ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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絶対LIVE!!!!!!

 

 早まる鼓動、追いつけず離れていく赤と青の閃光。

 私はマックス艦長(おじいさま)の様に天才ではなく、何度言われても右後方の注意が甘くなったりと、エースの資格は無いのだろう。

 先に進んでいく2人の影に集るSVを見ながら、自身の力不足を━━

 

 「......見える。」

 

 いや、力不足などはどうでも良かった。

 私の飛び方はここにあったのだから!

 機体を止めて通信を開き、Δ小隊へ凛とした声で指示を出す。

 

 「デルタ6、5は急速降下。 

 デルタ3、7は距離を離してその後ろを!」

 

 『はぁ? そこに敵は......』

 

 「隊長命令! 良いから行くよ!!」

 

 デルタ3(チャック)の言う通り、指示を出した場所にゴーストは一機もいない。

 だがそれは()の話。

 未来となれば話は別。

 

 予想通り空を駆けていく2人のエースを追う様に現れたSV303が彼らの後ろにつき、意識の外である私たちの前へ。

 側から見れば棚から牡丹餅、しかし最初から狙いはこれだ!

 

 『奴らの背後を、取れた!』

 

 背後を取ってしまえばあとは定石通り。

 三機一斉に追加武装である腕部ガトリングを放ち、避ける暇なくSVを排する。

 

 『流石隊長!』

 

 『才能あるじゃん、ミラージュ!』

 

 『風を読むとは!』

 

 「━━これが私の、空...!」

 

 エースじゃなくて良い。

 私は隊長、皆を、仲間を導くのが私の空なのだから。

 

 

 

 「......才能、か。」

 

 「━━アルファ小隊はBポイントへ! 

 3時方向に警戒を強めろ!」

 

 孫娘(ミラージュ)の活躍に小さく微笑んだ。

 横では既に私の指示を待つ事なく、まるで艦長の様に戦況を把握するアラドの姿。

 ......新しい時代か。

 

 立ち上がり、制帽をアラドへ投げ渡して扉へ向かう。

 豆鉄砲を食らったような顔の彼へ、1つ言葉を残した。

 

 「この先には君の方がふさわしい。

 任せたぞ、アラド()()。」

 

 『......マックス。』

 

 エキセドルに呼び止められ、彼の方を一瞥する。

 

 『長年連れ添ってきましたが...... 今回の判断は、その中で最も優れた判断でしょう。』

 

 「フッ......」

 

 右手で飛行機の形を作り、『勿論だ』と無言で返す。

 ━━私は、生まれながらのパイロットなのだから。

 

 YF-29を緊急発進(スクランブル)させ、手始めにギガシオンの周りにうろついていた無人機(ゴースト)たちを叩き落とす。

 防衛線を押し上げながら、1人奮起するクレイルの元へと合流する。

 心底安心したような声で彼は大きく息を吐き、向こう側から来る無人機を撃ち抜いた。

 

 『はアァ〜...... 死ぬかと思いました。』

 

 「互いに死ぬわけにはいかないだろう。

 ━━ついて来れるな?」

 

 限界状態で少し口の悪い彼から、元気そうな了承が返ってくる。

 

 『ええ、勿論。

 Yami_Q_rayとやらへ学習させてやりましょう、天才と努力のマリアージュ。』

 

 「では行くぞ!」

 

 青の閃光がまた一つ、戦場に嵐を起こす。

 触れた物全てを打ち抜き、切り裂き、壊し抜ける。

 超高速の速さで前線へ到達し、腕を上げたインメルマンとそのスピード制御に天賦の才を見せるクロニアの元へ。

 2人を取り囲むように現れたゴーストを4機まとめてなで斬りにし、その背中を押した。

 

 「行け、インメルマン、クロニア!」

 

 『マックス司令、青騎士!』

 

 司令、というのはふさわしくない。

 それは青騎士も同様。

 

 「━━いや、今はただの......」

 

 『()()()!』

 「()()()!」

 

 『!!』

 

 Yami_Q_rayが一瞬揺れたのを見逃さず、敵の防衛網へぽっかりと大きな穴を作り出す。

 デルタ小隊と共に、歌と共に。

 彼らを送り出した。

 

 『......行け、レイン。

 風はお前達を押してくれているぞ。』

 

 

 

 

 「━━ハイパーマクロスキャノン、出力低下!」

 

 「セイレーンデルタシステムからのフィードバック、安定していません!」

 

 「ぬう...」

 

 「すぐに修正を。」

 

 ━━sdnn・hntk(シドニー・ハントか)

 osrkh、oro(おそらくは、おれを)sirensstm(セイレーンシステム)gtmtikutk(ごと持っていこうとか)kngetir(考えている)

 ......syujk、(しょうじき、)Yami_Q_ray(ヤミキューレ)ttmdunrut(たちもどうなろうと)orhdddmii(おれはどーでもいい)

 dmna。(でもなあ。)

 or......(俺 )

 

 「━━ごっ!?」

 

  ome、krinn(おまえ、嫌いなん)dyna(だよなぁ)

 

 「貴様......イプシロンを...裏切━━」

 

 5発、弾丸がシドニー・ハントの頭に命中。

 オイルを流して動かなくなる。

 

 urgithimi(裏切ってはいまい)

 mskssijtnr(も少し誠実なら)utnktndkd(撃たなかったんだけど)

 sntn、(その点、)krmur(クロムウェル)h()krijnktz(嫌いじゃなかったぜ)

 ant、sijtd(あんた、誠実だ)

 

 「ふん......」

 

 ━━srj、abykz(それじゃ、あばよクズ)dm(ども)

 hnbnznbn(半分ゾンビな)ordgn(俺だがな)knskiyktz(この世界よかったぜ)

 Yami_Q_ray(ヤミキューレ)n()onndmm(女どもも)sizi(せいぜい)fsawsnmln(不幸せになりな)

 

 dtijnorh(堕胎児の俺は)ymrinnno(闇レインの名を)ditbibid(抱いてバイバイだ)

 

 ymdmtrz(闇で待ってるぜ)━━

 

 

 「......総員退艦命令!

 ヘイムダルの革命は貴君らが明日へ繋げよ!!」

 

 

 

 

 歌という希望の鐘が鳴り響く中、ギガシオンへ1発ミサイルが直撃した。

 重力制御システムが損傷し、ワルキューレが無重力の中でフワリと浮かぶ。

 

 『フレイア!』

 

 「ハヤテ、前を見ろ!!

 この程度で歌えなくなるほど彼女達はやわじゃない!」

 

 前方から現れたゴースト達に囲まれ、ハヤテは腕部ガトリング、俺はスーパーパックのミサイルを全弾使い切った。

 しかし、まだパージはしない。

 引きつけて引きつけて、ミサイルが放たれた瞬間に囮として蹴り飛ばす。

 見事にデッドウェイトとなった武装と増加装甲をパージしていき、空に尾を引く黄金の風は途切れやしない。

 

 悪あがきのように射出された小型ゴーストも蹴り飛ばし、とある動きの真似で宇宙に踊る。

 そう、インメルマンダンス。

 俺たちはワルキューレのバックダンサーの様に、踊るようにして針の穴を通していく。

 

 『クッソ、弾切れに出力不足かよ!』

 

 『デルタ5、スーパーゴースト(   コレ   )と!』

 

 「━━俺のガンポッドを使え!

 これで終わらせるぞ!」

 

 『ありがとよ!

 ......いくぜぇぇぇえ!!!』

 

 ほぼ丸裸となったカイロスプラスに、スーパーゴーストとビームガンポッドが手渡される。

 それは友であり...... 始まりの場所で。

 アル・シャハルで出会ったミラージュと俺からの、ハヤテに対する贈り物。

 ゴーストはカイロスプラスとドッキングし、ついに俺のジークフリードの機動性に肉薄した。

 足並み揃えて、フルスピードで突貫するその姿は流星。

 

 「『うあァァァァ!!!』」

 

 バトロイドに変形し、放ったホーミングレーザーとミサイルで現れた次元バリアに突入を試みる。

 大きな波紋が薄緑の半透明なバリアに現れた。

 

 機体が壊れるほどの推力と、背中を押す仲間の風。

 

 「ハヤテ!!」

 

 『押せぇ!』

 

 『行け!!』

 

 『行って!』

 

 『進め。』

 

 『あと一歩!』

 

 『未来へ!』

 

 「うああ!!」

 『くうう...!!』

 

 歯を噛み締めて進もうとする中、歌が聞こえてきた。

 フレイアの声。

 

 ━━たった一度だけ、父さんが歌っていたのを聞いたことがある。

 ウィンダミアに伝わる伝説の歌。

 目を通して伝わるその歌は祈り。

 

 この戦場で生きる者たちの、たった一つの祈りを届けるように、ルンの花が咲いたのだ。

 

 その花は、闇フレイアのルンにも、隔てなく。

 

 「闇フレイア、やっぱり君は人になれる......!」

 

 歌に、この風に境界線はない。

 きっと俺の右目にも、花が咲いていることだろう。

 

 『優しい、夢を響かせて━━』

 

 俺は、俺は君が(闇フレイアが)━━

 

 『......レイン、私も一緒に生きていいのかな。

 一緒に、歩いて行っても。』

 

 

 「━━ああ!!

 一緒に、一緒に行こう! Yami_Q_rayのみんなも一緒に、誰かのコピーじゃないたった1人として!!!」

 

 『うん...... うん!!』

 

 「気合い入れて行くぞライン!

 開...けぇぇぇえ!!!!」

 

 バトロイドの指先にラインの黄金、その全エネルギーを込めて、カーテンでも開けるかのように次元バリアを引き裂いた。

 

 ハヤテと共に突入し、その艦橋へ2人同時にガンポッドの一撃を放つ。

 大穴の空いたその内部へ入り込めば、優しい表情で歌い続ける闇フレイアと、セイレーンシステムの中枢部であるポッドが2つ。

 手を伸ばすと同時にバトル・アストレアのハイパーマクロスキャノンが放たれた。

 

 『全艦、射て!!』

 

 それを阻止するように味方艦隊のマクロスキャノンが放たれ、バリアのないアストレアを容易く貫き、堕天使の船は爆炎と消えた。

 2人のパイロットが帰って来ないまま。

 

 「ハヤテ!!」

 

 『ハヤテ、レイン!!』

 

 メガロード01が呼び出されたフォールドゲートに最後の一撃が当たることはなく、ゲートは閉じ。

 SV303 ヴィヴァスヴァットは操り手を失い機能を停止。

 星団内のプロトカルチャーシステムはまたも姿を隠し、長いようで短かったこの闘いは幕を閉じる。

 

 皆が歯を食いしばって2人の身を案じる中。

 光が収まった黒煙を切り裂くように、半透明な黄色のバリアを展開したVFが、両手にポッドを抱えたVFを懸架して現れる。

 

 『ハヤテ、レイン...!』

 

 『お前ら、よく帰って...』

 

 『......風は一つに、か...』

 

 片方のポッドを受け取り、ハヤテの背を押した。

 フレイアが待っている。

 

 『フレイア......』

 

 「心から、愛してる━━」

 

 

 

 

 取り戻したウィンダミアの大地に、ギガシオンが浮かぶ。

 その甲板の上、置かれたぎゅうぎゅうこポッドから5人の7歳くらいの子供達を引っ張り出す。

 その体は、ワルキューレがライブの時に使っているバイオシルク製アンダースーツとフォールドプロジェクターを標準で搭載しているらしく、目の前で簡素な服に着替えて見せてくれた。

 

 「レイン!」

 

 「うん、うん。」

 

 抱きついて来た闇フレイアを胸のところまで持ち上げ、その温もり、鼓動に涙が滲んだ。

 彼女は生きている。

 

 ハヤテの方を見れば、フレイアが目を覚ましたようだ。

 Yami_Q_ray達と手を繋ぎ、彼女の元へと向かった。

 

 ハヤテの腕の中には彼女が、歌が守った命が動いており、その髪からは小さく可愛いハートのルンが見え隠れする。

 

 「あ......その子たち...」

 

 「抱えてるのが闇フレイアで、こっちが闇雲、こっちが闇レイナ。

 で、闇カナメと闇マキナ。

 ......ぶつかり合って互いを知り合った、俺の大切な人たちだ。」

 

 寝転がったフレイアの手にYami_Q_ray全員の手が重なり、「ありがとう」と一言礼を言った。

 あの祈りの歌があったからこそ、彼女たちはここにいる。

 多分......Yami_Q_rayも、彼女の歌が守った命だ。

 

 ハヤテがその腕にフレイアを抱え、その瞳にウィンダミアの街を抱く。

 静かな朝焼けの中、誰もがその後ろ姿を見つめる。

 

 「お前の歌、やっぱ良い感じだった。」

 

 「ひひ...... ハヤテのインメルマンダンスも、ゴリゴリやった。」

 

 「少しレインに真似されちまったけどな。」

 

 フレイアの衣装が白くなり、まるでウェディングドレスの様に風になびく。

 

 「歌......

 ルンの、ルンの花が咲いとる。

 ......キレイ... まるでリンゴの花が咲いとるみたい。」

 

 「ああ、すごくキレイだ。」

 

 

 「花は白い。」

 

 「リンゴは、赤い。」

 

 「ふふ... 青いと酸っぱい。」

 

 「ははっ、熟すと甘い。」

 

 「ゴリ甘、ゴリうま!」

 

 「ああ、ゴリ甘、ゴリうまだ!」

 

 

 「海猫はゴリかわいい。」

 

 「クラゲは光って空を飛ぶ。」

 

 「ひとりぼっちは、さみしい。」

 

 「みんなでいると......」

 

 「楽しい。」

 「あったかい。」

 

 「「フフフッ...」」

 

 

 「朝焼けの紫...」

 

 「鳥たちのさえずり。」

 

 「目覚めの匂い。」

 

 「雪の大地。」

 

 「...風が優しい。」

 

 「歌は楽しい。」

 

 「ハヤテ......」

 

 「ん?」

 

 「━━ハヤテが、好き。」

 

 「━━フレイアが好きだ。」

 

 

 「いひ、いひひひひ......

 あっ...」

 

 

 影が重なった。

 風が吹いた。

 

 「......愛...」

 

 「ああ、闇フレ。

 多分あれが、愛の一つなんだ。」

 

 ここにはひとつの輝きがあった。

 

 たった一度だけの、ルンに花咲く恋があった。

 

 

 揺れる、心ひとつ。

 命の風は何も言わず、吹き続けている。

 

 

 






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