ちょっとリハビリがてら、こちらも更新…
「おギャッ!? テメェ、何しやがる! というかコンあるんだから使わせろコン!」
「いやぁ、せっかく寝てる状態を邪魔するのも可哀想じゃないっスか」
「どのクチで言ってんだテメェ……! って、お…………?」
「ま、そういう細かい話は置いておいて……。感じますか? その体の重さ、息苦しさ。
それでもまだマシな方っスよ。
浦原商店の地下にある通称・勉強部屋。どう見ても青空の荒野めいたこの場所で、黒崎一護は霊体のまま膝をついていた。すぐ近くにはブルーシートと、その上に寝転がされてる一護の肉体。たった今、浦原から
なおその隣にはボロボロのコンがいまだ気絶(?)しているので、完全にお前何のために来たんだ状態である。
案の定、そんな状況に特に気を遣わず、浦原は飄々と話を進めた。
黒い着物を失った、下に着こまれているはずの白い衣装のままの一護を見て。
「本来、朽木サンから
「襦袢……? いや、まあ、そりゃそうなんだろォが、何か違くねェか? 俺の」
……もっとも、一護の襦袢は間違いなく何かがおかしい恰好なのであったが。
上は普通に襦袢の形状なのだが、下側がおかしい。長いひらひらとした上から続く布地が伸びているべきそこには、しっかりとした長ズボンめいた
というか腰にも
辛うじて、背負う斬月のそれが本来の死神としての姿の名残を思わせる。
もっとも手をかけた一護は、その
一瞥した浦原は、ボソリと一言。
「(ある意味で、あれが黒崎サン本来の素養の形ということなんでしょうかねぇ……)」
「何か言ったか? 浦原さん」
「いえ、何でも! さて。今の貴方は霊的なブースターすべてがぶっ壊れている状態。両手首にある霊圧の排出腔もロクに機能しない、雀の涙の状態だ」
「──── …………」
「霊力とは周囲にある霊なるものに働きかける力。霊力が高ければ必然、魂魄は鋭い動きが可能になる。以前の黒崎サンは垂れ流しの霊力でそれを可能としていました。
逆説的に、その出来損ないの死神の魂魄のまま元の動きが出来たならば、それすなわち霊力が回復しているとみなすことが出来るっス」
「何かよくわかンねェけど、ラジオ体操でもしろってか?」
「長期的にはそれもアリっスかね」
アリなのかよ、とボケた訳ではないが引きつった表情で愚痴る一護。
取り込んだ霊子をいかに操れるかが勝負ってところっスから、と浦原は普段通り帽子で目元が見えないような形で雑に笑う。
「ですが今回は短期でそれを為す必要がある。死神の力の基礎自体は残っているのだから、後は黒崎サンの霊圧に
「簡単って……、えぇ?」
「そっスね、理屈はざっくりわかってもらったと思うので、これ以上は実際始めちゃった方が早いでしょう」
斑目一角から瞬歩の仕方を案外理詰めで教わっていた姿を思い出しているのか、意外とそういう説明もちゃんとする浦原。もっとも一護の理解度が追い付いているかどうかは後に回しているので、そこは案の定いつもの浦原ということか。
おーい、と声をかけると、唐突に周囲から「妙な」霊圧を感じる一護。
今まで体感したことのない、しかしどこか見知った何かのようなこの気配────
果たして────────。
「────桃色の幻惑パワー・カラクラスワン!」
「────山吹光る変化のパワー・カラクラロップ!」
「──── …………カラクラカクタス」
チュド────ンッ!!!(※漫符と爆発演出)
「……は?」
突如その辺の岩陰から飛んできた三人。少女が一人、成年が一人、髭の壮年が一人と、それぞれがそれぞれにガ○チャマンリスペクトなのか何なのか、趣味的な
浦原の話を聞きながら気分をシリアス目にしていた分、突然現れたその地方とかにいそうにしては最近を思えば雑なヒーロー衣装の三人組(と名乗りのポーズと背後の爆発)を前に、黒崎一護は語彙を失った。
と、「ちょっと三人ともフライングっスねアレは」などと浦原喜助。
特にそのまま一護側からツッコミが入らず、状況は混沌の一途をたどる。
「ちょっと
「そうですな、さあさあ“緑生い茂る空間のパワー”と!」
「………………、……」
「あっ! ちょっと顎の方のマスク締めるの止めなさいよ! あたし達のヘルメットってそれ機能搭載されてないンだから! 何照れてンのよ!」
「はっはっは! まあそうは言っても我々、まだ生まれてから半年も経っておりませんしなあ、りりん」
「
「お、おお? ま、まさかそこにツッコミが入るとはいやはや。……いえそれを言うなら、我々が入る予定の
「おっさんのピンク色とか需要ないから!」
「だから生まれてからまだ半年も経ってないのに……」
「……………………、ドンマイ」
「そういうどーでも良い所だけしゃべンのやめなさいよ!」
「いや、そうじゃねェよ! というか大体何なんだテメェ等!!!?」
ほら怒られたー! という女の子の発言など気にせず、気にする余裕もなくツッコミを入れる一護。立ち上がり地面を蹴り指を突きつけ顔のデッサンが崩壊している。漫画で言うとデフォルメされたギャグ顔である。
身体に感じる息苦しさや重さよりもツッコミとしての義務感が勝利したらしいその姿を見て、浦原は「流石黒崎サン!」とリアクションにはご満悦そうであった。
※ ※ ※
「はァ、やっと片付いた……、って何やってんのさ、店長たち?」
ブルーシートに座りながら転がした一護の身体と。その足をゲシゲシしたりするジン太、ほっぺをつんつんしておっかなびっくりの
鉄斎と浦原は、トランクケースに何やら趣味的な衣服を詰め込んでいる。……さきほど一護が全力でツッコミを入れた類のものであるが、どうやら三人(?)とも着替えたらしい。
そしてその三人と一護はと言えば。
「ちょっと逃げてるだけじゃ訓練にならないじゃないの! 早い所一発入れなさいよ!」
「………………、シッ」
「はぁい! 通せんぼにございますよ!」
「う、うるせェ! というかさっきから妙な能力ばっか使いやがって……っていうか井上に姿変えンのは止めろよ髭の!」
絶賛、追いかけっこ中であった。
頭部には「正義」の二文字が刻まれたプロテクター、両手にはパンチグローブ。中途半端な死覇装にそんな恰好なものだから、一護の見た目は完全にちょっと何かを勘違いしたタイプの不良めいたものになっている。そんな一護だが、さきほどからヒーローの恰好を止めた少女の拳を前に、余裕が全くなかった。
「何? 店長アレ」
「何って、“正義装甲”ジャスティスハチマキは有沢サンも御経験おありでは?」
「変な口上して装着しろってやつは散々揶揄われた覚え有るけど……、というか一護もやったの? えっ? マジで? いや死神になってるじゃん、アイツ」
それがそう簡単な話でもないので、と浦原は笑いながら言う。
たつきからすれば、現状一護はすぐにでも反撃に転じれば状況は終了できるという認識なのだが。
一護の側は、相手から事前に聞かされていた情報からして、それどころではない。
ジャスティスハチマキはさておき、数分前に話は遡る。
『あたしはりりん、こっちの無口なのは之芭で、奥のすごいおしゃべりなのが蔵人。三人とも
『はぁい! ヨロシクお願いします。いやはや浦原店長が我々の元になった改造魂魄の破棄を決定してから
『ちょっと、無駄にうっとうしい! ……之芭も何か言いなさいよ、何か面白い事』
『……………、……』
『あっちょっと、だから目元のチャックとか締めて顔隠してんじゃないわよ! 人との接し方がわからないとか幼児みたいなこと言い出すつもりじゃないでしょーね!?』
『……』
『恥ずかしがり屋も個性ですからな。いえ、この気質ならば茶渡どのも気を遣っていただけるでしょうし仲良く────』
『無駄じゃない! こっちでやるべきことやらないから無駄じゃないのそれ!』
『お、おう……? というかさっき浦原さんが言ってたな、改造魂魄』
金髪ショートカット、紫系の色味のマントのようなローブを纏った桃色のワンピースな彼女が雑に名乗り。
彼女の後ろに立つグレーな紳士服の、髭の生えた壮年の男性がフレンドリーに笑い。
濃紺の全身スーツに身を包み目元だけ見せていた、どこか忍者っぽい彼は目元を隠して頭を下げた。
いやぽっと出にしちゃキャラ濃すぎるだろコイツ等、とツッコミするよりもまず困惑する一護。先ほどはわけわからなさのせいで大いにツッコミを入れたが、少なくともその出自がコンと同等というか、浦原喜助の手製であるというのが判った時点で少しだけ冷静にはなった。冷静にはなったが訳が分からないことに違いは無いので、またぎゃーぎゃーと喚き始めた女の子に確認を取る。
『で、何でお前等出て来たんだ?』
『何って、訓練なんでしょー! 私達から一本取れってやつ?』
(いや一本取るって、さっきから加減がおかしいだろこの、りりんとか言ったかコイツ……!)
りりんがそう言った後、浦原喜助から与えられた課題は一つ。
レッスン1として、りりんたち改造魂魄三体に一撃入れること。
りりんは一本といっているので、実際それくらいの攻撃は必要だろうと判断している一護だ。
もっとも斬魄刀を抜刀できない……、
それにしたって、先ほどからのりりんの攻撃が異常である。
────そう、
「さっきから何やってんだろ、一護のやつ」
「…………びびり?」
たつきと、彼女が腰につけたポーチから顔をのぞかせる赤い犬のぬいぐるみなノゾミとが不思議そうな反応をしている。それもそのはず、先ほどからりりんが拳を振り回す動きだけを見て、特に攻撃されてないのに一護は逃げ回っているのだ。さながら、ごっこあそびのように見えなくもない。ジン太が一護を蹴りながらげらげらわらっているくらいだ。
なお、蹴ってるのは「止めな」と普通にたつきに中断させられるのだが、それはさておき。
「りりんの改造魂魄としての能力は、
「店長? ……あー、ってことは今の一護は、あの子の動き一つでものすごいことになってるようにみえるってことか」
実際その通り。りりんが拳を振るモーション一つで、一護の目には衝撃波が放たれ、地面が抉れ小山が消失し、なんなら一護が直前までいたところも吹き飛ばされ、足をとられかけたりしているのだった。
その全てが一護の幻覚と、それによって身体が過剰に動いたり止まったりすることによって引き起こされる反射の不整合のせいだったりはするのだが、直接そうだと言及されていない一護には判断する術がない。
なまじ死線を多く経験していることもあり、攻撃手段がほぼない今は条件反射で回避が優先されているのだ。……逃走といわないのは、まだ本人の戦意がくじけていないからで武士の情けである。
「それに実際、
「いくら瞬歩使えなくなってるからって、あっさり追いつかれすぎだろ一護……。
でも、本当にこれでいいんです? 店長ならもっと本当に命の危険とかギリギリのところ攻めそうかなって思ってたんですけど」
「いやでも、アタシも最初は
「えっ?」
「ほぉう……」
「は? 何だそれ店長」
「────────────ッ!?」
浦原の発言に素で戸惑うたつき、何か興味深そうに眼鏡を光らせる鉄斎、胡散臭い感じに半眼で口元を歪ませるジン太と、突如顔を真っ赤にしてぐりんと浦原の方を見る雨。
そんな五者の反応を気にせず、はっはっはと笑う浦原である。
「年頃の娘を持つ親としては、近所のチョイ悪お兄さんの眠ってたお布団を『すみません、井上さん、すみません、でもちょっとだけ……』とか言いながらスンスン嗅いだり、洗濯しないでそのままお昼寝しようとしてた娘を見れば、今後の情操教育について────って待って待って! 冗談、冗談っスから!」
「────────ッ! ッ! ッ!!」
声にならない声を上げながら浦原に殴りかかる雨。腰を落とし構え動きに転化して、とどう見てもかなりのガチな暴力である。耳まで真っ赤になりながら殴りかかる雨を揶揄うくらいの意図だった浦原からすれば想像以上のキレっぷりであり、流石のジン太も「女ってコエー ……」くらいしか言うことが出来なかった。
なお、たつきはたつきで「まあウン……、織姫にもっと攻める様に言っとけば大丈夫か。全然、妹くらいだろうし」と今後の戦略を練りつつ、全くこちらの声を聞いていなさそうな必死の形相の一護を見やり。
そして、
「────発火!」
「────って、何それッ!?」
時計の針のような大小二つの長さの矢印がごとき形状の剣(?)で斬りかかったりりんを。
一護は突如、右手を構えて二つとも受け止めた。
握った右手からは、上下に対して黒い刃のような炎が噴き出しており。
以前の不完全な斬月を思わせる、反り返った二つの刃のような何か。
いや、ゆらめいてるせいなのか長さが以前より短くなっているのを鑑みれば、それは双刃というよりはむしろ────。
「……やっぱり想像のはるか上をいきますね、黒崎サンは」
ふてくされた雨の頭を撫でながら、さてどの
『オイ、オッサン……』
『済まないホワイト……、ちょっと我慢できなかった』
『いやまァ、俺経由してるから誤魔化しは出来ンだろォけどよォ……?』