「レイレイ、そっちの整備はどう?」
「少し厳しい。
あの
これじゃあ到着と同時に終わるかどうか......」
「━━貸してみな。」
苦戦するレイナからパソコンを奪い取り、闇レイナが手慣れた様子でキーボードを叩く。
いつもの粗暴な印象からは真逆の優しいタイピングに驚くものの、レイナは作業が終わり帰ってきたパソコンのソースコードを見て目を見開いた。
「コレ、あらゆる所経由の電子攻撃に対応できるようになってる......」
「蛇の道は蛇だ。
ヘイムダルにいた時にやってたから得意なだけ。
......全機やるんだろ、さっさとやるぞ。」
そう言って足速に次の機体へと向かう闇レイナの背中は、口の悪さでは隠せない優しさが滲み出している。
それをみて小さく微笑んだマキナの肩を誰かが叩き、振り向けば見た事のない真面目な顔の闇マキナがそこにいた。
「ココ、こうやった方が早いかも。
......あっ、いや私の主観だから、慣れた方でいいんだけど...」
「んー......
本当だ、こっちの方が速いし、ミスも少なそう。
闇マキありがとー!」
「えへへ...
私も手伝うよ、もう失わないように、歌以外でも出来ることをやらなきゃ......!
きゃわわなジクフリちゃん達、ちゃんと乗れるようにしなきゃね、なんて。」
「━━きゃわわー!」
「「━━♪」」
「少しいいかしら?」
アイテール内のスタジオから聞こえる歌を遮り、闇雲と闇カナメが入ってくる。
物怖じする事なく美雲に近づいていき、聞こえてきていた歌と同じものを歌い始めた。
しかしその歌はサビ前などの要所がさらに洗練されたもの。
十人に聞いたならば九人が後者を選ぶだろう。
「......どうかしら、貴女の声はこっちの方が歌いやすそうだけれど。」
「確かにそうね、でもここは皆で合わせる所、そう考えれば私の歌い方の方があっている。
......2番の方でこの歌い方をさせてもらおうかしら。」
「お眼鏡にかなったようで何よりよ。」
「いつの間に仲良くなったのかしら......」
「星の歌い手同士、わかり合うところが有ったのかも?
声が一緒だから切磋琢磨しやすいと言うところもあるかもしれないけど。
━━じゃあ私達も同じ声同士、切磋琢磨しましょっか!」
「ええ。
......でもお酒は全部終わった後ね。」
「そんなー......」
「そう言えば。
私達Yami_Q_rayは皆、
歌う理由は、コレでOK?」
「......ええ、充分。
女神と堕天使の歌、銀河に響かせましょう。」
「遅れました」と一言入れ、格納庫内のバルキリーに向かう。
レインから譲り受けたジークフリードは紫色に染められており、フォールドクォーツの大型化やコンテナユニットの変化などが見えた。
近場にいたマキナさんを呼び止め、概要を聞く。
「うん、コレはジクフリちゃんにカイロスちゃんのパーツを取り付けて補修したVF-31+ ジークフリードプラス!
このジクプラちゃんは流動金属の攻撃に耐性をつけてあるから、ある程度なら被弾もオッケー。
マルチパーパスコンテナは両方ともビーム兵器になってるから、どこで何が出るかは確認しておいてね!」
「はい、ありがとうございます。」
ふう、とため息を吐いてヘルメットを被り、バイザーを下ろした。
向こう側でジクプラを見上げているハヤテに対し親指を立て、それに対する返事を受け取った後にコクピットへ乗り込む。
果たして俺に務まるのか、この機体のパイロットが。
分からない、分からないが、それでもやって頑張るんだ。
宙域に着くと同時にカタパルトで射出され、ミラージュを先頭に散開する。
敵は5機と数だけ見れば多くはないが、実質的には10体のゴーストを相手取っているのと全く変わらない。
慢心無し、油断無し。
『デルタ2はそのデブリ周辺で待機!
ブルズ2は急速降下して、デルタ3は距離を取ってその背後に着く!』
『ウーラ・サー!』
「了解!」
今度は逆らう事なく、指揮官の言うことに従う。
すれば俺の後ろにまるで餌にかかった魚のようにゴーストが食いつき、ハヤテが風を感じさせる機動でその背中を貫いた。
まずは一機。
ここまでは容易く落とせるが、問題はここから。
「全員こっち向いたか!」
そう、奴らは危険度順に並べてその銃口を向けてくる。
前回はレイン、赤騎士の順であったが、今回はどうやらハヤテミラージュ俺チャックの順。
一対一、フォーメーションを変えて対応する。
しかし、枚数有利が取れないというのは対ゴーストにおいて致命的すぎる。
事実、皆がその人外的挙動に手こずり、背後のセイントを振り切れそうにない。
「くそっ」
苦し紛れに放ったスーパーパーツのミサイルも金属の棘で対処され、お返しと言わんばかりの銃撃が追加装甲を引き剥がした。
ワルキューレもYami_Q_rayも歌っている。
しかし、コレはあくまで機体の自力の差。
デルタ小隊も向こう側でチャックと連携攻撃を加えている赤騎士も、この溺れたような空の息苦しさからは脱出できそうにない。
戦っていたイオニデスの統合軍は全滅、このままだと俺たちもやられるだろう。
......そんなのは。
「死んで、たまるかよ!!」
力強くレバーを握り、人生史上最高のクオリティでターンが決まると同時に敵機の背後を取った。
このチャンスを逃すわけにはいかない、一気呵成、ミサイルも使って仕留めにかかる。
放ったミサイルは回避されて空を切るが、目的はセイントではなくその向こうにある大きめのデブリ2つ。
爆発と同時に石片が飛び散り、その中には大きめのものもちらほら。
ゴーストは不確定要素を避ける。
ならばそこには突っ込んでいかない筈だ、即ち軌道変更は右か左の二つに一つ。
「━━右!!!」
二分の一が、通った!
バトロイドに変形し、コンテナから展開したキャノン2門とガンポッドがセイントに3つの風穴を開け、見事なまでの爆発を見せた。
思わず『よし!』と口に出す。
━━しかし、それは罠。
視界不良の黒煙内からさらに3機のセイントが現れ、脇を抜けてワルキューレ、Yami_Q_rayへ一直線。
あり得ない、俺が落とした機体で残りは3機。
デルタ小隊が逃すはずが━━
「新手かよ......!」
周りを見回し気づいた。
確かにデルタ小隊は逃していない、しかし増援が来ないとも言っていない。
イレギュラーに対する対応なんて一手遅れるものだ、仕方がない。
しかし、今回はそのタイミングが悪すぎた。
アイテールの対空砲火を繊細にすり抜け、遂に
手を伸ばすがそれでも届かず、その引き金は無情にも引かれた。
爆炎が甲板を包み、歌が聞こえなくなる。
「━━♪」
黒煙が晴れた。
歌が聞こえた。
そこに立っていた人型の機械は目の前に両手を翳し、円形のバリアでワルキューレを守っている。
バキン、というまるで氷が割れたような音と共にソレの口が開き、『オォォ......!』と動物の鳴き声の様な異音を発しながらその身に太陽の光を反射させる。
黒色、灰色、機体各部に見えるのは交差した赤と青のライン。
胸部、翼部に取り付けられたフォールドウェーブシステムは黄金色に光り、禍々しさを中和している。
どこか妖精の様に、妖艶さと不思議さを感じさせる機体に、ゴーストも見とれている様だ。
『......メッサー中尉?』
『違うぜミラージュ!
アレは━━』
「レイン......」