メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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一日が...短い...!
後半パート?の関係で、今回ホワイトたちはお休み


#057.MoN②少女、夕闇に誘う

 

 

 

 

 

「こちら東梢局護廷十三隊・十三番隊所属 朽木ルキア。現世座標軸三八二二。状況報告、霊力を伴う未知の霊体を多数確認! 繰り返す、こちら十三番隊 朽木ルキア。現世座標軸三八二二。状況報告、霊力を伴う未知の霊体を多数確認!

 ……む? 技術開発局通信技術研究科より伝令、十三番隊窓口へ転送願う…………、繋がらぬ? 壊れたか?」

「どうしたルキア?」

「いや、わからぬ。……とりあえず魂葬できるか試してくれ、一護!」

「あ? お、おぉ…………」

 

 駅前の建物群の中、溢れ出る謎の霊体を前に朽木ルキアは自らの携帯電話のような伝令神機に声をかけ続ける。そんな彼女を横目に見つつ、一護はそこら辺を歩いている「色の薄い」赤いとんがり頭をした、顔のない白い霊体の額に、斬魄刀の柄を立てる。霊力を込めた柄より放たれる印が光るが、しかしすぐ掻き消える。

 井上織姫が隣で「へぇ~、そうやって成仏させるんだ~」と驚いているが、そういえば初めて見るのだったなと思い適当に応じる。とはいえ結局、何度か試すが送ることは出来なかった。

 

 そしてルキアへと声をかけようとした時――――風が吹き、一瞬「周囲の音が遠のく」。

 

「何、だ……?」

「あれ? 人っ気が…………」

 

「うわああああ!? 一護ォ!」

 

 コン!? と遠くから聞こえる自らの肉体の悲鳴に叫び返す一護。突如「色を帯びた」霊体たちに群がられ、身動きが取れない。

 と思えばルキアや自分、織姫にすらまとわりつき始める霊体。取り押さえる様にひしと抱き着く連中は、体重こそ感じないがまるで網にからめとられているように動きを大きく妨害する。以前チャドと一緒によく絡まれた不良の横……、横……、何と言ったか一護は忘れたが(ピアスしてたくらいはシルエットが思い浮かぶ)、その不良相手に使われた手のうちのいくつかの一つにそういえばあったなと思い出しつつ、未解放状態の斬月を振り回す。

 

 当たり前のように、側面あるいは峰で。

 斬られず、吹っ飛ばされる霊体たち。それらをかき分け、一護は織姫を守る体勢に。

 

「わわわ――――って、黒崎くん……!?」

「何だテメェら、どけってのっ!」

 

 しれっとどさくさ紛れにお姫様抱っこし、戦い辛いと見るや肩担ぎ(お米様抱っこ)に移行する一護。一瞬顔を赤らめた井上織姫が、赤らめつつも苦笑いし「まあ、こうなるよね」と少し残念そうであるが、戦闘に意識をとられている一護に気を回す余裕はない。

 なお織姫がとっさに張っていた盾は3点を軸とした三角の盾であり、正面以外の攻撃を回避する術は「今の所」なかった。

 

 そのままルキアの方に飛び、喧嘩殺法とばかりに雑な中段蹴り(ヤクザキック)。もっとも飛び跳ねているため、その一撃は霊体の首を蹴り飛ばす。しかしその雑な暴力が良かったのか、霊体たちの動きは若干鈍る。

 

「本当、何だコイツら? 群がって来るけど、攻撃してくる訳でもないみてェだし」

「乙女の身体をまさぐる時点で既に重罪だと思うが……」

「は?」

「ぬ? …………ハッ!? い、いや、何でもないぞ! 嗚呼そうとも、正体不明だが攻撃的な霊体ではないな!(いかん、一瞬素で現世の小娘のようなことしか頭になかった……)」

 

 振子雪(スノーホワイト)をブンブン振り回しながらも、ぼそぼそと言い訳めいて呟くルキアのデフォルメされていそうな表情はともかく。

 

「黒崎君が蹴ったら、寄って来なくなっちゃったね?」

「これくらいで寄って来なくなるっつーことは、理性みてェなのはあるってことか?」

「貴様の顔が悪党のように恐ろしいから寄って来ぬのではないか?」

「ンなガキンチョじゃあるまいし……って、誰の顔が恐ろしいだッ!」

「でも黒崎君、喧嘩強そう! って思われちゃったとか?」

「そ、そりゃ別に弱いっていう訳でもねェけどよォ…………」

「まあ少なくとも、こちらに警戒しているのは間違いないだろうが……。ここまで人口が密集していると、おいそれと技を使う訳にもいかないか。

 先ほど少し縛道で拘束しようとしたが、どうにもすり抜けているように掻き消えた。安易に攻撃をするのは、(プラス)どころか一般人に被害が出るやもしれぬ」

「もろすぎるってことか? 面倒といえば面倒だなァ――――」

 

「――――やあッ! ふっ」

 

 ん? と、斬魄刀を担いで悩んでいる一護の耳に、声が聞こえる。

 少女らしい甲高い声と、吹き荒れる風、否、木枯らしのように夏に似つかわしくない風。

 紅葉(もみじ)だ! という織姫の声と、その向いていた方角に一護とルキアの視線もそちらへ。……なお同時に彼女の尻を頭の横に担ぐ形になっている一護であるため、織姫は真逆の方を向かされて「たはは~」と少し困惑していた。

 

闐嵐(てんらん)……? 否、それにしては規模が小さい」

「てんらん?」

「そういう破道があるのだ。しかし――――あの死神、誰だ?」

 

 少女、赤い腰帯をした死神は竜巻のような旋毛風の中心で、斬魄刀をぐるぐると回しながら霊体を斬る。ルキアの言及通りいとも簡単に斬られた霊体は霞のように(ほど)けて霧散するが、その合間合間でちらほら刃がサラリーマンやら老人やら一般人をかすめかねない勢いで振り回されているのを見て「アイツ……!」とわずかに一護の眉間の皺が深くなる。

 やがて飛び跳ね、一護たちを上空から見下ろす様に、体操選手のような曲芸めいた動きで通過する少女の死神。髪を頭後ろで一つにまとめた、活発そうな少女であるが……、一護と彼に抱えられてる織姫を見て、若干困惑していそうだったのが玉に瑕。

 あ? と相手の視線に困惑した一護に「黒崎君、いったん下ろして大丈夫……!」と少し慌てながら言う織姫。瞬間、自分の頬が彼女の臀部とゼロ距離で接している事実に気付き、「わ、悪ィ」とこちらも若干慌てながら下ろす一護であった。

 

「ガキが何を慌てておるか」

「うるせェ! というか、アイツ……」

「あっ、跳んだ!」

 

 斬魄刀を平に構え、霊圧を高める。そのまま舞うようにくるくるゆったりと回転しながら垂直に飛び跳ねた彼女は、ある程度の高さで制止しながら、やはり舞うように回りつつ霊圧を高める。

 斬魄刀を解放しようとしているのは即座に察せられたが、ちらほらと周囲の状況――――謎の霊体に紛れて、老若男女問わず多くの人がいる情景を見て、斬月を構え彼女に斬りかかるよう向かった。

 

「夕闇に誘え、()ろ――――っくま!? ちょっと、何するのよ!」

 

 形状が細く伸び、変形しかかった斬魄刀。とはいえ自らに刀を振りかぶる、どう見ても彼女視点で悪役にしか見えない黒崎一護の背格好表情顔つき髪色など見れば、中断して刀で受けるのは当たり前。

 なお、当然のように刃の面でぶつかるため、少女死神も困惑の反応である。

 

「やめろってのッ! テメェ、何やってやがんだ!? 広場で虚退治してンじゃねぇぞ! 何雑に一気にカタ付けようとしてやがるッ!」

「はァ!? うっせーなァ、バーカッ!」

「馬鹿はテメーだッ! 一般人これだけいるってのに、被害考えずに攻撃しようとすンじゃねェ! ()えない奴らは巻き添え喰らっても逃げられねーンだぞッ!?」

「あっ、そういうこと?」

 

 ごめんごめん、と最初は喧嘩腰で応対していた彼女だったが、一護の一言に素直に謝ると。

 

「でも大丈夫。私とこの子(ヽヽヽ)ならやれるって、そんな気がするんだ!」

「はァ!? 気がするって――」

「そんな訳で邪魔ーッ!」

「ぐっ!?」

 

 黒崎君! と声をかけて、一護の落下地点まで駆けよる織姫。空中で気楽に応じながらも、一護の頭を踏みつけより高きに跳んだ彼女は、再び斬魄刀の解放を続ける。

 

「どうにかしないといけないのは、あの嫌な感じのやつらだけ……!

 力を貸して――――」

 

 回転しながら今度こそ、斬魄刀は光り、形状を変えていく。槍のように延びるそれは、一角のように鞘を解することなく、それでいて剣らしさを失い――――。

 

 

 

「――――夕闇(ゆうやみ)(いざな)え、弥勒丸(みろくまる)!」

 

 

 

 細くシンプルなシルエットの錫杖に、矢じりのような小さい刃。変化した斬魄刀を振るう彼女は、矢じり側で円を描くように錫杖を振り回す。同時に、先ほどまで発生してた旋風が収束し、妙に細い竜巻に。

 

「これならピンポイントでしょ!

 ――――憑火(つきび)黄嵐(こがらし)!」

 

 一護に得意げに声をかけながら、錫杖の斬魄刀を振るう少女死神。その動きに合わせ、舞い上がる紅や橙、黄の落ち葉。形状が整いすぎているため、おそらく斬魄刀から発生している霊子の塊のようなそれなのだろうが、竜巻に巻き込まれた落ち葉は共にこすれ、雷かあるいは火をその内側に発生させる。

 

 オイ!? と、案外殺意の高そうなその竜巻にツッコミを入れる一護。とっさに織姫やルキアを背後に庇うあたりは無意識なのだろうが、ルキアはルキアでその「妙に器用な」斬魄刀の扱い方を見てじっと考え込んでいる。

 実際彼女の言葉の通り、その振り回す斬魄刀に合わせ、人々の間を縫うように竜巻は霊体を巻き上げ巻き込み、地味に処理していく。面攻撃ではなく点攻撃で、線を描くような動きは効率が悪いが、ちゃんと周囲に気を遣ってるのを確認して一護もため息をついた。

 

 ――――竜巻の抜けた後、紅葉した落ち葉舞う風が吹き抜ける。

 

 女子高生たちが「何、もう秋!?」「早すぎない!!?」というような言葉を交わして困惑しているが、そのどさくさに紛れ例の霊体たちも一気にどこかへと散り退散していった。やはり何かしら判断できるだけの知性はありそうな動きだが、とはいえ一掃された事実に違いはない。

 

「消えた……? どうなってンだ、連中の霊絡も出ねェぞ?」

「感知が弱いくせにそういう所は器用だな、貴様…………」

 

 周囲の霊子を自らの霊圧で圧縮し、無理やり探査しようとする一護だったが、霊体たちの霊圧の痕跡すら残っていないのか何かしらのそれらしいものも観測できない。自分自身である「死神としての」色のついた帯が一つ、色がほぼ褪せ白くなってしまった「人間と変わらぬ」ルキアのものが一つ、当然のように真白い織姫のものが一つ。

 やはり初めて見るそれらに驚きながらも「そういえば」と、井上織姫は頭を傾げる。

 

「茶渡君、たぶん気付いてないよね? ってーいうより、私たちもこっちに来るまで全然……」

「あ? そういやそうだな」

「元より計測できる霊圧が薄い……? 因果の鎖がある(プラス)ならまだしも、本当に正体がつかめぬな」

 

 というよりあいつ一体どこに、と零帯から自分同様に死神の色を探そうとする一護であったが――――。

 

 

 

「オッシャー! やったやったもう最高だもんね!

 いぇい! イェイ! イェイェイェイッ! 超超超超いい感じー♪」

 

 

 

「古くねェか?」

「黒崎くん、まだそんなに経ってないよ……」

「む?」

 

 ネタがいまいちわからず困惑するルキアはともかく。ほんの数年前の曲のワンフレーズを口ずさみ、お尻をフリフリしたり腕をきゃぴきゃぴ上げ下げしたりぴょんぴょん飛び跳ねたりと、非常に少女らしい……を通り越してやや「幼い」言動をする彼女。黒髪を黄色リボンで一つにまとめた、茶系のブレザー服に短すぎるミニスカート。覗く脚は細いながらも肉付きの良さを感じさせるが、いまいち一護は興味がなさそうである。どうやら性癖には刺さらなかったらしいが、それはそうとして半眼でじっとその脚を見て居たりはした。

 

 なおその視線は女性陣には筒抜けであるので、ルキアはギャグのようにデフォルメできそうなジト目を向けているし、井上織姫もまた自分のスカート丈を見て「う~ん……」と悩み始めていたりするが、それはさておき。

 

 一通り躍った(?)後に得意げに笑いながらくるりと半回転した彼女は、ちょうど一護の顔を見て「なんだアンタか」と疲れたように笑う。なお胸は大きくない。

 そのまま続けてパトロール中とかじゃないの? や、すぐ帰らなかったんだ、やら色々と言ってくるが、それよりも何よりも義骸に入ったタイミングに気付かなかったことが一護には衝撃であったらしい。指を突きつけ絶叫して問いただすが、「さあ? たぶんさっき……、うん、たぶん」と適当に応じる少女。

 振子雪を解除しながら(※解除時は一護の胸に戻さずその場で溶ける)、いまだ一護の解除していない霊絡を見て押し黙るルキア。周囲に漂う帯の色を見分し、腕を組んで悩むような仕草である。

 

「黒崎君、落ち着いて落ち着いて、こういう時は深呼吸深呼吸……! ヒッヒッフー、ボッハッハー!」

「いや井上、それ深呼吸じゃねェし後ろのそれ観音寺じゃねェか……」

「ボハハハハーッ!」

「って後半お前もやるのかよ!?」

「ボハハハハーッ!」

「井上!?」

 

 突然ドン・観音寺で輪唱を始める女子二人はともかく。どうやらノリが良いことだけは分かった(ほぼ何もわかっていない)一護だったが、続けて色々と問いただしてもなしのつぶて、暖簾に腕押し。おそらくは死神であること、以上の情報が得られず困惑する一護だったが、突如「あー!」と叫びながら、駅前の大型商業スーパーの入り口付近、光量の関係で鏡のようにこちらの姿が若干映る窓ガラスへと駆けていく。

 そこに映る自分の姿と髪をみて、どこか残念そうな声音。

 

「やっぱ黄色、似合わないんだよね~。弥勒丸の() も赤とか橙だし……、どう思う?」

「そんなことないよー! 可愛いから何着ても似合うって! えっと――――」

「私、茜雫(せんな)。茜色の雫で、せんな。あなたは?」

「井上織姫! えっと、字は七夕の織姫だから、織姫って呼んでくれると嬉しいなー!」

「織姫か、ロマンチックな名前~!」

 

「いや打ち解けてる場合じゃねェよ!? というか、何か知ってることあるなら少しは話してくれって! マジでさァ!」

 

 きゃっきゃうふふと戯れる女子二人にツッコミを入れる一護。ここのところ情報の報連相を1文字たりともまともに守ってもらっていないせいか、知らないことに対して若干過敏になっているのだろうか。ごめんごめん、と何故か照れる織姫。一方の茜雫は「えー、どうでも良いじゃない」と適当な応対。

 

「えっと、あんた…………、えっと」

「黒崎一護だ」

「あら意外と素直ね。……いちご? あら可愛い」

「一等賞の一に、守護神の護だッ! 可愛くも何ともねェ!?」

「そうだよ~、黒崎君は名前じゃなくて、こうやってツンツンしちゃって恥ずかしがっちゃうところが可愛いんだから~、()()()()みたいに」

「い、井上!?」

 

 突如意味不明なところを可愛いと言われて困惑する一護。というかボスタフって何だよ。

 なお初対面相手に気安かった茜雫も「可愛い……?」と困惑しているので、一護の反応も当然と言えば当然である。

 話題を変えようとしてか視線を巡らし、その視線がルキアに留まった茜雫。妙にファンキーかつボーイッシュな露出度のルキアを前に目をキラキラさせて、飛び込むように「わー!」とわきの下に手を入れ、高い高いをするように持ち上げた。

 

 頬擦りまでされて完全にぬいぐるみのような扱いを受けるルキア。意外と可愛い物好きな彼女であるからして、まさか自分が斯様に愛玩されることなど久しくなかったのだろう、鳩が豆鉄砲くらったような表情でされるがままだ。

 

「うわすっごい! お人形さんみたいに可愛いッ! 織姫も可愛いけどすっごすっご! すごい! すごいを超えたすごい」

「語彙貧弱すぎねェか、お前……」

「こ、このような褒められ方をしたのは初めてだが……、そういえばコンのやつが居ないな」

「あ?」

「コンちゃん? さっき来てたよね」

 

「何、そのコンって。――――というかアレ、あんたの義骸じゃない?」

 

 抱き上げていたルキアを下ろしつつ指さした茜雫。その方向を見れば……、つい先ほど公園でのと同様に、何故か倒れている一護の肉体が今にも救急車で運ばれようとしていた。

 

「またかよ!? というか何だ、ぬいぐるみの中に入ってた時は出しづらいくせに、俺の中にあるときは何であんな出やすいんだ!?」

「一度、浦原に調整させるべきか……?」

「早く行かないとヤバいんじゃない? …………っと、じゃあまったねー☆」

「って!? いや逃がすかッ」

 

 あっ、と織姫が声をかけるよりも前に、茜雫の手首を握る一護。霊体(霊的存在)とは言え器子(物的存在)ないしそれに準じる器に干渉出来ているのは、相手もまた死神だからか。その手首を掴み「事情聴くって言ってンだから、逃がす訳ねェだろ! 飯くらい奢るから少し話せよっ!」と連行していく。

 ちょっと! と苛立つ茜雫と、彼女を引く一護の姿。

 その後ろ姿を見て、どこか寂しそうな表情を浮かべる織姫を前に「朴念仁が」と、ルキアは腕を組みながら呟く。

 

 とはいえそんな朽木ルキアも、眉間に皺を寄せてどこかモヤっとしていそうな表情だったのは、本人も自覚が薄いところであった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 例えるならそれは、江戸か明治期の街並。

 例えるならそれは、鎌倉時代の気風。

 風吹く中で息づく人々は、皆一様に()()()()()()()()

 

 そんな広大な場所の中心、大地ではない独特の張り巡らされた()の上に並ぶ街並み。さらにそれらを従える中央に存在する区画の最奥にて、「一」と(しる)された大きな扉が開かれる。

 

 内には人が十二人。それぞれが黒い死覇装に、白い隊主羽織。それぞれ見れば、各々が各々に放つ威圧感。

 

 右より、奇数番並び。

 一人。数は十一。幾本と髪をとがらせその先端に鈴をつけた、眼帯のごろつきがごとき男。

 一人。数は九。オールバックにしたドレッドヘアに、一体型の透明なサングラスとオレンジの首巻をした浅黒い男。

 一人。数は七。頭部をすっぽり覆う様な大きな笠を被った偉丈夫。

 一人。数は五。眼鏡をかけ涼やかな表情を浮かべる、年齢不詳の美男。

 一人。数は三。白い髪に糸目の、どこか飄々とした雰囲気で笑みを浮かべる青年。

 

 左より、偶数番並び。 

 一人。数は十二。白と黒の独特のメイクをした、妙な被り物をした形容が難しい男。

 一人。数は十。短い白髪をツンツンとさせた、緑の帯で斬魄刀を背に縛る少年。

 一人。数は八。女物の着物を羽織った、幅広の傘を頭に被る軽妙そうな雨水髭面の男性。

 一人。数は六。白い布を首元に巻く、牽星箝(けんせいかん)と呼ばれる髪留めで長髪をまとめ流す無表情の青年。

 一人。数は四。首元で後ろ髪全てをまとめ三つ編みで縛る、年齢を全く察させず感じさせない美女。

 一人。数は二。おかっぱのような前髪と後ろで細くまとめた髪の、釣り目が強い少女。

 

 そして中央に座る老人。数は一。長老という言葉が似合いそうな、額から禿頭にかけ十字傷の残る白髭の男性。

 

「ゴホッ、ゴホッ……、おや? ということは、俺が最後ですか、先生」

 

 そして、そう咳き込むは今入室した男性。背の数は、十三。見た目は青年とも壮年ともつかない年齢不詳。頬はやや()けており、雑に切ってもいなさそうな白い髪が見た目の病弱さを増す。

 左右から少女と青年のような隊士に支えられながら入室した彼は「じゃあ待っていてくれ」と二人を残し、この隊主集う場へと足を進めた。

 

「今日は大丈夫なのかい? 浮竹(うきたけ)

「大丈夫じゃないが、流石にここまでの一大事ではな。……俺はともかく、更木隊長もちゃんと来てる!?」

「あ?」

「虎徹クンがわざわざ誘導しに来てくれたからね、一大事だからって――」

 

「――――静粛に! ではこれより、此度の事態における緊急の隊主会を執り行う!」

 

 八の字を背負う男と十一の字を背負う男と、十三の字を背負う彼が会話していると、「事態は火急である!」とその話し合いを打ち切るように、中央にいる「一」の総隊長――――山本(やまもと)元柳斎(げんりゅうさい)重國(しげくに)は声を荒げた。

 

「本日〇時、ここ瀞霊廷を中心に尸魂界上空へ、突如奇怪な映像を確認。同刻、技術開発局より現世への異常な霊波流入を捕捉、断界領域での霊子計測が不能となっておる。十二番隊、補足はあるか?」

「運悪く、修多羅(しゅたら)等級(スケール)の更新作業中に来たものでネ。初動が遅れたのは間違いないが、現在状況確認のため現世へ向かった隠密機動に、諸々計測機器を持たせてあるヨ。じき情報は集まって来るとは思うので、くれぐれも軽挙妄動は謹んでくれたまえヨ、隊長諸兄」

 

 十二の数字を背負う独特なメイクと装飾の男のコメントに「うむ」と総隊長は頷く。

 なお説明途中で「二」の字を背負う少女が今にも舌打ちしそうな嫌な表情をしていたが、それは置いておいて。

 

「それはそうと、おそらく空間は叫谷(きょうごく)の類だと推測できているヨ。空間侵入の調査に向かった隠密機動が何一つ進展を寄越してこないのだから、こちらもよほどの無能と言うわけでも無ければ、正攻法で入ることが出来るような場所でないとみるべきだろうネ。

 まあ、世の中には信じられないくらいの無能など吐いて捨てる程いるのだから、技術開発局のデリケートな機材をまともに扱えていない可能性も捨てきれはしないだろうがネ」

(くろつち)、貴様……」

 

 二の少女が睨むが、素知らぬ顔で両目を左右バラバラに回転させる(!?)奇怪な芸を披露する十二の男はさておき。なお当然総隊長から一喝されるので、両者ともに気を引き締める。

 

「叫谷が、現世と尸魂界(ソウルソサエティ)に接して融合している……? しかしそれ程の異常事態、一体何者が――――」

 

 

 

「――――此度の事案、零番隊より()()の可能性を指摘されておる。故にこそ断界からの『強引な』侵入を試み検証するため、特別隊を編成したいと思う。

 五番隊、藍染惣右介」

 

「――はい」

 

 

 

 

 五の字を背負う、低く響く声の眼鏡の男性が足を踏み出す。

 中央に立ち、総隊長に一礼。

 

「此度の事案は三界安定のうち、二つを完膚なきまでに崩壊させかねぬ事案へと繋がり得る。故に諸々を鑑み、其方を此度の早期決着の為の、特別部隊の統括とする。

 必要なことがあればこの場にて申せ」

「では、失礼ながら」

 

 再度、目礼をしてから。眼鏡姿の男性、藍染惣右介はちらりと三の字を背負う青年へと目を向ける。

 一瞬その彼の頬が引きつったのを見て少しだけ微笑み、再度目礼をした上で。

 

「異例なこととは思われますが、今回の部隊編成にあたり三番隊隊長 市丸ギンを私の部隊に加えて頂きたい。

 彼とは多少なりとも付き合いが長い。それ故に純粋な戦力面と連携面を鑑みて、お願いいたします」

 

「むぅ…………、よかろう。

 とはいえ、編成に時間はない。連携を主とするならば、人員の選定は半刻以内に対応せよ」

 

 はっ、と頭を下げる藍染惣右介と、顔色が如実に悪くなる市丸ギン。

 

 そんな両者を見ながら、十の字を背負う少年―――― 一護たちにも言わずと知れた日番谷冬獅郎は「少しは容赦してやってくれよ藍染隊長」と、同情の目を向ける。

 割とこうして、市丸ギンが無茶振りめいたことをされる光景と、それにより市丸ギンが顔色を悪くする光景を何度も見ているからこそのリアクションであった。

 

 

 

 

 


おまけ:補足事項

 

・ほんの数年前の楽曲:

 BLEACHが2000年代初頭が舞台なことを意識したネタ。劇中茜雫のこの辺りのセリフもちょっと違和感あったので、多分本当はこう歌いたかったんだろうという邪推。

 

 

 

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