ヤミ夜の雨、夜空の星   作:チクワ

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カウントストップ : 闇夜の雨、夜空の星

 

 「ふー...... ミラージュ、次はどこに持ってくんだ?」

 

 「3番村、少し休憩したら積み込みましょう」

 

 休憩しているハヤテとミラージュの元に、見覚えのある小さな影が迫る。

 変わらぬ元気を見せるフリッグだ。

 ハヤテは手に持っていたリンゴジュースを地に置き、抱きついて来たその体を全身で受け止め、頭を撫でる。

 

 「どうした? ハインツに遊んでもらってたんじゃなかったのか?」

 

 「うん! でもね、あの()()()()()がハヤテに会いたいって!」

 

 会いたい人、女性。

 正味、ハヤテにもミラージュにも、思い当たる人がいない。

 だからこそ『誰だろう』とフリッグの指差した先を見れば、そこにいたのは誰よりよく知る女性の姿。

 ミラージュは飲み物を落として両手で口を押さえ、ハヤテは一瞬口を開いて立ち上がり、その女性と相対する。

 

 「......久しぶり、ハヤテ」

 

 「ああ。

 ......この子もこんなになったんだぜ?

 お前の背を越す日も遠くないかもな」

 

 「いひひ、そうかもしれんねぇ」

 

 「ハヤテ、お姉ちゃんと知り合いなの?」

 

 「そうだな...... フリッグの母親、みたいなもんだよ」

 

 

 

 

 

 「マキナ、闇マキ、これはここでいいのねー!?」

 

 「うん、おねがーい!」

 

 何か力になれないかと自ら名乗り出て、頬を汚しながら復興作業に協力するのはカナメ・バッカニア。

 木材をまとめて小脇に抱えて歩き出そうとするが、多少無理をしての行動、バランスを崩して躓いてしまう。

 

 「きゃっ! ......あれ...?」

 

 その体が地に着く前に、ある大男が細い体を支えている。

 髪型、目つき。

 彼の為に歌った彼女が、その姿を忘れるはずもなかった。

 

 「......こう言う資材は男衆に頼んでください。

 これは自分が持っていきます」

 

 「うん......ありがとう、メッサーくん......!」

 

 浮かんだ涙は以前と違って悲しさや悔しさからでは無く、ただ本当の彼とまた言葉を交わせたと言う、嬉しさからだった。

 

 

 

 

 

 光の飛び交う道を歩く。

 何だか不思議な光景だ、まるで蛍だとか、それこそラグナの光るクラゲみたいなこれらも、俺や闇フレイアと変わらない魂だと言うのだから。

 

 すると、携帯が振動する。

 誰からの電話かと確認すれば、サニーから。

 まあ確かにサニーはパニックになって電話して来そうだが......

 

 

 「━━本当に電話してくる奴がいるか」

 

 「何で俺怒られてんの?!

 いやそんな事はどうでもよくて、はっはやはや、はや速く帰ってきて!

 わけわかんない事になってるからぁ!」

 

 「はいはーい、サニくんすぐ行くよー!」

 

 「へっ、何でスノウ!?」

 

 もう面倒だから電話を切る。

 最後のサニーの顔はそりゃもう酷いものだった、あんな顔してたら寿命が減るぞ。

 幸いにもラインが気を回してくれてスプライトを持ってきてくれたので、それに乗って帰る事とした。

 

 「はい、後ろ乗って」

 

 「やったー!」

 

 「私は膝の上でいい?」

 

 「いいよー」

 

 もちろんファイターだとスノウの意識を刈り取るスピードが出てしまうので、ガウォークでだが。

 何事も無く拠点に戻り、ガウォークでもグロッキーになっているスノウを下ろして、目の前にある光景に驚いた。

 

 「オウ、クラウド!

 レインの奴が帰ってきたぞ、でっかくなったのう!」

 

 「あ〜ら〜! 隣の子、カノジョ!?

 あのわんぱくな子がマセたものねえ〜!」

 

 「「にいちゃーん、おかえりー!!」」

 

 そこにいたのは、9年前に逝ってしまった村のみんな。

 近所のおばちゃんも、気のいいおじさんも、妹たちも。

 そして━━

 

 「おう」

 

 「「おかえり」」

 

 クレイル、クラウド、そしてお母さんであるカナリヤ。

 その隣にはハインツがいて、少しだけ話をしていたらしい。

 口を開いたままゆっくりと歩き、お父さんの胸に顔を密着させた。

 出そうと思っていなくても、思わず涙が溢れ出てきてしまう。

 

 優しく大きな手が、俺の頭を撫でた。

 

 「みんなお前の事を想っていたよ。

 ずっと、見守っていた」

 

 「うん...」

 

 「あなたは優しい子だから心配だったけど...... それ以上に強い子だった。

 わたしは貴方の母親で良かったですよ」

 

 「うん......!」

 

 

 

 

 

 「はぁ〜...... 良かった良かった、また会えてな」

 

 「ああ、友の嬉しそうな顔は...... 私にとっても、この身のことの様に嬉しい。

 ......青騎士、貴殿にもすまない事をした」

 

 「気にしてないですよ、あれがあったから今の俺がある。

 むしろ俺が選んだ運命は間違ってなかったんだって、嬉しいものです。

 あぁ、それと向こうに白騎士もいましたよ。

 ......行ってきたらどうです?」

 

 「そう、だな。

 行ってくるとしよう。

 ━━ありがとう、クレイル」

 

 「ええ」

 

 

 

 

 

 「で、何でスノウは生きてんの?」

 

 「ん? 生きてちゃダメだった?」

 

 「そー言う事じゃあ無くてえ......」

 

 好物の飴をサニーの手から奪い、気ままに彼女はそれを舐める。

 まるで燦々と咲く向日葵の様な彼女ではあるが、その頭に威圧感を感じる手を置かれると、まるで別人の様に青ざめて縮こまる。

 その手の主は、かつてゼルヘスの王だった男のもの。

 

 「我が娘よ、物を貰ったのならば礼を言うのが普通だと教えたはずだが?」

 

 「......この度はぁ〜、この、()アメをいただき〜、ありがとうございますぅあ〜...」

 

 「スノウ様...... この婆でもそれはどうかと思いますぞ......」

 

 そんなふざけ切った礼をしながら、ムスッとした顔で父親を見上げるスノウの心は恐らく動揺しているのだろう。

 そも、彼女は自分が細胞を組み合わせて作られたクローンである事を知っている。

 その上で父親、母親から受け取った愛に疑問を持っているのだ。

 

 王はそれを感じとり、空を見ながら独り言の様に語り始める。

 

 「━━オレは、子に与えられる愛に嘘をついた事はない。

 それにクローンであろうと何であろうと、お前の瞳にあるその紋様は我が娘である事の証だ。

 ......まあ、つまるところ。

 オレの心は、あそこで子と笑い合っているクラウドと変わらんと言う事よ。

 あいつと同じなのは癪だが......」

 

 「ふんっ」

 

 「ぬゥ゛ンッ」

 

 王が目を逸らしたと同時に娘の金的が入り、うずくまる彼の頭に力の入ってない拳がポカポカと叩きつけられる。

 良かったなと、横のガーランド達は笑っていた。

 

 

 「グゥッ...... 油断ならんな、流石オレの娘......」

 

 「うっせ、恥ずかしんだわ、友達の前でそんなこと言われんの!」

 

 「忘れるなよ、この星において王は()()だ。

 お前の友達が逃げなかった様に、お前もお前の運命を選択しろ。

 それが、オレがお前に託す最後の命題だ」

 

 「ン......わかってる。

 私はもう、選んでるよ」

 

 

 

 

 

 「━━ほう、そうかあ!

 君がレインの......!」

 

 「かわいいわね......」

 

 「あうぅ......」

 

 輝く瞳で彼の父親に見つめられ、頬や脇腹を彼の母親に突かれる。

 別に嫌と言うわけではない、のだが......

 何とも変な気分だ。

 

 だってこれ、言ってしまえば両親への挨拶みたいな物だろう?

 以前見た映画では緊迫した雰囲気でやっていた物だから、こんな形でこういう風にやる物だとは......

 あっお母さんそこ突かないで

 

 「......」

 

 「わっ!」

 

 すると手を引かれ、気づいた時にはレインの胸の中。

 もしかして嫉妬をしてくれたのだろうか、だとしたら私はとても嬉しい。

 それほどまでに想ってくれているというわけなのだから。

 彼は『あー......』と人差し指を伸ばすお母さんに頬を膨らまし、私を抱いた。

 

 「ダメだよ、闇フレイアは俺の大切な人なんだから」

 

 「うー、じゃあ仕方ないわね...」

 

 するとお母さんは人差し指をしまい、一転して慈しむ様な目線で私に語りかける。

 

 「━━闇フレさん、この子をお願いね?

 放っておいたら、どこかに行っちゃう様な子だから......」

 

 「大丈夫です、死んでも離しませんから」

 

 「フフ、そう?

 なら安心ね!

 ......あら、お友達が来たみたいよ、いってらっしゃい」

 

 そう言われて誘導された視線の先には、デルタ小隊にワルキューレとYami_Q_ray、赤騎士にハインツ様の姿。

 そこに、私のオリジナル......いや、()()()()と言うべきだろう。

 彼女がいた。

 

 一旦レインと別れ、それぞれの心を落ち着かせて彼らと見合う。

 

 

 「フレイア」

 

 「うん」

 

 「私は貴方の反対(オルタネイティブ)として作られたけれども、そうはなれなかった。

 でも、良かったと思ってる。

 私は私として、生きれているから!」

 

 「うん、歌から伝わってきたんよ。

 初めて歌いあった時は真似る様な歪な色だったのが、次に会う時は雨の後の虹みたいな色になって......

 誰かのために、歌ってた。」

 

 「えへへ」

 

 「いひひ!」

 

 

 

 

 「メッサーさん、白騎士......」

 

 「......よくやった、少尉」

 

 「ン......」

 

 「あのゴーストへの対応も、決戦での動きも、成長したからこそだ。

 ......安心したぞ」

 

 「どうやら、守るために飛ぶと言った事は嘘ではなかった様だな。

 ハインツの友人としてお前がいてくれれば、俺が心配することもないだろう」

 

 「褒められる様なことじゃない、俺は......

 俺として、飛んだだけだから」

 

 「フッ、そうか」

 

 

 

 そんなこんなで日も暮れてきた頃。

 スノウがサインをもらいながら、こんな事を言い出した。

 

 「ちなみにこれ、後数時間は続くんだけどさ?

 何かやる事とかある? 復興作業以外で......」

 

 「はい、どうぞ」

 

 「あ、ありがとうございます!

 やった、ワルキューレのサイン〜♪」

 

 「俺には礼をちゃんとしないのに、ワルキューレにはすんのー?」

 

 「だってワルキューレだよ!?

 最強じゃん!」

 

 「いや、俺SMSにいたからランカ・リーのが好きだし」

 

 「うーんわからんでもない......!」

 

 まあ確かに時間は長い物だ。

 こうして彼らの魂と長く話しているのも楽しいものだが、そこまで長い時間話す事があるかと問われれば......

 大体今からであれば、夜明けまで待つ事になるだろう。

 と、なれば。

 

 「━━なら、歌いましょう!」

 

 「ええ!」

 

 「うん!」

 

 「ん」

 

 「ほいな!」

 

 美雲さんがこう言い始めるのは当然の流れだ。

 今回はそこにYami_Q_rayもついてくるので、とてつもなく豪華という他ない。

 少々ゲリラライブ的なものになるが、まあ外を見る限りまだみんな起きているので大丈夫だろう。

 

 

 「よし、じゃあ準備しようか」

 

 『プログラムは私とレイナさんが作りましょう』

 

 「Yami_Q_rayとワルキューレも着替えてくるねー!」

 

 スプライトへと乗り込む際、ふと振り返ってみた。

 そこにいる皆は、俺が歩いてきた過去として心に残り続けている。

 

 クローンとして生まれながら、父母の愛を受け。

 

 2人の親友と出会い、心を育み。

 

 共に生きてきた人を失い親友と引き剥がされ。

 

 騎士の元で生きる為の技術を教わった。

 

 

 そして、騎士と別れ新たな友と出逢い。

 

 翼を操り自身の師の元で女神達を守りながら。

 

 師を失って慟哭を響かせ。

 

 1人の王とかけがえのない友となって。

 

 手と手を取り合い、古き遺産を打ち倒す。

 

 

 しかし、雪の大地で撃ち落とされ。

 

 闇と出会い、歓喜と語り、欲望を見て。

 

 絶望を諭し、狂気を愛して翼を取り戻し。

 

 騎士と再開して、親友の背中を押し。

 

 風を受けて、一度だけの恋を見送った。

 

 

 そこまで近づいている死を予感しながら。

 

 かつての友とぶつかり合って。

 

 操られた師とぶつかり合って。

 

 心の親である騎士が死んで。

 

 死の淵を彷徨って、狂気に引き戻され。

 

 黒き妖精へ乗り込み、故郷を脅かす男と戦い。

 

 

 「行こうか、闇フレイア!」

 

 「歌うよ、レイン!」

 

 

 大切な人と、心を通じ合わせて愛を繋げた。

 

 

 だから歌に背を押されて、その過去に背中を押されて未来へと進む。

 

 俺の飛びたい様に飛ぶ。

 

 闇フレイアの歌と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「綺麗な海だねー!」

 

 「何と言っても海の星だからなあ」

 

 数ヶ月が経ち、2人海岸を歩く。 

 あの後夜明けと共にフレイアや父さん達の魂は天へと昇り、エレファ・オレーフはその機能を停止した。

 それでもあの大きな木はシンボルとして残っている。

 これから先、観光名所として有名になる事だろう。

 

 明るい星が砂を照らしている。

 一年で最も日が当たるシーズンとはいえ、今は夜。

 むしろ風が涼しくて心地いい。

 

 すると月が翳り、雨が降り出した。

 すぐさま闇フレイアの手を引いて屋根のある場所に駆け込み、しとしと降り続ける雨を見上げた。

 

 「......どうしたの?」

 

 横から覗き込む彼女に振り向き、口を開いた。

 

 「いや、レインなんて名前だけど、俺は雨が嫌いなんだ。

 少し前まではあの夜に雨が降っていてくれたらとか、何だとか考えちゃってたから。

 でも━━」

 

 スッと顔を寄せ、口をつける。

 目を見開いて真っ赤な彼女に、優しく微笑みかけた。

 

 「闇フレイアと見る雨なら、悪くないかもね」

 

 「なっ、あっ、ん゛ー!!」

 

 「いたた、痛いよ。

 あ、ほら雨が止んだ! 帰ろうか!」

 

 「もー!!」

 

 

 俺たちは。

 

 暗い、闇夜の雨の様な空を。

 煌めく、夜空の星の様な世界を。

 

 自分の意思で飛び、そして生きている。

 

 

 

 

 

 

 






 

 
 これで本作品の本筋は終了です。
 蛇足的なものは要望があれば書きます。

 活動報告の方もよろしければお願いします。


 最後に、応援してくださった方々、ありがとうございました!


 「ありがとうございましたー!
 また、何処かで!」
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