ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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潜入 エネミーライン

 

 「潜入、割と容易でしたね。」

 

 「これもレイレイのおかげだね!」

 

 「イェイ。」

 

 4機のジークフリードを木陰へ隠し、その上から迷彩シートを被せる。

 今回、ワルキューレとΔ小隊の4人が来たのは惑星ヴォルドール。

 すでにウィンダミアに占領されている惑星だが、防御網をレイナがお得意のハッキングで破り、潜入している。

 

 ここは以前ライブに来たところとは反対の地域であり、振り返れば首都にそびえるタワーのような物が見えた。

 全員がそれぞれヴォルドール人の姿に身を包んで潜入する手筈になっており、変装したワルキューレの姿は資料で見たヴォルドール人と見紛うほど。

 

 これほどの技術に感心するが、これが7年前にあったならと思わずには居られない。

 過去のことに気を取られていては進めないと、わかっているのだが。

 

 「俺、猫アレルギーなんだけど......」

 

 「付け耳にアレルギー反応でないでしょ?

 さっさとつけてさっさと行こう。」

 

 猫アレルギー、と言うか猫に忌避感を持ち、いつまでもつけ耳を被らないハヤテからそれを取り上げ、叩きつけるようにして思い切り被せる。

 『いってえ!』と聞こえたが、それが嫌だったらさっさとつけろと。

 

 そんなわけで、美雲さんミラージュさんハヤテフレイアと一緒に行動することになったが。

 

 「美雲さんは!?」

 

 「くもくもならとっくに行っちゃったよ?」

 

 「単独行動クイーン。」

 

 ()()何処か行ったとはミラージュさんの談。

 とは言え彼女を待っている暇はない、4人で北側から首都へ潜入する事にした。

 

 

 無事、首都へ着けば、そこは昼のラグナと変わらぬ賑わい。

 占領されているとは思えないほど活気ある街並みに、何か肩透かしを食らった気分だ。

 それに見渡す限り見える猫のような耳。

 猫型哺乳類からプロトカルチャーが作り出した、とは本当らしい。

 

 おー、と口から言葉を漏らすと、横からノーモーションで爆音のくしゃみが飛んできた。

 

 「はあっくしゅ!!」

 

 「ピッ」

 

 ジークフリードのパネルを操作した時のような声を上げ、思わず飛び退いた。

 花を擦るハヤテに対して、体制を立て直し軽く頭を叩いた。

 

 「痛てぇ! しょうがねえだろ!?」

 

 「しょうがなくても驚くだろ!」

 

 その後、大量のおばちゃん達に絡まれたり。

 フレイアがウィンダミア産のリンゴに突撃したり。

 

 「━━はあ、もう少し緊張感を持ってもらわないと......」

 

 「ま、まあバレてないし良いじゃないですか。」

 

 「カチカチでバレるよりかはマシだろ?

 それに情報も掴めたし、このリンゴはウィンダミア産であるってな。」

 

 「そんな情報がなんの役に?」

 

 先頭を歩くフレイアを追いながら、次なる情報のために動く。

 今のところウィンダミアの防御網が厚く張られていた理由は見当たらない。

 あれだけの警備、要人警護などと考えるのが自然ではあるが。

 

 すると、鼻歌を歌いながら歩いていたフレイアの足が止まった。

 深刻な表情で走り出した彼女を追い、高台のテラスへたどり着く。

 そこから見えたのは、両手を組みすがるように歌う少女と、警備のナイトメアプラスを心配そうに見つめる少年だった。

 

 彼女達が歌を届けるナイトメアプラスのエンブレムを見て、ミラージュさんがタブレットを取り出しスワイプする。

 

 「あった、アルベルト・ララサーバル大尉。

 新統合軍ヴォルドール航空団のエースパイロットです。」

 

 「父さんっ!」

 

 タブレットの方に視線を移していると、少年が叫んだ。

 その悲痛な叫びは父親に届いているのか、鋼鉄の機体がその確認すらさせてくれない。

 

 「父親......」

 

 「この歌...... ワルキューレの歌なら、悪い病気は治るんでしょ?!

 返事してよ父さんっ!」

 

 それでも父親は答えず、その足元へトラックが止まり記号で彼を呼んだ。

 

 「286号、風が止んだ。

 交代だ。」

 

 『了解。』

 

 子からの叫びに応えず、誰かも知らぬ異星人からの記号に応え、その場を去っていく。

 兄妹の叫びが、木々生い茂る街の一角にこだました。

 

 「エースパイロットを道具扱い......」

 

 「エースパイロット、だからじゃ無い。

 彼らも人間で、家族がいるのに......

 星団の開放を謳っておきながらやってるのがこんなのって、酷すぎる......!」

 

 「━━やっぱり、嘘だったんだよ。

 歌で病気が治るなんて......!」

 

 「違う、ワルキューレの歌は......」

 

 思わず飛び出していったフレイアを追い、階段を降りる。

 今動くのはまずい、バレる危険性が高すぎる。

 腕を掴み止めようとしたところに、フードを被った女が現れフレイアの口を塞いだ。

 

 そのまま彼女を岩陰に連れ込み、壁に押し付ける。

 

 「動くな!」

 

 ミラージュさんが銃を構え、空気が張り詰めた。

 

 だがその女はフレイアを離し、こちらを向いてフードを外す。

 見知った顔がそこにあった。

 

 「遊んでる暇、無いんじゃ無い?」

 

 「美雲さん!?

 今までどこに......」

 

 再三の単独行動に痺れを切らし、銃を下げたミラージュさんが鬼の剣幕で追求しようとする。

 が、その前身を美雲さんの突き出された手が止めた。

 その掌には、お世辞にも綺麗とは言い難い虫が止まっている。

 

 「変な虫だな。」

 

 「ツノゼミ型マイクロドローンよ。

 センサーカメラ付きのね。」

 

 

 場所を変え、木の下で美雲さんの集めた情報を共有する。

 曰く極秘の政府間協定があるとの事。

 

 「じゃあ、ウィンダミアからも要人が来る?」

 

 「ええ、少しくらい役に立つ情報が手に入るんじゃない?」

 

 そう言って彼女の手から展開された数個のモニターは、潜入したドローンの数を表す。

 ワルキューレのエースは伊達で無いと再認識させられた。

 

 感心していると、モニターに動きがあった。

 現れたのはロイド・ブレーム。

 彼が来ていると言う事は空中騎士団も一緒だろう。

 固唾を飲んで協定を見守る。

 

 出てきた情報は次元兵器の可能性、遺跡を求めてウィンダミアは来た、という事。

 タイミングよくカナメさんからの通信が届き、例の遺跡、『パラガナール遺跡』の写真が写る。

 

 『どうやらプロトカルチャーが残した物のようね。

 ヴォルドール人が聖地として崇めている場所よ、そこを封鎖して、ウィンダミアが何かの施設を建てたらしいわ。』

 

 「ウィンダミアはそこで次元兵器を?」

 

 『可能性がないわけじゃ無いわ。』

 

 「了解、そこで合流しましょう。」

 

 

 

 通信を終えて数分、通りがかったタクシーに揺られて遺跡の近くへと向かう。

 向かう道の中、フレイアが神妙な面持ちでミラージュさんに問うた。

 

 「さっき言ってた次元兵器って、なんね?」

 

 「時空間を歪ませて破壊する、絶大な威力を持つ大量破壊兵器......

 銀河条約によって使用は禁止されているけど、7年前の独立戦争でウィンダミアが使ったと言われているわ。」

 

 「7年前......」

 

 「記憶にあるよ。

 あれは......遠くで見てても、酷かった。

 結局どっちが使ったかなんて関係無い、あれに巻き込まれてカーライルの人達も新統合軍の人も死んだのが、1番の問題だ。

 どっちがやったか分からないからウィンダミアの人は永遠に地球人を恨み、地球人はウィンダミアを恐れる。」

 

 ウィンダミアに来て3日目のことだったから、深く覚えている。

 その後俺に起こったことも含めて、全て。

 次元兵器を巡る困惑の中、トラック型のタクシーは表情を変えず遺跡へと歩みを進めていた。

 

 

 

 

 

 

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