どうも、四天王の一人であるアルカードと申します。
四天王というのは、いうなれば我々魔族界のトップです。
魔族というのは細かく説明すると長くなるので、概ね人間とは別の種族という解釈で大丈夫です。
そして人間と魔族は争っており、それぞれが睨み合いながら過ごしています。
魔族側は魔王の側近や、目の届かない部分のまとめ役として四天王というものを作りました、その椅子の一つに私は座っているというわけですね。
……そんな私は今、非常に困っています。
何を隠そう、人間側が凄いものを用意したそうです。
彼女は『勇者』と言われており、単騎で異常な戦闘能力を誇ると報告を受けました。
それでまぁ、偵察に行かせた部下から受けた内容があまりにも奇天烈だったものでして、直接見に行ったんですよね。
割と我々、暇ではないですけどフットワークは軽い方です。
特に魔族は戦闘意識が高いので、好戦的な者も多かったりします。気が付いたら喧嘩していたりします、野蛮な。
さて、話を戻しましょう。
勇者の実力を知りたかったので、その部下達を連れて偵察に向かったわけです。
彼女は我々が仕向けた使い魔の魔獣に対してその実力の一端を見せてくれました。
遠方の草むらから眺めていた私は目を丸くします。
ーーーーーー使い魔ボコボコにされているではありませんか。
多方向からの群れをいなす剣術、己の何倍の大きさの異形も全く臆さない度胸、決して弱くないものをけしかけて、倒れたならラッキー位に考えていたんですがね。
ついでに倒すときなんか体が光ってました、なんでしょうかあれ。
無傷の討伐に八度見しましたよ、私。
いやまさかと思い増援を出しました。
最初に出した奴には及ばないといっても私が手塩をかけて育てた使い魔。
偶然とは思えませんが、データも取れませんからね。
そう言ってる間にワンパンされました。
ワンパンされました。
とりあえず部下を引き連れて戦略的撤退を行い、魔王に見たものを報告いたしました。
しかし、まぁやはりというべきか信じてはくれません。
一応四天王でも頭脳派で通ってるんですけどね、まぁやはり直接見てくれないと難しいですかね。映像で記録とか残せれば楽なんですが。
ーーーーよし、四天王やめよう。
私の判断は早い。
この立場にいては勇者と関わるのは確実。例え薄情と言われてもわざわざ死にたくはありません。そこまでの恩も魔王様にないので。
私は助かるとして少なくとも部下達は解放させてあげたいですね、とすればさっさと辞めるのが一番です。そこからならなんとでもできます。
おや、なにやら通達が来たようです。
『にわかに信じがたいがアルカード達から聞いた勇者の実力は凄まじいものである。故にこれからはアルカードを中心に勇者対策を考えるようにして、より一層人間に警戒するように』
おや、おやおやおやおやこれはこれは。
戦慄いたしました。
まるで私の逃げ道を塞ぐような通達ですね。
つか私の仕事増やすんじゃありませんよ、元々多いのに。
なんですかね、心を読めるんですかね。だとしたら尚更性格悪いですが。この鬼、悪魔、魔王。そうだ魔王だアイツ。
これでは正式に辞めるのも難しいですし、飛ぶにしても部下がいるためそれなりに良心が痛みます。困りましたね。
であれば、別の案を考えますか。
……さて、1日の熟考と計算の紙束の末に結論がでました。
『敵対はしているが、株も下がらずトドメは刺されない奴になる』
完璧ですね、自分の知能の高さが恐ろしいです。
そういうポジションになれば、命乞いのような惨めさや哀れさもなく私のプライドも保たれた上で、むしろ下がるどころか株も上がるというもの。
負けるという事実を覆すのは難しいのなら、それを利用すれば良いだけの話。柔軟な発想は過去の知識から生まれるのです。
素直に降伏?そんなのプライドが許すわけないじゃないですか。
となると、次に方向性を決めますか。
このポジションになるためには、いくつかの条件が必須になります。
心を通わせるライバルとか。
味方になりそうな雰囲気を出すとか。
かといって友人になれるわけもない。
そもそも宿敵ですし、私の性格柄友達の作り方なんてしりません。
言葉にするのは簡単ですが、実行するには難しいですね。
まぁ小物感を出すのはプライド的にも許せないので没にしますが、下手に性格を変えてしまうと周りに怪しまれてしまう可能性もありますから慎重に行きますか。
とりあえず方向性は決まりましたし、遅くなりましたが睡眠を取りますか。
「起きてるかアル、少しいいか?」
すると、ドアをノックする音が聞こえた。
声の主から誰かは一瞬でわかりました。
脳筋の彼にしては珍しい弱々しい声で、扉も壊さずに彼は来た。
「……生憎ですが後にしてくれませんかね、キールブ?」
思わず語気が強くなる。
正直にいって面倒くさい奴が来たからだ。
彼の名前はキールブ。魔族の中でも特に戦闘意識が高い奴です。
要するに戦闘狂です。
その上で実力も高いからタチが悪い、大体彼の尻拭いは私がやっていました。
例え睡眠不足でなくても、彼を相手にするのは避けたいのです。
「私は前の達しの通り、勇者の対策に忙しいんですよ」
「そ、そうなんだよっ!その勇者についてなんだよ……」
大分言葉を濁していますね、本当に珍しい。
脳ミソまで筋肉のような存在だった彼が悩み事ですか……?
「はぁ」
「俺、さ。勇者を前にすると胸が痛くなるんだけど……これなんなのかアルならわかるかなってーーー」
「ちょっと待って」
思わず私の方から扉を開けてしまいました。
何を言っているんですか?彼は。
「詳しく聞きましょうか?」
「あ、あぁ……目のクマ凄いけどだいじょうぶか?もしかして出直そ」
「詳しく聞きましょうかっつってんでしょうが」
「お、おぉう?」
そういって無理矢理に部屋にいれて座らせました。
彼は獣人であり獣の耳と尻尾がある、耳は垂れており、尻尾も元気がなくダランとしています。
「それで?胸の痛みは勇者によるものだと?」
「そ!そうなんだよ!最初は強い奴がいるからってワクワクして向かって戦ったんだーーー」
そういって彼は話し始めました。
ザックリ説明すると、勇者と闘って負けたと。
魔族は真剣勝負に負けたのであれば勝者に従う=従僕になるか死があるという風潮が強く、特にその気質が強かったキールブはなぜ見逃されたのかわからなかった。
最初は負けた悔しさもあってもっと強くなって復讐しようとしたが再び負け、再び見逃がされたと。
訳もわからず理由を聞くと
ーーー貴方は闘いしか知らないからさ、他に興味を持てばわかるよ。
そう言われて立ち去られ、その言葉と勇者の顔がずっと頭に残っているのだという。
「負けたのは今でも悔しいし、それを報告するわけにもいかないのは俺でもわかってるんだけど……どーしてこんな気持ちになってるのかがわからないんだ……ずっと勇者の顔が頭にいて、夢にまででてきたんだ……アルは俺と違って物知りだろ?何か知ってるかなって……アル?アルカード?」
呆然としている私に、キールブは手を振ります。
「……心不全では?」
「いやそれはない」
駄目ですか……これ、絶対生き残るじゃないですか。
もしくはキールブが死にかけて勇者を曇らせた挙げ句に覚醒されるじゃないですか。
恋ですよ、それはもう恋ですよ。
「ちなみに、キールブは勇者とどんなことをしたいんですか?」
「闘いたい」
あ、そこはまんま脳筋なんですね。
「で、でも……正直側にいられれば嬉しいというか……闘わなくてもいいかもって……」
誰ですかコイツ?
いや顔立ちは幼いし整っているので絵にはなるんですけど誰なんですかコイツ。
「要するにつがいになりたいんですか?」
「バッ……つがいって!?なん、だっ?胸の痛みが強く……!アルカード!俺に何かしたのかよっ!!」
「強いて言うなら私の方が君に先を越されたんですがね」
「は……?」
「君は勇者に恋をしているんだと思いますよ、だから戦いよりも一緒にいたいという願望が出ているんでしょう」
……困りましたね。まさか先をしかもこんな脳を筋肉に支配されていたような奴に越されていたとは。
「ん?というかキールブ。その話の通りだと既に君二回も負けてたんですか?」
「うっ……内緒で頼むぜ?」
しょぼんとするんじゃありませんよ、しょぼんと。
君、純粋な戦闘能力なら四天王で一番高いでしょうが。
どうしましょう、実力行使という少なかった勝てる見込みがほぼゼロになりました。
「まぁ、とにかく楽にはなれなかったけど……そうか……これが……恋、なのかな?」
「…………わかっていると思いますが他の方々には言わないでおくんですね、その感情を含めて」
「あ、あぁ!ありがとうな!やっぱアルカードに相談してよかったぜ!」
正直私は聞かない方がよかったと思っていますがね。
彼がでていったあと、私はわかりやすくコホンと咳払いをしました。
まぁ、冷静に考えれば問題はありません。
そもそも敵対する意思は既に完全にないのですから、別のポジションを探せばよいだけのこと。むしろ勇者と恋仲のような関係は私には難しいでしょうから、元々なかった選択肢が潰れたようなもんです。
すると、キールブが閉じたはずのドアが再びノックされる。
『アルカード、いるか?』
「……モーロク?」
返事を待つ前に開けてきたのは、二メートルほどの大きな甲冑でした。
兜の隙間からは人の目ではなく、青い炎が覗かせています。
『少し、話がある』
「……ただでさえ珍しく立て続けに客人が来ているのに、次がまさか貴方とは」
低い声が鎧に反響して、さらに重みのある声が部屋に響きます。
『む、そうか。迷惑なら日を改めたいのだが……すまない、誠に勝手ながら急を要するのだ』
「そこまでのことが……?」
キールブとは違いモーロクには良識があります。
何を隠そう彼には実体はありません、魂だけの存在です。
魔族でもあまり数は多くない、幽体というか思念体を物体に憑依させて現存しているのが彼です。
小難しい話になるので割愛します、要は鎧だけの存在です。
どこから声だしてるのかは私も知りません、興味はありますがね。
故に筋肉や関節の動きに限度はありませんが、行動範疇は魂の入った鎧で動ける範囲にのみ制限されています。それでも四天王に選ばれるほどの豪傑ぶりは、正直称賛に値します。
そんな彼が急用とは、いったいどうしたのでしょうか。
「それほどまで……?一応聞きましょう、どうされました?」
『我は勇者と立ち会った』
「うっっそでしょ」
なんなんですかカミングアウトばかり。
そろそろ心臓止まりますよ、私。
『しかし彼女は私を敵と認識せず、まるで父親が娘にやるように腕にしがみついてぶらさがって遊ぼうとするのだ』
「……はぁ」
『そこで我は思い出したのだ……過去の記憶を』
「……はぁ?」
彼が言うには、そもそも思念体というのは生きていた者の魂の結晶のようなものらしい。
故に記憶もある筈なのだが、思い出すことはかなり稀である。
しかしそれをモーロクは勇者と出会うことで取り戻したというのだ。
『我は元々王国の護衛部隊の一人であった……その当時の姫はやんちゃでな、よく部屋から抜け出し使用人達の目を掻い潜り、我を見つけては肩に乗せたりや腕にしがみついてぶらさがる遊びをしていた。我もまぁ、悪い気はしないからよく遊んでいたものだ……』
その声色は、昔を懐かしむ翁のようでした。
いや実際そうなんでしょうね、この感じ。
『いつからか彼女は見目麗しく成長した。しかしそのやんちゃ癖は直らず、我はよくその相手をしていた。見合いや縁談の愚痴をよく聞かされていた……そこから暫くしてしったのだ、彼女は我に恋慕を抱いていたのだと。それは小さい頃から側にいたからだ、歳も離れている。それは紛い物の感情だと説いたが、それでも彼女は我を選んだ』
「貴方にそんな過去が……それでどうしたんです?」
『駆け落ちをした』
一呼吸おいて、ゆっくりと語りだす。
『簡単な道ではなかったが、追っ手も払いのけて逃げ延びた……やがて我らは一つになり、田舎でゆっくり暮らしてその生を終えた』
「……それ、物語で聞いたことがあるんですが。しかも凄く代表的なロマンス系の」
『ハッハッハ。まさか、我の話が本になっていたとはな』
ちょっと理解が追い付かないです。
絵本にもなっている物語の主人公が同僚とか。
確かに言動やその剣技には老練の騎士がごとく洗練されて達観した物を感じていましたけど。
『故に、我は消えようと思う』
「……うん?」
おやおや?聞き捨てならないワードが聞こえたのですが?
『遥か昔の物語ではあるが、それでも彼女と我が残した宝物は歴史を継がれているのか……過去に未練はないと思っていたが、失っていたものは思っていたよりも大きい物のようだからな。やれ、まだまだ未熟者であるな我は』
「ん?いや、ちょっと待ってくださいよ」
『ここには別れを言いに来た。主には特に世話になったからな』
「いや聞いてください?なに、え?え??」
『我は行く、失った物を取り戻しに……我が、彼女が残した宝の姿を見に』
ーーーー止めようなくないですか?これ。
甲冑の音が聞こえなくなった辺りで、私の脳は再起動しました。
「よし、友達のようなポジションにいきますかぁ」
もう色々理解が追い付かないので、考えるのは辞めにしましょう。
……まぁ、私が友人というのは中々難しいでしょうがそこら辺は私が譲歩すればいいだけのことですしね!
「ねぇ、アルカード」
「……どうされました?アリス」
知らん間に別の来客がいました。
そこには整った顔を曇らせている女性がいました。
正直私の方が曇っているんですがね!
つか気配消さないで下さいよ、ノックすらしてないし。
四天王の最後の一人、アリスです。
彼女はどちらかというと魔術の類いを得意とするタイプで、私とはそれなりに気が合います。なので茶会や会話も多いので部下からは誤解されることが多かったんですが、そんな彼女が悩んだような表情を浮かべているのは中々に珍しい。
……というか、凄く嫌な予感がします。
「まさか貴女も勇者とであって色々絆されたり思い出したりしてませんよね?いやいやまさかであって気が合って友達みたいな感覚になって闘うのが困惑したとかそういうのではありませんよね?大丈夫ですよね?私はそろそろ泣きそうなんですがね?」
「は……え……どしたの急にそんな早口で?」
「ーーーーいえ、すみません取り乱して。貴女なら安心ですね」
そ、そうでした失念していました。
彼女は性格が悪いんでした。
自分より劣るものは蔑み、自分より勝るものは妬むような存在です。故に魔術も威力重視というよりかは絡み手が多い彼女です。それが悪いとは言いませんが急に宿敵の勇者と仲が良くなるなんてありませんよ。
大丈夫ですよ、彼女がお友達とかまさかそんな。
そういえば借りた金帰ってきてない気がしますね。どうなってんですか?
「それで?どうしたんですか?金を返してくれるんですか?」
「実は私勇者と闘ったの」
「もう度しがたいですね貴女達、金返せ」
私以外全員闘ってるのなんなんですか?
え?既に最後の砦でしたか私?
というか何?私の部屋って懺悔室なんですか?
というかさらっとスルーしましたねお金の話。
「それで?まさか気が合ったとか……?」
「いいえ、全く気が合わなかったわよ?」
「おやぁ?」
思わず顔に喜色が強くなります。
もしやこれはいけるのでは?
気が合わず宿敵となってくれるなら私は影と共に消えることが出来るかもしれません。
なんならもう勇者対策の任も彼女任せてしまおうかな。
「それで本題なんだけど。女同士の恋愛って、どう、思うかなぁ……って」
……いやそっちぃ!?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とある丘の上、目の前の存在と相対しています。
私の目の前には、全ての元凶である勇者がいました。
「貴方が最後の砦、アルカードね」
「……初めまして勇者、その通りです。私がアルカードです」
「私に何の用……なんて、聞く必要もないわよね」
「ーーーーすみません助けて貰っても良いですか?同僚が急に失踪したり恋心を抱いたりしてるんですが」
「……えっ?」
「いやもう身が持たないのですよ、幹部全員使い物にならなくなって、部下の統率も乱れてきて、なのに毎日毎日経過報告と惚気?話を聞かされて寝る間もなく挙げ句何故かその皺寄せが全て私に来るものですから」
「……え、えぇ、と?」
「ーーー魔王の所まで行く地図を用意しました、使ってください」
「えっ」
「隠し通路や補給庫、一気に魔王の所まで行ける道も作りました」
「えっ作った?」
「はい掘って作りました」
「い、いやそこまでしなくても……?」
「こちらが魔王の弱点の全てです、これだけあればなんとかなるでしょう」
「え、えぇ……?」
「だから部下は見逃してあげてほしいのです、彼らは確かに無知で気性は荒いかもしれませんが、悪い奴らではありませんので」
「……わかったよ、魔王を倒せばいいんだね」
「っやってくれるのですか!?あのパワハラ鬼畜外道を!!」
「……悪い人ではなさそうだしね、あ!でも嘘ついてたなら承知しないからね!」
そう言って、彼女は私に背中を向けました。
頭を下げた私の下卑た笑みにも気付かず。
…………計画、通り。
そう感じながらも、一気に緊張が説けて脱力して、そして今までの疲れもどっときて、その場に倒れるのでした。
そう、ここまでが作戦だったのです。
しかし、今まで勇者に言ったことも事実だったりするのです。
ーーーまず四天王の一人が消えて、魔王達は騒動になりました。
しかし追わせるには人員が勿体ないと魔王に説き、なんとか食い止め、そして四天王(マイナス1)たちで何とかしようと考えたわけですが。
「な、なぁ今日の勇者見たか?凄かったよな!」
「見てません。つかそんな暇ありませんので」
「ねぇねぇ勇者様って何が好きかしら?ご趣味は?服の傾向は?」
「知りません、というか様付けなんて他ではしてはいけませんよ」
なんということでしょう、恋は盲目と言いますがマジで何も見えなくなりました。
実質私一人で部下達を管理し、更に魔王からは勇者についての催促ばかり。
いや、うん。マジで死ぬ。
恐らく殺される前に精神的なモノが先に来て死にますねこれは。
……そんな限界までいった私の絞りだした策がこれでした。
『命乞いしてもう全部ぶっっ潰してもらおう』
さくせーん、どんどんぱふぱふー。
え?色々台無しじゃないかって?
知りませんよもうそんなの。
成功したら命は助かりますし、失敗しても死にはしないでしょう。
つか既に満身創痍みたいなものですし、とりあえず今は休みがほしいので……あ、もう意識がーーーーー
「……ここは?」
目を開くと知らない天井でした。
最後の記憶を徐々に取り戻し、そう言えば、と周囲を見ます。
すると、見慣れた者達をみました。
「貴方達は……?」
そこには鎧と、獣人と、金を返さない女がいました。
全員が全員、気まずそうに私を見ます。
「アル、その……本当にごめん!」
『なんというか、すまなかったな』
「ごめん……」
各々が私に謝罪する。
頭が「?」でいっぱいなっていると、モーロクが説明してくれた。
魔王様は無事に倒され、封印された。
魔族は無駄な殺生はされてはいないが、混乱している。
勇者も魔族達が敵対や侵略する意思がないなら特に武力行使はせず、むしろ人間との共存を望んでいるのだそう。
魔族も戦闘本能はあるが、別に自殺願望が強いわけではない。
少数ではあるが争いを好まない者達もいた。
『だからこれからの時代は、優しい魔王が必要だ』
「それでさ!実力的にも納得できる奴がいいよなって話になったんだ!」
「まぁアタシは誰が上でも関係ないけど……流石に魔族全体を動かせる立場なんて限られてるわよねっ」
「ーーー限られてる、か。適任は一人しかいないんじゃない?」
その言葉と共に。
コッ、と一歩前に出てきた。
「勇者……?」
「うん勇者だよ、どうかなアルカードさん。この手を取ってほしい」
そう言って差し出された手と、彼女を交互に見る。
「実はこの話はまだ決定じゃないんだ。人も魔族も、お互い撲滅しようとする動きはある……私達はそれを望まない、でも私達じゃ理想まで足りないんだ。魔族は消えたトップを求めてるしね」
……どうやら一命は取り留めましたが、一件落着とはいかないようです。
やることが山積みなのは理解しました。
「それに、私も皆から話を聞いてたから個人的に貴方と話してみたかったんだ。友達として仲良くしたいってね」
「……貴女は勇者のまま、私は魔王となりお互いの橋渡し役兼監視役という訳ですか」
「なにそれ、悪い言い方」
そう言ってクスりと笑った勇者、その言葉に連れて笑みが浮かぶ。
……断りたいなぁ。
でも断ったら殺されこそしないにせよなにされるかわからないしなぁ。
己の命を守り、
株も下がらず、
己のプライドも守った。
……疲労によりプライドは一度ズタズタになってますが。
私の頭はゴチャゴチャしていましたが、とりあえず上手くいった事、そしてその事に安堵する暇はないことは理解しました。
ならば、やることは一つでは?
彼女の手を取り、握手を交わす。
「まさか、宿敵から友人になるとはね。勇者」
「アハハ。これからよろしくね、魔王アルカード」
すると、今まで空気をよんで黙っていた奴等が声をあげる。
「そして俺の彼女でもある!」
「はぁ!?」
「私の彼女でもあるわ!!」
「はぁ!!?」
『我のひ孫だ』
「はぁ!?……いや、はぁぁぁぁあ!!!?」
私の驚く声が、響いた。
誤字あれば報告いただけると嬉しいです。