その間何もないのはアレかな? ということで、番外編・・・と、後半?劇場版プロローグ的な何かかもしれない
メインは例の400年前の話。平子関係は因縁づくりもあっての本作設定なので、独自解釈加えて注意。
水面に浮かぶ夢の跡に色を失い掻き消えた
この身で贖えるのなら 私は幾度も問いかける
花芽吹くような誰かなら知っているのでしょうか
燃やす命の価値を教えて と
あの頃の事ですが……四番隊の隊舎を出て歩いていると、瀞霊廷ではとんと聞かないような奇怪な悲鳴が耳に入りました。まあ、察するところは有りましたのでため息一つ。瞬歩で向かった先を見れば、まあまずもって意味不明極まりない光景に違いはありません。
「何やっとるんや!? 意味わからんわ、何でンなアホみたいにデカい虚の生首引っ張って来とんねん!? というかオレ引っ張って来ても道案内ならんわッ!」
「…………?」
「首傾げる意味がわからんわッ! オレ、ただのガキやぞ!!?」
あれは……、
そんな少年は、死神の素養こそあれど未だに霊術院に通っている訳でもありません。……まあ見た目は十歳と少しあるかないか。声変わりすらしていない幼子ですので、保護者のあの二人が気を遣って通わせていないのでしょう。基本的に二人とも、子供には甘いものです。それでいて伊花も一度剣を握れば「中々楽しめる」程度の斬術の覚えがありますが、その彼女の目から見て彼、シンジというらしい子供はそこまで斬術の才はなさそうです。
なにしろ、あの野獣……あら失礼、
「
「何が道理やねん!? ちゅーかほんっちゅーか、こけし言うの止めんかい! もう、こけしやあらへんやろ! 見て見ぃ、このキラッキラしとる髪! まだ初対面の時のイメージ引きずっとるんかッ!」
「ちゃんと通行許可も出てるし」
「オレ一応
「通して? …………だけ」
「バレバレの嘘止めンかいッ!!? 『通さなかったら推し通る』言うて門番背負い投げしかかった途中で関節外しおったやろ、どんな怪力やねんッ!」
「むぅ」
「何や何が不満なんや、オレ何かおかしなこと言うたか、あァ!?」
「ひよりに言いつける」
「おーおー好きに言うたらええやろ、今度こそあのペ
「で、道どっち?」
「どこに行きたいかも言わンでわかるわけないやろ!!? 後、言われたところでわからんわって何べんも言っとるやん! 話聞かんかいこのおっぱいお化けッ!」
「お化けじゃない。……お化けじゃない?」
相変わらず思考が意味不明ですね、あの娘は……。いえ、
シンジと言う子供のように、ぱっつんと揃えられた前髪と横髪。長い後ろ髪はよく
ですが、実態は野獣です。野に放たれ木々の深奥に棲み潜む けだもの の類です。正直に言いましょう、彼女を引き取って仮とは苗字を与え、名をつけたところでその思考の変遷を追うことはかなり難しいのだと。さながら獣に育てられたと言わんばかりに……、出自をみればそもそも
条件を満たしたからと言え、あれを
いえ、幸か不幸か「保護者」がついたお陰で、いく分マシにはなったのでしょうが。
「……隊長、何持ってきてるんですかい」
「あっ、梅!」「おわわ、首!? 首、締まるわ首……!」
何があったのか、不満さから子供の首を軽く締め「うるさい」と言っていた獣が、わずかに人の少女に戻ります。彼女より背が高く、体格も大きく、だからといって威圧感を感じる程の存在感はない男。先祖を考えれば色々と浮かばれないとは思いますが……、とはいえあの小娘が「辛うじて」自分の意志で推薦した副隊長であり、だからこそか彼女はあの青年の言う事だけは多少聞くようです。
気のせいでなければ、思考力もちょっと上がっているような……? はてさて、どういった感情からその機微の変化は生じているのでしょうかね。
さて。青年、
「というかこの首、一体何なんですかい?」
「
「所長じゃないっスかい!? どうして修多羅研みてぇな所の研究職とばっか顔見知り多いんスか隊長……頭蛮族なのに」
「聞こえてる」
「ひぃッ!?」「雑にオレ投げンの止めんかいッ!」
微笑ましく見守るには、やり取りは一切合切蛮族どころか獣らしく進んでいきますが。
シンジという子供を投げながら、片手に持つ
まあ、彼女が持って来た
まあついぞ、ずっとあの子はそんな調子でした。四楓院家の当時の当主が、たまたま開いた
服すら虚の髄から作ったのか知りませんが、黒い襦袢と白い死覇装。そんな彼女を
当時人の言葉も話せなかったあの
この仕事を持って来たのが……いえ、これは止しておきましょう。彼女もまあ、昔に比べれば丸くなったのですから、とやかく言う事ではありません。
ともあれ救出元が救出元であること、要経過観察とそれに加えて調教まで任された私の苦労を、一体誰が分かち合えたことでしょう。少々気が立ってしまうのも無理はないと、自分で自分を弁護したいところです。
『
おまけに
『
『――――! ――――! ――――――――!』
『何やら口汚く罵っているようですが、気付いていますか? あなたの傷が治っていることに』
『――――、――?』
話し言葉程度は理解できるようで、まあ、おそらくは彼女を守っていた死体となった死神たちの言葉を見聞きしていたのでしょうが。おそらく彼等も、彼女を守るのにはかなり苦労していたのでしょう。
見立てが正しければ……、異様に食べると言うことに執着し死神を忌避し、とにかく力の強い者からは逃げまどい、隠れ過ごそうとする。
十中八九、この子は
四十六室には鼻で笑われ蹴られた見解ですが、総隊長や雀部副隊長を始め数人は理解を示しました。
まあその結果、独り立ちできるまで面倒を見る様にさせられた訳ですが……。ある程度「逆らおうが何しようが無駄」と無気力症に陥ってからは、話が早くなりました。片言ですが辛うじて会話が出来るようになったり、着替えを覚えさせるまで時間がかかったり(気が付くとあの色反転した死覇装を纏っていましたし)、霊術院に通わせられるようなるまで紆余曲折色々ありましたが。
全く、
だからそんな彼女が私の跡の延長線上に立ち。あまつさえ、自分はちゃっかり意中の相手を見つけたと言うのも、妙に皮肉が利いていました。
「あー、全く。手続きちゃんとしたんでしょうね隊長?」
「えへん」
「胸張って威張っとるけど、通行許可腕力で捥ぎ取った後は流れでなあなあやで~」
「しばく。
「おおおっ!? 本気で殺しかかっとるやんけ!!? こんな
「というか俺もついでに追い回さないでくださいよ隊長ー!?」
「削り取って、すりおろす」
……まあ、感情表現はそれこそ獣か幼児のものなので、判りやすいものではないようですが。
あれはあれで、あの副隊長とは上手くかみ合っているようですが、その感情の行き違いは後々面倒な事態を引き起こして仕舞いかねないかと、一応の保護者としてはやきもきしたものです。
故にこそ――――
最初、南流魂街に現れたかの虚。
率先して挑発に乗った十一番隊の隊士を相手にあっさりと斬り伏せ続けたならば、あの子が出ないはずもないでしょう。
しかし、それでも足りない。
結果として、護廷十三隊が半壊する程の事態に陥るとは、その時はまだ理解されていませんでした。
総隊長は、私に待機を命じました。剣を取らぬと誓った以上、私の存在は最後の要。命を繋ぐ立場にあり、命を奪う立場としてここに立てと、その約束は変りません。
だから結果として、当時はまだ小童だった浮竹隊長や京楽隊長の前に、同じように小童だった彼女がしゃしゃり出るのも不思議はなく。結果として朱司波隊長の姉を犠牲とした天賜宝具「
誰もが油断していたのでしょう。総隊長すら
それ故に、戦いの最中「仮面を割り」「斬魄刀を手にし」戦い続けたかの大虚が、一体何へと変じたのかを理解していたものは、その場にはいませんでした。
「『ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――!』」
「梅! 梅!」
「参ったねぇ、こりゃいけないよ
「ここはひとまず、俺が引き受ける。
見慣れぬ黒い影の大魚と、巨大な刀が踊っていたのだけは遠方から見ていました。
そして、十一番隊舎に帰って来た、どこか何かが抜け落ちたあの子の顔も。
たまたま立ち寄ってみたら、最も壊滅的被害を受けた十一番隊の、伽藍洞になった隊舎であの子は一人、膝を抱えていました。
「初代……、梅、もう、無理だって。梅、言ってた。梅、殺してくれって」
「
「私、梅に、何もしてやれなかった……、怖かった。梅が喰われてくの、見てただけだった。
梅が……梅が庇ってくれたの、守ってくれたのに、何もできなかった」
「………………」
「私……、私…………」
「
嗚呼だから、情と言うのはこんなにも煩わしい。
生きることは戦いであり、戦いこそ全て。全てであるからこそ、人生は明快で判りやすく、楽しい。
楽しいが故に、
この獣に……、この娘に、私でも理解できる程度の幼い人の心を与えた所業の、なんと
戦いを愉しむ心こそが、結果的にこの子の生き方を縛ってしまった。こうして知らず罪を重ねる自分は、やはり人を導くことには向いていないのでしょう。
「梅……、梅の刀と、梅、もう、二人じゃないって。どうしようもないって」
「…………」
「殺さないといけないって――――梅、私が、殺さないといけないって……、初代……、
「…………であるならば、あなたは伝えなければならないでしょう」
「伝、える……?」
「かつてあなたが最も嫌っていた言葉というもので、かつてあなたが最も慣れ親しんでいた
そうでもなければ、もう二度とあなたは笑うこともできないでしょう」
「初代……」
「私も人のことを言えた義理はありませんが…………、ええ、必要であるなら
だから――――今は泣きなさい。あなたが立ち上がり、好きな人に好きと、お別れを告げるその時まで」
「初代――――」
その後の顛末もまた、やはり私が人を育て導くことに向いていないと思い知らされるものでした。
痛む良心のようなものはありませんが……、ほんの少し、それからしばらくは、何を食べてもつんと、鼻から目元に抜ける何かがあったような気がします。
十一番隊五代目隊長・
霊的な能力の多くを封じられた彼は、そのまま現世で鬼道衆の手で封印。……それすらも鏡の封印が万全でなかったこともあり、時折戻る力を散らすために半世紀に一度は封印を掛け直さざるを得ず。
血も残らなかった朱司波の家は取り潰され、養子だった彼もまた、さらに幼い子供達を背に野へと下ります。……後に
結果として、あの子が残したものは名前くらいなもの。
凡庸に隊長になり、凡庸に戦い、凡庸に死んだ。ただそれだけが、紙面に残ることになりました。
斬魄刀とて後からは発見されなかったそうです。……いえ、元よりあの子の斬魄刀は斬魄刀の概念にケンカを売っているタイプのものでしたから、私がどうこう考える必要はないのでしょうが。
あの日々は何だったのか――――幾度も人を
「次は出ても、構いませんね? 総隊長」
……あの子と、副隊長に要らぬ因縁を背負わせた、かの破面。アルトゥロを名乗っていた者。決して恨みのようなものが、あるわけではないのでしょう。元より自分の人間性に、そこまでのものを期待はしていません。
だけれども、そうは言えども――――。
あくまで霊的な封印と、時空を超えた魂魄核の封印であるのならば。いずれ時を経た後、何かしらの陰謀が動けば蘇ることも十分にあり得るでしょう。
あの子が亡くなった後、数百年後に
そのような事例、もはや幾度も幾度も見慣れ、しかしそれでも揺るがなかった瀞霊廷であるが故に。
これは、ほんの少しの我儘なのでしょうが。
「――――簡単に死ねると思わぬように」
誰ともなく、ほんの少しの私怨に気が高ぶり…………、勇音が跳び起きてしまい、あらあらと誤魔化すしかありませんでした。
※ ※ ※
「あれ? どないしたんです、××隊長。眼鏡越しでも目の下、くっきり隈取っとりますねぇ」
「××か。…………いや、何か恐ろしい夢を見たような気がしてね。内容は思い出せないのだが、それはそれは恐ろしいような」
「××隊長が恐ろしいとか、それもうこの世の終わりでも来るん違います? ボク、××隊長が怖いなんて言うん初めて聞きますけど。
というより外面、外面。イヅルもおらんし大丈夫とはいえ」
「僕と君との『対外的な』関係であっても、不可思議なやり取りではないと思うがね。……それより、わざわざ来たということはどうしたんだい?」
「
「フフ……、さて。今回はどれほど僕たちの
「滅茶苦茶なっても大局に影響無いとか、一番アカンやつやないです? ボク、××隊長怖いですわぁ」
「
まあ、あちらとしても想定以上に痛手を負うことにはなるだろうけれどね」
「死ぬんと違います?」
「いや、生きてるさ――――
「はぁー、……。出会った頃はそんなこと言う人違いましたのに、やっぱり何か変わられましたよねぇ。キャラ変、言うんです? 現世の流行り言葉で」
「いや? 何。
「ふぅん。とすると――――そろそろ捕縛しますん?」
「いや、第二案の方で行こうかと思っている。幸い
「この期に及んで自分自身すら遊びに使うとか、付き合うてるボクとか××隊長のこと少しは考えてくれます?」
「あちらはともかく、君には格別気を遣っているつもりだよ?
「…………さいですか」
「嗚呼。だからこそ次なる目標としては――――、む?」
二人の男が、瀞霊廷の地から空を見上げる。
見上げた先には、青空に蠢く渦のような孔。
広がる先には、見慣れぬ背の高い建物の群れ。
すなわち――――
「これは……、また何かボクらか彼らか、やらかしはりました?
…………隊長?」
「フフ、フフフ…………」
片方の男の確認する言葉に、もう片方の男は腹を抑えて笑っていた。
普段見ることのない光景であるがゆえに、声をかけた側の男は一歩、その異様さから後ずさる。
顔を上げた男は、やはり見たことも無い満面の笑みでこう言った。
「実に興味深いね――――これだから世界は、飽きがこない。何よりこれで、崩玉の力が更に高まってくれるだろうからね」
乱菊えらい久々にどっか遊び誘おうか……、などと、引いた男は恐怖心から世迷言を呟いた。
おまけ:本作独自設定一部補足
★
・本作梅針の副隊長時代の隊長。いわゆる尸魂界版の狼少女のような経歴……、本当に死神の魂魄か? 普段はやちる的なムーブを無表情に次々行って、副隊長を東奔西走させていた。色々あったがなんだかんだ付き合いが良い梅針とは、実は両想いだったが、上手く伝わることはなかった。
・斬魄刀:
・元ネタ:OVAの梅針討伐及び封印に動いていた姫カットっぽい隊長格。
★
・ビジュアルとしては、比較的顔立ちが整ってる方のモブ死神くらい。
・斬魄刀:
・元ネタ:OVAの梅針。あちらのビジュアルは、本作では斬魄刀の本体および融合後イメージ。