メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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オッサン、ちょっと弾ける(?)
 
出来る限り巻いたんですが、それでも文字数多め&独自解釈もろもろ注意です……!


#052.ウィーアー・ライクインパーフェクション

 

 

 

 

 

 ひよ里と、彼女に引き連れられるドン・観音寺。その目の前に霊子が大きく三角を描くように収束した盾が形成され、土石の礫は完全に防御される。紛れた入り乱れる霊圧の斬撃も、盾を切り裂くほどの威力は出ていなかった。

 それと同時に、虚の一護の上空から放たれた複数、飛来する()()礫。いつの間にやら一護の斬月、その孔を塞いでいる氷からいつの間にか伸びていた「氷の鎖」が、その頭上にいる誰かの手元に繋がっているのだろう。そしてその彼女、朽木ルキアは空中で身体をひねらせ天地さかさまのまま回転しながら、鎖が巻き付いた左手を振るい、一部の鎖を砕いて地面に降らしていた。

 

 それらの氷が地面に刺されば、そこを起点に新たな鎖が出現する。

 出現した鎖はその中央の位置にいる一護の虚を目掛けて伸び、がんじがらめに拘束。それと同時に虚の身体を覆う黒い影か靄のようなものも、より幅広く一護の全身を拘束していた。

 

「ふっ……、と! ……やはり引っ張ることが出来ぬな。振子雪(スノーホワイト)、どうしたというのだ?」

「朽木さん! 力、戻ってるんだー!」

「ああ。やはり、近くにいれば扱えるらしいな。さっきまで()()()()()不気味な程だったというのに…………」

「静か? でもここ、アレだよね。浦原さんのお店の地下に似てるっていうか――――」

 

「――――って何や何やお前ら、何当たり前みたいな顔して入って来とんや!? おいハッチ、何やってんねんというか、このオッサンとっとと外出さないと……って、気絶しとる!? アレだけ滅茶苦茶引っ掻き回してンなオチ、芸人でもあるまいにッ!」

「ないとぉ、メアアアアアァ……」

 

 結界の内部で、当たり前のように着地する朽木ルキア。スカートの丈が気になるのか左手で抑えながらのそれであったが、その背後から盾を解除しつつ井上織姫が楽し気に駆け寄ってくる。

 そんな二人を前に、ひよ里のツッコミは当然のものであり。なお先ほどの一護の霊圧を受けたせいか、直接被害はなかったはずだが軽く気絶していたドン・観音寺であった。

 仮にホワイトがこの場に居れば「感知能力が極まってるから、今の一護の霊圧にヤられたんだろォな」とそれらしい推論を述べてくれるだろうが。残念ながらこの場には事情に理解がありそうな人物がいないため、ギャグマンガのように気を失っているドン・観音寺に向けられる目は各々がそれなりにであった。

 

 そしてその後方から、ゆったりとした巨体が歩いてくる。

 

「…………ここには、あの(ましろ)という人に連れられて来た。さっき電話をしていたが、伝わっていなかったのか?」

「ホンマかい!? さっきから全然返事せーへん思とったら、何やハッチのやつ。ヘルプでも頼んどったんかい? オッサン」

「オッサ………………、いや、その……」

 

 あん? と下から睨み上げられ、少し困惑しているチャドこと茶渡泰虎の姿がそこにあった。身体の傷自体は癒えているが、どこか疲れたままであるのは六車との戦闘が未だに引きずっているのか。

 そんな内部の様子を伺いながら、ハッチと呼ばれた大男は隣の方でがやがやとしている一同を見やる。六車拳西と、久南白の両名。それぞれチャド、井上とルキアとを相手に時間稼ぎをしていた両名だ。

 

「何を当たり前みてェに来てるんだテメェ! 忘れたのか最初に決めたこと! 現世の人間なんざ『あの』黒崎一護の虚状態の暴走なんて耐えられないかもしれないから、絶対に近づけないって約束だったろぉがこのこの――!」

「うわ~ん! びえ~ん! 女の子の頭ぐりぐりした~! 暴力はんた~い!

 それに、来たのだって私のせいじゃないも~ん! ()()()()相手にはむしろ顔見知りが居た方がいいかもしれないって、言われたから来たんだも~ん!」

「もんじゃねェ年齢(トシ)考えろ年齢(トシ)を! というかさっきハッチが電話してすぐ来ただろ、どう考えても元々こっちに向かって来てただろォが!」

 

「拳西、そんくらいでええわ。……何だかんだ言うて子供には甘々やからなァ拳西は」

 

 平子の一言に六車は肩を怒らせ、しかし何も言えずに結界の中を睨んだ。今にも飛び出していきそうな前傾姿勢と焦燥感の浮かんだ表情であるが、それでも駆けだしていかないのには理由がある。

 

 

 

「ハッチの見立て通りやな。―――――― 一護のやつ、何から何までパワーが落ちとるわ」

「ハイ。後何と言うか……斬魄刀が可哀想デス。我ながラ」

 

 

 

 きっかけは、さきほどのドン・観音寺。一護の関係者らしい(本当か?)かの男の乱入を許した結果、虚となった一護の動きが明確に阻害され、力が落ち込んだことである。一護から漏れ出た黒い闇のようなそれが、より過剰に反応している。おそらく一護自身を辛うじてでも人間と死神としての魂魄として残すために、斬魄刀が決死の覚悟で、イレギュラーな具象化をしているのだろう。

 そして、逆説的に――――斬魄刀の具象化で抑えられるのだとすれば。それは、すなわち多少なりとも外界の霊圧として、ドン・観音寺の存在を感知したからこそ。内在闘争をしている黒崎一護の精神を後押ししているような状態となり、虚の力をより抑え込めているのではないか。

 

 仮面の軍勢(ヴァイザード)の中でもとりわけ、鬼道に詳しいハッチだからこその、その霊的な分析は、ある一つの事実を示唆していた。

 すなわち、より黒崎一護と近い人物が結界の中にいるのだとすれば。虚の力を抑えるため、一護の精神のより強い後押しになるのではないだろうか。

 

 だからこそ「もしや」と思ったハッチが、白へと連絡をかけ、一護の関係者をこの場に連れて来た。本来ならば死神たち以上に遠ざけるべき、現世の人間たちを伴って。本来ならば一護の魂魄的安定を保つために、必要不可欠な朽木ルキアすらともなって。

 

「ありがとうございマス、止めずに彼女たちを通してくれて。おそらく一番反対するのは、平子サンだと思っていたデスから」

「生憎、こちとら瀕死やからなァ……。何言うたところで何もできへん、足手まといや。

 義骸も後で喜助の奴に持ってきてもらわなアカンわなぁ、これ」

 

 なおそんなこともあってか、現在の平子は「長い金髪の右半分だけばっさりカットされた」「ボロボロの死覇装に隊主羽織を纏った」状態。かつての彼自身の容姿や恰好が、現在の一護によってボロボロにされつくした姿でもあり。そんな彼を見た織姫は「日番谷君みたいな恰好だー!」と明け透けに言われたりしていた。

 そんな織姫の治療を断って、結界の中に入れる平子の姿に、驚愕したのはルキアである。「なん、だと?」のフレーズと共に目を見開いた彼女からすれば、まさに予想を斜め上に超えていた平子の対応と、その姿であった。少なくとも護廷十三隊・隊長に許されたはずのその服装については問いたださず、それでいて一護のためにそこまで命を懸けたことに、純粋に驚いていたのだ。

 

 問えば本人も「こっちにはこっちの思惑あってのことや」くらいは言っただろうが、いかんせん恰好がつかない程にボロボロで、五体投地なため起き上る気力もほぼなかった。

 どこか浮かべる笑みも自嘲気なのは、そのせいもあってだろう。……どうでも良いが、「んべー」と脱力して舌を出す彼のそこには、義骸にあったピアスが存在しなかったりする。

 

「ホンマはひよ里もとっとと回収した方がええんやろが、あの変なオッサン一人置いとく訳にもいかんやろからなぁ」

「ハイ。私たちは、意図せず一護くんの『虚の力』の霊圧を、一護君の内側でアシストしてしまうかもしれマセン。であれば、決着が確実でない状況で、一斉に割り込むのは得策ではないデス」

 

 

 

「――――だったら遺憾ながら、僕は今の黒崎相手に適任ということか。

 悪いけど、入り口を開けてもらえないかい」

 

 

 

 ハイ、と当然のように応じるハッチはともかく。倒れたままの平子は、現れ出た男の姿を見て唖然とした。

 

 

 

   ※  ※  ※ 

 

 

 

『――――――――!』

 

「く、く、黒崎、くん…………っ」

「井上、無理に見るな。おそらく今の一護に意識はない。そうであろう、仮面の死神よ」

 

 鎖に拘束されながら身じろぎ、両手の刃を振るいながら今にも暴れそうな虚。そのそこかしこに見え隠れする黒崎一護であるという名残に、井上織姫はわずかに震える。その恐怖の質を理解しているからこそ、ルキアは彼女に無理強いはしない。諭すように言い、後方のひよ里へと確認をした。

 そして、ルキアの確認にひよ里は表情をしかめた。

 

「そら、そうやろうな。……これで意識があったら、ウチら皆オシマイになっちゃうわ」

「おそらくは、ならないだろう。梅針との戦いのときに思ったが、一護の虚は嫌に理性的だった。それこそスタークと名乗っていた、あの破面(アランカル)のように、どこか…………」

「何アホ言うてんねん。『意識がある方が』アカンのや。

 テレビゲームとかやらのんか? そこ全員」

「む?」「……ん?」「えっ?」

 

 唐突に振られた例えに、三者三様に疑問符が浮かぶが。そんな彼女たちの反応を見ず、ひよ里は続ける。

 

「アクションとかで、コマンド操作とかあるやろ。今のアレは、とにかく頭アホアホなくらい強々(ツヨツヨ)なキャラで、レバーガチャガチャやったら何か技とか出たくらいの使い方しとんねん。だからウチらで抑えられるくらいの力しか出てないんや。

 それが、しっかりした意識を持って、自分に何が出来るのか宿()()()()()()()()()()()()のが出て来るとか、もう悪夢どころの騒ぎやないわ。手ぇつけられへんとか、そう言う次元ちゃうで。現世終わるわ、討伐隊組まれるわ、もう地獄さながらってところや」

「そこまでなのか?」

「一護ン内に入っとる最上級大虚(ヴァストローデ)いうのは、そんくらいアカンのや。だから、ウチら同類だけで、知っとるやつらだけで始末つけたろってあのハゲ真子言うたんや。

 頭どないしとるか解剖必要なくらい正気やないやろ? んなっはっは!」

「そこは、笑う所なのか……? というより、何故ドン・観音寺がそこに。本物か……?」

 

 笑うひよ里に困惑するチャドであったが。そんな彼の隣で、織姫は深呼吸をして、改めて一護を見据える。

 手の震えは止まらない。だがそれでも、目を逸らすまいと言う意思が、勇気がそこにはある。

 

 そして悪し様に言われ続けた一護の虚に「いやしかしだなぁ……」とか「おそらく今の()立場の問題もあるのだろうが……」などと歯切れが悪い朽木ルキアであったが。

 そうこう話していると、一護の虚が動きを止める。

 

 お? と様子を伺いながら、斬魄刀を手に立ち上がるひよ里。

 鎖を引いたまま、警戒をする朽木ルキア。

 

 

 

 そして――――その全身から「白と黒の」霊圧の炎と共に、眩い光を放ち始めた虚の一護。 

 

 

 

 きゃー!? と飛ばされかける織姫の前に立ち、壁となるチャド。観音寺ごと飛ばされかけるひよ里に、むしろ斬月に伸びた鎖で飛ばされていないルキア。

 

「何が起こっていると言うのだ、一体、何が…………!」

「何やこれ知らんわ!? 普通、状況が変化する言うんなら、内在闘争が終わったってことになるはずや。

 それで死神の一護に戻らんで、訳わからんことになっとるってことは…………」

「ひ、ひよ里ちゃん? 嘘だよね、そんな、ことって――」

「井上……」

 

 そして霊圧の嵐が吹きすさぶ中において――――行動原理が変わらない男が一人。

 

「――――光の線(リヒト・リニア)

 

 静かに呟き、そして放たれた霊子の矢――――。その一発はまごうことなく、虚の一護の頭部、そのうちの角の一つを射抜き、中ほどで折った。

 絶叫する一護――――声には、虚の咆哮と一護の叫びが入り混じっていた。

 

 はっとして振り向く織姫たち。「石田くん!?」「石田!」「……石田か」「誰やあのメガネ!?」と若干散々なコメントもあったりしたが、果たして彼女たちの視線の先。後方、結界のすぐ壁面の近くに立つのは、石田雨竜その人であった。

 霊子兵装を身にまとい、不安定ながらも若干洗練され安定した大きさの矢をつがえ、構える石田は虚の一護を睨みながら、感情を交えずに言った。

 

「……滅却師(クインシー)の誇りにかけて、虚は倒す。例えそれが、誰であったのだとしても。僕のすることに変わりはない」

「石田……!」「石田君、だけど……!」

「黒崎の奴がしくじって負けてしまったのだというのなら、僕らに出来るのはもうそれしかないじゃないか。それに……黒崎だって、自分が家族を傷つけるようなことになるのを、望みはしないだろう」

「一護は…………」「黒崎くん……」「…………、一護」

 

 

 

「どうでもええけど、そのエロいメイドの姉ーちゃん何なん? 見てて何かやる気そがれちゃうやないかいっ」

 

 

 

 直前まで完全に本気も本気で、だからこそ感情を交えず、しかし陰鬱そうだった石田であったが。ひよ里からのその指摘に、思わず眼鏡を曇らせて「い、今はそんな話をしている場合じゃないだろ!?」と怒鳴った。

 そう。石田雨竜、その腰から下には仮面のミニスカメイドが抱き着いていた。ルキアも存在だけは見知った、ナナとかいう例のメイドである。彼女が「地面に拳を貫通させて(!?)」碇のかわりになっているお陰で、石田は攻撃一辺倒に集中することができているのであった。

 

 というか担当ローズやろどうした! とひよ里が叫べば。外側で平子に手を向け緑色の光を放ちながら「粘り勝ちだよ、彼の」とどこか疲れた様子のローズであった。

 

「最近だらしないやん、ジャンプの漫画もラブのヒトデアタマに借りパクられとるし」

「回し読みしてる時点で多少は諦めてるよ。って、そう言う話じゃなくて……、いやこれは、参ったねぇ」

 

 うめくローズ。一護の変化により、結界の外の状況も悪化していた。

 滝のように汗を垂れ流しながら、言葉も言えない程に結界の維持に集中するハッチ。先ほどまでより明らかに余裕のない状況に輪をかけ、お陰でもう結界内部に入り込むことが出来ない拳西と白、ひどく申し訳なさそうな顔の平子。すなわち、もはや増援は見込めまい。

 

 そんな中、朽木ルキアは鎖を手繰り、一護の虚の元へと足を進める。

 朽木さん! という井上織姫の声に、自嘲気に後ろを振り向いて、微笑む。

 

「……何、任せておけ、井上。もとより一護の虚を封じていたのは、私の死神の力。であれば、おそらくこの状況に何かしら介入が可能なのは、私くらいしかおるまい」

「だけど危ないよ朽木さん!」

「そうも言ってられないだろう。……嗚呼、そうだな。お前達に、一護を返してやらねばなるまい。それが…………、()()殿()を殺した、私の命の使い道なのだろう」

 

 吹き荒れる霊圧は、もはや轟音。後方の声すら届かず、叫ぶ井上織姫は……。嗚呼、想い人がこんな状況になっているのに、なお罪深い私を心配してくれているのか。私なんかのために、私のせいで、ああも泣き出しそうな顔をさせてしまっているのか。

 だが、だからこそ逃げる訳にはいかない。先ほどから感じる振子雪(スノーホワイト)が高ぶる感覚。未だ自分の鎖で拘束されている以上、この一護もまた完全に負けたりしている訳ではないのだろう。

 

 ならば――――それこそ一護が勝てるまで、一護の全身を氷で凍結してしまえば。

 この状況でそれを為そうとするなら、もはやそれは、ルキア自身が一護と近距離で、共に凍結されるくらいの近さにでも寄らなければ。

 

 だからこそ。

 

「これは()()()()()()なのだ。頼むぞ――――舞え、振子雪(スノーホワイト)!」

 

 一護の虚を拘束する鎖に手を引っかけ。その状態でなお、自らが新たなる刃を引き抜こうとして――――。

 

 珍事が起きたのは、その時である!

 

 

 

「――――って、お、おわあああああああああッ!? な、何だァ!? こりゃ――――!」

「――――はっ? って、え、きゃああああああああああああっ!?」

 

 

 

 斬月から引き抜かれた振子雪(スノーホワイト)の刃であったが。今回、何故かそのスノーホワイトの柄を握るように、「生身の一護の魂魄」が共に排出されたのだった。

 それこそ完全に私服、「1」と「5」が書かれたシャツ姿のまま。何より強烈なのは、その胸に「因果の鎖」が結ばれたままであるということ。

 

 面食らったのも無理はない。一瞬呆けたルキアは、その隙に力が緩み。はじき出された一護もろとも、虚の一護の爆風のあおりを受けて、仲間たちの元まで吹っ飛ばされるのだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

『やりやがった……、やりやがったぞあのガキンチョッ!? 一体どうしてくれンだマジで何が起こってンだよ!!? 誰か説明してくれオッサン!!?』

『おおおおおおおおおおおおお、落ち着いてください、我が夫、大丈夫です? おっぱい揉みます?』

『揉むくらい大きくしてから出直せや!』

『はっ?』※威圧

『サーセン……』

 

 姐サンの絶対零度の視線を前に、思わず屈した俺だった。

 いや、ンなことはどうでも良い。動揺しまくってたのが一周回って冷静になったからむしろ助かったって話なンだが、状況はそう甘いことを言ってられねェ。

 

 あの振子雪(ふりこゆき)…………「ちょっと遊びにいってきます」とか言って、一護ごと外に出やがった!?

 いやお前、そもそも普段朽木の奴が使ってる時はずっとこっちに居るンだから、外に出るとか言って具象化する訳でもねェのに何、当たり前みてェに一護の奴をここから連れ出してンだよ!? どいうことだよ、魂魄から魂魄が分離したみてェなことになっちまってるじゃねェか!

 というか俺の胸からも「因果の鎖」が伸びて、そのまま上空にいってら……。間違いなく一護の方から伸びてる因果の鎖と繋がってるのコレだろ。一体何がどうなってンだよ! 幽体離脱とかで説明できねェ事象引き起こしてンじゃねェよ!? 新しい霊法則でも作る気かテメェ!!? 零番隊案件になるじゃねェか!

 

 いや、まァ実際、一護の奴が外に出たことで、事態は多少好転したとは言えなくもねェ。ねェんだが、釈然としねェのはソウルソウルした理屈がよくわからねェにもかかわらず、絶対原作BLEACHでやれそうもねェことをあっさり実行してるあのお子様の存在がバグってることに対してなンだが……。

 

『表のあなたの暴走が、収まってきましたね……?』

『そりゃァな。霊力のタンクそのものな一護が、この場所から抜けてンだから、供給がほぼ無くなっちまってる虚の本能の肉体なんざ、せいぜいが巨大虚(ヒュージホロウ)大虚(メノス)の中間くらいの中途半端な感じになってンだろ……』

 

 実際、そうなのだ。そもそも平子が使った術式は、終了条件が「虚の精神の屈服」なのである。要は内在闘争の決着以外は終了が想定されちゃいねェし、斬魄刀相手ならともかく虚相手なら何がおこるかは推して知るべしだ。

 そこを行くとこの場合がどうかと言えば……。虚の力の頂点には、本能ではないにしろ俺が立っている。んで、不幸なことに俺はきっちりと「死神として」上位の存在として一護よりは先を走っちまってる。

 

 つまりは、俺が認めたところで一護の側でも、どうしようもねェってことだ。

 

 あのまま暴走し続けたら、終いにはより「元々の」俺の姿っぽいデザインに変化してたんじゃねェか……? と思わなくもねェが。こっちで暴走してた自分の身体を察して「どうすんだてめェ、これで終わりだったンじゃなかったのかよ!?」とキレ返され、珍しく打開策がなく俺もどうしようもなかった。

 それを何とかしてくれたのが振子雪なのだから文句を言う筋合いはねェんだろうが……。いや、それにしても意味不明すぎる。霊圧の暴風が収まってきたのは本当に良いことなンだが……。

 

 端的に言って、一護が現在二人いるような状況だ。

 ゲームの2Pキャラとかじゃねェんだぞ、一体何がどうなってやがンだ……。

 

 ただ、俺らには聞こえねェが、一護は一護で朽木の持ってる振子雪から何か聞いているらしい。

 そのまま、腰を折って頭を下げる。朽木に、井上、チャドに、石田。要はいつもの仲良し(?)五人組の面々にだ。

 

「こんなこと頼むのは筋違いかもしれねェ。だけど……、頼む! 俺と一緒に戦ってくれ! 俺と一緒に、あの俺の虚を倒してくれ!」

 

 なるほど、内在闘争を表側に出てやり直すっつー話か。……いや微妙に違ェか? でも結果的に起こるのはその通りか。というより、ある意味でこれが平子達からした場合の「正しい」内在闘争のそれっぽい状況なンだろうが。いやでも、嫌に今日は一護が素直に色々言いやがるな。

 さっきも俺に感謝の言葉を言ったりしたし。今だって、連中全員に力を貸してくれと頼んでいやがるし。

 

 そんな一護に、朽木の奴は鼻で笑う。井上は石田やチャドと顔を見合わせてから、得意げに微笑む。チャドも釣られてニヤっとし、石田は少し視線を逸らす。

 

「何をたわけたことを言っておるのだ、貴様! ――私たちは、仲間だろう」

「うん、そうだね♪」

「嗚呼」

「僕までカテゴライズされていることには、少々異論があるのだけれども……」

 

 そうは言っても、この場から石田の奴は立ち去ろうとしない。……いい加減メイドを腰からどけろや、何だテメェ堪能してンのか? スケベか?

 いやそういう話じゃねェな。そもそもが、何ら謂れもなくこんな場所までわざわざ来る必要もないんだ。だからこそ、そのあたりは正しく石田の奴も、一護の友達だっつーことなんだろう。メイドもそのあたりを察して、あえて石田を動かさないために抱き着いたままなのか? ……胸で脚挟んでる意味はわからねェが。

 

『あ な た ?』

『いや威圧感放ってくるんじゃねェよ姐さんよォ……』

 

 勢いに負けて謝っちまったが。そんな俺達のことなど関係なく、一護たちは並ぶ。

 流石にメイドもどいて、一護、朽木、井上、チャド、石田と並ぶ。こうして見ると、これはこれで壮観だなァ。あっちの方で()()()()()白けてるじゃねェか。

 

 一護はほぼ霊力が高いだけの人間の魂魄のままだっつーのに、その全身から白と黒の火輪を噴き出す。石田が眼鏡越しに目を見開いてるのもお構いなしに、さっき俺相手にやったように黒い衣と、白い霊圧の炎と――――。

 そしてその手に「青白い霊力の刃」を持って――――いやちょっと待て。

 

 

 

「じゃあ一気に…………()()、一気に片づけるぜ!」

 

『――オッサンちょっと待てェ!? 流石に石田居るンだからバレるだろそりゃ――――!』

『あ、あなた? 一体どうしたというのですか?』

 

 

 

 突然大慌てで叫ぶ俺に困惑する姐さんだが。流石にいくら姐さん相手だって、こればっかりは言えやしねェ。

 

 何しれっと霊力で作った剣風に見せかけて雑に「神聖滅矢(ハイリッヒプファイル)」持たせてやがンだ!? 弓ないだけマシだろォが完全に滅却師じゃねェか!!?

 つーか弓が斬魄刀だから、二つに別れてるってのが完全に別な意味持ってくるじゃねェかこれ!? 変なところで遊んでンじゃねェよ! いくら死神と虚の霊圧混じりだって無理があるだろって!!?

 

 

 

 

 

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