ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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相対 ダウト

 

 「━━どうです、何かありましたか?」

 

 「いや、カナメさんが伝えた情報だけだ、

 それ以外に目ぼしい話はない。」

 

 プロトカルチャーの遺跡を前に、潜入中のメンバーが勢揃い。

 各々変装のメイクを落とし、ようやっと見慣れた顔を確認できて安心する。

 

 遺跡に作られた施設を見れば、やり過ぎレベルで多い警備とドローン。

 その物々しい雰囲気が、ロイド・ブレームの語った『学術調査』などで来たわけではない事を示した。

 2人身を乗り出してハッキングをするマキナさん、レイナを待つ間、ふと気になった事をメッサーさんに聞いてみる。

 

 「......考えてみれば、メッサーさんってカナメさんにだけ『さん』をつけて接しますよね。

 何か特別な意味とかあるんですか?」

 

 「年上なだけだ、特別な意味は無い。」

 

 とは、言うが。

 これまで彼がカナメさんと接する姿を幾度となく見てるとやはり何か、応対が違うと思う。

 

 気持ち顔が綻んでいるように見えるし、リスタニアでの戦闘の一つ前では狙われたカナメさんをその大きな背中で守っていた。

 

 何も無くとも何かあると勘繰ってしまうのは仕方ないような、そんな気がする。

 でも結局は彼の心次第な訳で。

 そう断言されては言う言葉もない。

 

 すると、背後からカナメさんが現れる。

 

 「2人ともどうしたの?

 何か気になる事でもあった?」

 

 「いや、メッサーさんがカナメさんに━━」

 

 「潜入後の行動を確認していました。

 迅速な情報収集が求められますから。」

 

 正直に言おうとした言葉を遮られた事で、疑念が再度燃え上がる。

 そんなに嫌なのだろうか、彼女にその類の勘ぐりを向けられるのが。

 帰ってから考えようと心の隅にそれを置き、マキナさんとレイナの手で切り開かれた隔壁の穴を通り中枢部の地底湖へ辿り着く。

 

 そこは数多のタンクが並んでおり、特別な何かがあるようには到底見えない。

 急造されたコンテナの中身を確認すれば、見知ったパッケージの2リットル水。

 

 あまりに大掛かりなそれらを調べるが、ヴァールの発生を促すセイズノールという成分も、特殊な毒も入っている様子はない。

 だがこの水をヴァール発症者の半数が飲んでいると言う統計を聞けば、ただの水ではないと言う確信も強まる。

 

 「あーったあった! 

 美味しそうなのがこーんなに!」

 

 そこにフレイアがウィンダミアアップルを持ってくるものだから、困惑が強まる。

 ただの倉庫なのか、それだとしたら外の厚すぎる警備は?

 疑問が疑問を呼び、刻一刻と時間が過ぎる。

 

 「━━見つかったか?!」

 

 警報が鳴り響く。

 警備システムはレイナが握っているのにバレたということは、おそらくウィンダミアの人間がルンで風を感じ取ったと言う事だろう。

 つくづくあの器官は便利なものだ。

 

 「━━レイン、この組み合わせどう思う。」

 

 「リンゴと水......

 同じ場所にあって、関係無いわけない気もする。

 ウィンダミアが管理してることも併せて、組み合わせで見る価値はあるかもしれない。」

 

 サンプルを回収していると、唐突にハヤテが疑問を投げかけてきた。

 彼の中で何かひらめきがあったのか、レイナを呼び出し

リンゴを水の中に入れ、ふり混ぜた。

 

 「高濃度のセイズノールを検出?!」

 

 「......やってくれるわね。」

 

 カナメさんが言うには、こうだ。

 遺跡の水とウィンダミアアップルを食べると、体内にセイズノールが蓄積する。

 そのセイズノールにより人為的にヴァール化を促進し、風の歌でマインドコントロールしていた。

 どちらも多くの惑星で流通しているため、知らなければ防ぎようがない。

 

 「......そんなの無差別テロと変わらないじゃないか。」

 

 

 

 ウィンダミアの行っていた事を知り、それを持ち帰るために通路を走る。

 いつ警備システムが奪還され、隔壁が降ろされるか分からない以上、走る事を止めるのは死を意味する事である。

 

 「━━♪」

 

 「......美雲さん?」

 

 「フレイア、止まらないで!」

 

 響いてきた歌に足を止めたフレイアを抱え、隔壁を越えようとするが後一歩が届かない。

 ハヤテらと共に4人、閉じ込められ袋の鼠と化す。

 

 「メッサーさん、今は先へ!」

 

 「了解した、そちらは任せたぞ准尉、少尉!」

 

 離れていく足音、近づいてくる足音に警戒を強めていると、鉄の擦れる音と共にハヤテが「こっちだ!」と呼びかけた。

 ダクトカバーの外れた先からは絶えず風が吹いている。

 

 「いっ...て!」

 

 地面との衝突に苦い顔を作りながら、天井に鍾乳石の見える開けた地形を走り抜けようとすると、強い光量で照らされる。

 眩しい光の元へ視線を移せば、仰々しい服に身を包んだ数人の姿と、見たことのある顔の中年男性。

 

 「罠にかかったのは3匹か。

 統合政府の犬どもと、裏切り者のウィンダミア人......!」

 

 「そのバカみたいな服は、空中騎士団......!」

 

 赤毛の男の瞳は、その小さな水晶体には大き過ぎるほどの憎しみが詰まっている。

 絶望的な状況の中、俺たちは初めて殺し合っている敵と相対した。

 

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