冒険の書が完結しない    作:翔田美琴

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3話 最後の闘い?

 事前情報として下僕達の情報を得ていた勇者レムに従うパーティーメンバー達は、大した損害もなく、順調に下僕達の屍を積み上げていく。

 そして大魔王の下へ歩む勇者レム一行。

 卓越した強さを誇る勇者パーティに、大魔王は哀れに思う。

 

「哀れなものよのぉ。それ程の力を持ちながら愚民共へ肩入れしおって。今からでも遅くはない。勇者とその仲間達よ。我の下で働かぬか?」

 

 そこに戦士ハザードは言い放つ。

 

「ふざけんな! 誰が魔物の為に闘うかってーの! 俺達は人間だぜ! いいや、勇者レムがいる限り、俺はこいつと闘い抜くんだ!」

「ほう……」

 

 僧侶アネットも大魔王に言い切る。

 

「私も人間だから、そして神に誓い、あなたを倒します! そして世に平和を!」

 

 賢者オグスも左手で杖を持ち肩に担いで言った。

 

「私もまだまだ人間は捨てたもんじゃないと信じている」

 

 勇者レムは大魔王に対してあっさりと言った。

 

「そういうことだ。大魔王。決着をつけよう」

「いいだろう。さあ、我が腕の中で息絶えるがいい!!」

 

 最後の闘いが始まる。

 勇者レムはそこでやはり感じた事のある既視感に襲われた。

 この闘いの光景は見たことがある。

 最初の闘いではカツカツだったが、今は万全を期してこの闘いに挑んでいる。

 勝てるはずだ。指示さえ間違わなければ。

 賢者の石と呼ばれる無尽蔵の回復力を秘める道具は賢者に持たせた。

 サポートとなる武具も持たせた。

 この闘いは勝てる!

 

「ハザード! 攻撃だ! オグスはハザードの攻撃力を上げて! アネットは吹雪を和らげるバリアを!」

「はい!」

「行くぞ、ハザード!」

「レム! 俺とお前は一太刀ずつ浴びせるぞ!」

「おうよ!」

 

 大魔王との闘いはほぼ滞りなく進み、最後の一太刀を勇者レムが浴びせる事で、大魔王の息の根を絶やす事に成功する。

 

「ふ……不覚……っ。しかし……この体朽ちても……我が魂は……ふ…めつ……」

 

「倒した……大魔王を倒しました! 私達!」

「よっしゃ~! これで祖国では俺達は英雄だ!」

「……どうした? 嬉しくないのか? レム」

「俺がこれから、解き明かしたい現象はこれからなんだよ」

「時間との闘いってやつだな」

「そうだ。これに決着をつけないとこの時間も無駄になってしまうからな」

 

 そして表の世界に出た彼ら勇者パーティ。このまま祖国へ凱旋するかと思いきや?

 

「いいや。ちょっと寄り道して、隣国の王様に会いに向かおう」

「おいおい。レム。ここは隣国の城じゃないかよ」

「色々試したい事があるんだ。前回は確か、まっすぐに祖国の城の王の下に戻った。大魔王を討伐した報告も兼ねて、な」

「あの時の俺は新たな記録を刻もうとしだがそれが叶っていないんだ。最後に途切れた記憶も合わせると祖国の王へ会うのはまずい気がする」

「だから別の王に頼んで冒険の書を更新しようというわけだ」

「なんだよ、せっかく、格好良く凱旋する気満々だったのに」

「大魔王を倒したんですよ? 憂いは無くなったのに何でこんな事をするのですか?」

 

 戦士ハザードは呆れたように腕を後ろに組んで腕枕するように呆れている。

 僧侶アネットは大魔王を倒したのに、異様な緊張感を抱く勇者レムを心配する。

 しかし、彼にとってはこれから先が問題なのだ。

 

「悪いな。俺にとっては大魔王戦よりもこっちが強敵に思えてならない」

 

 だが、勇者としての責任としてパーティーメンバーの平和を勝ち取る為にも決意を新たに、話した。

 

「だが、安心してくれ。必ず、君達の平和を勝ち取ってみせるよ。必ずな。そして平和な世の中を過ごしていこう」

 

 隣国にも大魔王を倒した事は知られている様子で、王は彼らを称賛していた。

 

「さすが、真の勇者よ!」

「ありがとうございます。あの王様。こちらの冒険の書に記録を残していただきたいのですが……」

「これか? 儂はこんなの知らんぞ」

「え…? 冒険の書を知らない? あなたにも冒険の時に記録して頂いた記憶がありますが」

「見せてみよ」

 

 勇者レムは肌身離さず持ち歩く『冒険の書』を隣国の王に見せる。

 しかし、彼にはこれは旅路を記した単なる日記帳にしか見えないらしい。

 

「うーむ。この旅路の日記帳に儂が記録をしたのか? 覚えておらんな……」

「日記帳……。まさか、本来の『冒険の書』の効力が消えてただの日記帳になってしまったのか……!?」

「大魔王を倒したと言うに何て顔をするのだ? 勇者よ」

 

 街で待っている仲間の下へ帰る。

 皆は『冒険の書』への記録ができたのかと思っていたが。

 

「どうでした? 冒険の書への記録はできましたか?」

「いや、だめだった」

「こうなったら全世界を片っ端から当たるぞ」

「おいおい。レム。いつまで道草すれば気が済むんだ」

 

 ほぼ全ての『冒険の書』の記録を担当してくれた場所を当たったが結果は火を見るより明らかで、冒険の書は全て日記帳へと変わってしまったらしい。

 戦士ハザードはこんな状況に我慢できるわけでもなく。

 

「オイ! 俺達は大魔王を倒したんだぞ!? 今がその平和ってやつだろう!? なのに、何でお預けをくらわなきゃならないんだよ! 俺はさっさと祖国からの褒美を貰おうぜ」

「私もハザードさんに賛成です。目に見えてレムの顔に疲れが見えてます」

「……そうだな。俺も疲れた……」

 

 納得いかないまま、祖国へと帰る勇者パーティーであった。

 

「帰ってきたぞー! 俺達の祖国! くーっ、テンション上がるぜ!」

「早く王様に挨拶して休みましょうね。ゆっくりと」

「ああ……」

 

 街の人々は大魔王を討ち倒した勇者を出迎えて称えた。

 

「勇者様だ! 勇者様が大魔王を討ち倒したぞー!」

「勇者様! バンザーイ!」

「あまりにも戻らないから、勇者様なしで祝宴が始まるところでしたよ」

「主役を置いて祝宴とは……」

「納得いかないだろう? レム」

「まあな」

 

 街の人々は諸手を挙げて喜びの声を上げて彼らはその人々の間を城へ向けて歩く。

 

「すっかり祝宴ムードだな」

「だな。しかし……」

「やはり気になるか」

「オグスは憶えていたか」

「気になる事だからな」

 

 祖国の城の王の間へ案内された勇者パーティーは王から労いの言葉を賜る。

 

「さすが、勇者レム。そなたこそ、真の勇者に相応しい! そなたの名前は永遠に時代を超えて語り継がれるであろう!」

 

 THE END ?

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