≪魔王視点≫
あーおしごとたのしー。ワッハッハッ。
「魔王様。申し訳ありません!追加です!」
「え…」
≪勇者視点≫
朝、部屋でのんびりとお金を数えていると、扉がノックされた。
「勇者様。起きておられるでしょうか?入学式のお迎えに上がりました」
「あ、はーい」
扉を開けると、またあのおっさんがいた。
「それでは、こちらの学生証を首におかけ下さい!ご案内いたしましょう!」
おっさんの後をついていくと、個室に案内された。式と言うと、大掛かりなものを想像するが、学園は一人一人の入学時期がバラバラだ。いちいちそんなものはやっていられない。
そんな入学式はとても簡素で、書類を受け取り、学園長からのありがた~いお言葉(一分)を聞くだけである。とても呆気ない。ほんとに。
「お疲れ様です。勇者様。早速授業を受けましょう。授業はあちらの魔道具を操作すれば、その教室に転位できます!もし魔力が尽きているなら、あちらの地図に教室の位置が記されております!」
「分かりました。ありがとうございます」
「いえ!お礼を言われるような事ではありません!それでは、魔王討伐頑張って下さい!」
「はい!」
魔王は絶対倒すから、強くならないとね!
というわけで、二刀流を学びに剣術教室へと向かう。
「剣術っと!」
魔道具に表示されたボタンを押すと、視界が一瞬で切り替わる。剣術教室の扉を開けて、教室を見回すと、なぜかにこにこと微笑む教師が目に入った。
「ようこそ!勇者様!それでは模擬戦を始めましょう!」
「「「おおおおおおおおおおお!!!!!」」」
歓声を上げる生徒と思われる若い男女達。
これ、前もあったなぁ……。
「それでは、第三百五十八回目、始め!」
「やああああああああああ!!!!!」
盾を前に構え、距離を詰めてくる男子生徒。速度は遅いが、隙がなく、木刀じゃ手を出しづらい。
「でも、パワーがあれば関係ないっ!」
大きく振りかぶり男子生徒を横殴りにするように剣を振るう。即座に盾を合わせるが、力を流しきれず、吹き飛ばされた。
「うおおおおおおお!!!!!!」
歓声が上がり、吹き飛ばされた男子生徒の周りに人が集まる。
「そこまで!誰かそこの奴を保健室に連れていってやれー。はい次ーお前だ」
「はいっ!」
こ、これでやっと半分…。簡単に倒せる奴もいれば、普通に強い奴も紛れ込んでいるし、たまーに複数人で攻めてくるのもいるし、もうほんと疲れる。しかも休憩なしっていうね。前の俺はどうやって切り抜けたんだ…?
「オラアアアア!!!」
速度に任せて突っ込んでくる奴もいれば、
「……」
ガン待ちしてくる奴や、
「【火魔法 ファイヤーボム】」
魔法でチクチクと削り、ガン逃げする奴もいる。
多種多様な戦い方で強者に立ち向かえる。それは確かにいい経験となるだろう。でもさ…。俺の負担も考えてよ!聖剣なし、魔法なし、何なら木刀を装備のない場所に当てるのも禁止である。死ぬ可能性があるからね。ステータスあげすぎってのも考え物だね。
「はい次!」
「ちょ、休憩…」
「え、何ですか勇者様!聞こえませんなぁ!そんなことより、まだまだいますよ!」
「「「「「はい!」」」」」
「ちなみにですが…。勇者様は既にこれまでの勇者様と同じくらい強いご様子!一週間に一回はこのような機会を取らせて貰いますぞ!実戦じゃ学べないことなんて星の数ほどありますからな!」
これが、あの、伝説の社畜?