ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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鮮烈 レゾナンス

 

 爆発音に歌。

 新統合軍にウィンダミア、加えてΔ小隊と、戦場はいつものように混沌を極めている。

 

 「そこ!」

 

 兎にも角にも敵戦力を減らさなければ脱出は見えてこない。

 手始めに2機に触れ、脱出機能以外を停止させる。

 翼を撃たずとも無力化できるアドバンテージがある以上こうして手で触れてやっている、が。

 

 「......震えるな......!」

 

 やはり手の怪我が響いている。

 メッサーさんとカナメさんの手前、強がりこそしたが......

 体は正直だ、指先が震える以上これまでのようにギリギリを攻めて機能を落とす事が異常なほど難しく感じる。

 

 無茶をして激突、墜落してしまえば本末転倒。

 機銃での翼を撃つ方へ切り替え、ペダルを踏み込んだ。

 

 「テオ、気味の悪い風を止ませるぞ!」

 

 「ああ!」

 

 新たに1機無力化すると、一瞬の油断をつくように2機のドラケンが一心同体のコンビネーションで襲いくる。

 これに関しては、リル・ドラケンを装備して無いのが唯一の救いだ。

 上下左右から降り掛かる多次元的な攻撃を遺跡近くの障害物でやり過ごしながら、相手が『獲った』と確信する瞬間を待つ。

 

 前後で挟まれ、無数の銃弾が分厚い壁のように迫り来る。

 まだここでは無い。

 足だけをガウォークのように変形させ、L字を描くように直角に空へと飛び上がり回避する。

 

 乱入してきたナイトメアプラスをバトロイドに変形して蹴り飛ばし、四肢を切断した。 

 片や斜め上から、片や正面からビームガンポッドを展開し、それを放つ。

 

 「「獲った!」」

 

 「あんまり俺を舐めるなよ、ユッシラ兄弟!!」

 

 今、今この瞬間。

 斜め上から飛んできたビームをピンポイントバリアで受け止め、その衝撃を利用して跳ね飛ぶ。

 地に足をつけて悠々と狙いを定めるガウォークのドラケンへ急接近し、焦り放った一撃を身を屈めて避け、ミニガンポッドへピンポイントバリアを纏わせてガラ空きの足へと突き刺した。

 

 エンジンが爆発し、崩れた体勢へさらなる追撃、もう片方の足をアサルトナイフで切り落とした。

 

 「くっ、貴様!」

 

 「ぬるい!」

 

 空中から掃射された機銃を難無く避け、ファイターへ変形しその横を通り抜ける。

 ファイター形態によって乗ったスピードを、展開した腕に持つナイフに乗せて切り付けた。

 最後に見えたのは右半身の腕、足、翼が落ちていく姿。

 振り返らず、そのドッグファイトは終わりを告げる。

 

 「おのれ、裏切り者の連れ込んだ異星人如きが......!」

 

 

 

 ワルキューレの歌を背景に意識を研ぎ澄ませながら、ヴァール発症者を無力化する。

 光の筋が空へ舞い上がったと上を向けば、そこでは白騎士とメッサーさんが鎬を削っていた。

 だが、メッサーさんの動きが悪い。

 旋回やマニューバにキレがなく、まるで撃ってくださいと言うようなもの。

 

 あの腕の怪我でここまで精彩を欠く人ではない、居ても立っても居られず援護に向かう。

 

 「どうした、死神......!」

 

 「ぐゔっ、はあっ、はあっ......!」

 

 「メッサーさん!」

 

 後ろを取られ苦しそうに飛ぶ彼の元へ、全速力で追いつく。

 手始めに残っていたアサルトナイフを放り投げ、白騎士の動きを遅らせた。

 

 「無粋なことを......」

 

 「ハァッ......准尉......?」

 

 「メッサーさん、その顔もしかして......」

 

 通信画面に現れたメッサーさんの顔、そこに浮き上がった血管と血走る瞳に動揺を覚えながら、こちらへターゲットを変えた白騎士と相対する。

 果たし合いを邪魔された、とでも思っているのだろう。

 

 単純な技量だけなら劣らない自信がある、正面切っての撃ち合いに冷や汗をかきながらも、シザース機動で力をぶつけ合った。

 

 機銃をローリングなどの細かな動きで避けながら、コンテナに搭載されたガンポッドの一撃を狙う。

 しかしそこは白騎士と称されるウィンダミアのエース、鮮烈な機動を描き容易く避けて、お返しと言わんばかりの一撃が繰り出された。

 

 だが、俺にもプライドがある。

 (ルート)機動を描き、俺は地を背負い、白騎士は空を背負って機銃の弾がぶつかり合った。

 

 「青騎士の息子、なかなかやる......!」

 

 「ぐっ......

 あっ、しまった!」

  

 生まれた黒煙の隙間を縫い、白騎士がΔ2へと接近する。

 脇を抜かれた衝撃に反応が遅れ、フォローが間に合わない。

 トリガーが引かれる、そう思ったその時。

 

 「ああっ!」

 

 「くっ、うう......!」

 

 「ぬうっ! 

 ━━風が乱れた!?」

 

 唐突に頭の中へ流れたノイズ。

 それにより生まれた隙をつき、撃たせまいと白騎士の上から機銃を放つ。

 回避機動を取りながら逃げる彼を白騎士は追うが、トドメには至らない。

  

 離れていく彼らを見送り、無力感に唇を噛み締めた。

 だが、ここで止まっているわけにはいかない。

 ヴァール発症者の元へ向かおうとした時、地上から歌が聞こえた。

 向けば、見覚えのあるエンブレムを付けたナイトメアプラスを歌で治している。

 

 「ララサーバル大尉......」

 

 慈しむような表情で歌を届けるフレイアのルンは、まるで太陽のように輝いていて。

 まるで戦場の風を一変させてしまうような歌は、深く優しく、心の奥へ届く。

 

 だがそれを邪魔するものはどこにだっているもの。

 荒々しい風を纏ったドラケン、ボーグ・コンファールトがエンジンをふかしてフレイアへ迫る。

 

 「穢れた歌を、歌うなぁー!!」

 

 「邪魔は、させない!!」

 

 放たれたビームをハヤテが受け止め、ドッグファイトへ移行した。

 まるでフレイアの歌とシンクロするように、虹の光を放ちながらその距離を縮めていく。

 

 その2人の空を邪魔しようとする影が見えた。

 纏う風を見る限り、ガンポッドを構えるドラケンに乗っているのはカシム・エーベルハルトだろう。

 

 考えるよりも先に飛び、コンテナから1機だけ射出したドローンを掴んでブーメランのように投げつけた。

 弧を描き、鋭利な鋼のブーメランはガンポッドを両断した。

 

 爆発にたじろぎ離脱しようとする敵機の腕を撃ち抜き、脅すように追いかける。

 

 「友達の邪魔をさせると思うか、カシム・エーベルハルト!」

 

 「この風...... 俺の上を行くか!」

 

 翼にガンポッドの一撃を掠らせ、逃げる機体を見送った。

 後ろに視線をやれば、まるで踊るように雄叫びを上げ空を舞うハヤテの姿があった。

 

 Δ小隊の機体達と合流し、ワルキューレを回収して帰還する。

 

 「ナイスだよ、ハヤテ!」

 

 「ああ!

 すっげー気持ちよく飛べたぜ、フレイアのおかげだ!」

 

 「━━よし、よくやったヒヨッコども!

 帰ったらクラゲラーメン、俺の奢りだ!

 ズラかるぞ!」

 

 

 ウィンダミアの支配領域へ潜入、情報を得た上で敵機を3機撃墜し、1人の欠員も無くワルキューレ、Δ小隊は帰還。

 

 これは新しくなったΔ小隊初めての、勝ち戦であった。

 

 

 

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