『体中を呼び覚まして、不確定性☆COSMIC MOVEMENT!』
「おおー......」
夕焼けのヴォルドール、スタジアムの上で踊る5人に熱い視線を送る。
ワルキューレの新メンバー、フレイア・ヴィオンの初ライブ。
それに加えて新曲の『不確定性☆COSMIC MOVEMENT』の初披露。
会場の熱気は最初から最高潮である。
かく言う俺も、こう言う形で初めて見るワルキューレのライブに非常に興奮していた。
綺麗なダンスに、未来的な演出とホログラムのバックダンサー。
そして......空を彩り、視覚全てをワルキューレ・ワールドへと連れて行くエアパフォーマンス。
裸喰娘娘で新人3人がんばろうと誓い合った頃を思い出せば、置いてかれてしまった現実に寂しさを覚える。
だがまだ追いつけないわけじゃ無い。
頬を叩き次のライブへ頑張ろう、と意気込み拳を強く握ると同時に、警報が鳴り響いた。
「飛行物体が5機、アンノウンだ!」
通信機器からその言葉が出ると同時に、ドックがピリついた。
先程までモニターに齧り付くように見ていたガイさんハリーさん両名とも、目つきを変えてVFの最終確認を始めた。
上だけ脱いでいたパイロットスーツを着込み、ジークフリードのコクピットで確認の終了を待つ。
苛立ちは、ある。
だがそれは心の話。
ものを考え行動する頭は非常に冷えていた。
「エアリアル起動、脱出システム作動......オッケー!」
確認OKのサインを受け取り、カタパルトに乗せて機体内部の作動確認を済ませる。
私怨を抑え、送り出してくれた整備士の皆へ親指を立てた。
「
手に入れたコールサインと共に、空へと駆け出した。
見える情報と聞こえる通信から、どうやら妨害電波によってワルキューレを守るドローンが使い物にならない。
「━━まずい!」
そこを狙って放たれたミサイルを、デルタ小隊による一斉射撃で撃ち落とす。
「Δ6、合流しました!」
「よし、新統合軍も来た!
ここから押し返すぞ!」
向こうに見えるのは新統合軍の機体数機。
敵が未だ
そんな反撃ムードを遮るかのように、歌が響いた。
背後にいるワルキューレへ視線を向けるが、違う。
これはもっと遠くから来た━━
「━━攻撃?! 新統合軍から!」
方向転換をしてこちらに放たれた銃撃を避けるが、全員動揺を隠せない。
「チャック、確認を!」
「
......なんてこった、
「嘘だろ!?」
隊長の指示でレドームを展開したチャックさんから告げられたのは衝撃の事実。
ヴァールというのは本来、自然発生するもの。
ここまで集中して発症する事など前例がない、それに加えて隊列を組んで襲ってくるなど前代未聞だ。
葛藤するような唸り声を出し、意を決した様に指示がアラド隊長から飛ぶ。
「......攻撃開始!
市民とワルキューレを守るぞ!」
「「了解!」」
突っ込んで来たVF-171の翼へバリアを纏った拳を食らわせる。
片翼を失い湖へ落ちていった2機を見送り、メッサーさんと未だ襲いくるVFに向き直る。
「攻撃!?」
「相手は味方じゃん?!」
「正気を失っているだけかも......!」
「それがどうした、ヴァールであるなら今は敵!
今は命をかけて守ることが俺たちの任務、それは彼らも同じだ!
それは新統合軍のパイロットも同じ、彼らも覚悟は出来ている筈だ!」
メッサーさんの言葉が空に轟く。
俺たちは『市民とワルキューレ
ミラージュさんの背後を取るアンノウンをメッサーさんと連携を取りながら引き剥がし、そのままヴァールへと向かう。
『くっ......!』
「ミラ......Δ4!
照準が定まらないならあの機体を誘導して!」
『何を?!』
「無力化する......!」
動きがあまりにも不規則。
翼を狙うことが難しいならと、2機で挟み撃ちの姿勢を取る。
弧を描き遠回りをしながら、ターゲットの正面に位置取ってレバーを前に倒した。
このまま体当たりすれば無事では済まない。
勝負は一瞬、覚悟を決めてナイトメアを見据えた。
「1、2、3!」
激突する寸前にバトロイドへ変形し、宙返りで回避しながら掌をナイトメアの背面に触れさせた。
モニターには『ウイルス入力完了』の文字。
パネルを操作し、対象の全機能を停止させた。
落ちて行くナイトメアを尻目にホッとしながら、迫るアンノウンにミニガンポッドによる銃撃を見舞う。
『助かりました、Δ6。』
「ミラージュさん、撃つなら撃つ、撃たないなら撃たないだ。
どっちかにしなければ守るものも守れない、その手は自分が思うより短いんだから。」
『......わかっています。
それでも私は、ヴァールだとしても味方を殺すことはできません。』
「じゃあ頑張りましょう! お互いに!」
ハヤテの下へ向かったミラージュさんを見送り、2機がかりでアラド隊長を詰めるアンノウンに大型ガンポッドを放った。
回避されたが当てるのが目的では無く2機の分断が目的。
片方をアラド隊長に任せ、自身は小型機を未だ傍に付けているアンノウンを追う。
背後を取り、取られの目まぐるしい攻防。
小型機を盾にしての死角から繰り出される攻撃をすんでのところで回避し、二段構えで向かわせてきていたもう一方の小型機に手のひらで触れ、操ってけしかける。
苦し紛れに放たれ追ってくるミサイルをコンテナに入っていたドローンと小型機を身代わりに起爆させ、相手がガウォークに変形した隙へ煙の中からナイフによる一閃を放った。
アンノウンの右腕が宙に舞うと同時に一瞬、ほんの一瞬動きを止める。
困惑、焦燥、驚き。
数多の感情が渦巻く間に返しの一太刀を入れれば落とせていただろうが、一瞬の思考停止の隙に反撃を受けて逃走を許す。
「......嘘だろ、また始めるっていうのか。」
一箇所に集まって行くアンノウンを見送り、棒立ちでそれを見上げる。
震える右手をもう片方で抑えながら、キャノピーに反射した赤い目を見る。
その眼には7年前の、故郷を燃やすVF。
ウィンダミア王家の紋章を携えた破壊者たちが映る。
SV-262 ドラケンIIIがヴォルドールの空に紋章を掲げた。
滞留するスモークをスクリーンに青空へ映されたのは、ウィンダミア王国宰相、ロイド・ブレーム。
『ブリージンガル球状星団、並びに全銀河に告げる。
私はウィンダミア王国宰相、ロイド・ブレーム。』
「ウィンダミアって、フレイアとレインの......」
『すべてのプロトカルチャーの子らよ。
我がウィンダミア王国は大いなる風とハインツ・ネーリッヒ・ウィンダミア王の下、新統合政府に宣戦を布告する!』
拳を叩きつけた。
もっともな理由を付けてはいるが、結局していることは何も知らずに怯えている市民を武力で黙らせているだけ。
それを新統合政府による不平等条約とか、けったいな理由で暴力を正当化しようとするなんて信じられない。
『我らは7年前、この不平等条約という横暴に対して立ち上がり、ついに母なる空を奪い返す事に成功した。
だが、このブリージンガル球状星団に彼らがいる限り真の平和は訪れない!
立ち上がれ! そして自由な翼で飛び立つのだ!』
アイテールへ帰還し、機体から降りてすぐに上を脱いだ。
シャツ一枚の上体を風で冷ますが、今は心も頭も沸騰している。
「あ......マキナさん。
お疲れ様です。」
「クロクロもおつかれ。」
「ジークフリードの特殊兵装、すごい便利でした。
もしレイナさんに会ったらありがとう、と伝えておいてください。
それじゃあ。」
「あっ......クロクロ......」
震える声。
赤くなりっぱなしの目。
今は人と離したくはない、どこかでこの苛立ちが漏れて、嫌な気分にさせるかもしれないから。
ロッカーでΔ小隊のジャケットを羽織り、鏡に語りかけた。
「......お前は、なんだ。
ゼルヘス人か、思いを受け継いだだけのただの人か。
俺はΔ小隊のパイロット。
......なら、冷静であれ。
昂る思いは空でぶつけろ。」
苛立ちを鎮め、ミーティングへ向かう。
こんなところで怒りを爆発させたところで、何にもならない。
もっとずっとふさわしい所で、これはその為に受け継いだ思いなのだから。