猫がいて、マシンがいて、幼女がいる。
そんな小さな物語。

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結構寝かせていた話をとりあえず載せます。


猫とマシンと時々幼女

猫。

猫である。

それがてくてくと歩き始める。

進んだ先には廃墟。

そして、ぼろぼろに崩れている機械らしきものがあった。

 

腕は2本、足は4本。

そして単眼で赤い色をしていた。

具体的に言うと壊れたキラーマシンなのだった。

 

 

 

猫がここを訪れるようになって暫く。

キラーマシンは動くことなかった。

しかし、時折その瞳らしきそれが揺れることがあった。

その先には猫。

そして、他の侵入者の姿を映すのだった。

 

「ねこさん……」

 

それは幼女であった。

黒髪ロングのぷにぷにぼでぃ。

どうあがいても幼女のその子は、猫に釣られてここまでやってきたのだった。

 

しかし、その猫が遊んでいるところにはなんとキラーマシンがいる。

ボロボロで、動く様子はないけれど。

武装は未だに健在で。

幼女からしてみれば恐怖の対象であった。

 

「でも……」

 

そんなキラーマシンの周りを、猫は我が物顔で占拠していた。

自由だ。

幼女はそう思いつつ、猫をじっと観察していた。

 

黒い。

つやつやの毛並み。

そして銀の瞳。

首輪などはしていない。

恐らく野良猫なのだろう。

 

そんな猫が、どうしてあんな危なそうなものの近くに居座るのだろうか。

幼女はキラーマシンを知らなかった。

ただ危ない物であるということは理解していたが。

 

 

 

さて。

そんな幼女を見つつ、キラーマシンはじっとしていた。

猫にガリガリと爪を研がれても、じっとしていた。

モノアイをがつがつと猫パンチされても動くことはなかった。

 

「にゃーん」

 

猫はただその辺をうろつき、キラーマシンの身体をガリガリとやったりぱしぱしと叩いたりしている。

キラーマシンは動かない。

 

そして、そんな様子を見ていた幼女は意を決して一歩を踏み出した。

キラーマシンへと近づく決心がついたのである。

 

ゆっくり、一歩一歩近づく。

その様子を、猫とキラーマシンはじっと見ていた。

 

「にゃーん」

 

猫が一声鳴くと、幼女へとすり寄る。

どうやら猫は幼女を安全なものだと思ったようである。

幼女はぱあ、と顔を明るくして猫をなでるのであった。

 

 

 

「……むむむ」

 

それからしばらく。

幼女は着々と成長していた。

キラーマシンの腰ほどであった身長も、ちょうど肩辺りまで伸びた。

それとともに、知識も付いた。

キラーマシン、その存在を知ったのである。

 

しかし、おかしい。

幼女は考える。

キラーマシンの出現する場所はこの場所から遥か北のはずであった。

そんなキラーマシンが何故こんな場所で朽ちているのか。

幼女はわからないのであった。

 

とはいえ。

キラーマシンはボロボロ。

動く気配はない。

安全だ。

そう思っている。

少なくとも幼女は。

 

「にゃーん」

 

いや、猫もだろうか。

すりすりとキラーマシンの足に頭をこすりつけて甘える。

全く警戒心がない。

本当に野良なのだろうか。

 

「……まあいっか」

 

幼女は考えるのやめた。

今日も猫と一緒に遊ぶのだ。

家から持ち出した長い糸を使って、猫とじゃれて遊んだのだった。

 

 

 

「……むぅ」

 

暫くして、幼女は家出をした。

親と喧嘩したのだ。

猫を連れて帰ったら飼うのを反対されたからだ。

 

「こんなに可愛いのに」

「にゃーん」

 

無邪気に鳴く猫を抱えながら、幼女はキラーマシンに登っていた。

肩車の体勢である。

 

「……ねぇ」

 

幼女はキラーマシンに語り掛ける。

キラーマシンは動かない。

 

「あなたはどこからきたの?」

 

キラーマシンは喋らない。

ただじっと佇むだけであった。

 

「にゃん」

 

そんな問答を続けていると、いつしか幼女は眠っていた。

キラーマシンの頭部を枕代わりに、抱き着くように寝ていたのであった。

 

 

 

それからしばらく。

親と仲直りした幼女は、相変わらずキラーマシンのいる場所へとやってくる猫を追いかけてやってくる。

そして今日はどや顔でキラーマシンに語り掛けるのだった。

「私は今日、ホイミが使えるようになったわ」

「にゃん」

 

幼女は呪文の素質があった。

それも回復呪文だ。

とはいえそれ以上の才能があるかはわからない。

辺境の田舎だ。

才能を発掘できるような施設や人材は存在しないのであった。

 

しかし、幼女は舞い上がった。

他の子供とは違うと、そう思ったのだ。

単純なものである。

 

「ふふふ……」

 

さきほどからずっと笑顔だ。

幼女は自慢げにホイミホイミと呟いている。

無駄使いである。

 

そして幼女は気付いた。

キラーマシンは魔物だ。

しかし動けない。

もしかしたら、ホイミを使えば元の姿に戻るかもしれない。

幼女はそう思って、軽い気持ちでキラーマシンにホイミをかけるのであった。

 

 

 

キラーマシンのHPは膨大であった。

幼女のホイミでは全然回復し切れなかったのである。

毎日毎日、幼女はホイミをかけ続けた。

そんな幼女を、猫も応援している様子だった。

そして数か月が経過して、漸くキラーマシンの身体が修復されるのであった。

 

『深刻なエラーが発生しています、深刻なエラーが発生しています』

「???」

 

しかし、それでもキラーマシンは動かなかった。

幼女には理解の出来ない言語で、自身の異常を外へと発していた。

 

「にゃん」

 

猫的にはどうでもよかったのか、いつもと同じようにキラーマシンと幼女にすりすりと頭をこすりつけるだけだった。

 

 

 

更に暫く経つと、幼女の環境は急変した。

なんと、幼女の才能が都会の教会に伝わったのか、スカウトが来たのである。

 

「……どうしたらいいのかな」

 

しかし、幼女は乗り気ではなかった。

それはそうだ。

親は一緒に都会へと移り住むことになるだろう。

しかし、キラーマシンは動けない。

否、動かない。

 

流石にこれだけの時間一緒にいるのだ。

幼女はキラーマシンに愛着を持っていたのだった。

 

「にゃん」

 

猫はそんなことどうでも良さそうに鳴いている。

都会に移り住んでも、猫は普段のままだろうことは明白だった。

 

「明日……明日かぁ」

 

明日、幼女を迎えに教会の人間が村へとやってくる。

それまでに、幼女は決心しなければならない。

キラーマシンと別れるか、一緒にいるか。

 

 

 

その夜だった。

魔物の群れが、村を襲ったのである。

 

 

 

「はっ……はっ……はっ……!」

 

幼女は逃げていた。

親は彼女を逃がすために囮になった。

今どうなっているか分からない。

泣きそうになりながら、幼女は走っていた。

 

その走る先は、ずっと一緒にいた、キラーマシンのいる場所。

 

 

キラーマシンは無事だった。

いつも通り、動く様子もない。

その姿をみて安堵したのか、幼女はその場に座り込んだ。

 

「にゃあ」

 

いつの間にか、猫も幼女に寄り添っていた。

安心しろとでも言っているのだろうか。

幼女には猫の言葉は分からなかったが、その様子を見るd家で安心した。

 

 

 

「……ぐるるる」

 

しかし。

その幼女にとって神聖な場所にも、魔物はやってきた。

 

逃げ場はない。

あまりに数が多かった。

猫は威嚇をしているが、その声も爪も、魔物には通用しそうになかった。

 

誰か。

幼女は祈った。

誰か助けて。

お父さん、お母さん。

そして、キラーマシンに。

 

 

 

『深刻なエラーが発生しています。行動理念と矛盾しています』

 

 

 

すると。

今まで全く動くことのなかったキラーマシンが。

ゆっくりと、少女を守るように動き始めたのだった。

 

『矛盾しています。矛盾しています。矛盾しています』

 

斬る、撃つ、振り回す。

キラーマシンは暴力の塊であった。

彼女に理解できない言語を発しながら、キラーマシンは魔物を破壊していった。

 

「……っ」

 

その姿は。

殺人兵器たるキラーマシンの真の姿であった。

幼女は素直に怖いと思った。

しかし、それと同時に頼もしいとも思ったのである。

 

 

 

しかし。

 

「あっ!」

 

幼女は自身の身体が浮いていることに気付いた。

誰かに抱えられているのだ。

そして、その首元には刃物が付きつけられていたのだった。

 

「……っ」

 

それは、人型の魔物だった。

わずかばかりの理性と、溢れんばかりの本能が、キラーマシンの弱点を理解し、人質にとったのだ。

 

そして、キラーマシンは動かなくなった。

動くことができないのだ。

何故なら、動けば幼女が殺されてしまう。

それが理解できたからだ。

 

魔物たちはキラーマシンを囲んで、攻撃を加える。

 

キラーマシンは ただ ジっと たえている。

 

何度も殴り、斬り、噛みつき、呪文を放つ。

 

キラーマシンは ただ ジっと たえている。

 

身体に罅が入り、砕け、折角直った身体が壊れても。

 

キラーマシンは ただ ジっと たえている!

 

 

 

「ああ……!」

 

幼女は、その様子を涙を流しながら見ていた。

見ていることしかできなかった。

動いてはいけない。

動いたら、今キラーマシンのやっていることが無駄になってしまうことが理解できたからだ。

 

しかし。

こんなのつらい。

つらすぎる。

幼女は自分が何をしたらいいか分からなくなっていた。

 

 

 

「にゃん!」

 

 

 

突然。

猫が幼女を抱えた魔物に飛び掛かった。

顔だ。

魔物の目玉に爪を立てたのだ。

 

「ぐるるるる!!!」

「きゃん」

 

しかし。

その一撃が放たれた直後。

猫は魔物の一撃で吹き飛ばされてしまった。

 

「―――――っ!」

 

今しかない。

幼女は逃げた。

その魔物から死に物狂いで離れようとした。

 

しかし。

しかしだ。

幼女も限界だったのだ。

足がもつれ、すぐに倒れてしまった。

 

倒れた先には、動かなくなってしまった猫がいた。

手を伸ばす。

ああ、私が捕まらなければ、こんなことにならなかったはずなのに。

涙が勝手にあふれた。

もう駄目だ。

そう思った。

 

 

 

しかし。

キラーマシンにはその一瞬があれば十分だった。

放たれるボウガン。

それが魔物を貫く。

そして、キラーマシンはさらなる破壊を生み出すのだった。

 

 

 

身体の関節が壊れていく。

 

キラーマシンの 攻撃!

 

装甲が剥がれ落ちる。

 

キラーマシンは 持っている武器を 激しく 振り回した!

 

武器が壊れ、役に立たなくなる。

 

キラーマシンの 攻撃! 会心の一撃!

 

 

 

全て。

キラーマシンはその場にいた全ての魔物を破壊しつくした。

 

幼女は猫にホイミをかけていた。

ぐったりとしてた猫が、しっかりとした息をし始めたところで、何とかキラーマシンへと近寄ろうとした。

 

しかし。

 

 

 

キラーマシンは、ばらばらになってしまった。

 

 

 

「あ……」

 

幼女は感じた。

これは、自分には治せない。

 

「……ほ、ホイミ!」

 

しかし。

少女は諦めたくなかった。

だって。

だって私を助けてくれたのに。

こんなに頑張ってくれたのに。

そんな思いが、彼女を動かしたのだった。

 

 

 

しかし。

その願いは届くことなく。

翌朝、彼女を迎えに来た教会の人間に止められるまで。

彼女はずっと呪文を唱え続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

10年の月日が経過した。

幼女は立派な女性となり、美しい姿は周囲の人間を魅了するほどになった。

ついでに猫もあの時から大きくなり、彼女の腰ほどまでになった。

猫じゃなかったっぽい。

 

そして。

誰もいない村の外れ。

キラーマシンの残骸が眠る場所へと、彼女は足を運んだ。

 

「……お待たせ」

 

幼女、もとい彼女の才能は本物だった。

回復呪文を数多くこなし、聖女と謳われるまでになった。

そうなるように必死で勉強した。

そうなるように必死で努力した。

全ては、この時のために。

 

かつて叶わなかった願い。

かつて足りなかった力。

 

その全てを、今この瞬間に叩きつける。

 

「にゃあ」

 

猫が鳴く。

すりすりとキラーマシンの残骸にすり寄るその姿を見ながら、彼女は笑みを浮かべ、そのまましっかりと呪文を紡いだのだった。

 

 

 

「―――――ザオリク」

 

 

 

かくして。

彼女はかけがえのない存在を取り戻したのだった。

 

 

 

 

 

 

 


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