召喚士は現代に生き残っていた!

先祖代々召喚士の家系に生まれた主人公、大山登(おおやま のぼる)。
彼は一子相伝の秘奥義「おっぱい曼荼羅」を使って、理想の彼女を召喚するのだった!


※この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアッププラスにも掲載しています。

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一子相伝の秘奥義「おっぱい曼荼羅」を使って、理想の彼女を召喚した筈でした……〜なんで貧乳サキュバスが出てきてんだよッ!〜

 召喚士。

 それは異世界から魔物を召喚して、使役する者。

 時代の流れとともに数を減らし、その存在は空想の産物へと変化していった。

 

 しかし、召喚士は現代日本に生きていた!

 というか生きている!

 だって俺の家がそうだもん!

 

 大山登《おおやまのぼる》、16歳。

 俺は表ではごく普通の高校生を演じている。

 変わったところがあるとすれば、おっぱいを愛する紳士だということくらいか。

 

 そんな俺の裏の顔、それは召喚士の末裔であることだ。

 今日は父さんに一子相伝の秘奥義を教えてもらう。

 どんな魔物を呼び出す奥義なのか、今から楽しみだ。

 

「登、お前彼女はいるか?」

 

 俺のワクワクを返せ。

 

「彼女はいないけど……それ秘奥義に関係あるの?」

「大ありだ。この秘奥義は異世界から理想の彼女を召喚する技だからな」

「お父様、詳しくお願いします」

 

 俺16歳よ。16歳の童貞よ。

 理想の彼女を召喚できるとか夢じゃないか。

 

「俺も昔、この技で母さんを召喚したんだ」

「夫婦の馴れ初めとか興味ないんで、はよ教えろ」

「早漏め」

「そ、そ、早漏ちゃうわい!」

 

 そんなことより秘奥義プリーズ!

 

「コホン。では授けよう……一生に一度しか使えない、大山家の秘奥義『おっぱい曼荼羅《まんだら》』を!」

「父さん……夏の熱気にやられた?」

「言いたい気持ちはわかる。しかし正式名称だ」

「嘘だろ」

 

 ウチの先祖ってそんなにIQ低かったの?

 頭悪いから召喚士って消えていったの?

 

「登。この秘奥義は、代々おっぱい好きの先祖が編み出した秘中の秘だ」

「ウチの先祖って代々おっぱい好きだったの?」

「そうだ。俺もおっぱい好きだ」

 

 父さんに言われて思い返してみれば、確かに母さんは巨乳だった気がする。

 妹もそうだし、親戚の女性も巨乳率が高いな。

 

「登もおっぱい好きだろ?」

「巨乳は世界平和の象徴であり、正義だ」

 

 巨乳こそ真理。

 巨乳こそ生きる意味だ。

 

「秘奥義を使えば、巨乳彼女を召喚できるかもしれないぞ」

「今すぐ教えてくれ。嫁を召喚するから」

「いいだろう。お前に授けよう……秘奥義『おっぱい曼荼羅』を!」

 

 こうして俺は、父さんから秘奥義を伝授された。

 

 

 

 

 それから数日後。

 俺はネット通販で買ったものが届くや、家の敷地にある倉に籠った。

 

「まずは図式を正しく書いて……」

 

 倉の床に、チョークで召喚用の図式を書く。

 ここまではいつもの召喚術と同じ。

 次が大切だ。

 

「自分が思い描く理想の女体。それを模したものを配置する」

 

 理想の女体。

 巨乳で可愛い、エッチな彼女!

 それを模すもの、それ即ち大人のおもちゃだ。

 

「TE●GAを一つ。手●キタイプのアレを二つ……」

 

 色々と正しい位置に配置していく。

 うん。傍から見たら完全に不審者のそれだな。

 

「そして最後に……シリコン製おっぱい (Hカップ相当)を配置する」

 

 これで準備は整った。

 あとは呪文を唱えるのみ。

 

 俺は完成した曼荼羅の中央で座禅を組み、呪文を唱え始めた。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 気合を入れて、いざ!

 

「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい」

 

 呪文を唱え、印を結びながら、頭の中で描くのは理想の彼女。

 そして理想のおっぱい!

 

「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい」

 

 呪文を唱え続けると、曼荼羅が徐々に光を放ち始めた。

 もう少しだ! がんばれ俺!

 

「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい! おっぱい好きのおっぱい好きによるおっぱい好きのためのおっぱい!」

 

 曼荼羅から放たれる光は頂点に達した。

 光の中から女性のシルエットが紡がれていく。

 

 き、来た! これが俺の理想の彼女!

 

 光が消え、召喚された女性の姿が認識できるようになる。

 

 低めの身長に、腰まである長い銀髪。

 スラっとした手足に、整った顔立ち。

 頭に角と、背中に羽がある。

 いや大事なのはそこじゃない。

 大事なのは……

 

「ふむ、お主か。ワシを呼び出したのは」

 

 そうおっぱいだ。

 おっぱいが……

 

「異世界の人間が、このワシを召喚するとはな。何が望みじゃ? 富か、名声か? それともサキュバスらしく、色欲か?」

 

 おっぱいが大きく……ない。

 え? 絶壁?

 

「さぁ、望みを言うがよい。対価はそれなりに頂く――」

「なぁぁぁんでだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ふにゃ!? なにごとじゃ!?」

「あぁぁぁぁぁぁんまぁぁぁぁぁぁりだぁぁぁぁぁぁ!!!」

「お、おい。どうしたのじゃ?」

 

 召喚した女の子が俺を心配そうに見てくる。

 だがその優しさが俺を傷つけるんだ!

 

「なんでおっぱい大きくないんだよぉぉぉぉぉぉ!!! ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

「は? おっぱい?」

 

 女の子が汚物を見るような目で俺を見下ろしてくるが、関係ない。

 俺は床に拳を叩きつけて、ひたすらに号泣した。

 

「お主、何を期待して召喚術を発動したのじゃ?」

「おっぱい大きな理想の彼女だよ!」

「俗物が」

 

 養豚所の豚を見るよな目で吐き捨てられた。

 というか今更だけど、この子の服露出度高いな。

 色々見えそうだぞ。貧乳だけど。

 

「欲望だだ洩れの召喚だったから、戯れに応じてみれば……この程度の雑種とはのう」

「だっておっぱい大きな女の子が召喚できるって聞いてたんだもん!」

 

 だったら実行するしかないでしょ。

 呼ばれたサキュバスは迷惑かもしれないけどさぁ!

 

「いやしかし……流石に妥協も必要か? いやしかし、コレではのう」

 

 なんかブツブツ言ってる。

 妥協がどうとか聞こえたけど、俺は妥協しないぞ!

 

「時にお主、この召喚術の意味は知っているのじゃろうな?」

「おっぱい大きな理想の彼女を召喚する術」

「知らないようじゃな」

 

 呆れたように溜息をつくサキュバス。

 だってそう教えられたんだもん。

 

「この召喚術はな、術者と最も相性のいいい異性を呼び出す術じゃ」

「だからおっぱい大きな女の子だろ」

「馬鹿者。術者の願いを叶えるモノではないと言ってるのじゃ」

 

 なん……だと……

 

「それじゃあ、おっぱい大きな理想の彼女は」

「お主の場合は最初から出んわ」

 

 絶望した。

 俺の中で、理想の彼女像が音を立てて粉々になった。

 涙がこぼれる。俺の夢のおっぱい青春は、今ここで霧散したのだ。

 

「くそっ、くそっ! なにがおっぱい曼荼羅だよ」

「お主そんな名前で術を呼んでいたのか」

「理想のおっぱい一つ、呼べやできない」

「さっきから言いたかったのだが、お主ワシに対して失礼ではないか?」

 

 だって貧乳には用がないもん。

 俺がお近づきになりたかったのは、巨乳ちゃんだ。

 

 サキュバスはまた溜息をつくと、俺の元に近づいてきた。

 

「お主、名前は?」

「ぐすっ……大山登」

「ノボルか、覚えたぞ。ワシの名はリリス。三万の軍勢を従えるサキュバスじゃ」

 

 サキュバスもといリリス。

 今すごい事言わなかった?

 三万の軍勢を従えるとか、相当階級が高いだろ。

 

「こうして召喚されたのも何かの縁じゃ。ワシがノボルの伴侶になってやろう」

 

 リリスから笑顔の申し出。それにしても顔は可愛いな。

 なるほど確かに、上級の魔物と契約して配下の軍勢も従えたら、召喚士としては名誉あることだろう。

 だが、しかし、大事なのはそこじゃない!

 

「嫌だ」

「にゃ、にゃにー!?」

「俺がにゃんにゃんしたいのは巨乳ちゃんであって、お前のような成長期止まってそうな貧乳じゃないんだよ!」

「な、な、なんじゃとー!」

「悔しかったら巨乳になってみろ!」

「それができるなら、もうしとるわ!」

 

 ワーワー言い争う俺達。

 仕方ないじゃん。巨乳好きと貧乳は分かり合えないものなんだ。

 

「言わせておけば貴様、おっぱいしか眼中にないのか!?」

「最初からそう言ってるだろ」

「この俗物め! 女の価値をおっぱいでしか見れないのか!」

「うん」

 

 だってそれが男の子のサガだもん。

 

「というわけで願いを言います。帰って」

「……え?」

「ゲートは俺が開けるから、元の世界に帰って」

「いや、あの、それは……のじゃあ……」

 

 何故かリリスは元の世界に帰りたくない様子。

 なんでだ? ここに残る理由もないだろうに。

 

「ほら、今からゲート開けるから。さっさと帰れ」

「……やじゃ」

「は?」

「いやじゃ、いやじゃ! 元の世界に帰りとうない!」

 

 リリスは曼荼羅の上で、外見年齢に相応しい駄々をこねはじめた。

 

「いやって……そもそも俺はお前に用がないし。ちゃんと元の世界に帰すし」

「絶対に帰りたくないのじゃ!」

「なんでさ」

「何故って、299年生きてきて、初めて婚姻の召喚陣が現れたのじゃぞ! 部下達には涙ながらに見送られて来たのじゃぞ!」

「えぇ……」

 

 想像したらシュールなんですけど。

 てか、おっぱい曼荼羅って婚活が目的の召喚術だったの?

 でも言われてみれば、父さんと母さんの馴れ初めだったな。

 

「いや、他の人とマッチングするまで待てばいいじゃん」

「絶対にいやじゃ! 婚姻に失敗して戻るなど、部下に顔見せできんわ!」

 

 それに、とリリスは続ける。

 

「このまま戻ればまた『いい男はいないのかい?』『リリスもそろそろ年なんだから』と家族に冷たい声をかけられるに決まっているのじゃー!」

「えっと、299歳って……人間でいうところの何歳?」

「30手前じゃ! もういやじゃ。幼馴染が次々に結婚して去っていく悪夢を見たくないのじゃー!」

「うわぁ、行き遅れロリババアかよ」

「行き遅れって言うなぁぁぁ!」

 

 リリスが泣き崩れた。

 色々あったんだろうけど、知ったことではない。

 

「とりあえず帰ってくんない? 俺は一生に一度の術でお前が出た事実を涙したいんだ」

「いやじゃぁぁぁ! ワシを見捨てないでくれぇぇぇ!」

「ええいうるさい! 引っ付くな!」

 

 涙で顔面ぐしゃぐしゃのリリスが、俺の足にしがみついてきた。

 少し良心が刺激されたけど、俺にとって大事なのはおっぱいだ!

 

「園児服でも、ランドセルでも何でもするのじゃ! だから結婚してほしいのじゃぁぁぁ」

「断る! 俺は巨乳以外に用はない!」

「今ならサキュバス流の性技もついてくるのじゃー!」

「おっぱい遊びはついてくるのか?」

「ちっぱい遊びならあるのじゃ」

「不採用!」

 

 ちっぱい遊びなぞ論外だ。

 

「そこをなんとかぁぁぁ! いたいけなサキュバスを救うと思って、お願いするのじゃぁぁぁ!」

「うるさい! 俺はおっぱい大きい彼女と、理想の青春をするんだ!」

「ぺたん娘との性春で妥協してほしいのじゃぁぁぁ!」

 

 結局こんなやりとりを小一時間した俺達。

 どうしても元の世界に帰りにくいというリリスは、しばらく俺の家に住むことになった。

 リリスは「結婚前の同棲というやつなのじゃ」などとほざいていたが、冗談じゃない。

 

「おっぱい大きな彼女……欲しかったなぁ」

 

 リリスと出会った日の夜、俺は自分の部屋で涙した。

 

 

 その後、俺とリリスの間では色々なドタバタが起きたのだが。

 それはまた、別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

【おしまい】



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