「Don't tell me now、これが最後になっても 悔やみたくない━━」
さっきまで泣いていた子供が笑顔になる。
絶望が少し軽くなる。
人と通じ合って笑顔になる。
それが歌。
今私たちが歌っているもの。
もう大気圏は抜けたのだろうか?
揺れは収まり、静かになった。
歌が終わると同時に扉が開き、凛とした表情の女性が現れる。
学習したからこそ久しぶりでもすぐにわかった、彼女はカナメ・バッカニア。
2年前と違い髪型は長めのポニーテールになっており、さらに大人びた雰囲気を醸し出している。
「緊急事態のため、詳細な説明は後ほど行います。
今はこれからの簡潔な説明を。」
どうやら私たちは、これから1番近い惑星であるウィンダミアへと向かうらしい。
しかしゼルヘスの人たちは外の惑星の事など知りはしない。
数人かはハテナを浮かべ、子供たちは私や闇カナへ聞いてくる。
「ウィンダミアって?」
「雪の降る綺麗な星。
確か今は...リンゴの花が咲いてたと思う。
綺麗だよ。」
「一旦皆さんにはこの中で過ごしてもらいます。
......村長さんとYami_Q_rayは少しこっちに。」
カナメに呼ばれるがまま、ぞろぞろと収容区画を出る。
こちらを不安げに見る女の子に『大丈夫だよ』と小さく手を振りながら。
「━━ハヤテ、あの子は?」
「ん? ああ、クレイルさんとこに預けてある。
結構懐いてるからな、ぐずることもなかったよ。」
久しぶりに会った友と一緒にゼリーを吸い、取り止めのない話に花を咲かせる。
ハヤテもチャックも、余り変わっていなくて安心した。
ミラージュは髪を切ってショートヘアになっていたが、美人は何やっても美人だなと再認識させられる。
「しかし、あのマクロスはどうやって......」
「ええ、ゼルヘスへはウィンダミアを経由する航路しか発見されていないはず。
ウィンダミアを経由していないとなると...」
「直でフォールドしたとかか?」
「ありうる可能性ではあるなあ。」
まだまだ続きそうな話を切るように、会議室の扉が開いた。
そこにはどこか深刻な顔をしているサニーと村長さん、それとこちらに走ってくる闇フレを筆頭に、ケイオスの制服に着替えたYami_Q_rayたち。
もちろんワルキューレも一緒だ。
やはりこの2年、人は変わるものだ。
美雲さんはロングヘアが肩ぐらいまでのショートヘアになり、レイナはボーイッシュな風貌から大きく変わって女性的雰囲気が強く出るロングヘア。
マキナさんはツインテールからストレートへと髪型を変更している。
飛びかかってきた闇フレを受け止めながら、彼らの背後から現れる艦長へ敬礼する。
「久しぶりです、アラド
そう、艦長。
アラドさんは2年前に負った足の怪我により、前のようにVFを駆る事はできない。
しかしマックスさんにも褒められたその指揮能力を活かしてアイテールの艦長に任命されたんだそうだ。
黒い艦長用の制服が似合っている。
「久しぶりだなレイン。
......だが、再開を喜び合う暇はなさそうだ。」
そういって映し出されたのは、既に遠く離れた惑星ゼルヘス。
しかし、地表に映る異形はその星が俺たちの知るものではないと思わせるほどに、変わり果てていた。
思わず息を呑む。
エレファ・オレーフの蕾が花開き、禍々しい花弁を天に開いて大地を隠す。
近づく者をレーザーで撃ち抜いているらしく、映像は光と共に途切れた。
「......レディMからの指令と合わせて村長さんからの依頼だ。
『ゼルヘスに現れたアンノウンを退けてエレファ・オレーフを奪還する』、これが今回の任務、なんだがな。」
はぁ、と大きく艦長がため息をついた。
「実はアイテールがウィンダミアに向かう理由は、
どよめきが起きる。
何故? と言う感情が強い。
「受け入れ拒否、と言うよりかは、まるで私たちがケイオスの所属ではないと思い込んでいるような感じで断られたの。
だからハインツ陛下に協力してもらって、ウィンダミアに向かってる。」
......奇っ怪な話だ。
人間は鶏じゃあない、3歩歩けば忘れるなんて事ありはしない筈なのに、実際このアイテールはエリシオンから来るなと言われている。
ちょうどこのタイミングで、と考えると、アンノウンの仕業であることは間違いない。
あまりに情報が無いのだ。
物取り強盗が家に来た時はこう言う気持ちになるのだろう、何も関わりがない奴がいきなり来て襲ってくる。
嫌な気分になる。
「━━と言うわけでレインはデルタ6に復帰、Yami_Q_rayは戦術音楽ユニットとして協力してもらうことになるが、大丈夫か?」
「ええ。 私たちは問題ない。
...個人から注文があるでしょうけど、全部は聞かなくていいわ。」
「わしたちもゼルヘスの代表として協力させてもらおう。」
ひとまずミーティングは終わり。
格納庫との連絡橋に1人立ち、暗闇に光る数多の星を見る。
何故だろうか? ウィンダミアの時もラグナの時も必死になれたのに、今回ゼルヘスが襲われても必死になれない。
ずっと他人事のように思ってしまうんだ。
......多分、もう100から0を経験してしまっているんだ。
家族も仲間も全員焼けたあの日、俺にあった全てという100は消えた、0になった。
人は100本の針で刺されている時にたった1本の針で刺されて、もっと大きく泣き叫べるか?
無理だよ。
やっと始まった、始まりの10を失ったところで、100を失う時のように必死になれる人間じゃなかったと言うだけなんだ、俺は。
アンニュイな気分の元に、ふたつの影が現れた。
片方はガラスに背をつけて寄りかかる俺に対して寄りかかり、片方はコーヒー片手に星を見てる。
「どうした、ずっと暗いけど。」
「いや......どうにも、ね。」
寄りかかってきた闇フレの頬をいじくり回しながら、サニーに対して心情を吐露する。
誰に相談したところで決めるのは俺だ。
どうにかなる者ではないが......
ひとしきり話し終わり、彼はコーヒーを飲み干して外を見たまま言った。
「そうだな、じゃあ一回飛ぶのをやめたらどうだ?
ほら、俺が守るからさ。」
「......そう言うわけにもいかないんだよな。
な〜?」
「むに〜......」
飛ぶのを止めることはできない、今回またクリームヒルトに乗って確信した。
俺は空がなければ生きていけない男なのだ。
空にだけしかない風とスピードと思いと熱と......
あの全てがなければ俺はすぐさま老いてすぐさま死ぬ。
だんだんとウザくなってきたのか頬をいじる手を掴み、マフラーのように首に巻いた闇フレも飛ぶ理由の一つだ。
彼女を守るために空を飛んでる部分もある。
今回の襲撃なんかそうだし。
「俺は空を飛んでいたい。 そこに歌があればなおよし。
この権利は誰にも渡したくないし、俺が空を飛んでどうにかなることを他人に委託したくもない。
......俺、我儘だな。」
「昔からだろ?」
目を合わせず、笑い合った。
笑い終わった後に横目で見えたサニーの表情は、険しく眉間に皺が入っている。
まあ、話せてよかった。
少し揺らいでいた心を立て直し、闇フレを抱えて談話室へ歩き出す。
連絡橋の扉が閉まる寸前に見えたコーヒーの缶はベッコリとへこみ、彼は歯を食いしばっている。
何かあったのかと聞くような勇気、無神経さは流石に持ち合わせていない。
強迫観念じみた彼の『俺が守る』と言う言葉が暴走しないか、心配ではあるが。
「闇フレ、ダンスレッスン頑張ってね。
すっごい大変って話だから。」
「うん、頑張る!
私が歌えばレインも気持ちよく空を飛べるんだもんね。」
「闇フレはやさしいねえ。」
「俺よりあいつの方が強い。」
「俺の9年はなんだったんだ。
......クソッ!!」
「俺は、守られたいんじゃない。
守りたいんだよ......」
色々と疲れたので、ストック分を投稿して少し休みます。
これを投稿した後からは不定期更新になると思うので。
モチベーションが復活するようなことがあればまた戻ってきますので、それではまた。