メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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昨日の日中から続きます・・・ お っ さ ん ハ イ パ ー 2 5 2 5 タ イ ム
 
ちょっとだけ the 3rd Phantom 注意


#084.身体と意思を固めるために

 

 

 

 

 

 例えるならそれは、江戸か明治期の街並。

 例えるならそれは、鎌倉時代の気風。

 風吹く中で息づく人々は、皆一様に()()()()()()()()

 

 そんな広大な場所の中心、大地ではない独特の張り巡らされた()の上に並ぶ街並み。さらにそれらを従える中央に存在する区画の最奥にて、「六」と(しる)されたとある一室が開かれる。

 

 もう我慢できねぇ! と飛び出した、赤毛に独特な眉毛の青年に続くよう「ま、まあ落ち着いて落ち着いて」とどこか気楽な声。枯草色の髪に細く上質の髪留めのようなものを引っかけた青年である。さらにその背後から、眉毛に()()()ような角度で入れられた刺青の、それ以外は有体に言うと地味な死神の青年も慌てて続く。

 赤毛の死神は、阿散井恋次はすぐ背後の青年死神に食って掛かった。

 

「待てって何がだよ()()()()!」

「いやだって、別に殴り込みに行く訳じゃないんだから……ね? ずっと待機命令で不満があるのはわかるけど……。そう思いつめた顔じゃなくってさ。普通にして、普通に行けばいいんだよ。ね? 行木くんもそう思わない?」

「えっ!? こ、こっちに話振りますか? ()()五席!!?」

 

 もともと別隊の僕に恋次くん止めるの手伝ってくれって呼んだのキミじゃないか、と、藤丸と呼ばれた青年は苦笑いを浮かべる。

 恋次はそれにバツが悪そうに顔を背け、しかし愚痴が零れるのを止められない。

 

「何だってンだよ……、たく隊長も…………!」

「あぁ、えー、恋次くん落ち着いて落ち着いて」

「落ち着けるかってンだよ()()()()! こうなったらアンタのコネでも何でも使って何とかならねェんですか!?」

「僕のコネといっても大半は流魂街関係だからなら……、志波家はあんまり意味ないし、四楓院関係も今じゃ砕蜂隊長くらいしか……」

 

 何で砕蜂隊長? と困惑する恋次に行木の六番隊二名。

 藤丸と呼ばれた彼は「昔から面倒見てたし」と肩をすくめる。

 

「まあその話は置いておいて……。朽木隊長のところに行くんだよね。でもあっちはあっちで今、色々忙しくしているから、なんだったら先に十三番隊の方にいかないかな?」

「十三番隊……、そうか! 浮竹隊長…………!」

「浮竹隊長もそうだし、三席の二人もね。みんな、()()()()()がご存命だったころからの付き合いだし」

「そう、か……」

 

 恋次くん? と藤丸。視線をそらし急に口ごもるように会話を止めた恋次は。少しだけ息をのみ、目を見開く。

 

(俺ぁ、その時のことなんざロクに知らねぇ。けど────)

 

 脳裏を過るは後悔の記憶。南流魂街78地区である戌吊(いぬづり)での日々。ものを食べる必要のなかった尸魂界においても、水泥棒などをしてですら生きるのに必死だった自分たちと、ルキアとの出会い。態度はでかくて、なんだか古い、男みたいな言葉づかいで。それでもどこか気品みたいなのが漂っていた、恋次同様に霊的素養を持っていた彼女。

 兄弟のように思っていた底辺の仲間の子供たちのうち、成長できたのは自分と彼女だけ。それでも生きるため死神を目指し、霊術院で過ごす日々。そこで出来た友のことも。そして、嗚呼、自分がルキアにさせてしまった、あの顔のことも。

 

(────朽木の家に養子にもらわれるって言ったアイツに、俺は……)

 

 手を伸ばせなかった。そうすることが、朽木ルキアにとって一番良いことなのだと。

 在学中は気づかなかった。卒業してから、護廷隊へと入隊して以降の彼女の風聞が何であったかを。()()が事実でないことを知っているがゆえに、十一番隊でそれを嘲笑するように、下世話に振った隊士たちと殴り合ったこともあった。

 ただ、それをして自分は、朽木ルキアに何か力を貸せていたようなことがあったろうか。

 

「……だが、こんなもんただ、俺がビビってたってだけの話なのかもしれねぇな」

 

 現世へと出向いて。割り振られた任務の都合上、妙に張り切りすぎて。それで再会した幼馴染は、ごくごく当たり前のように以前の彼女らしい尊大で愛らしく、どこか生真面目になり切らないあの横のつながりそのままの彼女であった。

 そうやって、別れの時のすべてを飲み下したような諦観と、遠い絶望を秘めたような。そんな彼女の心を解きほぐしたのは、自身ではなかった。道が交差することすらないほど遠くに離れたはずの彼女は、ごくごく当たり前のように笑って、自分に手を振ってくれた。……いささか恋次自身のミスもあって爆笑されまでしたのは想定を超えていたが、それも含めて。

 

 彼女の心を溶かす、たったそれだけのことが、それでもとても恋次には為しえなかったことを為した、その男は。黒崎一護はあまりにも手がかかって。下手な弟分というには生意気すぎて、それでいて強く、そして、心の芯が脆い、そんな友達だと言えるようになった。

 あまつさえ自らの霊力を失っても、それでもなお助けようとするつもりでいるのだ────。

 

「だから、それに気づかせてくれたアイツと……、ルキアを、俺は助けに行くんだ」

 

 

 

「────気持ちは判らなくもないが……、それでも上の決定には従うべきだろう、阿散井副隊長」

 

 

 

 東仙隊長! と。恋次以外の二人から声が上がる。

 そちらにつられて見れば、男が一人。色黒の肌、オレンジの髪留めに襟。薄紫の繋がったサングラスを目に、帯もまた紫とややオシャレさが光るコーディネイトの上から、白い隊主羽織。背には「九」の漢数字があしらわれていた。

 東仙要──現九番隊隊長である。

 

 引き結ばれた口元と、半眼に開かれる色のない瞳から、その気質の生真面目さが漂っているようであった。

 

「それが組織の統制、というものだ。朽木隊長からも似たような意見が返ってくることだろう」

「東仙隊長……、俺は、俺は………!」

「憤懣遣る方無し。ただ、その憤りと不信を忘れてはいけない。正義が正義たりうるには、常に自らの正義を疑い続けなければなるまい。そもそも戦いとは…………、いや、これは無粋な話だな。隊には隊の、隊士には隊士の志がある」

 

 どこか同情するように諭す彼の言葉に、恋次の拳は震える。

 

 

 

 ────状況からいって、さらわれたのが朽木ルキアである意味がなかった。故に敵も、朽木ルキアに特殊性を見出しての略取とは言い難いという判断が下された。

 

 

 

 自らの隊の隊長よりもたらされたその言葉が、恋次の焦燥をより激しいものにする。

 そうであるはずはない、少なくともあの時あの場にいた面々や、一護の証言を鑑みれば。ルキアがさらわれたことには何かしら意味があるはずだ。

 にもかかわらず上層部は、四十六室はその事実を認めない。

 一護の立場がそもそも正式なものとして護廷十三隊に紐づいていないというのもあるだろう。……だからといって人間として殺してでも霊界に引っ張ってきて首実検しろといわれないだけ、現世で発見されたあの男に対してまだ尸魂界は協力的といえるかもしれないが。

 

 下された言葉は、すなわちルキアの救出や奪還に対して、自分の所属する場所は意味を見出していないということに他ならない。

 わざわざ人員や時間を割くことはなく、むしろ決戦を前提として準備を始めるのなら余計な()()()を生まないように制限すら受けるだろう。

 

 阿散井恋次としては、それがどうにも歯がゆく苛立たしかった。

 何よりそれを語る隊長がこちらに顔を合わせず、すぐさま何かの手続きに奔走している姿に。自分が何一つ力になれないことも、内に抱える他ない。

 

 立ち去る東仙の背を前に、拳を強く握る恋次。

 

「それでも、俺は…………!」

 

 天を見上げ睨みつけるような恋次の目には、爛々と闘志の光がともっていた。

 

 

 

   ※  ※  ※ 

 

 

 

 ビル群の隙間と言う隙間。

 時折壁面にクレーターを残しながら、空中で交わされる剣戟。

 ほとばしる剣閃の密度は、徐々に徐々に濃く、そして素早くなっていく。

 

 とはいえ未だ振り回されるばかりの黒崎一護は、あくまで受けに徹する斬月に攻めあぐねている。

 

「おおおおおおおおおおァ!!!」

『────。む』

 

 上段から斬りかかった一護は、下の柄の方を持ちやや刀身を長く扱うも。

 抜刀された短い方の太刀で受けられたと思えば、その状態から長刀の方の柄で腹を殴られる。

 飛ばされた先めがけて小刀の方を横一線に薙げば、剣先の軌跡にそい月牙が飛んでいく。 

 

 特に()()()()()()()()()()()()()を前に、自分とも白一護とも異なるその戦い方に、一護はどうにもしっくりこず攻めあぐねていた。

 

 ともあれ持っていた謎の刃を投げ月牙へと再変換し、斬月の放った月牙天衝と相殺させる。

 衝撃の爆風を庇う様に、右手に形成された()()()()()()()で目元を一瞬庇って振り払い、改めて斬月を見据えた。

 

『諦めろ』

「……ッ! なっ!?」

 

 直立不動の状態から、文字通り()()()()()そのままの姿勢で一護に接近する斬月。その場でくるくると回転するように、腕の動きを起点としてなめらかすぎる動作をする相手に、形成途中だった火輪の刃で受けきれない一護。

 空中に投げ出され、足場がわりに周囲の霊子を収束しようにもやはり集まりが微妙に悪い。

 

『息苦しさは取れてきたようだが、まだまだ覚束ないな』

 

 瞬間、前方に見えていた姿かききえ自分のすぐ真後ろから声がした。

 ほぼ柄の部分しか出来上がってない刃で受けざるを得ない一護に、振り下ろした斬月の刃はあからさまに手加減されていた。

 とはいえそれは、あくまで初動の段階。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のを、折れた二つの柄で誤魔化すように受け流しながら、身体を焼かれる一護であった。

 

「くそ……! アイツとも違うな、おっさんの戦い方────」

『────■■■■■(■■■■・■■■■・■■■■■■)

 

 一護を追うように大太刀の斬月を下に構えて落下してくる斬月。それを躱しながら、今度は再形成できた刃を構えつつ後退する一護。

 そして()()()()()()()()を言い放ち、コンクリートの道路的な地面に突き刺さったそこを起点に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が放たれる。

 

 弾き飛ばされた一護は、空中で見た。

 自分めがけて短い側の斬月で横一線の小さい月牙を準備した斬月が────大太刀を勢い良く振り下ろすのを。

 

「何、だと……!?」

 

 

 

『月牙()字衝────!』

 

 

 

 虚の一護が放った斜め交差のそれと異なり、正しく聖十字のように連なり。回転することもなく、そのまま巨大な霊圧の奔流として放たれる。とても現実世界では使えたようなものではないド級の威力を前に、一護は絶叫する余裕もなかった。

 生命の危機ゆえにか、世界の時間の動きがスローに見える。

 

(いや、流石におっさんが俺を殺すことはないだろうけど)

 

 とはいえそれにしたって一切手を抜いていないことが分かるほどに、斬月の攻撃は容赦がなかった。よほど自らの虚の力を解放すること、その危険性を正しく理解してくれているらしい。いや、ここまで拒絶するということはもしかすると、今の白一護とでも言うべきあの悪党みてェな面構えをした男は、とても話せる状態ではないということか?

 それこそ、遭遇するだけで命の危険にさらされかねないような。

 

(……刀のやりとりから伝わる感じは、なんだか、すげェ俺を気遣ってくれてるみてェな、なんっつーか、こう…………)

 

 だからこそ、何が何でも自分と白一護を対面させまいとしているのだろうか。違和感は残るが、そう納得しておいた方が解釈が楽かもしれない。

 だからといって一護も引き下がるわけにはいかないのだが。

 

 手元の刃を振りかぶる暇もないので、そのまま手に持ったまま自分の前方、円形に軌跡を残して手放す。

 

「────月牙〇字衝(げつがえんじしょう)

 

 果たして期待通りに、その刃だった霊圧は形を失い巨大な円形の盾のような黒い霊力の塊に。

 ただ想定外というべきか、しかし同時に想定内というべきか。円状の壁のようになった月牙は、当然のように真白の十字に斬りはらわれ、消し飛ばされた。さながらどこか宗教的な象徴(イコン)のように強調されたそれは、いっそ死神というより滅却師、石田のそれを思わせるものでもあった。

 一瞬「だからアイツ、縦十字じゃなくて斜め十字にして撃ってンのか?」とか思ってしまった一護だったが。

 

『………………やれやれ。少しは気を引き締めろ』

「わ……、悪ィ、おっさん…………」

 

 威力が落ちたとはいえそれなり以上に威力はこもっていたはずの一撃で、一護は文字通りビルの壁面に叩きつけられ、べしゃりと地面に落下していた。

 一瞬目の前に「黒い靄のような何か」が現れ体にまとわりついて、落下速度が明らかに減少しているあたり、おそらくあの斬月が何か手をまわしてくれたのだろう。変に気を遣わせてしまったと、白一護相手には絶対に思わないような感想を思い浮かべる一護である。

 必然、応対も白一護を相手にしている時よりも素直に謝ったりするのもあって、斬月は「そうか……」と何故か少しばつが悪そうに視線を逸らした。

 

 立ち上がろうと膝を立てる一護に、斬月は言葉をかける。

 

『私を敵と捉えていないのもあるだろう。だが、そういった思い込みはこの場では悪手だ。時に味方であれど、己の信念やその時の状況で敵に回ることも十分にあり得る。石田雨竜しかり、阿散井恋次しかりだ』

「そりゃ、そうかもしれねェけど……」

『あの破面(アランカル)、グリムジョーと戦った時もそうであったが。相手の戦意に対して生易しい意を向けることが、果たして相手に正面から応えているといえるのだろうか』

「……悪ィことしたな、そういう意味じゃ」

 

 でも今までが今までだったからなァと、一護としてもどうしようもないところではあった。立ち上がり、思い出すのはスタークやら梅針やら。そのどれもが交わされる剣戟の最中に、嫌でも陰鬱とした気配が並んでいたのだ。いっそびっくりするほどに「ケンカ!」と言わんばかりの闘争心を向けられるのは、竹を割ったような清々しさを感じてしまい接し方を忘れてしまうのも無理はないだろう。

 むろん、それでグリムジョーが正々堂々かどうかというのとはまた別ではあるのだが。

 どちらかといえば野生動物的な振舞であることは、ルキアに奇襲をかけようとしていたあたりから察してはいる一護である。

 

『……もしここをまかり通りたいのならば、その身体と意を固めることにより注意するべきだろう。朽木ルキアの救出のためにお前はここに立ったのだろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」

『思い違えるな一護。お前の望むものが我らの望むものではないのだ』

「じゃあ、何だよ。おっさんの望みって」

 

 いつの間にか二振りの斬月を統合し。一刀にしたそれを背負うでもなく、切っ先を地面に向けるような斬月は空を仰ぎ。一護にその視線は、反射するサングラスの光で見えない。

 

『────揺れ震える孤独な雨は、言葉のない慟哭に似ている。お前がそれに沈むのが、私には何よりも辛い』

「……何だよ、それ」

『だが時に、それでも為さねばならぬことがあるならばこそ。お前が私を、()()を信じてくれるなら。私たちはこの世界に、どんな雨も降らせはしまい』

 

 そして一護を見据え、斬月は手元のそれを振るい。

 

『信じろ。お前は一人で戦ってはいないのだ──── 一護』

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

(何言ってンだよ、おっさん)

 

 自分に放たれた月牙を、直撃コースのそれを前に、一護の思考は鈍る。

 ふたたび周囲の時間が遅くなり、頭の中だけが加速する。

 ある種の達人の領域か、生命の危機による緊急事態ゆえか。

 

(おっさんたちを信じろって……? おっさんと、ルキアの斬魄刀とかいねェってンなら、そりゃ、つまり────)

 

 既に一護は、自らの虚の力たるあの白一護が単なる虚ではないことに確信を持っている。

 自分の中にある虚の力であることに間違いはないだろうが、その魂魄はあからさまに何かが違いすぎる。

 井上織姫の兄を、虚となった井上(そら)を斬ったときのことが……、あの時のルキアとのやりとりが、思い出される。

 

『背後からの一撃で頭をかち割るのが虚対峙の初歩と教わると言ったな……、それは戦いによる損傷を減らす為にというのと、もう一つ大きな理由がある』

 

『一撃で葬り虚の正体が()()()()()()を決して見ぬようにするため。すべての虚というのは、元は普通の魂魄だったものだからだ』

 

(なら、()()()()()()()()()()()()()()()()って話になるんだよなァ────)

 

 ────テメェが一人で歩けるまで、俺とオッサンはテメェの隣に立っていてやるよ。

 

 顔を見せず背を向けたままの、あの姿。

 その人格と、その正体や脅威とを一護は正確に測り切れてはいない。己の思春期的な尊厳を棄損し続けるあの男をいつか絶対ぶっ殺すと誓いはしているが、それを置いて考えれば。あの白一護は、少なくともその人格が、一護に対して害を与えたことはないのだから。

 ……まあ気を抜くと井上の前で色々セクハラめいた問題発言をかまして好感度やらイメージ戦略やらを壊しにかかって来そうなので、油断だけは全くできないのだが。

 

(信じろって……、おっさんは、そう言うんだな)

 

 どくんと。一護の中で何かが鼓動する。

 それは心臓ではない。だが、確かに一護の体内、霊体の内側にある何かが、目の前の月牙に対して反応しているような感覚で。

 

 ……思えばこの月牙というのは、そもそもが一護自身の力であるもの。

 

 上手くまとまらない思考のまま、咄嗟に一護は目の前に左手を差し向け。

 その月牙を受け止めるわけでも、受け流すわけでもなく。

 ごくごく当たり前のように()()()────。

 

 ────信じろ。お前は一人で戦ってはいないのだ、一護。

 

(嗚呼、だから……、()()()()()()()()()

 

 そう信じると決心したのと同時に、手に取った月牙は、()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()。すなわちさきほどまで一護が振るっていた、火輪で編まれた振るう月牙そのものへと。

 衝撃は殺しきれない。ゆえに服も傷つき、身体にも擦り傷がつくが。それでもなお一護は、自らに向けられた月牙すら()()()()()()()()として、己の武器として握りなおした。

 

 それを前に目を見開く斬月。へっ、となんとなく不敵に笑い飛ばし、一護は右手を前方に構える。吹き荒れる紅葉の霊圧が再び刃を形成し、同じ長さの刃の二刀流のようになった一護は。

 

「アンタを信じろって、そう言ったな。じゃあ────アンタにも俺を信じさせてやる」

『……む?』

 

 そう言いながら、さらに周囲に吹きすさぶ紅葉の霊圧から、刃を1つ作り出して、手に取らず肩付近でふわふわと浮かせる。

 

「ここから先に行ったって大丈夫だって……、アンタたちが引っ張り上げるんじゃなくて、一緒に隣に立ってられるってことをな!」

『…………、そうか』

 

 右手の切っ先を向ける一護に……、それこそ生意気な子供のように不敵に笑おうとするその姿に、斬月は目を閉じ、少しだけ口角を上げた。

 

 

 

 

 

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