敵か味方か?を自分なりにロールプレイしてみた   作:金曜日(うんのよさ)

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フィリス視点の話

フィリスという少女の世界は真っ白で生活感のない空間から始まる。

 

確か、最古の記憶の頃には自分以外に何人もいたはずなのだが、時が経つに従って一人減り、二人減り、気付けばフィリスしか残っていなかった。

 

もう、彼らの顔も思い出せない。

 

ただ、痛いよう。死にたくないよう。と泣き叫ぶ彼らの悲痛な声だけは今も耳に残っている。

 

奇跡的に生き残り、SALのファイターとして『所定の性能を発揮した』と認められたフィリスは実行部隊のバーバリアンに配属されたが、同僚からは気味の悪い人形扱いされていた。

 

この頃には、最早フィリスは自分の感情というものを失っており、ただ機械のように任務をこなしていた。

 

そんな彼女の世界は、ある日唐突に終わりを迎える。

 

あるファイター、コクと呼称されているターゲットの襲撃任務。

 

フィリスを含むバーバリアンは、この任務を失敗した。

 

五人がかりで返り討ちに遭い、コクというファイターとの力量の差に戦慄すると共に、殺される。という考えは勿論あった。

 

しかし、それも良いかもしれない。そう囁く自分もいた。

 

自分は既に、生きることに疲れ果てていたのだ。

 

 

 

(ーーーーーでも、そうならなかった)

 

 

ーーーーー気に入らないな。死にたくないって思ってない面だ。

 

 

そんなことを言われた記憶と共に、意識を失った自分が次に目を覚ましたのは特別課外活動部のベッドの上。

 

そうやってSALの道具だったフィリスは終わり、綾崎フィリスが誕生した。あの日、コクというファイターとの出会いがフィリスの運命を変えたのである。

 

外の世界を知り、人の暖かさを理解し、人として自分の意思を得たフィリスは、その温もりを失うことを恐れるようになった。

 

だから、もし、文香達が「ファイターとして、自分達に力を貸して欲しい」と言ってくれれば、フィリスは一も二もなく頷き、特別課外活動部の為にその力を振るっていただろう。

 

ーーーもう戦いたくない、と泣く自分を無視して、力を振るう快感に酔いしれた自分の声のままに。

 

だからこそ、「君さえ望むなら契約モンスターとの契約を解除しても良い」と言われた時、彼女はどうすればいいか分からなくなったのだ。

 

そして、答えが出ないまま、フィリスはこの数日を過ごしてきた。

 

そんな中、コクと再会したのは本当に偶然だった。

 

「私は、どうすべき……?」

 

「うーん、そうだな。俺に言わせるとそこから間違いだ」

 

コクに言われて考える。

 

今まで、自分はどうすべきか、という指針を求めて考え続けてきた。

 

しかし、それは間違いだとコクは言う。

 

「間違い?どうして?」

 

「簡単だ。お前は今、『こうするべきだ』という方針を求めているんだろう?」

 

「……」

 

コクは私の内心を見透かしているかのように言葉を続ける。

 

「だが、何故、特別課外活動部はそうしなかったのか、それを踏まえて考えてみると良い。お前は今、『どうすべきか』でなくて『どうしたいか』で悩むべきなんだよ」

 

方針が必要というならコレで充分だ。とコクは言う。

 

「私はどうしたいか……

今まで、考えたことなかった……

そんなこと、許されなかった。誰も教えてくれなかった」

 

「なら、尚更に良く考えてみると良い。お前さんにとり、初めての『こうしたい』なんだからな」

 

「……」

 

分からない。何が正解なのか。

 

私がしたいことは何だろう。

 

そもそも、私にはやりたいことなど、何もない。

 

だって、そう教えられたのだから。

 

SALの道具として生き、SALの道具として死ぬ。

 

それが私に与えられた役割で、私の存在価値なのだと。

 

コクは悩む私を他所に、言うことは言ったとばかりに立ち上がってしまう。

 

「待って……

コクは、私と同じかもしれないと聞いた。コクは、何故、ファイターでいるの?」

 

「俺の居場所を俺自身の手で築く為、俺がしたいことを叶える為に、ファイターでいる必要があったからだ」

 

「したいことを、叶える為…… もう一つ、良い?」

 

「何だ?」

 

「私は、フィリス。綾崎フィリス。コクの、本当の名前は?」

 

「……俺はコク。宵闇 黒だ」

 

そう答えてくれたコクの言葉に嘘はないとフィリスは何となく思う。

 

きっと、彼は、自分のしたいことを叶える為に、『自分はここに生きている』と証明する為に、戦い続けているのだ。

 

私は、彼のようになりたい。彼のように生きてみたい。

 

そんな気持ちは自然に生まれてくる。

 

答えを聞いたフィリスは自分の中に生まれた思いを確かめるように、人混みの中へ消えて行くコクの背中を見送った。

 

何を叶えたいのか、それはまだ答えは見つからない。人間として生まれ直したばかりの子供には、まだ難しい。

 

だけど、「何処に行っていたの!」「心配したよ!」と息を切らしながら言う文香と黒羽に「ごめんなさい」と謝りながら、この居場所を、この温かい手を、失うのも奪われるのも嫌だと、それくらい感じることは出来る。

 

だから、フィリスは決めた。

 

誰かの道具でなく、力を振るう快感に委ねた獣でもなく、我が儘で気分屋な、ただの子供として、自分の大事な物を傷つけさせたくないという、物凄く個人的な感情で、ファイターとして戦い続けることを…否、改めて戦い始めることを決めた。

 

「もう戦いたくない」と流した涙を拭いて、「もう失くさない、もう奪わせない」と前を向いて。

 

 

 

「コク、ありがとう。貴方に会えて、良かった…」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

この一部始終を話したことで「見ず知らずの相手にご飯をたかっちゃいけません!」と文香から叱られ、「見ず知らずじゃ、ないもん…」とフィリスがむくれたのは余談である。

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