相変わらず陰気な雰囲気の大魔王の居城。
しかし、勇者レムのもはや未来予知みたいなデータを教えられたパーティーメンバーは気軽な気持ちで臨んでいる。
「大魔王の居城に着いたな」
「よし。ちゃっちゃか行くぞ。ちゃっちゃか」
「大魔王の居城にこんな軽い気持ちで臨むなんて思わなかったです」
「あれだけ正確なデータを提示されれば、そりゃあ気軽な気持ちになれるよな」
「それにしても、大魔王討伐がいつの間にか冒険の書の検証になるとは思わなかったよ」
「うーん……喉が腫れてる。鼻水も出てきたぞ」
「皆、行くぞ!」
まるでタイムアタックをするかの如く、電光石火で居城の奥まで攻め入る勇者パーティー。
周囲の魔物達もその勢いになすすべもない。
あっという間に魔王の間の扉まで来てしまった。
「扉を開けるぞ」
「へっくっしゅん! くしゃみ出た! ちょっと待った!」
「後少しで死ぬ程眠れるから頑張れ」
「あのレムが焦っている?」
「やっぱり気になるようだな」
大魔王が奥から姿を見せる。
そして、あの問答が繰り返されるかと思いきや?
「来たな。勇者レムよ。貴様は何のために闘ってー」
「その問答には飽きた。俺達の答えは人間に産まれたなら人間側につく。それだけだ」
「問答無用という訳か、ならば下僕達よ! こいつら全員に地獄を味あわせてやれい!!」
下僕達すらも彼らの……いや勇者レムの異様な気迫の前には無力だった。
何を勇者は焦っているのか……?
大魔王は妙だとは考えつつも最後の砦が自らとなる事に初めから全力でいく事に決めた。
「問答無用と言ったな。ならば余も問答無用! この世から消え去るがいい!!」
大魔王との3度目の最終決戦が始まる。
やはり三度も闘えばどの攻撃がくるかが判る。無駄の無い指示を出し、的確過ぎる一撃を入れて、勇者レムは手早く大魔王すらも片付けてしまう。
「この最終決戦も冒険の書の検証の為にだと味気ないな」
最後の一太刀を浴びせて大魔王を倒してしまった。
「ぐおおっ! おのれ人間共め……だが……この体朽ちても……」
「我が魂は不滅……か」
大魔王は血の海へ沈んだ。
「終わったんですね……私達、大魔王を倒したのですね」
「おっしゃああ! これで世界は救われたぜ!」
「こんなに呆気なかったっけ?」
「レムが一つも無駄な指示を出さなかったお陰ですね!」
「お前、ホント凄いよな! どうした?!」
「……流石に三度目ともなると達成感がないよ」
「ではこの後は?」
「ああ。皆で逃避行と行こうか?」
勇者レムは思いもよらない言葉を口にした。
顔もにっこり笑っている。
逃避行とは一体どういう意味だろうか?