敵か味方か?を自分なりにロールプレイしてみた   作:金曜日(うんのよさ)

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原作主人公視点の話2

ーーーーーside 灯火

 

朝、すっかり習慣になったジョギングに出ようとして驚いた。

 

玄関先に、拘束された女の子が転がされていたからだ。

 

咄嗟に110番と119番しそうになったところで、何故か俺宛ての手紙が置かれていることに気づいて、中を読むとこの子の正体が分かった。

 

「この子がファイター……」

 

確か、人工モンスターの技術を悪用しているSALという組織が抱えているファイター、存在だけは俺も聞いていたのだが、この少女はその一人らしい。

 

何故、そんな少女がここに拘束されて転がされているのか、と考え、ファイターを拘束する、ということが出来そうな奴に一人だけ心当たりがあることに気付いた。

 

となると、手紙を書いたのも…そう思い手紙を読み進めると、最近のネームドの増加にSALが絡んでいることや、この子が契約しているモンスターが文香の契約しているアプサラスの姉妹品である人工モンスター大天使ワルキューレであることなどが書かれていた。

 

どこまで信用出来る情報かは分からない、が、確認する理由にはなるだろう。

 

僕は携帯で文香や上官の吉川さんに連絡を入れ、事情を説明した。

 

その結果、まずは特別課外活動部で取調や治療を行うので、話は学校が終わってから、ということで吉川さんが寄越してくれた迎えに女の子を預けると、今日はいつも通り登校することに。

 

ただ、ニュース速報でSALお抱えのファイター達が警察署の前で拘束されて倒れていたという話を見て、間違いなく、あの男…コクの仕業だと確信した。

 

「ねえ、灯火、これって…」

 

「うん、俺もコクって奴の仕業だと思う」

 

教室で顔を合わせるなり、文香が尋ねて来たので答えると、やっぱりね、といった顔をしていた。

 

今朝の話や手紙の事について若木も交えて休憩時間に話し合いながら、放課後になると最近仲間に加わった松本玲奈と四人で特別課外活動部へと向かった。

 

到着すると既に女の子…フィリスというらしい…が目を覚ましていた。

 

「元々、衰弱こそしていたが怪我は大したことなかった。が、ちょいと年齢に比較して身長体重骨密度が気になるな、ちゃんと食わなきゃダメだぞ嬢ちゃん?」

 

フィリスの手当や診察を担当した医療チーム班長の北条俊夫さんが言う。

 

「それで、どうですか?一体、何があったんでしょうか?」

 

「うむ、簡単にだがわかった」

 

そこから先は吉川さんが話してくれた。まず、フィリスはSALのお抱えファイター、バーバリアンというチームの一員で、仲間達と共にコクという男に襲撃をかけ、返り討ちにあったらしい。

 

「返り討ちにあった、って…」

 

「ちなみに、バーバリアン側はフィリスを含めて五人がかりで襲撃したらしい。相変わらず、コクという男、恐ろしい強さだよ」

 

それは分からないではない。実際、奴と対峙した時のことを思い出すと今でも恐ろしくなる。

 

しかし、各個撃破だったから、サポート特化だったから、能力覚醒直後だったから、と言い訳の余地があるのも事実だと思っていたのだ。

 

それがまさか、犯罪組織の抱えるファイターのチームでさえも返り討ちに遭うなんて。

 

「ただ、今回に関してはちょっと妙なところがあってな……」

 

「というと?」

 

「まず一つ、そのコクという男はバーバリアンを拘束して警察の前に放置していたらしい。まあ、これだけなら善意の市民の協力で済む話だが、何故かフィリスだけは灯火、お前の家の前に放置されていたのだろう?」

 

「その通りです。一応、手紙の内容については俺も確認しましたが、バーバリアンを返り討ちにしたのがコクなら、あの手紙を残したのも彼で間違いないと思います」

 

「となると、奴にとってバーバリアンの中でフィリスだけは特別だったということになるな」

 

北条さんの言う通り、黒羽の恩人が自分を襲撃して来た相手、それも犯罪者だったにも関わらず殺さずに警察に突き出した、というのはホッとしたが、フィリスだけが特別扱いされる理由が分からない。

 

「それについてはフィリスの置かれた境遇が無関係ではないかもしれないと私は睨んでいるのだが、少々推測や憶測が多くなる」

 

「と言うと?」

 

「北条やカウンセラーの診察によると、フィリスは自我に極めて乏しい。恐らく、赤ん坊か、それに近い幼少期に組織に囚われ、強制契約の被験者にされたのではないか…と推測されている」

 

強制契約、頭に引っかかるものがあったが、それはさておき、それは呼んで字の如く、モンスターとファイターの意思に関わらず、強引に契約を結ぶことだと言う。

 

適正も何も無視して契約者、ファイターを作れるが、適正を無視することからファイターにかかる負担は大きく、そんなことをすれば長くは生きられないという話だった。

 

「それを解決する為の一つの手段が、まだ成長途上にある乳児や幼児に強制契約を行い、モンスターの影響を受けさせながら、モンスターに合わせて成長させるって方法だ。

人工モンスターは契約者の都合に合わせて作られたモンスターだが、アプローチとしてはその逆、人工モンスターに合わせて契約者を育ててファイターにしようって訳だな」

 

「恐らく、他のバーバリアンのメンバーとは違い、フィリスは強制契約の後、経過観察の為に普通の子供のように、ではなく実験動物に近い環境で育った結果、普通の子供のように自我が発達しなかった可能性が高いらしい。

もしかすると、コクも同じように、幼少期に誘拐された後、実験によって強制的にモンスターと契約させられたのかもしれん」

 

「だとすると、コクって奴もフィリスの嬢ちゃんを見て何か思う所があった… って推測はちとセンチメンタルに過ぎるかもだけどよ、そう考えた方が良い話だと思わねーか?」

 

「まあ、あくまで私や北条の想像だから確定ではないがな。が、彼が政府未登録のファイターである以上、可能性としては低くないと思っている」

 

「そんな…」

 

若木が青い顔で呟く。

でも、確かにそうだ。

コクが政府から認可されていない非正規のファイターなら、当然、非正規の方法で契約したはずで、ならば非道な実験の下にファイターにされた可能性だって当然ある…

 

…? あれ? なら、俺は? 何時、どうやって、ファイターになった?

 

「そして、この仮定が正しいとするならば、フィリスが灯火の家に転がされていたのはその人柄を信頼して…ということだろう。

そう考えると、バーバリアンはともかく、フィリスだけ助けた理由にも説明がつく」

 

何故、コクは俺に絡んで来た?

何故、コクは俺を見ていた?

何故、コクは俺を知っていた?

 

 

 

何故、コクは… フィリス のことで俺を信頼出来ると思ったんだ?

 

 

 

「なるほど、そういうことでしたか……」

 

「ああ、私としては、フィリスの置かれている状況がもう少しはっきりするまでは保護を続けようと考えている」

 

それに反対の声はなかった。

 

俺も反対はない。ないのだが…、疑問が頭の中をグルグルと回っている。

 

「あ、司令!まだ疑問はありますよ?何故、バーバリアンはコクを襲撃したんでしょうか?」

 

そう質問したのは赤髪ツインテールの少女、玲奈である。

確かに、異能系犯罪への取り締まりを行っている特別課外活動部を襲撃するなら兎も角、野良モンスター狩り以外に目立った動きをしていないコクとSALの利害が激突する理由はないように思う。

 

「それは他のバーバリアンのメンバーからの尋問結果と照らし合わせたが、コクと契約しているモンスターが目当てだったらしい」

 

「ああ、あれだけ強いファイターが契約している人工モンスターなら…」

 

「強い人工モンスターはそれだけで戦力強化に繋がるし…」

 

「研究対象としても価値が高いからね。研究班からも是非、研究してみたいって言ってる奴がいたよ」

 

「うへぇ、そこまでいくと気持ち悪いですね……」

 

「流石にそんな申し入れをしたら本格的に敵対することになりかねんとドヤしつけておいた。

確かに、非正規のファイターが強力なモンスターと契約しているなら、SALとしても食指が動くのも無理はないのかもしれん。尤も、コクの実力を過小評価した代償は大きかったようだが」

 

…それはそうだろう。でも実際の強さなんて、結局は戦ってみないと分からないものだ。

 

若木だって文香だって、自分の至らなさは実際に痛め付けられて理解したと言っていたし、俺だって自身の強さの指標にはどうやったって他人が必要になる。

 

「ただ、問題はここからだ。SALお抱えファイターはバーバリアンだけではないが、それ故に、貴重なファイターを取り戻しに来ないとも限らない」

 

そうだ。理由は分からないが、託されたからには守らなければ。

 

俺はまとまらない思考、浮かんだ疑問に目を背けるように、フィリスを守ろうと仲間達と誓い合った。

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