ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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ゼッタイ、あきらめない

 

 小隊各機がYami_Q_rayの歌に乗せられたSVに対処する中、ウィンダミアの地表、そのはるか上に巨大なフォールドゲートが開いた。

 その中にはメガロード級の戦艦、その一部が見え、光に照らされた艦橋にはこちらを見る2つの人影。

 片方はレディM、いや、レディ・メガロード01と言うべきか。

 今ここで彼女達がアストレアの主砲の下に塵と消えれば、銀河の秩序は崩壊する。

 

 『全機、フォールドジャミングを!』

 

 ミラージュの指示を受け、俺以外のΔ小隊とバード1が脚部コンテナより特殊なミサイルを発射する。

 それは少し前方へ進み、歌の全てを煙に隠す様に炸裂した。

 戦場から歌が消える。

 もちろんホログラムであったYami_Q_rayも、その姿を消した。

 

 これはレイナが寝る間も惜しんで作った、歌によるフォールド波を遮断するジャミング。

 これによりフォールドゲートは消え、一旦ピンチは去った。

 マクロスキャノン、主砲のチャージを始めたギガシオンの露払いをする様に、歌がなく動きの鈍ったSVへ猛攻をかける。

 

 『Δ5、後ろ!』

 

 『クソッ...! ━━レイン!』

 

 「ああ、出来る限りSV-303(あいつら)を引きつけて!

 ━━全部俺が落とす!」

 

 放った言葉は自惚じゃあない。

 確かな確信があって、全部落とすって言ったんだ。

 

 有り余るエネルギーを使ってレーザーを放つ。

 着弾してから奴らに生まれる隙は数秒あるかないかであり、モノによってはピンポイントバリアで防いでカウンター気味に撃ち返してくる。

 だが、それだけで怯むことはない。

 

 ファイター形態でありながらバリアを形成して苦し紛れのカウンターを防ぎ、反撃にその背中へ大型ナイフを滑り込ませた。

 機体上部と下部が分かれた303(ヴィヴァスヴァット)は宇宙へ光を灯し、ステルス性に長けた他の機体の位置を知らせてくれる。

 なれば、そこからは簡単だ。

 狙って撃てば風穴が空く。

 

 ガウォークのまましばらく経った、そろそろ背後から別の奴が咎めに来る頃だろう。

 しかし今の俺には死角がない。

 振り向かず、ただ一言意志をこめて叫んだ。

 

 「()()()!」

 

 黄金がキラリと輝き、コンテナユニットに接続されたガンポッドが1人でに後ろを向いて光を放つ。

 意表を突くその一撃は回避の間に合わなかった翼を焼き、傾いた機首へバリアを纏わせた腕部ミニガンポッドを突き刺す。

 加えてサマーソルトの形で蹴り上げ、動きのままにファイターへ変形して次の目標へと向かう。

 

 ライン、というのはラインの黄金の事だ。

 いちいちフルネームで言っていては指示も言いづらいだろう、文句もない様だしこのまま行く。

 ......親達が守ってきた物を『割と便利』というような感覚で使うのはどうかと思うが、ラインが俺を選んだのが悪い。

 

 勝手に放たれていたホーミングレーザーが着弾した事を脳内へ展開されたレーダーで察知し、狙撃する。

 次へ次へと宇宙を駆けていると、ついに司令部からチャージ完了の警告が届いた。

 すぐさま射線上から退避し、警戒を解かずにガンポッドの銃口をアストレアに向ける。

 

 『マクロスキャノン、撃て!!』

 

 マックス司令の叫ぶような指示が飛び、ギガシオンの主砲からマクロスキャノンが放たれた。

 一直線にアストレアへと向かう光の奔流は爆炎を放ち、ウィンダミアから見えるほどの閃光を空に弾けさせた。

 

 ジャミングは機能している、次元バリアは着弾の直前、見える範囲では張られていなかった。

 しかし、しかし。

 

 『━━目標、健在です!』

 

 決死の作戦を破り、歌が流れ始めた。

 感覚拡張の負担が頭痛として現れ、思わず左手で頭を抱える。

 そうだ、Yami_Q_rayは学習する。

 学習して対応策を数多の選択肢から選び、最善手を打ってくる。

 それが、今回は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という結果だっただけ。

 

 渾身のマクロスキャノンが防がれ、反撃を受けるという状況に追い討ちをかけるように、先ほどとはズレた位置にフォールドゲートが再度出現する。

 同時に、現れたメガロード01へアストレアの主砲が放たれればどうなるか。

 最悪の演算が、ラインによってもたらされる。

 

 「━━このまま撃たれれば、ウィンダミアは死ぬぞ!」

 

 『なんだと?!』

 

 『クソッ、キャノンの発射を止める方法はねえのかよ!』

 

 止める方法は1つ、敵艦内部のシステムを、Yami_Q_rayを壊すしかない。

 その為に必要なのは━━ ワルキューレの歌。

 歌の力でカイロスプラス、ジークフリードの出力を上げれば、まだチャンスはある。

 しかし苛烈な攻撃はそれを行動に移すことすら許さず、流れ星の様に輝く反応弾がギガシオンを襲った。

 

 どうにか直撃だけは避けるが、脳内のU(ユーザー)I(インターフェイス)に表示されたのは、敵艦主砲のチャージが75%まで進んだという絶望に近しい状況。

 このままでは......

 

 『メガロード01が!』

 

 『レディ・Mが......』

 

 「『ウィンダミアが!』」

 

 『━━銀河の秩序は、終わりを迎える......!!』

 

 諦めて、たまるか!

 

 スーパーパックに搭載された30基のミサイルを1つずつ発射し、SV-303が避けた所を全て打ち抜き、切り裂き、叫びの様な排熱を放ちながら抵抗を止めない。

 そんなのが通ってたまるか、プロトカルチャーの技術が欲しいからってウィンダミアを壊しても構わない、なんて。

 

 「━━そんな訳の分からない大義のために、友達をブチ殺されてたまるかァ!!!」

 

 『そうだ、ウィンダミアは絶対守る!!』

 

 ハヤテと連携し、ハエのように集るゴーストを撃ち落とす。

 俺たちはたとえその星の人でなくても、そこに大事な人が居るから、守るんだ。

 

 『優しい人たちも、リンゴ畑も絶対守って、いつか銀河中の戦いって戦いを全部無くしてやる!

 ━━そしたらフレイアは、ワルキューレのみんなと歌うんだ!!』

 

 「ハヤテ...!」

 

 『闘いを止めるためじゃない、普通の優しい歌を......

 その歌声で、俺たちデルタ小隊が大空を舞って!

 俺たちは生きるんだ! 一緒に歌って、一緒に飛んで、一緒に...生きるんだ!!』

 

 その言葉は、ハヤテの選択。

 彼は選んだんだ、みんなと、フレイアと生きるっていう道を。

 その選択を正解にする為に、守る為に!

 彼はこの宇宙を飛んでいる!

 

 誰一人として、()()()()()()!!

 

 「......あきらめない、あきらめ...ない、あきらめない...

 どこまで、も......」

 

 『はっ、フレイア?』

 

 『......オリジナル(フレイア)が?』

 

 戦場に響く轟音の中、掠れて今にも消えそうな声が頭に、何よりも鮮明に聞こえてくる。

 振り返れば、ワルキューレの集う甲板に杖をついたフレイアが現れたではないか。

 衰弱しきったその体は震える子鹿のようで、立っていられず膝をついた。

 

 「あたしは、歌う......

 あたしは()()()()()()なんだから!」

 

 彼女は震える声で、『生きたい』と言う。

 みんなと一緒に、生きたい(歌いたい)と。

 その言葉はYami_Q_rayにも届き、動揺と共に一瞬SVの動きが鈍った。

 

 『みんなと、一緒に、生きたい?』

 

 「あたしにとって生きるってことは、ワルキューレとして歌い続けるってことなんよ!

 ワルキューレとして、みんなと生き続けたい!

 全力で生きて、全力で歌って、全力で愛して!

 生きて、生き抜いて、絶対に生きたい! ()()!」

 

 ワルキューレサインが輝いた。

 ラインの黄金なんて目では無いほど、煌々と金色に輝くその姿は、ようやく全てのピースが揃った事を教えてくれる。

 

 そうだ、俺たちがあきらめないように!

 

 「銀河のために!」

 

 「誰かのために!」

 

 「今あたし達!」

 

 「瞬間、完全燃焼!」

 

 「命懸けで楽しんじゃえ!」

 

 「「「「「ゴー! ワルキューレ!!!!! 」」」」」

 

 

 ワルキューレは、あきらめない!

 

 







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