メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)   作:黒兎可

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(TV視聴時の筆者のコメント)莫迦な……、なんだと?
 
例によって独自解釈というか一部捏造設定?注意


#090.輪廻回生の拒絶 ★

 

 

 

 

 

 どうやら動き出したらしい────。

 

 次の茶会の準備がてら、この白亜の城たる虚夜宮(ラスノーチェス)の一角でロリとメノリがああでもない、こうでもないと色々言いながら、時々ルキアにも手伝わせて準備している中(?)。どういう感情なのかは不明だが、意外と気安く「あんたも手伝いなさいよ」「そーそ、あたしたちの座席をアルトゥロ様の横にしてさ」とか色々言われて。やや現(・)世(・)に(・)染(・)ま(・)っ(・)た(・)影響からか、そんな二人の好意の機微を察したルキアは苦笑いしながら「好きにすれば良いではないか、自分でやる勇気は足りぬか? 誰かが勝手にやったからという言い訳ばかりでは意中の殿方に迫るのは甘いぞ」などと軽くからかったりして、なんですって!? と二人そろって怒らせたり。

 そんなルキアたちを見て案外冷静に「何やってんだか」とリリネットに呆れられたり……当然のようにリリネットも準備を手伝っていたりと妙に付き合いが良いのだが、そんなタイミングで声をかけられた。

 

「黒崎一護たちが、こちらに向けて動き出したようだ。よって今日で茶会は終わりだね。片付けずとも良いから、そのまま動いてくれ」

「「は、はぁ~い……」」

「意外と名残惜しいかな? フフ…………、あまり敵意を持っていなかったのが功を奏したようだね、朽木ルキア」

 

「貴様それは何目線なのだ、一体……」

 

 渋々という風に手を放して部屋から出ていくロリたちを見て、何とも言えない表情になるルキア。なおリリネットは「あたしは、まあ、お世話係だし?」とそのまま居座る気マンマンのようだ。それが、ルキアからすれば有難かった。

 どう見ても志波海燕の姿かたちと声で、全く志波海燕の声音とふるまいではないこの男を相手にするのが、どれほど時間が経ってもルキアは苦手であった。

 

 否応にでも自分の罪を突きつけられているような────。

 

 もう志波海燕(あのヒト)はどこにも居ないのだと突きつけられているような、そんな錯覚を覚えるのだから。

 

(……おそらく一護の内にいらっしゃる以上、この感傷など私の勝手な自己憐憫(じこれんびん)の問題と言ってしまえれば、いっそ開き直ってしまえれば良かったのだろうが)

 

 内心で苦笑いを浮かべ、手を握っては開いてを繰り返す朽木ルキア。少なくともあの人を殺した事実は未来永劫変わりなく、一護の内にある、一護の母に関係するらしい虚というのがあの人であるのならば。その罪は、たとえ人生が五回あったところで、その五回ですらとうてい償い切れるものではないのだから。

 ましてや────その面影を、好意の名残を、気安く一護に重ねることなど。

 恋次の顔が浮かぶと同時に、わずかばかりにでも心の天秤が揺らぎ、もう自分がどうあるべきかなど分かったものではない。

 ただ少なくとも、自分が守りたかった黒崎一護という子供には……嗚呼、相応に「強く情が移った」と。この短期間であっても、志波海燕を思わせる気安さと、逆に自分が死神として導く立場にある関係の、嗚呼、なんと不可思議で、熱く浮かされる、あの日から開いた胸の穴が埋まる様な日々であったか。

 

 自嘲し、胸元の開いた今の衣服を見るルキア。……その中央に座する、ネックレスのように繋がれた千里玉が視界に入った。

 確認しても良いかと問えば、好きにすると良いとアルトゥロは余裕をもって微笑む。

 

「…………」

「ど、どうしたんだルキア?」

「いや、何でもないさ」

 

 どこか声から覇気が抜けたような、そんな響きにリリネットが反応する。……ロリやメノリはともかくとして、このリリネットこそ一番意味が分からないルキアである。まるで虚というより整(プラス)のような澄んだ霊圧を時折放っているような、この破面というにはあまりにも不釣り合いすぎる印象の少女が。

 食事を運んだ時も、茶会の時も、施設の案内をした時も、今だって、本当にルキアを心底心配してるのがわかる。わかってしまうからこそ、よくわからない。

 ただ、わからないことと気遣われてることは別に語れるのだと。そのことの分別が付く程度には、朽木ルキアも50年前に比べれば、人生経験が豊富になった。

 

 霊圧を込め、黒崎一護の姿を思い描く────と。

 

 

 

『────見苦しいぞ黒崎、足場をまともに作れないからといって……、って、それは一体何なんだい君は!!? また訳が分からないことになって!』

『うるせェ! 俺だってよくわからねェよ!』

『わっはー! 黒崎くんも私とか茶渡くんみたいになってるのかな? じゃあ次は……、石田くん?』

『ありそうと言えば、ありそうだな……』

 

「また何を訳のわからぬことを……、というか一護何だ貴様その死覇装は!?」

「うあぁ何!? 何、これが黒崎一護?」

 

 

 

 眼前に投影された映像で、サーフィンのボードのように足場を形成して滑るように暗黒空間を移動する石田雨竜と、赤黒い炎をまとった剣の上に両足を乗せた一護がスケートのように暗黒空間を滑りながらガミガミと言い合ってる様を前に、思わずツッコミをいれた朽木ルキアである。

 

 他の面々はと言えば、まず茶渡は井上の形成した盾を横向きにし、彼女と一緒に乗って移動。時折、一護と石田のやりとりにツッコミを入れている。次に、石田も石田でサーフボードのようなそれには例のミニスカート極まりない仮面のメイド(?)の姿もあり、石田の両肩を背後からきゅっと可愛らしくつかんで一緒に移動している。

 そんな彼らからやや離れた位置で、黒猫を先導として「相変わらずやなァルキアちゃんおらんでも」と感想を言う平子真子。その後ろでどっかで見たセーラー服にメガネのやや生真面目そうな印象の彼女が「青春ってあんなもんやないの? まあ性(・)春なんてパコスコ〇〇〇するもんやあけどさぁ」とか、お前は一体何を言っているのだ。当然のように平子にも「表現ボカしぃやドスケベッ!?」とツッコミを入れられたりして、リリネットが目を丸くしているがそれはさておき。

 

 ……もはや死神なのか何なのか、上下が繋がった謎の黒い衣装、辛うじて色遣いは死覇装らしいがいやもう何だという恰好なそれを見て、アルトゥロでさえ「えっ?」と、やや困惑したような声を上げていた。

 さも自分はこの世のすべての真実を知っているような風に佇みながら、そんな変な声を上げるんじゃない。

 

「…………まあ、それなりに元気でやっているようだね。少しは気楽になったのではないかな」

「……そう問われたところで、貴様が何を意図しているかさえよくわからぬ。斬(・)魄(・)刀(・)も(・)含(・)め(・)」

 

 霊圧が抜けて掻き消える映像。ルキアがちらりと見るのはリリネット。何だよー、というリリネットは、自分の胴体にたすき掛けされた固定帯をきゅっと握り、背負った、真(・)っ(・)赤(・)な(・)柄(・)と(・)鍔(・)を(・)持(・)つ(・)それの位置を調整する。

 アルトゥロから与えられた、昨今刃禅し霊圧を注ぎ、自らのものとしろと与えられたその刃。

 相手が一体何を意図しているのかすら、本当によくわからない朽木ルキアである。

 

 もっとも相手はさして気にした様子もなく「着いてきなさい」と二人を誘う。

 首に下げた鳥型の仮面を被りなおすと、そのまま部屋の入口から外に出て────。

 

『────あら、アルトゥロ様。今日の茶会がないのだとしても、少しだけ彼女に挨拶させてはいただけませんか?』

 

 女性の声が、通路のすぐ手前から響き、姿を現す。

 サーカスのピエロのような────白と黒とが入り乱れた死覇装。ひらひらとした袖や襟元が目立ち、両肩には「ゾウの牙のような」プロテクター。

 何より目立つのは、どこかで見たことのあるような────それでいて見覚えのない、長い一本角、その先端にドクロのような顔のある、チョウチンアンコウでも思わせるような仮面。

 

 不思議と嫌悪感を抱くルキアと「うげぇ」という声を上げるリリネット。思わずそちらを見れば、とても苦いコーヒーを飲んだ時に子供がするような忌々しそうな顔をしている彼女が見れた。何だ、リリネットも苦手としているのだろうか。この段階でルキアは、相手に対して警戒を最大限に引き上げる。

 ああ珍しいね、と一方のアルトゥロは涼し気に微笑んで応じた。仮面越しにくぐもった、海燕殿の声で朽木ルキアの方を見て。

 

『紹介しよう。こちらは────』

 

 その紹介をあえてさえぎってか、その破面は仮(・)面(・)を(・)外(・)し(・)て(・)微笑んだ。

 

「────ムーロムーラン。第9破面(ヌベーノ・エスパーダ)、ヘルフォーク・ムーロムーラン。……なーんちゃって♪

 朽木ルキアちゃん、だったわね? い(・)つ(・)も(・)う(・)ち(・)の(・)一(・)護(・)が(・)お(・)世(・)話(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)ま(・)す(・)。なんというか……苦労かけちゃったから仕方ないんだけど、眉間のあたりにぐぐーって皺なんて寄っちゃって、ちょっと背負い込みがちなのよね~」

「……なん、だと? バカな、貴女(あなた)は…………!?」

 

 一護よりもやや地に足の着いた茶系の髪と目の色。

 すっきりした目鼻立ちは、一護の妹たちを思わせる。

 そして何より、どこか家(・)族(・)に(・)対(・)す(・)る(・)黒(・)崎(・)一(・)心(・)を(・)思(・)わ(・)せ(・)る(・)陽気な雰囲気────。

 

「一護の、お母様?」

「あらー? 気軽にお(・)義(・)母(・)様(・)って呼んじゃってくれちゃったりなんかしちゃっても良いのよ~? 前(・)に見た時はずいぶん気安い感じだったし、年上のお姉さんっていうと私と一心さんと逆だけど……、まあそういうのもアリかな~って」

「へっ? ……あ、いえ、違いまする(・)、そういう話ではなく!?」

 

 よくわからないが動揺して反応するルキアに、これ以上ないほど黒崎真咲のようである誰かは。さながら息子が家に彼女を連れてきた時に向けるような、半眼でニマーっとした、ちょっと鬱陶しいような視線を向けて楽しそうに揶揄っていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 黒腔(ガルガンタ)────浦原の開いた扉なのか、空間の裂け目なのかを通った一護たちは、そのまま直進した先で、それなりに立派な施設へと出た。白亜の宮殿、というには装飾に華美さが足りないが、少なくとも年代を感じさせる場所には違いあるまい。

 ……そして出て早々、なんだか巨大な破面に追われて、広間まで激走した一護たちであった。平子たちと共にお目付け役なのか、ついてきた夜一(※猫状態)も「このような狭い場所で斬り合うなど愚の骨頂! せめて横に散らばれる場所を探すぞ!」と渋い声で叫び、先行。

 

 たどり着いた広間のような場所にて、敵も追加増員される。

 

『……何処へ行く、侵入者』

『アー面倒だなァ……、人数多いと殺すのもよォ』

 

 一部の破損した鳥のような仮面をした破面。

 緑の布の巻かれた、帽子のような特徴的な仮面に下半身が亀の甲羅から四つ足が出たような破面。

 そして背後から、一護たちを追ってきた四肢の長い巨体の破面。

 

「どうやら挟み打ちにされたみたいだな……」

「オメー今階段めがけて走ろうとしたけど、何か感想ねェのか?」

「うるさいッ! 外に繋がってるか確認するのは急務だろ!?」

 

 相も変わらず仲の良い石田と一護。

 あはは~、とのほほんと微笑む織姫以下、若干呆れてる平子達はともかく。

 

「こいつらも破面か……? なんか現世に来てた連中と比べると虚っぽいな」

 

 実際その言葉の通り、三者は全員が虚の要素を残しているように見える。グリムジョーをはじめとしてウルキオラ、あるいはスタークのような、一見して人間と差のないシルエットではない。

 

「まっ、こっちも出てとっとと片付けよぅや一護」

「平子? あー、あぁ────って、いや何やってんだよ井上!?」

 

 んー! と、斬魄刀を構えようとする一護に何故かひしと抱き着いて(!?)、それを止めようとする織姫。明確に肉付きの良い一部のやわらかさのせいで、場違いなほどに狼狽する一護。

 茶渡もまた平子たちの前に出て、少し頭を下げる。それだけで何かを察した平子は「あー、まあ好きにしたらええやん」と肩をすくめた。

 

「言い方は非常によくないが、ここは────」

「────俺達でやる」

「うん、黒崎くんたちは、ちょと待ってて?」

 

「は? いや、何言って……!?」

 

 驚く一護に、石田は語る。空座町に攻めてきた破面と異なり、下級の破面であれば人型に変化しない場合も多いと。

 

「より虚の本能に近ければ近いほど、より低級であればあるほど、その姿は人型から崩れると浦原さんから聞いている。だから業腹だが、黒崎たちにはまだ霊力を温存しておいてもらいたい」

「簡単な怪我なら私で治せるけど、霊圧とかは限界があったしね」

 

 いやだからって井上まで……!? と困惑する一護だが、そんな彼の肩に猫の状態の夜一がひょいひょいと登り、呟く。

 

「まあ黙って見ておれ。頼(・)る(・)こ(・)と(・)を(・)覚(・)え(・)た(・)ならば、奴らがただ守られる存在としてこの場に居ないために、奴らなりに必死に足掻いたという事実を見るのじゃ」

「夜一さん────」

「……茶渡も強くなったが特に井上のヤツ、ヤ(・)バ(・)い(・)ぞ(・)。よくも独学でああも恐ろしくなったものよ…………」

「夜一さん!?」

 

 驚愕する一護はさておき、巨大な破面の拳が茶渡に振り下ろされると同時に、三者それぞれが散る────。

 

 石田は鳥のような破面。

 織姫は亀のような下半身の破面。

 茶渡はそのまま、巨大な破面。

 

「────虚の本能に寄っているほど姿が人から外れると言ったな。どうやら破面に対する理解が低いとみえる……、そこのデモウラはともかく」

「ヘッだなだな」

 

「あァ゛!? アイス!!! ディ・ロイ!!!! お前らっゼッタイ俺のことバカみてェに言ってるだろ!?」

 

 戦闘中、敵は軽口を交わす余裕があるらしいが。

 それでも散り散りになった先、それぞれの戦いに集中するようだ。

 

 

 

 石田を相手に、異様に細い手先と骨だけの翼のようなものから霊圧の弾丸を放つ。それをかわしながら、石田雨竜は異(・)様(・)な(・)形(・)状(・)の(・)滅(・)霊(・)弓(・)を(・)周(・)囲(・)の(・)霊(・)子(・)で(・)形(・)成(・)す(・)る(・)────。

 

「我が翼状爪弾(ウニャ・ティロテアル)の刀(・)剣(・)解(・)放(・)の前に、塵と消えろ! 我らがエサの人間風情がッ!」

「……キミ相手なら、これだけで十分そうだな。この────銀嶺弧雀(ぎんれいこじゃく)で!」

 

 

 

 一方の茶渡は、手元に霊力をためて平手打ちをしてくるデモウラと呼ばれた破面に、変化した右腕を構えて殴(・)り(・)返(・)す(・)よ(・)う(・)に(・)防御。

 

「ぬ゛っ、ぅぉおおおォ!!?」

「……悪いが今(・)ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)手(・)加(・)減(・)が(・)出(・)来(・)な(・)い(・)。無駄に嬲ることになったら、すまない」

 

 そう言いながら右腕でデモウラを引き寄せ、赤(・)い(・)模(・)様(・)の(・)浮(・)か(・)び(・)上(・)が(・)っ(・)た(・)左(・)手(・)、右腕と違い一部だけ変化した左手で、そのまま裏拳をかまし、吹っ飛ばし、壁にめり込ませる────。

 

 

 

 そんな様子を伺いながら、織姫に相対する破面は深いため息をついた。

 状況の推移は早く、鳥型の破面・アイスリンガーと呼ばれた相手は石田の弓の連射速度を前に押し切られる。

 茶渡の方もまた、右肩の上から展開して霊圧を流す右手と、左手の両方で交互に殴りながら、デモウラを追い詰める。

 

「あァ~あァ~、やっぱり駄目そうじゃねェかアイスリンガーも。グ(・)ラ(・)ン(・)ド(・)フ(・)ィ(・)ッ(・)シ(・)ャ(・)ー(・)相手に大口叩いといてこれじゃ、グリムジョーにヤキ入れられても仕方ねェな」

「────グランド、って、その名前……?」

 

 以前、一護とルキアが交わした会話の中で、あくまで雑談であったろうそれで少し聞き覚えのあった織姫の確認であったが、眼前の破面はゲタゲタ笑って指をさす。

 

「おっと悪ィが、会話する必要は感じねェぜ? これから殺す相手を、いちいちわかろうとはしねェだろォ?」

「う~ん……、どうなんだろう? 黒崎くんとか、ものすごく相手の────」

「────ま、見たところ女! お前が一番弱そうだ。だから自分の運の悪さを恨みな────破面No.16・ディ・ロイ・リンカー様を前にしたことをなァ!」

 

 言いながら両の拳を重ねて前方に突き出すディ・ロイ。

 それだけで手元から放たれる虚閃(セロ)──── 一護はスタークやパトラスの速虚閃(セロ・ヴェンダヴァル)を思い出す、いきなりの超高速砲撃。

 井上! と思わず斬魄刀に手をかけて構えようとするが。

 

 

 

「三天結盾(さんてんけっしゅん)────私は『向(・)き(・)を(・)』『拒絶する』!」

 

 

 

 織姫の前に三角形の、霊圧の盾が形成されたと同時に。ディ・ロイの放った虚閃は、た(・)ち(・)ど(・)こ(・)ろ(・)に(・)そ(・)の(・)軌(・)道(・)を(・)あ(・)ら(・)ぬ(・)方(・)角(・)へ(・)と(・)変(・)え(・)、壁へと激突した。

 流石に驚く一護や、ディ・ロイ。平子たちも「マヂかい!?」みたいな驚嘆の声が上がる。なお茶渡や石田は自分の戦いに集中しているので、織姫の様子を伺ってはいない。

 

「うん……、これでいけるなら、私の霊圧でもなんとかなりそう。

 椿鬼くん?」

 

 織姫の言葉と同時に、欠けた六花の髪飾りからさらに房が外れ、黒い小さな鳥めいたシルエットが浮かぶ。

 何をやろうとしてるのかわからないが、のようにいながらボクサースタイルのように構えたディ・ロイ。そのまま殴りかかるように両手をリズミニカルに突き出せば、それに合わせて虚弾(バラ)が連続で放たれる。

 それをごくごく当たり前のように、突き出した左手の手前の三天結盾で軌道をそらしながら、前進。

 

「ちィ……! だったら────」 

「孤天斬盾(こてんざんしゅん)・私は『背後を』『拒絶する』」

「────ガハッ!?」

 

 霊(・)圧(・)を(・)感(・)じ(・)な(・)い(・)移動方法をもって、瞬間的に織姫の背後に回ったディ・ロイだったが。出現したと同時に、構えていた両腕に傷が走る。

 振り向き三角の盾を構えると、それをディ・ロイめがけて押(・)し(・)投(・)げ(・)。

 

「────五天生盾(ごてんせいしゅん)・私は『力を』『拒絶する』」

「はァ!?」

 

 何を、とディ・ロイが続ける暇もなく。彼の周囲を取り囲んだ、先ほどの黒い六花以外の5つの六花。織姫の持つすべての六花が飛び出している状態で、まるで結界か何かのように彼を囲み。

 次の瞬間、形成されていたディ・ロイの身体が崩(・)れ(・)始(・)め(・)る(・)。

 下半身の亀のようだったそれも砕け散り、なんなら頭部の特徴的な仮面すら崩れ、崩壊し、姿を失う。

 白い髄の死覇装はそのまま新品同然に戻ったかと思えば、急(・)激(・)に(・)デ(・)ィ(・)・(・)ロ(・)イ(・)の(・)霊(・)圧(・)が(・)し(・)ぼ(・)ん(・)で(・)い(・)っ(・)た(・)。

 

 なん、だと? と、一護は言葉が続かない。

 

「五天生盾は、輪廻回生の盾。私の拒絶したものを、生(・)ま(・)れ(・)た(・)時(・)の(・)状(・)態(・)ま(・)で(・)巻(・)き(・)戻(・)す(・)……みたいな? そんな感じのこと舜桜が言ってた」

 

「────や、止めろ!? 破(・)面(・)の(・)ま(・)ま(・)ザ(・)コ(・)虚(・)に(・)さ(・)れ(・)る(・)だとゥ……!? ただの虚みてェな霊圧程度に……、冗談じゃねェ!? 殺してやるこのクソ女……!」

「……私の霊圧で生盾(せいしゅん)が効いてるってことは、もともとそんなに強くはなかったんじゃ…………? えっと、孤天斬盾(こてんざんしゅん)・私は『距離を』『拒絶する』!」

 

 悪気なくディ・ロイのプライドをへし折りかねない発言をしながら、織姫は再度言霊を唱える。同時に織姫とディ・ロイの間に、一直線の黒い線が地面に引かれた。椿鬼の六花の姿は見えないが、到底このまま前進してタダで済むわけはあるまい。

 そうこうしてるうちに、再び高速移動をしようとしたディ・ロイであったが、がくがくと両足から力が抜け、その場で膝をつく。

 

「うん、これくらい戻したらもう、いいかな?」

「お……女、てめェ……!」

「えっと、ごめんね? 私、人の形をした相手を殺したりするのって出来ないから……、じゃあね?」

 

 も(・)は(・)や(・)そ(・)こ(・)ら(・)の(・)整(・)と(・)変(・)わ(・)り(・)な(・)い(・)程度の霊圧となったディ・ロイは、この場に満ちる空間の霊圧を前に立っていることが出来ない。

 屈辱に顔を歪ませ……、いっそ殺された方がマシだったというほどの怒りをにじませながら、五体投地して身動きがとれなくなった。

 

「えっと、お待たせ黒崎くんに、皆────って、あれ? どうしたの? そんな顔して」

 

 ん? と、いつものように天真爛漫に微笑みながらも、周囲の反応が微妙なことに目をくりくりと見開いて、不思議そうな織姫。

 肩から夜一を下ろし、代表して一護が聞くことに。

 

「井上、お前さっきの……」

「あー、うん! 色々あってね、頑張りました。えっへん!」

「いや、えっへん! って…………」

「直接攻撃するのは苦手だから、そうしないためにどうしたら良いかなーって、色々考えたっていうか。……まあ、霊圧が開きすぎると無理なのは、普通の六花と一緒なんだけどね」

 

 いや~、と照れたように頭をかきながらも、織姫は修行中のことが脳裏を過る────四(・)角(・)形(・)の(・)ド(・)ッ(・)ト(・)で(・)構(・)成(・)さ(・)れ(・)た(・)よ(・)う(・)な(・)世(・)界(・)で過ごした数日間のことや。

 頭上から響いてきた、少年の声を。

 

 

 

『────それ、拒絶するってやつ。なんでもかんでも拒絶するから使いづらいんじゃないの?』

『へ? えっと、どういう意味? 雪(・)緒(・)く(・)ん(・)』

『だから、拒絶するものが雑だから抵抗あるんじゃない? ゴブリンとかオークとか、そういうの相手に戦って負けたら普通にヤバいっていうのに、全然戦えてないじゃん』

『あはは~……。えっと、ありがとね? ちょっと考えてみる』

 

 ど(・)う(・)見(・)て(・)も(・)R(・)P(・)G(・)の(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)を(・)物(・)質(・)化(・)し(・)た(・)よ(・)う(・)な(・)四角形のポリゴンで構築された場所で、織姫は上空の窓(・)に向かって色々と頭を下げたりしながら、中腰の姿勢で頭をかく。結果的に重力に従い、織姫のバストは豊満にやや垂れ膨らんでいた。特盛!

 そんな彼女の姿を一瞥して、窓の向こう側の少年は。

 

『別にそんな風に誘惑されたって、絆されたりしないから。そのおっぱいでも揉ませてくれたって絆されないし』

『えぇ!? や、嫌だな雪緒くん、誘惑なんて全然してないよぅ……!』

 

 窓の向こうで「何言ってるワケこのマセガキ!?」という少女の声が聞こえたり、少年の向こう側から「へ~ ……、やっぱ乳(チチ)か?」と半眼でニヤニヤしながらオールバックの男性が、からかう様に見ていたりした。

 

 

 

「……黒崎くんもやっぱり、私の胸、揉みたいの?」

「いきなり何言ってンだ井上!?」

 

 なお唐突な織姫のその発言に、一護の声は裏返った。

 やっぱりって何だよ!!? と面食らったのも無理はない。

 

 

 

 

 




※ムームー(ムーロムーラン)のキャラデザできたので、置いておきます!

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