メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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また長くなってるんですが、キリが悪いので今回もこのままでお願いします…
砕蜂は可愛い(確信)
 
※色々ブッ込んでる独自解釈および禁句(タブー)注意


#062.MoN⑦あなたの傍にいたいんだよ

 

 

 

 

 

「いや、済まない! こっちに来るときはもうちょっと元気だったんだが……。まあ元々、あまり調子は良くない時だったからな」

「マジかよ、そんな過酷なのか尸魂界の仕事って……」

「いや、持病だ。身体はそこまで丈夫じゃないと自負している」

「で、隊長やってんスよね?」

「諦めろ一護、浮竹隊長はいつもこんなモンだ」

「えぇ……?」

「あの、これ、使います? ティッシュ」

「わざわざ済まないな。ありがとう! ……む、少しはマシになったかな?」

 

『隊長ォ……、マシになったかなじゃ無くてそもそも虎徹か四番隊一人くらい引っ張ってこいってンだよなァ、そういうところ昔から全然変わってねェっつーか……。というか何でティッシュ触れてンだ………って、まァ()()()()()なァ、そういうもんか。ハァ~ ……』

『ぎゃうぎゃ~ ……』

『あなた、物言いが完全に志波海燕になってますけど、それで良いのですか……?』

 

 困惑する姐さんには悪いが、俺個人としても()()()()海燕殿の意見と完全に合致してる。何で救護班伴わねェでこっち来てンだよっつーツッコミなんだが、まァ実際のところ送る人数に制限をかけられたって話か? 浮竹隊長って総隊長含めた隊長陣の中で1、2を争うくらいの高い霊圧持ちだし、よほどの事情がない限りそんな浮竹隊長を含めて、大人数は送り込めねェってのはわからなくも無ェから、その上で「俺の我儘でこれ以上人数制限させるつもりはないよ」とか言って、虎徹の奴を連れて来るの止めたンだろうが……。

  

 とにかくそうやって足元に投影されている現世の映像。何か色々と「超越者的な意味で」ヤベェ感じの名前の神社で、ほぼ劇場版通りの面子で来た連中と話し合ってる一護と茜雫。いやァ、とはいえ一護も初対面だし浮竹隊長も怖ェ顔しちゃいねェし、映画よりはもっと穏当な感じになってるっつー話になる、のか?

 

『――――ホワイトよ』

『って、うぉああああああっ!? オッサン、あんたどこからわいて来てンだッ!?』

 

 で、座ってる俺の足元の()()()、ぬっと鼻から上の頭部を出した■■■■のオッサン。ちょっと前まで気配がねェと思っていたら、影に潜んでいやがったか。何だ? 子雪が遊んでるとこを邪魔するのが悪いとかンな話か? 後、俺と一緒に姐さんも飛び退いて「惨殺死体みたいですから全身をお出しなさいなっ」とか言ってるし。

 なお子雪は頭だけのオッサンを見たら、何が楽しいのかその微妙に出ている髪をぎゅって握って引き抜こうとしていやがる。野菜じゃねェぞ!

 

『ホワイト、それはどうでも良い。そういうことではなく、一護に近づいているぞ、()()()()()()

『王、敵?』

『姐さん知らねェか? ……って、いや、何でそれ判るンだよオッサンも』

 

 俺の確認に、オッサンは姐さんに言われた通り全身を出し……子雪も引っ張られてそのまま上昇するモンだから、オッサンもオッサンで首の角度がちょっと危ねェ感じで傾いたまま立っていやがる。

 いや痛ェなら痛ェってちゃんと言ってやれって……。影経由で伝わって来たオッサンのちょっと悲しい気持ちを汲んで、子雪を抱き上げて手を離させてやった。「ぎゃう?」と見上げて来るコイツの頭を撫でて(ちょっとこめかみの角に当たって痛ェ)、そのまま後ろから抱きしめる様にして膝の上に乗せる。小せェな……。一瞬、空鶴を思い出しそうになるが、いくらガキンチョでもアイツこんなに滅茶苦茶空気読まねェガキンチョじゃなかったなと思い直しておく。

 

 で、オッサンは右目を閉じて、開けた左目を右手で指さし。

 

 

 

『――――彼奴が持っている()の関係だ。成程、王敵とはよく言ったものだ……、そして、霊圧自体も()()()()()のでな』

 

『えっ?』

『…………オイオイ、つまりそういう、コトか?』

 

 

 

 俺の直接名詞を使わない確認に、オッサンは異論なく首肯する。それをもってまァ確かに「原作完結後に振り返れば」そうであっても不可思議じゃねェなという可能性に行きあたり。ついでに一護たちと話しているどっか疲れた様子の雛森桃の発言から、どこぞの眼鏡の()()()()()が涼やかに微笑んでいる映像が脳裏を過った。

 ……っていうか、一護もその気もねェのに肩抱いて口説くみてェな体勢に入りやがって、流石に経験不足すぎかお前よォ。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 茜雫に手渡されたティッシュペーパーを竹筒の水で濡らし、顎や手をぬぐう浮竹十四郎。肌の白さなど含めてどこか風が吹けば折れてしまいそうな弱弱しい印象を受けるせいで、どうにもヒヤヒヤと様子を見守る一護。そわそわと前傾姿勢で「大丈夫かアンタ」というオーラを全身から放っている彼をみて、浮竹は意味もなく何度か頷いた。

 とはいえ「積もる話もあるが、それは一旦後回しだな」と咳払い。……咳払いと同時に血痰を吐かないかと焦った一護と茜雫だったが、今度は特に問題はなかった。

 

「中央四十六室より、第一級厳令が出された。

 君は、茜雫と言ったね。これから我々は、君を尸魂界に護送し保護することになる」

 

「ほご……?」

 

 幼子のような発音で言う茜雫。四十六室とか一護もルキアや恋次たちから何度か聞いたような覚えはあるが、確か死神のお偉いさんだったか何か。いや、言い回しのニュアンスからしてそういうことなのだろうとこの場では納得し、どういうことだよと混乱する茜雫に代わり続きを促した。

 

「言葉通りだ。彼女が、敵の第一目的だと判断された」

「いやだから、えっと浮竹さん、どういうことなんだ? それ」

「ん? 言葉通りの意味だと思うんだが……」

 

「「…………」」

 

 しばし両者、沈黙。日番谷が乱菊に「おいアレ何とかしろよ」と言うが「アタシより隊長が言って来たらどうです~?」と笑う。

 しびれを切らしたのは、おかっぱ風の髪型の少女死神であった。

 

「ええい埒が明かぬ! 浮竹、貴様とそこの黒崎という死神()()()の小僧とで前提が大きく違うのだろう、それを話せッ!」

「も、もど、き…………?」

「いや、モドキというのは可哀想じゃないか? 砕蜂(ソイフォン)隊長。一護君だってちゃんと現世で、朽木たちと一緒に死神として活動をしてるって――――」

「そこはどうでも良い! 

 あーもうッ! ……そこ! そこの茜雫とか言ったか、小娘!」

「えっ!? わわ、私?」

 

 急に叫びながら指を突き付けられ、困惑して一護の後ろに一歩下がる茜雫。まさか話題を振られると思っていなかったのもあるだろうが、挙動だけで言えば人見知りしている子供のようなものだった。

 そんな彼女を見ながら、ソイフォンと呼ばれた彼女は腕を組んで強引に話を進める。

 

「護廷十三隊の隊士の記録、および我が隠密機動の名簿をくまなく調査した結果、阿散井が朽木より言伝を受けて持ち帰った情報と、そこの茜雫という死神とが合致しなかった。そもそも茜雫という死神が、過去に存在した形跡がない。

 さらに言えば、弥勒丸という斬魄刀は百年ほど前に八番隊の隊士が所有していたという記録がある。

 まずこの時点で、その女の出自が怪しいのがわかったか? 黒崎一護!」

「お、おう、ありがとう。……結構真面目なんだな、アンタ」

「フン! これくらい常識的な対応だろッ」

 

 意外と丁寧に説明してくれた彼女に感謝する一護と、ぷいっとそっぽを向く砕蜂。なおそれを見て、特に何かある訳ではないが茜雫はむっとした表情になったり、浮竹が「別に不真面目でもないんだがな……」と少し悲しそうにしているのはさておき。

 

「さらに言えば、弥勒丸の持ち主は――――それこそ百年前に、断崖にて拘突か拘流に呑まれ行方不明となっている。所有者から引き継いだとしても、斬魄刀ごと記録が喪失しているのならば、現時点においてその所有者がいるなど有り得ざることだ」

「えっ? い、いや、ちょっと待ってよお姉さん、私だってちゃんと、死神――――」

 

 困惑する茜雫に、阿散井恋次が頭を掻きながら、バツが悪そうに確認する。

 

「――――じゃあ聞くけどよぉ。お前、いつ現世に来たってンだ? 地獄蝶も出払った記録が無ェ以上、どうやって尸魂界とこっちとを行き来したってンだ?」

 

 茜雫、と一護が声をかける。それを聞き、彼女は思案する。少し頭を押さえて、そして……。

 

「二日前、橋の下に()()()()()、土手のところで少し休憩してから……、あの川、子供の頃からずっと、あれ? でも、だって、茜雫って名前はお姉ちゃんと……」

「おい、茜雫?」

「違う、違う、そうじゃない、いや、そうだけど、そうなんだけど、ボクは火にまみれた東京から逃げて、逃げて――――」

 

「……やっぱりな。ほら嬢ちゃん、色々な記憶が、バラバラに混じっちまってるだろ?」

 

 どこか言い辛そうにしているのは、既に一護が茜雫にだいぶ絆されているからか。なまじこちらで一緒に修行したり戦ったりと、付き合いの感覚がそれなりに友達()()()恋次であるからして、彼女と共に動揺する一護の姿は見て居られないのかもしれない。

 そんな一護に、先ほどの通り続けて砕蜂が言う。

 

「…………零番隊の刀神(とうしん)、および大織守(おおおりがみ)より、見解が下された。と言っても、もう察しがついているのではないか? 黒崎一護」

「砕蜂……!」

「初対面の貴様にいきなり呼び捨てにされる謂れはない! ……が、反発すると時間を食うな。今は捨て置く。

 ……思念珠という存在は、人間の魂魄を元にしている以上、現世においてさ迷い歩くために、『探し求めるために』人の形を模して姿を為すそうだ。信じたくないだろうが、今回の騒動の中心に居座っているのは、その女だ」

 

「わたし、わた……、アタシ……?」

 

 一人称すら曖昧になりつつある茜雫に、会話に混じっていない日番谷は半眼を向けたまま。

 そして、浮竹の隣のどこか疲れたような少女の死神が口を開く。

 

「…………昨日未明、叫谷内部への侵入のために編成された特別部隊が断界において謎の武装勢力によって襲撃。隠密機動の部隊もろとも、現在は消息不明となっています。私の隊の、藍染隊長も……」

「市丸の奴も一緒にだ。黒崎、お前も覚えてるだろ?」 

「……」

「さっき言っていた弥勒丸の使い手同様に、尸魂界は藍染も市丸も二人そろって断界で倒されたと見ている。おそらく拘突か何かに呑まれたんだろう。そっちならまだ良いかもしれないが、どちらにせよ一定期間を設けて消息が絶えていた場合、新しい隊長を選出する必要があるような事態だ。

 わかるか、黒崎。その女を狙っている連中は、こちらの手を確実に封じるために動いている」

「その拘突とか言うのもよくわからねェけど、大変な状況だってのはわかった。

 でもそれが、茜雫に何の関係があるってンだ? 欠魂を使って現世と尸魂界を繋げてるのは、多分その襲った奴らで、コイツじゃ――――」

 

「――――叫谷が出現して約二十四時間。零番隊が三時間ほど前に動き始め、状況について解析し暫定だが結論が出た。敵の目的もおおよそ割れている。

 奴らは叫谷を使って、現世と尸魂界を同時に破壊するつもりなのだ。そして、その計画の要――尸魂界を滅ぼすための鍵になるのが、その女なのだ」

 

 会話の隙間をぬって砕蜂が説明を継続する。若干不機嫌そうなのは、自分が説明している時に勝手に割り込まれて、そのまま話を継続できなかったせいか。とはいえちゃんと律儀に解説してる彼女の方を、一護はちゃんとまじまじと見て。

 

 そして、浮竹が締めるように言葉を引き継ぐ。

 

「まあ、そういうことだ。――――つまり敵の手に落ちないよう、我々で保護してしまえば良いということだ」

「浮竹さん……、でも、保護って?」

「…………浮竹の言っていることは、微妙に違っている」

「砕蜂っ」

「だから、呼び捨て……! せめて隊長くらいつけろ、黒崎一護ッ! 貴様は私の許嫁か何かかッ!?」

「止めておけ、疲れるぞ」

 

 微妙に気位が高いのか扱いが雑なことには神経がピリピリしてしまうし、ノリが良いのでその場ですぐ怒りを言葉にしてしまうらしい砕蜂。プリプリと怒っている彼女に、半眼の日番谷がツッコミを入れる。「だな」と恋次も続けている辺り、一護のこの呼び方に対するノリは共通見解のようだ。なお一護本人は「そこまで怒ることか?」みたいな顔をしているが、そんな一護の表情がさらに砕蜂の感情の火に油を注ぐ。

 

「ええい……、()()といいどうしてこう……、いや、それはどうでも良い。

 尸魂界から下された命令は、その女の拘束だ」

「拘束って…………!」

「尸魂界に連行し、地下特別監獄に幽閉。叫谷の自然消滅までかの『外部からの干渉がほぼ不可能な空間』での保護というのが上の意向だ。それをこの男は…………」

 

「――――いやだって、可哀想じゃないか? 見た目も、それから人格だって、まだ年頃の優しい女の子なんだぞ? せめて無間とはいわず、隊舎で保護できる程度に留めておけないかって、京楽も動いているし」

 

 浮竹のそのコメントには「そんな雑な物言いで上の決定に堂々と逆らおうとする奴があるかッ!」とプリプリと怒っている。「ノリが良いみてェだな」とぼそっと言う一護のそんな砕蜂への感想はともかく、浮竹が浮竹なりに茜雫の対応に気を遣っていることは理解できる。

 そして、どうしてわざわざ隊長が三人も来ているのかと言う事情も。

 

「護送中か、それともこっちでかは知らねェけど、茜雫を護るために、隊長とかが来てるっつーことか?」

「敵もとんでもなく強ェらしいからな。……最初は更木隊長が来そうになってたけど、まァ色々あってそっちは取りやめになったが」

「ざらき?」

「一角さんとか弓親さんの所の隊長で…………、まあ、戦うの大好きな人だ」

 

 てめェの噂聞いて是非ともぶった斬りてェってワクワクしてたぜ、という恋次のコメントに、うげっと表情が引きつる一護。相手の実力やら何やらはわからないが、こんな見てくれの恋次やあんな見てくれの一角のところの隊長なら、さぞかし「それなり」の恰好なのだろうと妙な寒気を覚える。

 まあまあ、となだめるように言う浮竹。そして彼は、一護に確認する。

 

「そそ、そんなの何言って……! だって、アタシは、アタシで、今ここにアタシは居る訳だから…………、アタシ……、アタシは…………」

「彼女を我々に引き渡して、もらえないだろうか? 一護くん。決して悪いようにはしないとも。彼女の中には……、我々の仲間の記憶だって、心だって存在しているかもしれないのだから」

 

 動揺する茜雫は、先ほどから明らかに自分のことを見ていない浮竹の物言いに動揺が増し――。

  

「…………ちょっと待ってもらえねェか? 浮竹さん」

 

 ――そんな彼女を気遣うように、庇うように、その肩を抱いて浮竹を見据える。一護、と彼を見上げうるんだ目の茜雫に、ちょっと待ってろと微笑む一護の姿は、浮竹にはやはり今は亡き誰かを思わせる。

 

 なおそんな一護たちの妙に近い距離感を見て、日番谷はぎょっとしながら一人密かに阿散井恋次と彼等との間で視線を行ったり来たりさせていた。

 

 

 

   ※  ※  ※ 

 

 

 

 ずっと見ないようにしていた。

 ずっと聞かないようにしていた。

 だってそれは、多分知ってしまったら、私が私じゃなくなってしまう事実だから――――。

 

『……思念珠という存在は、人間の魂魄を元にしている以上、現世においてさ迷い歩くために、「探し求めるために」人の形を模して姿を為すそうだ。信じたくないだろうが、今回の騒動の中心に居座っているのは、その女だ』

 

 だから、あの二番隊っぽい隊長さん(私の記憶にある二番隊隊長と肌の色から何から何まで全然違うけど)の言葉は、そのままストレートに私を抉る。削り取る。

 私が、人間じゃない? 私が死神でもない? 私は、思念珠?

 

 だって、嗚呼、私は現世に来た時……、ちょうど橋の上で、走る女の子たちを見て。

 あの子たちの声を聞いて、沈む夕日と雨上がりの雫と。映り込んだその光がどうしてか綺麗で。

 

 だから、茜雫。どうしても私の中で色あせない、あの赤い色は、きっとまだ今には早い秋の色――綺麗な、紅葉の色だから。

 

 そのことすら、今、言われるまで思い出せないで……。そして、皆、私の話を聞いているようで聞いてない。皆が皆、世界を護るために動いている。それでも私に配慮はしてくれてるんだけど…………、そこには多分、私の意思がない。

 私の言葉に、()()()()は応えない。

 

 それがどうしようもなく空しくて、嗚呼本当に自分はヒトとして扱われていないのだと、その事実がただただ恐ろしくて。

 でも言葉を何度重ねても、重ねようとしても、私は私がどんどんはっきりしなくなって――――。

 

 

 

 そんな私を抱き寄せてくれたのは。「お前はここに居るんだ」って言ってくれたのは、やっぱり一護だった。

 

 

 

「ちょっと待ってもらえねェか? 浮竹さん。

 ……茜雫、お前はどうしたい?」

「いち、ご…………?」

 

 私を抱き寄せて、私を見下ろして。その目に私だけを映しながら、一護は優しく微笑んでくれる。眉間に相変わらず皺よってるし、なんだか湿っぽい感じだけど、一護は今、私の為だけにこうしてくれている。

 浮竹隊長たちにも聞こえる様に、一護はしっかり声を出して、私に問いかけて来る。

 

「お前は、なんっつーかガキっぽいし人の気も知らねェで滅茶苦茶やるけどさ。それでも、お前が何であろうと、今ここに居ることに変わりはねェ。

 馬鹿みたいなことで怒るし、家族の話で泣きそうになるし、それに……今だってちゃんと傷ついてる。俺達と変わらない、只の、死神だ」

 

「………………」

「一護……」

「(うわわ、シロちゃんあの子ったら情熱的……!)」

「(絶対違ぇから大声で言うなよ? というかお前、藍染失踪してからずっと寝て無ェから調子変だぞ)」

「(織姫も頑張らないとねぇ、朽木相手だけじゃなく)」

「(……私は一体何を見せつけられているのだ? 全く。……拘束用に、散開っ)」

 

 何か色々聞こえて来るけど、そっちは全然気にならない。それくらい、私だって今、一護のことしか目に入ってない。

 

「そんなお前を、お前の意志を無視してどうこうしようって話になっちまったら。そんなの、お前を攫おうとしてた連中と何も変わらねェ。それが、何か嫌なんだ。

 茜雫だって、仲間だ! だから、お前がどうしたいか言え。そして……頼ってくれよ。俺を、俺だけじゃない、ルキアだって井上だって、まだ会ってはいねェかもしれないけどチャドとか石田だって、他にも一杯いるんだ」

「一護……!」

「そんな顔してたら、俺たちだって辛いんだ。だから、まずお前はどうしたいか、教えてくれ」

「いちご、アタシ、わたし…………!」

 

 いつになく優しい一護の声に、嗚呼、もう駄目だと自覚する。一護の顔を見れないくらい、自分の表情がくしゃくしゃになってる。思わず一護の胸板に顔を押し付け、言葉にならない。

 嗚呼、なんとなくそうじゃないかって思ってはいたけど……、もうこれ冗談にならないや。

 

 一護にそんな気が無いのは、重々にわかってる。そんな器用に言葉を選べるヤツじゃないからさ、一護って。だからこそ、本心から私を想って言ってくれてるってわかる一護の言葉は、ゆらいでいた私に一つの芯をくれる。

 

 

 

 嗚呼そうだ。私はきっと、一護のことが――――――。

 

 

 

「――――ッ! 各自、警戒態勢!

 西堂、出てこい!」

「――――えええええ!? ちょっと隊長、これから良い所なんじゃないっスかツンツン君のさァ! ルッキャちゃんも織姫ちゃんも後で交えてドロッドロの三角四角に」

「大前田とは違う意味で意味が解らんぞ西堂ォ!」

 

 だけど、そう簡単に世界は私に、伝えたい言葉を伝えさせてくれないみたい。

 

 上空から霊圧を感じて、周りに何か色々飛散って爆発して。

 隊長たち皆散開して、周囲に出てきた敵と戦ってる。

 

 同時に一護も私を抱えて転がって庇うように動く。……魂魄状態じゃないのにちょっと、身体能力高すぎない? 今の完全に映画とかのアクションだったけど。後、密着したから私の中いっぱいに一護の臭いがして、どきどきが止まらない。

 ポーチから義魂丸を取り出して飲む一護。丁度その時、目の前にあのジャイってやつが立って一護に拳を振り下ろそうとして――――。

 

「――――よォ、また会ったな」

「ぬぅん!?」

 

 嗚呼だめ、やっぱり格好良い。カッコイイしカッコイイからもう格好良い確定。

 肉体から抜けながら「鞘に入ったままの」斬魄刀でアイツの刃を掴んだ拳を受け止め、そのまま蹴り一発。一瞬怯んだのを見て鞘から斬魄刀を引き抜いて、瞬歩で背後に回って斬りかかる。……斬りかかる時だけちょっと動きが遅いのは、そのままアイツを斬り殺さないためなのかな? うん。そういう甘々というか、躊躇しちゃうところも一護らしくて良いと思う。

 

 300ポイント、くらいあげちゃう。

 

「昨晩のようにはいかぬぞ、この右腕の借りは返してくれる――――闇隷(レドクション)!」

「何!?」

 

 ジャイってやつがそう言った瞬間、私の頭の中に、割れるような悲鳴が響く。

 思わず頭を押さえてしまって、足元で倒れてぐーすー寝てる一護(たぶん義魂(モッドソウル))に肩を貸して運ぶのを中断させられた。

 

 ただ、止まったことでその悲鳴はより顕著に頭の中に響く。

 

 あのジャイってやつは――――周りに散っていた人の魂、ジャイってやつが叫んだ瞬間その姿が欠魂(ブランク)になった人たちを、()()()()()()()

 

 すいーっと浮かんで、その身体の輪郭が解けて光の束になったと思えば、ジャイってやつの傷口に入り込んで、いつの間にか傷口はなくなってるし。

 さらにその身体にまとわりつくようになって、甲冑みたいになったり武器になったりして――――。

 

「ッ! 力が上がって……というか、霊子兵装!?」

「ほぅ、少しは物を知っているのか。だが無駄よ!」

 

 

 

「わあああ! に、逃げて皆! 飛梅が――――ッ! は、は、弾け飛梅ッ!」

 

 

 

 わ! あのなんかちょっと病んでるみたいな感じの子が、「真っ赤に染まった」斬魄刀を振り回していっぱい火の球みたいなのを降らせてる……!?

 流石にこのままだと一護の身体を守り切れない。だから私は「幽体離脱して」、弥勒丸を解放させる。穂先? の方を降って来る火の球に向けて、竜巻を作って威力を――――。

 

 威力を、消せない……!?

 またアレだ、私の記憶と肉体との乖離だ!

 というかこれ、絶対、私の中にある死神さんの記憶と、今の私のメインになってる記憶や肉体が全然違うってことだ……!

 

 しまった、という暇もなく、私に迫る火の球に。

 

 

 

「――――月牙〇字衝(げつがえんじしょう)ォ!」

 

 

 

 ……私の目の前に、白く光る霊圧の、円盤みたいなのが刺さって、火の球を防いだ。

 

 えっ、何これ!? 多分一護の技だと思うんだけど、何この滅茶苦茶な霊圧!?

 ちょっとびっくりして一瞬動きが止まったら、後ろの方で「お? こりゃ一体……って一護ォ!?」って義魂の方が目を覚ましたみたい。

 

 逃げて! と言ってから、私は瞬歩で一度上空へ。隠密機動もまとめて薙ぎ払われてるし、状況を俯瞰して、もっと親玉っぽいのを探して、一気に叩いて終わらせる……!

 

「――――こ、今度は俺かよ!? くそ……、げ、月牙天衝ォ!」

 

 そう思っていたら、一護が悲鳴を上げてる。見れば今度は一護の始解もしてない斬魄刀が、真っ赤に染まってる――――。

 その状態の斬魄刀に振り回されて、一護は馬鹿みたいに猛烈な霊圧を放つ。ちょっと、冗談じゃない。一撃がどんどん膨れ上がっていって、このままじゃ私どころか、ここら辺一帯が――――!

 

 

 

「――――双魚理(そうぎょのことわり)!」

 

 

 

 浮竹隊長! そうだ、浮竹隊長の始解なら……!

 聞こえた声の通りに、浮竹隊長は「二振りの斬魄刀」を手に、そのうちの片方を一護が放った霊圧の刃に向けて。

 

 それが「急激に吸い込まれた」と思ったら、きっと空を睨んでそっちに反対側の斬魄刀を向ける。

 で、そっちから放たれた霊圧の光線みたいなのが――――私よりもはるかに上空に居た()()にぶち当たった。

 

「ほう、緋願花(ひがんばな)の干渉を退けて来るとはな。現代の死神というのも、まんざら捨てたものではないらしい。なあ、山本(やまもと)元柳斎(げんりゅうさい)の子飼い共よ」

「先生を知っている……? それにその文様、間違いない。千年前、尸魂界を追放された元重貴族――――龍堂寺(りょうどうじ)のもの!」

 

 浮竹隊長の叫びに、どこか()()()()()()()()()()()()()()()の、長い白髪の青年は。

 真っ赤に染まった自分の斬魄刀を振るい、浮竹隊長が吸収して放った一護の光線みたいな一撃を斬り払い、言ってのけた。

 

 

 

「さて、知らんな。長きにわたり断界の闇に閉ざされ、生き永らえし今の我らは――――ただの『忘れられた一族(ダークワン)』である」

 

 

 

 ……何か自称してるやつ、ちょっとダサくない? と思ったりしたけど、とてもそんな空気じゃないから言い出せない私だった。

 

 

 

 

 

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