メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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間に合わなかった…けどそんなこと言ってる場合じゃないレベルのアニメ本編の状況ですよ
細かくは言いません、アニメ #45 必見です。なんなら #46 も必見だと思います。
 


#088.形は”忘却”

 

 

 

 

 

『…………なるほど、()()()()

『よっ、悪かったなオッサン。……っと、()()()()()? に戻ったけど、いやーやっぱこっちの方が落ち着くわ』

 

 伸びをする俺に、オッサンはサングラス越しに目を閉じてふっと微笑む。だあから何となくオッサンの本体たる■■■■(■■■■■■)みてェな表情の作り方だって……、それで思い出したわ後でちょっと説教だ。いや、まあそれはいったん置いておいて。

 

 一護の内在世界、再び重力が縦横90度歪んだ晴天の摩天楼に、俺とオッサンはいる。

 つまりまァ、()()()っつーのにふさわしい呼び名の姿に戻った俺と、相変わらずな斬月のオッサンと。地面の方じゃ相変わらず紅葉した大樹が揺れていて、そこだけ変に慣れねェが……、まあこれからは付き合ってくしかねェんだろォなこりゃ。

 で、まァそれはそうとオッサンは俺の姿を見て、そしてビルの壁面、俺たちからすりゃ地面の窓ガラス数枚を隔ててデカデカと投影される現世の一護の素を見て、一言。

 

『……衣装の造形が異なるな。何故だ? ホワイト、お前は一護の影であるはずだが』

『いやマジ知らねェよ』

 

 むしろ知ってるの誰だよ説明しろよ、という俺のコメントに、そうか、とか呟いて上空を見上げる。

 

 何だ? 今の俺の恰好と言えば、原作初期一護っつーか、始解覚えたての、ほぼ「BLEACH」の(イコン)とも言うべきアレだ。赤い鎖みてェなのに白い包帯っぽい鞘を巻きつけて固定してる、衣装だけはオーソドックスな死覇装姿。アレをそのまま白と黒とに漂白した、白一護らしい白一護の恰好。

 対する今の一護がどうなってるかと言えば……。

 

『なんかこう……、動き滑らかっスねぇ黒崎サン』

『はッ!』

『っと! 後こう、普通の死覇装より動きやすそうで!』

  

 レッスン3か? 浦原喜助と斬り合いの練習してるんだが、その恰好がマジで意味不明だ。全体としては死覇装みてェなシルエットなんだが、襦袢らしきものは外から見えねェ。感じとしちゃオッサンの布みてェなのが全身に巻き付いて襦袢の代わりをしてる感じだし、その上に上下が繋がった感じの和服とは絶対言えねェような黒い衣装。上にはジャージなのか、通常の死覇装と襦袢の色なのかよくわからねェが、そういうのを連想させる白い模様が走ってる。ただこの白い模様、素直にそういうものじゃなく、なんとなくだがもっと何かの象徴的なイメージも感じるっつーか、なァ?

 手首にはあの変な剣出した時についた装甲が両方に装着されてるし、その割には足は足袋と草鞋? のままだし。

 

 で、何がなめらかと浦原の奴が言ってるのかと言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()の話じゃねェ。これ自体は、オッサンと戦ってた時に現実側での慣れをするために、浦原がスパーリング代わりしてた時から使っちゃいたみてェだから、これは特筆するような話じゃねェ。

 

 単純に洋装に寄ってる分、運動着みてェな感じで一護の動きがちょっと滑らかって話だ。

 当世の衣装に寄ってる分、運動性とか伸縮性とか可動域がそのまま洋装寄りで、だから一護自身の動きもより阻害されずに手早く動ける────。

 

 そのお陰で、剣閃に交じって「オラッ!」とかケンカ殺法的にゲンコツとか足蹴が飛びやすくなっていた。感覚的に、普段のケンカの時の動きを反射的にとりやすくなってンだろォな。一応律義に全部対応してる浦原喜助だが、動きが変に入り乱れてやり辛そうにはしている。

 

『むしろグリムジョーとか相手にはこっちの方がいいのか? 戦い方的には……』

『とっさの判断に迷うことが少なければ、それはそれで一護の身を助けることに繋がるか』

 

 いや、まあ、死神としての能力はちゃんと取り戻してるから問題ねェと言えば問題ねェんだろォが…………。

 

『…………でも誕生方法、完全に完現術(フルブリング)なンだよなァ。何っつーか一護にため込まれてた霊力が一瞬暴発したし』

  

 まァそこだ。霊力っつーか霊圧的には死神のそれだし、あの死覇装みてェなの自体も別に何かヘンなモンな訳じゃねェんだが、実際その誕生に立ち会った俺からするともう、流れ自体は完現術だった。

 

 

 

 さかのぼること約1日前。

 子雪が力貸した一護と、俺が斬り合ってた。

 あの劇場版限定形態みてェになってた「火輪の竜戦(バーサスクルセイド)」になった一護が、それこそ()()()()()()()()()みてェな動きで俺を攻めてた時の話だ。……あの状態の一護はロクに火輪を発火させられねェっつーか、両手首の深門(しんもん)から霊圧を上手く放出できねェっつーか。

 お陰で身にまとった火輪の纏戦(ヒートザソウル)を形成できねェでいたんだが、それを子雪がカバーしたみてェな感じになっていた。

 

 アイツ本当何なンだよなァっつー話も色々考えなきゃいけねェだろォが、それはとりあえず置いておいて……。

 

 流石に火輪をまとってる状態になってるくせに、両足につけた剣も器用に使う一護。見た感じは両足から火輪が出てるだけに見えンだが、細かい制御ができンのか、すいすいとさらに素早くこっちに迫ったり斬ったりしてきていた。

 

 ま、それでも状況はいまいち進展しねェ。

 どうにもこれは、戦意だけじゃ追い付かない何かがあると判断できた俺は、その場で()()()()()()()()()を始めることにした。

 わかりやすく、一護に対する悪役ムーブだ。

 これに関しちゃ結果的に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、出来ねェ訳じゃなかった。……海燕殿に寄ってる状態でやるには、少しばかり馬鹿みてェな演技にならざるをえなかったから、詳細については省く。

 

 省くが一護に装備された子雪の装甲を砕いて、手足を斬って転ばせて、高笑いして。

 まァそれっぽいことを言ってやったら、効果は覿面だった。

 

『なァ、小僧。このままどうしようも無いというなら、俺がお前を喰らってお前自身になってやろうか?』

『その暁に、お前の家族を喰ろうてやろう』

 

 実際はもっと色々言ったンだが、要するに虚らしいセリフ回しを中心にした物言いだな。初期にあった、「(プラス)(ホロウ)に堕ちると特に近親者を喰らいたがる」みてェな説明そのまんまなムーブをしてやった訳だ。

 これについちゃ俺的にはリアリティが無ェ訳だが……、まァそこは仕方ねェ。自我のある虚としちゃ、メタスタシアは主に都によって人格屈服済だから今の俺への反映度合いは低いし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 どこまでいっても人格のベースは、死神から逸脱しちゃいねェんだ。

 

 ただ、そういったごっこ遊びみてェなことをやったら、一護はキレて立ち上がり。

 

『────お望みなら斬ってやる……、それしかもう、ルキアに預けた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

 ……梅針の時みてェなエラい胸が締め付けられる声を出しながら、あの剣六本を一直線に並べて、そのまま直進してきて。

 一瞬だけまた()()()()()()()そのタイミングで剣を砕いてやり、再構成の暇もなくぶん殴ってやろうとすれば。

 

『────(きらめ)け、斬月!』

 

 そう叫んで、ついさっきまで抜けなかった、背負ったままだった斬魄刀を抜き放ち。

 当然のようにそこには、原作の尸魂界行き前の修行中みてェに根元で折れたままの斬魄刀が存在していて。振り下ろすとかじゃなく、そのまま殴るようなモーションで突きを放って……、丁度その切っ先が、俺の胸に刺さり、背中までを抉った。

 不思議と痛みは少なかった────まァ一護の死神の力っつーのが俺自身なことを思えばさもありなん、って感じなんだろォが。

 丁度そんなタイミングで、それが起った。

 

 戦闘で回復していった一護の霊力操作を起点に、俺に直に刺さった斬魄刀を経由して、死神の霊力に同調し直した結果。

 ()()()()対話と同調みてェなことをやろうとしたそれに対して、一護の「護る」みてェな意思が多分トリガーとなり。

 完現術ベースでまとわれていた子雪の状態を起点として、死神の力が一護の全身を侵食。

 

 

 

 その結果、斬魄刀と一護の全身から()()()霊力の奔流が猛烈に放たれ、俺は爆発四散した。

 

 

 

 子雪の奴もついでとばかりに吹っ飛ばされて、竜戦(バーサスクルセイド)は解除。

 ついでにヒトガタがぶっ壊れたせいか、それでも()()()()()()()()内在世界の奥底故にか、一瞬で再生した俺は久々のドクロ顔の初期状態(?)に戻ってたし。

 つーか、本当に一瞬でぶっ殺されてリスポーンしたみてェな意味不明な状況だったから、俺も正確な話はよくわかっちゃいねェんだが。

 

 ンでもって最初に思い出したのは、原作・死神代行消失編でのラーメン別に好きじゃないおじさん(銀城)の姿だ。

 そういや一護の完現術(フルブリング)を完成形にする時に、溜まりにたまった霊圧の暴発を頑張って抑え込んでたなァ、と。

 

 そんなこんなで、いきなり内在世界から現実世界に引き戻された一護の姿を見た俺と子雪の感想。

 

『なんっか見覚えがあるような、そうでもねェような……?』

『ぎゃう、完現術(フルブリング)人形(にんぎょう)?』

『あ? あー、あったな、何だっけ? EDの後のおまけコーナーで ────って茜雫(せんな)に続いて何で知ってンだお前!?』

『ぎゃうー♪』

 

 一体コイツ本当何なんだ!? というかお前絶対、俺の前世知識いくらか持ってるだろ、オイ下手なことするんじゃねェぞ、オッサンの本体に気取られたらゲームオーバーだからなお前!?

 そんなことを説教してる俺と、現世で自分の恰好を見て「これ絶対、アイツも説明できねェやつだろ……」とか軽く白目向いてた一護が印象的だった。

 

 見た目で言うと、そう、完現術(フルブリング)完成直後の、能力の出力が若干安定していなかった……、死覇装の上から()()()()()が形成されきってねェみたいな状態を、簡略化したようなシルエット。

 そういう表現が妥当なンだが、別に今の一護の恰好って完現術でもねェんだよなァ……。アレの上から纏戦(ヒートザソウル)つけられるし。

 

 

 

 で、そこから大体1日くらい、一護が解放し直した斬魄刀の扱いに慣れるころに、丁度俺の姿が白一護に戻り、現在に至る。

 

 一護の姿にたつきも「なぁにそれ」状態だし、浦原喜助も「黒崎サンはいったい何を目指してるんスかねえ……?」とか言いながらカラクライザーっぽいヘルメットの黒いのを差し出してきて「いらねェ」とか足蹴にされたりしてたが。

 

 解放し直した斬月は……、原作とかでよく見る出刃包丁スタイルだった。

 うん、面白味もねェくらいに出刃包丁だ。こっちだとオッサンの側? の双刀っぽい柄頭がなくなって、刀身と統合されたみてェな見た目になってるし。一護的には見た目の変化より、月牙天衝が起点をつくらずともそのまま雑に空中で「ぶん」と振るえば放てるってことの方が嬉しそうだが。

 

『散々、斬月のシルエットイメージとか擦り込んでやったってのに、なんでまたああいう中途半端な形状だァ……? 別にオッサンも、そこまで強力に封じたりしちゃいねェよな』

『…………仮説にはなるが、おそらく、力の作用の仕方が悪く働いたのだろう』

 

 子も影響しているだろうがな、とかいうオッサンは、振子雪のことを暗に言っている。

 ちなみに現在のアイツは「ぎゃう、報告してくる!」とか言って姐サンの方に戻っていったから、こっちにはいねェ。

 

『ホワイト。お前は、子が為した鎧を一護がまとった状態で死神の霊力が噴き出したと言ったな。十中八九、その結果、出力される死神の力が制限されたのだろう。封じたことによる制限ではなく、すべての瞳に依存する霊力がほぼ平等に出た結果として』

『まァ正直意味不明だからな……』

 

 滅却師はどう考えてもオッサンの問題だと思うが。

 

『そして、それがまた衣服の設計自体を歪めさせるに足る理由となっているハズだ』

『歪めたって、オッサン…………、で、結局アレは何なンだ? 完現術って訳でも、火輪っつー訳でもねェし』

『死覇装だろう』

『いや、全然違ェだろ』

『機能上は死覇装である以上、死覇装以外の説明が出来まい』

『そりゃそうだけどなァ……』

 

 いやまァ? 確かに霊界基準での物質として存在してる以上は、特殊能力とかで一時的に生成されるとか、そういうタイプの装備じゃねェのには違いねェだろうが……。

 

 ひょっとしてどっかの和尚、()()()()()()()()()()()()()()()()、わざわざ()()()()()()に作らせでもしたか?

 なんとなく嫌な予感を覚えながら、俺は一護が下駄帽子をぶん殴ろうとヒットアンドアウェイを繰り返しながらも、なんだかなんだ躱されてイライラしているのを見ていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 ほぼ毎日のように繰り返される茶会とやらで、朽木ルキアはこの虚夜宮(ラスノーチェス)にいる人員について色々と知ることが増えた。アルトゥロを名乗る男によって招かれるゲストが多種多様であったことが原因である。そしてそれがまた、ルキアにとって妙な居心地の悪さを感じさせるもの────()()()()()()

 茶会と、何故か刃禅の時間をとらされていることもあり、毎日が暇ということはなく。

 ロリとメノリと訓練名目で、斬術のみを重ねあったり。なお、リリネットが参加できないのはそもそも基礎的な身体能力と霊力とが足りないが故であるのだがそれは置いておいて。

 

 

 

 例えば茶会、ルキアも顔見知りのとある破面。

 

『────第01十刃(プリメーラ・エスパーダ)、コヨーテ・スタークだ。呼ばれたから座ったが、特に話すことは…………、いや、少しあるな。一護は元気にしてたか?』

『何だよスタークその言い方、もっとやる気出せってのっ! ……まあ、その一護ってやつのことは、あたしも気になるけど。()()()()のやつ、けっちょんけっちょんにしたって言ってたしー?』

 

 気だるげで痩身の中年男性の姿をした破面たるスターク。印象に違わぬどこかやる気のない物腰だが、一護について聞く時ばかりは声が少し楽し気であった。現在、()()()()ルキアの世話を買ってでている少女の破面たるリリネットも、彼の()()であるせいなのだろうか、ルキアの語る一護の話には妙に興味津々な様子だった。

 

 

 

 例えば、ルキアどころか周囲も謎の威圧感に襲われる破面。

 

『────全くみんな失礼しちゃうわよねぇ……。()()()()様はアタシたちの太陽! 神様だからいいとしても、ニルゲもアビラマもフィンドールも! そんな馬鹿みたいな会に出れるかって失礼しちゃうわ? ジオ=ヴェガも、あーんなに凛々しくて愛らしいのに……。

 あっ、じゃあ改めて自己紹介。ワタクシ、破面ナンバー20・第2十刃(セグンダ・エスパーダ)たるバラガン様にお仕えする麗しの、シャルロッテ・クールホーンちゃんよ~!

 それにしても、フッフーン♪ ルキアちゃんも、私たちの“崩巫(ディーヴァ)”にふさわしき、美しい装いだと! 改めて思わないでしょうか、あぃ……ルトゥロ様! これもアタシの職人芸! 美の探究者たるアタシの面目躍如と言ったところ!

 ロリとメノリも、その気があるならアタシがプロデュースしてあげるわよ~?』

『いや、なんか、いい』

『別にいらない……』

『あらん? 遠慮しなくても良いわよ? 美しさを極めたのなら、その美しさを広めるのもまたアタシのつとめ♡』

 

『あたし苦手』

『相変わらず濃いな、あやつは……』

 

 と、リリネットと顔を合わせて反応に困るルキアであったが、恐ろしいことに実際ここに来てから一番話しやすかったのが彼女(?)である。シャルロッテ・クールホーン。鍛え抜かれた男性の肉体に乙女のハートを宿すビューティフル・ワン’ズ・パーフェクト・スタイリッシュ・デンジャラス・サイケデリック・バリアブル・エコノミカル・コンチネンタル・インクレディブル・アンビリーバブル・ラブリー・キューティー・パラディック・アクアティック・ダイナミック・ダメンディック・ロマンティック・サンダー・ファイナル・ホーリー・ワンダフル・プリティ・スーパー・マグナム・セクシー・セクシー・グラマラス・ホロウである。

 ちなみにこの城に来て早々、ルキアの衣服を仕立てたのも彼女(?)である。デザイン自体はアルトゥロからのオーダーらしいが、今のところ衣服の作りになんら違和感を感じていないのは、間違いなく彼女ともう一人、生地の作製をになった女性虚だ。

 なお所属が違うのでこの場にはおらず、結果的にその後はひたすら女子五人(?)での雑談が主となり、アルトゥロはそれを終始涼やかに聞き流しつつ緑茶を飲んでいたりした。

 

 

 

 例えば、賑やかな面々を引き連れた鋭い刃のような雰囲気の破面。

 

『────第3十刃(トレス・エスパーダ)、ティア・ハリベルだ』

『私、ハリベル様にお仕えするシィアン・スンスンと申します。ほかにも蛮族と脳みそ筋肉の二名ほどいますが、こういう場には不向きなので代表として私が。どうぞここは気安く、さながら友達と親しくするよう、スンスン、とでもお呼びくださ────』

『────っとォッ! 間に合った!

 おいスンスン、何一人で勝手にリーダー面してンだっての!』

『そうそう。……け、けど、ちょっと声抑えた方が良くないか? アパッチ』

『あらあら? 二人ともそんなに慌てて……。こうして会話を交わして表面上は少なくとも穏便なやりとりに終始することで、()()の情報をそれとなく引き出すという高度な交渉術を貴女たち二人に期待するのも……、酷というものではなくて? 無理せず部屋に引き返して良くてよ?』

『『いやそこまで馬鹿じゃねェよ!?』』

『三人とも、落ち着け。アルトゥロ様の御前だ』

『『『……!!!?』』』

『フフ、あまり気にすることもないさ』

『そういう訳にもいきません。

 ……騒がしくて済まないな朽木ルキア』

 

 いや気にするな、とか、仲が良いのだな、とこれにも反応に困るルキアだったが、そんな彼女にハリベルというらしい女性破面は苦笑いしながら少しだけ会釈のように頭を下げた。

 褐色肌に金髪、胸の中央から腰に掛けて大きくえぐられたような独特の、白い死覇装を見に包むハリベルと、長い袖のどこかアオザイのような印象を受ける衣装のスンスン。ついでに彼女から蛮族だの酷い言われようだった、獅子を連想させる女戦士と、同じく? どこか直情的な不良のような雰囲気を漂わせる女破面の三人。彼女たちがハリベルに仕える従属官であるらしい。

 ちなみにこの4人は苦手としてるのか、ロリとメノリは既に姿を消していた。リリネットはリリネットで「今日、この間より多いな! これでも!」と上機嫌。愛らしい少女のように満面の笑みで、ハリベルも子供を愛でるように彼女の頭を(部分的にヘルメットのようになっていた仮面ごしに)撫でたりしていた。

 

 ……なお茶会中、スンスンが妙に慣れた風にルキアの言葉の隙から色々と聞き出そうとしていた会話途中。どこからともなく「我が麗しの! スンスン殿ォ!」などという謎の男の叫び声が聞こえたり。

 それにミラローズとアパッチと言うらしい例の二人が「()()()()のおでましじゃん」「行ってやれいってやれ」などと囃し立てたり。

 なおスンスンは「チッ、毎度毎度あの猪武者は……! いい加減しつこいですことよッ! 何度フらせるつもりですの、いい加減諦めを覚えなさい!」と面倒そうな表情になってたりしていた。

 アルトゥロも「フフ、流石に個人の趣味趣向には口を出さないさ」と余裕そうな振る舞いで、ハリベルすらそんなやりとりに苦笑い。

 なんとなくだがスンスンに同情した視線を向けるルキアに、スンスンも「かたじけないです」と、()()()()らしい発音で応じていた。この時ばかりは心の底から疲れている雰囲気でさえあった。哀れな。

 

 

 

 ────と、そんな形で幾度か茶会を重ねていった先。

 

 ルキアが来る直前に一護たちと戦ったグリムジョーなども面倒くさそうにしながらも茶会に参加する姿には「律儀な……」と何とも言えない悲哀を感じたルキアであるが、全体的に段々と馴染まされているような感覚を覚えていた。

 もちろん心を許したわけではない。…………こちらに絶対的に対して異常に友好的なリリネットはともかくとして。

 ただそれはそうと、例えばロリとメノリと顔を合わせれば「アンタも真面目ね」とか「アルトゥロ様も一日くらい休ませれば良いのに」とか若干同情されたり。まだ茶会をしていないメガネのような仮面の破面など「霊子の回復もほどほどに悪くはないようだ」と楽しに見られたり。

 

 なんなら、わずかな時間で時折、修行中らしい一護の姿を「千里玉」を使って確認することもある。もっとも最近は刃禅が多くなってきてるので、あまり見てて楽しいものではないのだが。もっとド派手な訓練を恋次とでもせぬか! とプリプリ小言を言うルキアであるが、彼女は彼女で件の阿散井恋次が現世から尸魂界に戻されていることを知らない。

 

 これは、そんな日々の中での出会い。

 

 

 

「転んだところ助けていただき、感謝します。

 私は────第7十刃(セプティマ・エスパーダ)、ネル・トゥっス! で、あんた誰っスか? ここは何処? ネルは誰?」

「ぬ、ぬぅ……!?」

 

 茶会に向かう途中、幼い女の子の破面の姿がルキアの視界に入った。

 とってってってって、と駆けていって何もないところで自分の反対側の脚と脚が絡まって転んだ彼女を見たルキアは、流石に「無事か!?」と思わず駆け寄って。

 とりあえず抱き起したり軽く介抱したこともあり、意識を取り戻した女の子の破面は立ち上がったのだ。

 

 ひびの入ったドクロのような仮面に、どこか訛りの入った口調。鼻から頬に特徴的な文様があり、仮面の上から額、鼻の頭まで痛々しい傷痕がある。

 

(このような幼い少女の、破面……!? いや、リリネットがいるのだから不可思議ではないだろうが、しかし……?)

 

「あ、いたいた! ルキアー! って何だよーネル。また転んだ?」

「面目ないッス~~~~」

「……申し訳ない、ネル様がご迷惑を」

「あ、ああ、いや、それ程のことをしたわけではないが……」

 

 そして、リリネットと共に走ってきた「クワガタムシをかたどったような」、ちょっとシルエットがテキトーな仮面を被った従属官。金のやや長い髪に、仮面は右目の部分が砕けわずかに愁いを帯びたような青年の顔が見え隠れする。

 よちよちと覚束ない足取りで立ち上がったネルは、そのままリリネットに手を引かれる。「あたし、引っ張ってあげるからほら~」とお姉ちゃんぶっている姿が微笑ましいが、そんな彼女に「ネルの方も」何故か年上の女性のような余裕のある笑み。

 

 一体何が何やらというルキアに、青年の破面はしゃがみ込み。

 

「私はネル様にお仕えするペッシェ・ガティーシェ。()()ルキアよ」

()()だ! 何だ其方、いきなり……!」

「ええいまどろっこしい! ()()()()ルキアよ、あの()()()……!? くっ、やはり、我々ですら話すことを禁じられているか………」

「ぬ?」

「アルトゥロが主催する茶会とやらの前に少しだけ、話を聞かせてもらいたいことがある────」

 

 何を? とか、何故今? とか、ルキアが当然のように確認するよりも先に。

 ペッシェを名乗ったその青年は、より悲壮な覚悟を秘めた右目をルキアに向けた。

 

 

 

「────あの()()()()()()から少しだけ聞かせてもらった、貴殿の仲間にいる、傷を癒す特殊な能力を持つ少女について教えてもらいたい。

 所縁もなく、繋がりもない私が頭をいくら下げたところで、それが何の意味をなさないのも分かっている。だが…………、この通りだ! 頼む、()()ルキア! 私は、我々はネル様を、我らのために再び立ち上がってしまったあのお方を、忘却の彼方からお救いしなければならないのだ……! ちょっきんちょっきん」

「だから()()ルキアだと言っているだろうが! というか、()()が人に物を頼む者の振る舞いか貴様!!?」

 

 

 

 ……漂わせている雰囲気や表情、声音の真剣さに反して。頭を下げると言いながらその場で背中を地面につけ首倒立をして頼み込むわ、頼んでる間に足を広げたり閉じたりを繰り返すわ、ずっと呼び名を間違え続けるわのペッシェのあんまりな有様に。

 漫画なら漫符が大量につくようなデフォルメ具合が似合うようなノリで、ルキアはツッコミを入れざるを得なかった。

 

 

 

 

 

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