「何故だ...... 何故!
おいスノウ! どうしてレイン・クロニアが飛んでいる?!
あり得ない、エレファ・オレーフの支配は......」
「......いや、別に破れないわけじゃない。
偽りの幸せを拒否したんじゃないかな?
ほんとー、愛っていうのは綺麗だねえ」
空に一筋の光。
夜空となって暗闇に包まれていたゼルヘスの大地を照らし、その光に感心する者、思惑通りに進まないことに憤慨する者。
2つの感情が螺旋を作り出していることなどつゆ知らず、愛を結んだ2人は空から地へと再び降り立つ。
ガバッとキャノピーが開かれたかと思えば、ホバリングするガウォークの機首から飛び降りようとする歌い手が、笑顔のままにもう1人に向けてサムズアップ。
剣を片手にアイテールの甲板へと着地する。
「闇フレイア、アイテールの上にある根っこは頼んだ!」
「うん! レインはみんなの機体に付いたやつを!」
━━あの幸せを見せているのは、あの時射出された木の木片。
あの木片を媒介とし、エレファ・オレーフが幻影を見せて意識を内に閉じ込める。
幸いにして、幻影を見せている最中は身動きが出来ない。
ならば簡単だと、ラインに指示を出して武装を展開、さらにスプライトの手に腕甲から取り出したナイフを持ってデルタ小隊の下へ向かった。
後ろ、ワルキューレとYami_Q_rayは闇フレイアがなんとかするはずだ。
ならば俺は、歌が聞こえてくるまで前に進むだけ。
「ライン、
『━━脚部側面コンテナユニットから、小型ゴーストを展開。
個体名シルフ、サラマンドラ、ウンディーネ、ノーム。
わたしの思考を分割して操縦します』
コンテナユニットより射出されたゴーストは最短距離でデルタ小隊の各機へと向かい、俺はサニーの機体をロックオンした。
一定の速度で動き続けるだけのVFであれば外す理由はない、そう確信してナイフを振るが、刃があたろうかという直前でジークフリードの腕が展開され、その刃を止めた。
何故。
その問いは愚問だろうと思い、頭の中に思い浮かべることはしない。
きっと彼の見る夢、願望の中にある幸せはそれほどまでに大切なもの。
......自惚れではないが、9年前のメンバーで仲良く遊んでいる夢だろう。
しかし夢は覚めなければいけないもの。
意識の奥底にある牢獄で親友が死ぬことを、俺は良しとしない、決して。
掴まれた方とは逆の腕で木の根を切り飛ばし、瞼を開けたサニーへと語りかけられた。
「......なあ」
「なにさ」
「どうにか......ならねえのかな」
「どうだろね、アレでスノウは策士だ。
もしかしたらこちらの味方かもしれないし、変わらず敵かもしれない」
「まるで
......懐かしい、みんなで地球の人に教えてもらって作った」
「先に待つのが絶望でも、さらにその先にあるであろう希望に進まなきゃならないんだ。
今やれること、出来ることをまっすぐに」
「そうだな、やれる事......やるか」
「ああ」
そうだ。
やるしかない、選択するしかない。
選択した未来が絶望でも何でも、今ここには変えられる力がある。
俺は願望の幸せよりも近くにいる人との愛を選んだ。
サニーは今、あの夢の中で枯れていくよりも、進み続ける事で枯れていく事を選んだ。
それはデルタ小隊の皆も同じ。
「フレイア、俺は......飛ぶ!」
ハヤテも、ミラージュもチャックも。
そして━━
「白騎士様、俺は貴方を......」
ボーグも、そう。
みんな選択からは逃げられない、それでも逃げたくて、ソレから背を向けて進むことをやめてしまう者もいるかもしれない。
━━でも、歌がある。
俺たちには歌があって、それが背中を押してくれるから自分で選択できる。
その先に何が待っていたとしても。
小型ゴーストをコンテナに収納し、一度コックピットの椅子に座り直してもう一度、周りを見渡してみた。
右手にはメッサーさんの遺品がある。
左手にはチルディッシュを切った感覚がある。
歌が聞こえてきて、再度エレファ・オレーフからゴーストが発進し始めた。
エレファ・オレーフ自体もその形を変え、マクロス・クォーターがそのまま初代マクロスのサイズまで大きくなった様な見た目へと変化する。
「......悪い、少し」
『行ってこいよ、話してきたらいい』
ハヤテに気遣われ、アイテールの甲板に向かう。
死地に突っ込むのだ、これぐらいはさせてほしい。
楽しそうに歌う彼女の下へ俺の身体は引き寄せられていく。
「てやぁっ!」
力の多くを込め、ブンブンと剣を振り回す。
私がフレイアを元にしたコピー......いや、もう自分のことをコピーと卑下するのは止めよう。
私は闇フレイア。
Yami_Q_rayの1人で、デルタ小隊の1人であるレインが大好きな星の歌い手のクローン。
私は、私だ。
その場に倒れ、寝息を立てているワルキューレの横を通り過ぎてその周りを囲む木片を切り捨てながら、私は
本当、今の自分は側から見ればとても気持ち悪いと思う。
だけどそれでいいのだ。
そもそも好きな人に告白を受け入れられて嬉しくない人がいるのだろうか?
いや、いない。
私はその嬉しさを表に出しているだけだし、それに加えて私の決め台詞は『歌は狂気』だ。
これくらいの狂気、許されて然るべきだろう。
10本ほど切り倒した所だろうか。
星の歌い手の細胞を持っているが故に、ある程度の耐性を持っていた他のYami_Q_rayと美雲が起き上がった。
「......私は...」
「闇雲、みんな、ワルキューレの寝ている人たちに呼びかけをして!
私はあの夢を見せてきた木の根っこを切るから!」
「...わかったわ。
それぞれの役目を果たしましょう」
闇雲も冷静になったものだ。
2年前なんて子供のように泣いていて、私もレインも苦労したのに。
私たちは人に成れたのかもしれないと思うと、やっぱり嬉しいものだ。
全ての木の根を切り終わり、肩で息をしながら剣を杖代わりにして、空いた手で汗を拭う。
すると、背後からどこか元気の無い美雲が私へと語りかけた。
「......ねえ。
みんなで歌う、夢を見たの」
「みんなで......」
「フレイアを含めたワルキューレと、Yami_Q_rayがステージの上で歌い合っている...... そんな夢。
最初は幸せだと思って、私も歌っていたの。
でも、
剣を鞘に納め、腰に下げてから彼女を抱きしめる。
私はフレイアと直接話したことがあるわけじゃ無いから、彼女の中にあるその人がどれほどの大きさなのかはわからない。
だけど、今はこうするのが最適解だと思ったのだ。
「フレイアは、自分で選んで歌ったんでしょ?
それなら貴女の行動は彼女を地獄に突き落としたわけじゃあなくて、彼女が羽ばたけるように背中を押しただけ。
だから...... 歌おう!
あの風に聞こえるように、おっきな声で、心を込めて!」
「━━ええ!
私も歌うわ、フレイアに笑われないように!」
涙をこぼした美雲から離れ、起きたワルキューレのメンバーから離れて甲板の先の方へ立っていたYami_Q_rayの並びに入る。
大きく息を吸い込み、今度は誰にも負けない笑顔で歌う。
歌は、背中を押す。
それはどんな状況でも否応なしに、そうなってしまう。
たとえ前が底なしの谷でも、ドンと押してしまうから。
だから私がイオニデスで歌った時、結果としてレインは生死の境を彷徨って、それがあったから私の中で歌うことに対しての迷いがあった。
でも、今は違う。
一方的に地獄に叩き落とすわけじゃない。
大好きな人となら、それも怖く無い。
どこまでだって一緒だと、誓い合ったのだから。
歌っている最中、こちらへガウォーク形態のまま飛んでくるスプライトへ手を伸ばす。
何かを考えての行動ではなく、ただ無意識のうちに出た行動だ。
キャノピーが開かれ、紫の髪を揺らして愛した相手が現れた。
「レイン!」
「闇フレ! この戦いが終わったら、ラグナに行っていっぱい遊ぼう!
遊んで、歌って、空を飛んで!
みんなで生きよう!」
「うん、大好き!!」
「俺も愛してる!!」
彼とヤミキューレポーズを交換した後、バトロイドに変形したスプライトから敬礼を受け取り、彼は夜空に飛んでいく。
Yami_Q_rayのメンバーに揶揄われながら、私も真っ直ぐ前を向いた。
「やっと告白できたの?」
「その時のこと、後で教えてね」
「......おめでとうな」
「ええっ、闇レイが真面目に祝ってる......!?」
「えへへ......
━━行こう!!」
「歌は歓喜!」
「歌は絶望!」
「歌は欲望...!」
「歌は狂気!!」
「歌は闇!」
「逝かせてあげる、堕天使の歌で!!」
「「「「「超・ダークエンジェル Yami_Q_ray!!!!! 」」」」」
何故かすごいUA数が増えてました。
ありがとうございます。
......まじで何があったんですかねこれは?