にどうこう言っとる暇なんて無い。俺らで話し合って出た結論がそれや。はよーせんと一護が『(ホロウ)として処理』されるからなぁ。流石に地獄蝶は誤魔化せへんやろ」

 

(果たしてそうなのだろうか……? 私の処遇などを考えると、はて)

 

 若干ルキア的に疑問符がつく言葉であったが、しかし平子が言う言葉にも納得が出来る部分はあった。

 斬魄刀が虚となり、さらには所有者と融合した梅針が。尸魂界としては斬魄刀というよりは虚の扱いであったからこそ。なおのこと彼等「仮面の軍勢(ヴァイザード)」から見れば、今の一護など危なっかしくて仕方ないのだろう。自らの仲間に引き入れるという前提こそあれど、その心配は間違いない。

 事実一護は「一護ではない誰か」となりながら、あろうことかその膨大な霊力をもって卍解に至った梅針と互角以上の戦いを示していたのだから。

 

(だが、それは…………、あれ(ヽヽ)は誰だったのだろうか)

 

 ただし、ルキアは覚えている。一護が使う斬魄刀を、どこか見覚えのある捌き方でふるい、自らの事を朽木と呼んだ、相手が虚であるにもかかわらず嫌に心の内側に熱をともす、まるで誰かのような振る舞い。

 ただでさえどこか面影があるほどに似ている一護に、必然から為された血とそれ以外とにより重なる()のようなそれは。果たしてルキア自身の心中に、彼女自身ですら形容しがたい疑念と、悔恨と、わずかな恋慕を蘇らせる。

 

 もし仮に、仮に自分の胸に抱いたこの感情が事実であるならば。相手がそうであるのならば。おおよそ自分の罪は…………、自分が殺した()の人へのそれは、とても償いきれるものですらなくなる。

 一生を費やしてすらまだ足りない程に。

 責任を果たすため、身も心も捧げてすら雪ぎえない程に。

 おおよそ自分の知らないところで、この世の地獄という言葉すら生ぬるいほどの経緯と変遷が背後にあったということになるのだから。

 

(仮に一護の虚が「あの人」であるのならば、一護とは……、であるなら私は、一護のことを…………。いや、そのような感傷など今は邪魔だ)

 

「処理って、別に何も無ぇだろ。梅針の刀はあのメラって人が持って帰ったし、それにアイツは…………」

「ドアホ、お前のことやお前の。何ナチュラルに自分が仮面の死神(ヴァイザード)いう事実から目ぇ背けとんねん。ま、梅針ん事は、サンキューって言っとくわ」

「軽いな!? って、いや、俺も同類って言ったってなァ…………」

 

 黒崎君、と井上織姫が悲痛そうにつぶやく。

 チャドは前髪で視線が見えないまでも、どこか納得したように呻く。

 ただし、一番納得していないのは一護本人であるらしい。腕を組んで唸る彼に「何や文句あるんかい」と半眼で問う平子。対して彼は、頭を掻きながら頭上を見上げて、思い出すように話す。

 

「なんっつーか、アレだアレ。精神世界っつーのか? 斬魄刀とかと対話するところ。俺の虚もそこにいるみてェなんだけど…………、お前等も多分そんな感じだよな?」

「あン?」

 

 どうや? と後ろを振り返る平子。他の仮面の面々も、若干面をずらして平子に顔を合わせ「うちもそうやぁよ」「フツーそうじゃねぇのか?」「俺は別だったな」「やーいやーい、拳西だけ仲間外れ~」「な……!? テメェ!」と、なんだか仲良しそうである。一瞬毒気が抜けかける一護たちであったが、気を取り直して仮面を被り威圧感を再発させる仮面の軍勢たち。もっとも先ほどまでのテンションには戻れないのか、威圧感の中でも井上織姫は「あはは……」と苦笑いを浮かべるくらいの余裕を取り戻していた。

 

「で、そこなンだが……、なんだか大分、仲良いみてェなんだよな」

 

『『『『『………………は、っ……?』』』』』

 

 唖然とする仮面の軍勢に、いやだから、と何やら説明を始める一護。もっともその説明自体、死神である人間からすれば意味不明極まりないものである。

 やれ、自らの斬魄刀のおっさんに、朽木ルキアの斬魄刀の美女やら、その美女に頭が上がらないらしい自らの虚。というかおっさんとも普通にしゃべってる感じだったし、乗っ取るとかいう気配も思い返してみれば全然感じられなかった。むしろそれ故に警戒しているところもあるのだが、何かよくわからない少女もいるし、意外と気は良い奴なのではないか? などとのたまう始末。

 

「正直、何考えてンのかわからねェ奴だし、信用も何もあったもんじゃねェけど。少なくともルキアの斬魄刀と上手くやれてそうってんなら、言われてるほど悪ィ奴でも無ェんじゃ…………、って、あっ!? クソ、いや、アイツ絶対悪ィ奴に決まってるぜ! いつか絶対ぶっ殺す……!」

「何を突然喚いているのだ一護」

「黒崎君? どうしたの、しゃくとり虫悪くなった?」

「癪に障った、と言いたいのか井上……?」

 

 何故か突然ルキアの方を見て首を左右に振り、織姫の方を見て顔を赤くしてキレ始めた一護。若干ルキアが不穏な(?)気配を感じたのか、一護を半眼で睨み見上げている。ちなみに一護の精神世界で、「何をなさったのですか、あなた」と言われた誰かが「さぁねぇ」とニヤニヤしている構図が似たような形になっているかもしれないが、それはさておき。

 

「……アカン、最上級(ヴァストローデ)仮面の死神(ヴァイザード)とかサンプルあらへんから、どんな顔したらええんやこれ?」

 

『どえりゃあ、意味不明ばっか』『いやでも、むしろ話せるっつーことは逆に危ないってのがひよ里の考えだろ?』『浦原()()()()()、全然教えてくれないもんねー』『こういう時はアレだな、シンジ』

 

 せやなぁ、と後ろからの小声に肩をすくめた平子は、斬魄刀を肩に担いで仮面に手をかけ――――。

 

「色々思うところもあるやろが……、俺らから見ればお前が()()()()()のが一番危ないわなぁ」

「絆され、てる…………?」

「せやろ? 何せ少し守ってもらったくらいで、警戒心がそない荼毘に付しとるんや。俺が虚なら、今がねらい目やな」

 

 せやから、と。続けようとした平子は頭上に斬魄刀を構え――――。

 

 

 

 頭上から降って来た「義骸のままの」斑目一角の斬魄刀の一撃を、適当に受けて往なした。

 

 

 

 弾かれた一角は空中で回転し、その場に着地。

 驚き名を呼ぶ一護に「俺だけじゃねぇぜ?」とニヤニヤどこか愉し気に笑う。 

 

「状況はわからねぇが、やる気だってンなら相手になるぜ仮面の死神(ヴァイザード)!」

「ちょっと一角! 気が早いって……」

 

 言いながらかけつける弓親だけでなく、後方から蛇尾丸を担いでくる恋次に、まだ義骸のままの松本乱菊。

 もっとも、それぞれがすぐさまソウルキャンディを使い死神へと変化することで、戦力は一気に拮抗する。

 

「――――悪いが()()()()()からな。そう簡単にはいかないぞ、てめぇ」

「冬獅郎……」

「日番谷隊長だっ。いいから下がってろ黒崎一護。よほどのことがない限り、連中と俺達の力は『この場では』拮抗する」

 

「拮抗? 何言うてんねん」

 

 そして一護を庇うように現れた日番谷の姿を前に、平子真子は心底嫌そうな表情を浮かべる。

 笑いもせず、まっすぐにこちらを睨む日番谷が、ある意味で平子達にかかっている制約を理解している表情をしていた。その事実を正確に理解し、だからこそため息をついたのだった。

 

「…………こんなもん、()()()()()()()()()()以外に手があらへんわ」

 

 

 

 なお。

 

「うおわあああ!? 仮面の死神!? 仮面の死神!? 仮面怖い、怖いウホー!?」と叫ぶ一角の義骸。

「黙りやがれダボが、ちったーギャーギャー言わずに殴りかかる姿勢見せるヨロシ!!」と謎な口調でキレ散らかす弓親の義骸。

「ニャッシッシッシッシ……今のうちにゴシュジン様たちを背中から討てばこの阿散井恋次という身分はオイラのモノに、朽木ルキアも……シーッシッシッシッシ!」などとニヤニヤ黒い笑みを浮かべる恋次の義骸。

「ちょっ乱菊さん!? 今けっこう真面目なとこ――」と井上織姫に困惑されながらも「いやん、だってほら……守るなら密着してた方が楽だベシよ」などと言いながら彼女の身体をまさぐる松本乱菊の義骸。

「何故俺の後ろに隠れる……?」とチャドに言われながらも「密着は実際大事。守るなら密着するくらい近いのは正しい。80%の確率的に庇える可能性は高い……いや高いノダ」などと真顔で謎の影響を受けている日番谷冬獅郎の義骸。

 

 そんな彼らをチラ見して「何とは言わねェがコンで良かった……」と呻く一護と「チャッピー ……」と血涙を流すルキアの姿があったとかなかったとか。なお肝心のコンは本日留守番である。

 

 そして幸運にも当の持ち主たちは真面目に戦意を向け敵と対峙しているため、義魂丸たちの個性豊かな(誰かしらの策略混じりな)惨状に気付いていないのが救いかもしれなかった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 さて、突然ですまねェが攫われた。

 誰が攫われたかって言えば一護なんだが。

 いや名前の読みが可愛いからってオメーがピ〇チ姫かよとツッコむのは野暮かァ?

 

「いやてめェ、いっきなり意味わかんねェぞ平子!? 何がしてェんだ!」

「うっさいわボケッ! そもそもオマエが一番の混乱の元や、さっさと俺らン仲間なっとれば話シンプルにまとまったっちゅうに! 絶対ロクな死に方せんわッ! ……いや『ロクな死に方』出来る様にしてやろかっちゅう話なんやけどな」

「意味がわからねェよ!? 誰か一から十まできちんと説明しろッ!」

「やかましい!!! 俺らかて知らンこと多すぎて血管キレるわッ!」

 

 いやク〇パもピ〇チも口悪すぎンな。

 それはそうと一護の叫びはガチでごもっとも。

 

『おーおーヒデェ言いぶりだなァどっちも』

『善意ではあるが、故に事態がさらにややこしくなるか。……おおよそ浦原喜助の騙り(ヽヽ)のせいだな。アレは段階を経て真実に迫りつつあるにもかかわらず、自分の都合に合わせて一護を危険にさらそうと構いもしない。

 嘆かわしきことだ』

『一発ぶん殴ってもバチ当たらないンじゃねェか?』

『やはり処分ですか下駄帽子の。いつ襲撃します? 私も同行しましょう』

『そでのしらゆきン……!』

『いや、いきなりどうした二人揃ってよォ!?』

 

 いや姐サンたちは何言ってンだよと思わずツッコミを入れたが、これに関しちゃマジで意味不明だ。なんで一護がジョ〇〇読んでもいねェのに花京院ネタ振ってくんだよ笑うわ、意味不明すぎて。後大体当時の連載〇〇ジョは六部(ストーン〇ーシャン)だし。

 いやいや、ンなボケボケな話はおいといてだ。一護も混乱が勝ってるせいで悲しみにくれず、結果としてまだ雨は降る気配はねェ。怒りの感情もあるが混乱と困惑、何より平子が微妙に連中を気遣って一護を攫ったっつーことのせいで、ますます情緒が意味不明な感じになってンなァ。

 

 事の始まりは、一護がいつもみてェに修行し終えた後。

 修行についても大いに進展はあったンだが……ってちょっと話それるが、なんっつーか浦原商店の地下で阿散井とか班目の奴と斬り合ってる間、ずっと上の方でたつきの奴の霊圧を感じンだが、あっちはあっちで何やってンだ? ほかならぬ一護が全然そっちを知覚できねェっつーか、あっちもあっちで霊力が伸びてるみてェのはわかってンだが、それでも一護の()()()()()()()()()に比べりゃ微々たるものなせいで、欠片も感知する気配がねェ。

 浮幽霊とかと違って一般人相手にまで霊圧感知を用いないのは、普段の一護の生活上は必要なスキルだったんだろォが……、下手に梅針と斬り合っちまったせいでそれがより加速しちまったわけだ。

 象からすりゃ、ミジンコかアリンコかの違いなんざてんでわからんわなァ。

 

『しかし、自力で火輪(かりん)とやらを纏えるようになったのは大きな進歩ではないか?』

『そりゃ、な? つーかオッサンの時代にはなかったか、火輪斬術』

 

 まァ絶滅した時期的にどう考えてもオッサンの本体はくたばってる頃だし、そんなモンか? とだけ軽く思い直しておく。

 そう、一護のやつ、なんと自力で火輪を纏えるようになりやがった。基本的に「意志を乗せて」「霊圧を放出しつづける」だけっつー理屈なンだが、そもそもそのために霊力をある程度制御してやる必要がある。鬼道の術韻に込める霊力すらおぼつかねェっつーか多すぎる一護がそれをどうやって回避したかっつーと、ぶっちゃけこれも力技だ。

 

 野郎、月牙を自分に向けて放ちやがった。

 

 まァ元々は事故だったンだが、阿散井の野郎と戦ってる時に〇字衝(えんじしょう)やろうとして、オッサンの布のトコもってブンブン振り回そうとしたのを蛇腹剣が妨害。あわれ空中で微妙に空回って弾かれた斬月()()()は、そのまま一護目掛けて月牙を放射。

 中途半端に「描く」モードと「放つ」モードが入り混じった状態の月牙を受けた一護。そのまま本能的に体内から放出した霊圧と、その微妙な状態の月牙とが入り混じり、疑似的に火輪を形成するに至った。疑似的っつーのは体内の霊圧を消費して火輪を維持してンじゃなく、放った月牙の霊圧に応じた量の霊圧がそのまま炎のような形で滞留し、一護の動きを補助するような状態になってるっつーことだ。

 

 ……ンで、井上に「すっごーい! お星さまみたい!」とか言われてちょっとまんざらでもなかったのか、一護の奴がその状態を練習しまくって、アホみてェな量の月牙を放ちまくるわで軽い地獄絵図。朽木もキレながら阿散井側に参戦して、一護追い詰めて斬り合って…………、霊圧がアホみてェでも直接相手をぶっ殺すのに使いやしねェから、総合的にゃ分が悪ィんだよな。手加減できねェせいで使える技が少なくなると。

 子雪も子雪で「ぎゃー! こおるせかい!」とか楽しそうにしてまァ……、唯一チャドの奴が一護の方に回ったが、二人そろってギャグマンガみてェにぶっ飛ばされてたな。

 

 最近はンな()()()()を練習してた一護だったンだが、日番谷隊長も混ざって色々レクチャーされ終わって帰り際。たつきの奴もいつの間にか家に帰ったみてェだし、上手い事一護と遭遇しねェようにしてンのはどう考えても下駄帽子の所業なンだが――――。

 

 

 

『――――卍解・逆様邪八宝塞(さかしまよこしまはっぽうふさがり)

『『『なッ…………なん、だと!?』』』

 

 

 

 特に何の脈絡もなく出て来た平子元隊長たちが、というか平子元隊長があっさり卍解して「終わりだ」っつー感じだなァ。まァいきなり卍解されて黙ってみてる訳もなく、全員ソウルキャンディ使える連中はソウルキャンディ使って戦闘状態になって、斬りかかろうとしてまァ……、これについちゃ平子元隊長が「あえて」煽って、察した日番谷隊長が全員に制止をかけてなんとか事なきを得た訳だが。

 

『嘘、何この状態……!?』

『一角……いつからそんな積極的に?』

『……身動きできないな』

『い、井上、すまない……』

『だ、大丈夫、私は間に合ったから。けど……』

『弓親サン、ルキア、こりゃ…………!?』

『どういうことだァ、こりゃ! 同士討ちたァつまらねぇことしてくれるじゃねぇか!』

 

 当たり前のように逆様邪八宝塞の()の効果で、全員が全員の敵味方の対象を「取り違えて」、身内の方に襲い掛かる状態。

 まァその後は……、冷静に分析する日番谷隊長、いきなり現れては適当ほざいて場を攪乱する下駄帽子、完全に善意から一護を攫う平子隊長っつー地獄みてェな構図だな。というか適当ほざいてるくせして死神陣営の味方ポジション崩れねェ下駄帽子は一体テメェ何なんだよ本当によォ…………? いい商売だなァ全く。

 つーか朽木の霊力失わせる作戦って今も継続してるくせに、どの面下げてあいつ等の前に顔出し出来ンだって話だな。

 

 ただそんな経緯で攫われた今の状態でも、一護が本気の本気で平子隊長に殺意を欠片も向けねェのは――――。

 

「虚の本能、その力の抑え方、扱い方。魂の芯まで叩き込んだるわ。

 オマエが嫌がっても決定事項やで――――虚のお前が使っとったあの霊力が街くらい簡単に滅ぼせること、自分もわかっとるやろ。ホンマにお前が思っとる通りか、保証もないならギャンブルはアカンわ」

 

 元隊長の言うことが一々まっとうで、下手しなくても下駄帽子よりまともな振る舞いしてっからなンだよなァ……。多分、仮面の軍勢(ヴァイザード)の側で色々話し合いが持たれた末の結論として、一護に強制的に色々教えこむって方向になったっつーことなンだろうが。

 まァ拉致り方が堂に入りすぎてて、見た目完全に悪役ムーブは加速してンだが。他の連中も卍解の効果が切れた後の足止めに入ってるし、手際が本当に手馴れていやがる。

  

「それは…………、……だけどそれを俺に教えて、てめェ等は何を……!」

「さぁな~? せやけど、ンなこと言っとる場合違うやろ。

 大体、()()()()使いながら疑似仮面の死神(ヴァイザード)の、しっかも虚化した状態での卍解っぽい意味不明なアレを仏陀斬っといて、それすらロクに扱い方知らんとかアレやろ? アレアレ」

「また、卍解…………? って、アレって何だよ!?」

 

「――――ガキが核爆弾の発射スイッチ握っとるようなもんや。せやから制御に失敗したらお前……、死ぬで」

 

 ま、優しい事とスパルタなことは違うっつー話でもあるにはあるんだがなァ。どうやら五番隊隊長をしていた頃みてェに、丁寧に色々教えこむだけの時間がないと見ているらしい。ただ俺の立場から一言だけ言わせてもらえると。

 

『完全、勘違いなんだよなァ……。まァ虚の本能に耐性つけるのは、悪いことじゃねェけど』

『…………やはり私が次具象化する機会があれば、浦原喜助に天誅を下すべきですね。策を練りましょう、あなた』

『程々にしてやれよなァ……』

 

 少しだけ気分がダウナーになる俺を励ますためか、割と物騒なことを口走って抱き着いてくる姐サン。そんな俺たちを、少し離れたところでオッサンが生暖かい目で見守り。子雪がオッサンのコートを引いて「ちちとはは、いちゃいちゃ? いちゃいちゃ?」とか何かこっちもこっちで時代を先取りしまくってるようなことを言いやがってる。

 

 ま、そうこうしている内にどこかしらにたどり着くかと思ってた訳なんだが――――。

 

 

 

「――――誘拐するにしても、黒崎みたいな男を狙うなんて趣味が悪いね。女の子を攫うよりは遥かにマシだろうけれど、普通に犯罪行為だ」

 

「石田!?」

「何やえらい仰々しい恰好やなぁ」

 

 

 

 道中、明らかに前回同様(?)パワーアップした恰好をした石田雨竜が、矢を放ち平子の瞬歩を妨害して構え、立ちはだかった。

 まあ言いぶりがアレだっつーのは置いといて……、マジでその恰好全然知らねェ奴なんだが、一体何なんだ? 原作的に見覚えが無ェ以上は、俺も忘れ去ってる様な奴でゲームか何かにあった衣装かそれ?

 

『あたし、こういうツンツンしてるけどずっと心配してて気にかけてるの好き……!』

『良かったですねぇ、子雪』

 

 ンでもって地味にテンション上がった振子雪がナチュラルに言葉をしゃべってるのに、姐サンはスルーしてて良いんスかねぇ……? いやだからお前普段からしゃべれや面倒くせェ、そうやって全然話せるんだからよォ。

 

 

 

 

 




※3期放映前に問題個所に到達すると、大人の事情編が入るかもしれません(予告)
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