ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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ヤミ、本当は

 

 「はあ......」

 

 ため息をつくのもこれで何回目だろうか?

 それを吐くと幸せが逃げる、なんて言葉があるが、それだったら俺はもう来世まで幸せになれないな。

 正直、クリームヒルトが壊されたと聞いた時は心底驚いたし、『何してくれてんの!?』とも言いそうになったがどうやら闇マキナに悪気はなかったようで、「もっと良くしようと思ったら、セイレーンシステムで動かせなくなっちゃった......」と、わかりやすく凹んでいた。

 

 ......まあ、自分のやった事から逃避しなくなったことはいいことだと思う。

 それはそれとして、ある種脱出における希望であったVFが壊されたというのは、かなり()()ものがある。

 どうやってウィンダミアから離れ、Δ小隊へ合流しようか?

 考えども答えは見つからない。

 

 それに、クリームヒルトの中に入っていたOSとはずっと一緒に飛んできた仲だ。

 俺のジークフリードが壊れてミラージュのVF-31Cに積まれた時も、機体性能を限界まで引き出してくれた事には素直に感謝。

 ......OSとして死んでいたら、合掌くらいはしてやろう。

 

 少しの疲れをほぐすように目頭を押さえていると、牢の扉がカシャンと開いた。

 

 何者かとそちらを見ると、見慣れた髪色のバーチャロイド2人。

 

 「レイーン! また来たよー!」

 

 「......」

 

 3回目の闇フレイアと、姿形こそ変わってもその雰囲気は変わらない、空色の髪をした彼女。

 

 「ああ、闇フレと......久しぶり、闇雲。」

 

 星の歌い手の細胞から生まれた名無しのバーチャロイドから1つの()として生まれ変わった、闇雲が無表情のまますらりと立っている。

 これでYami_Q_rayとは全員会ったわけか、結構時間がかかったものだ。

 飛び込んできた闇フレを慣れた手つきで受け流しながら、闇雲をベッドに座るよう誘導する。

 互いに向かい合いながら座れば、やることは一つだろう。

 彼女もそれは分かっているようで、ベッド上にフィールドを描いた。

 

 「━━あれ、5×5(ごかけるご)でやるの?」

 

 「ええ。 普通にやるのはやりきったでしょう?」

 

 まあ、確かにそれはそう。

 マルバツゲームの5×5と言っても、対してルールは変わらない。

 3つのマルかバツを揃えればいいだけで、少しフィールドが広がっただけだ。

 これまで培った必勝法やそれを潰す方法は通用しない、気合いを入れてこの勝負に挑む。

 「がんばれー!」と俺の腰に後ろから抱きついて笑ってる、闇フレも交えながら。

 

 ......というか、さっきから闇雲が嫌われてるのかと思う要素が多い。

 注意しても闇フレイアはガン無視で笑っているし、闇マキには逃げられているし。

 なんかかわいそうだ。

 

 さて、試合も中盤である。

 しかし別に緊張感とかは無く、軽率に駄弁りながら手を進めているのは何回も一緒に遊んだからだろうか。

 銃を突きつけ合いながらも、笑い合えるような感覚で楽しめると言うのはいいものだ。

 

 「聞いたけどさ、闇マキナに逃げられたんだって?」

 

 「......そう、ね。 

 でも大概貴方が悪いのよ、()()()()()()私たちに個人という思考を学習させたのは貴方。

 それで統括者が迷惑をしているのだから。」

 

 なんだか耳が痛い。

 とは言え、別にマイナスではないと俺は思う。

 ただ命令されるままに歌うよりかは数段良いはずだ。

 

 しかし、管理に関しては全て1人でやっているとすると、それは途方もないほど大変だろう。

 割と闇レイナとかは協力してくれそうなものだが。

 

 「だって闇雲怖いもん。

 ずーっと無表情で思考も見せないようにしてるから何考えてるかわからないし!」

 

 ああぶっ込んできた。

 闇フレイアがわかりやすく頬を膨らませながら、何故闇雲のいうことを聞かないのか? それを足をバタつかせて言うと同時に、闇雲な顔が人殺しのような暗黒の顔へと変わる。

 闇フレの口を塞ぎ、一旦手を止めて闇雲のメンタルケアへ。

 

 「自分のせいなのにねー。」

 

 「こら、やめなさい。

 ......あー、えー... その、俺はクールで良いと思うよ。」

 

 どうにかこうにか言葉を紡ごうとするが、どう取り繕っても彼女の思考が分かりづらい事に変わりはなく、どう着弾点をずらそうと闇フレの一言は急所に突き刺さる。

 ああまずい、闇雲が震え出した。

 怒りが頂点に達するかと思われた、その時。

 

 「......う、ぐすっ...ううっ......」

 

 「「え?」」

 

 泣いた。

 泣いた?!!

 

 涙とは縁無さそうな真っ白い肌、表情、赤い瞳が、涙を流しては頬を紅潮させ、嗚咽を漏らさんとギリギリで我慢している口元はぐにゃりと歪んでしまっている。

 俺はともかくとして闇フレイアまでその光景に絶句してしまい、啜り泣く声だけしかない瞬間が数秒流れた。

 

 「わ、たしだってえ......好きでこんなことをやってるわけじゃないし、怒りたくもないの...

 でも闇カナメはサボるし、闇マキナは聞いてくれないし...... ずっと1人でやるしかなくて......」

 

 「ご、ごめんね? ほら、私も飽きない程度に協力するよ、これから!」

 

 闇フレイアがフォローに回ると言う、まさに異常事態。

 ......ワルキューレが始まった当初のカナメさんもこれくらい大変だったのだろうか。

 しかし彼女が親しみ難い雰囲気を出しているのは確かである。

 で、あれば。

 

 「こう、親しみやすい事をするとかどうかな?

 それこそこうやって俺とやるようにゲームをするとか、可愛い語尾をつけるとか!」

 

 「ごび?」

 

 「そう!」

 

 さて、こうなれば皆で考える時間。

 別に常日頃使うようなものでもなし、何処かで思い出したように使って笑いを取れるようなものであればよし。

 

 考えに考え、決まったものがこちら。

 

 「......『今日も元気に、歌う()()よ!』...」

 

 「...ああ...いいね......ンフフッ、凄く...いい。」

 

 「アハアハハハハハ!!!」

 

 ちょっと、いや面白い。

 闇フレイアも笑いを抑えきれないほどの破壊力、多分闇マキナも逃げる事なく説教を受けてくれる事だろう。

 

 「......!」

 

 「痛い、ちょっ、痛、いったい!」

 

 いやあ、赤面して肩をバシバシ叩いてくれるほど喜んでくれるとは、嬉しいな。

 グーはやめてね。

 

 「でも闇レイナは言いさえすれば絶対協力してくれるからさ、一回考えを言ってみるのも大事だと思うな!

 だからそろそろ叩くのをやめてください!」

 

 「......わかった...」

 

 「ア゛ッ!」

 

 最後に1発痛いのをもらったが、これでいくらか彼女の悩みも解決すると思う。

 闇フレも闇レイも、協力はしてくれるだろうし。

 

 まあ、結局マルバツゲームは流れてしまったが、これはこれでいいだろう。

 

 ......下手に勝敗がついて何かを要求されるよりかは、まだ。

 

 集中攻撃された左半身を気遣っていると、またもや牢の扉が開き、Yami_Q_ray残りの3人が一斉に入ってきた。

 どうやら闇マキナが謝りたいと闇雲を探していたらしく、回り回ってここに辿り着いたらしい。

 

 「......ごめんね、闇雲。」

 

 「まあこう言ってるからよ、許してやってくれるか?」

 

 「━━次からは気をつける()()よ。」

 

 「「「ヤミ?」」」

 

 

 それを聞いた反応は三者三様。

 レイナはいくらか親しみを持って闇雲に接し、マキナカナメは可愛くていい、と。

 成功は、したのかな。

 

 「じゃあ皆でトランプでもやるか?」

 

 「━━ごめんね、少し闇フレイアを借りてもいいかな。」

 

 「お? ......ああ、かまいやしないけど。」

 

 「ありがとう」と一言、手を振って4人を送り出し、腰にしがみついたままの闇フレを引き剥がして目の前に置く。

 

 ここからは彼女の本質についての、お話しである。

 

 

 「━━考えた。

 考えて触れて、思った。

 本当にYami_Q_ray(君たち)は、Yami_Q_rayの心はオリジナルではないのか。」

 

 

 

 

 

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