「──つきましてはこの要項、私の手に一存して頂ければと......」
「そうはいかぬな。
これは民が期待している国事であり、その実行において誰か1人に責任を持たせることを私は良しとはせぬ」
「お言葉ですがこの国事、私以外に務まる者がいるとは思えません。
口にするのは憚られますがここにおられる方々は皆若輩者の様子...... 世界に対して『此処にゼルヘスあり』と示すのならば、私以外にこの権を震えるものは......」
「途切って悪いが、他下げ自上げはそこまでにしておくことだ。
私と言えど、背にいる奴をそう長くは留められん」
カチャリ、剣を抜く音が謁見の間に響く。
その音に大臣は背中を振るわせ、上擦った声で胸に隠した嫌味を滲ませる。
「ハ── 左様でございますか。
それならば結構、私は引いて老人は去らせていただきましょう。
季節の移り変わり、王もご病気にはお気をつけなされます様」
「そうさな、貴殿も気をつけろ。
出所不明の蓄えはいつしか使い物にならなくなる、今のうちに使っておく事だ」
狼狽しながらそそくさと消えていく大臣を見送り、その口角を上げて若い大臣へ王はその目を向ける。
「貴殿ら2人、確か両者共にこの星へ恩返しをしたいと、そう言ったな?」
「「はっ!」」
「それならばこの国事、貴殿らの手で成功させよ。
なに、2人だけでやれとは言わぬ。 ここにいるサニーを補佐としてつけよう、頼りたければ私に頼ってくれても構わない。
受けてくれるな?」
「「も、勿論でございます!」」
「では本日はコレで終了、明日以降追って沙汰を伝える。
疲れたであろう、存分に休むと良い」
「あー...... 疲れたあ......」
「俺は良いけどお前は大変だろう?
別にアレだってお前が相談に乗るほどじゃあない要項だろ?」
「やらなくて良くてもやらなきゃいけないの。
絵を描く時に背景を描かない人がいる?」
「まあスノウが良いなら良いがさ。
ほい。」
「ん、なにこれ?」
「ライブ配信なんだと。
コレ見ながら飯でも食いな」
「ふーん...... おもしろそう。」
「あ! ねえ、もう始まる始まる!」
「待てよ、ほら飲み物!」
「ありがと!」
慌ただしく走り回る音が家に響く。
家主のいない中我が物顔でソファに座る者、既にコントローラーを握ってやる気満々な者。
多様な姿がカメラに映され、映像へと出力されていく。
一つ予想外なことがあるとすれば、もうすでに配信が始まってしまっていること。
彼女達がそれを知るのは初のコメントが来たその瞬間。
『もう始まってる!?』
「えっうそ、本当に!?」
「あら、じゃあ行きましょうか?
Yami_Q_rayでーす」
「と言うわけで! ゲームします、クリアするまで!」
『どんなゲームや?』
『気になるー!』
「コレ!」
コメントに釣られて闇フレイアが見せたのは、ある筋に有名なロボットゲームの3部作がまとめられたもの。
何も知らない2人で買ったからこそのチョイスであり、それを見た視聴者は思わず震え上がり、口々にこう言った。
『あぁ〜......』と。
「え、ダメなの、コレ?」
「わかんねえけどやるしかないだろ、ほら貸しな」
ソフトをゲーム機に差し込み、映し出されたのは『アーマードセンター』通称
コア層に人気な硬派ロボットゲームであり、発売数年が経ってもその操作性や設定は人を惹きつける。
まず最初にコントローラーを握ったのは闇マキナ。
ユーザーネームを付け、いざ最初のステージへと進もうとする、が──
「──え、やる事多っ?!」
そう、このゲーム操作が多い。
難しいのではなくて多いのだ。
上昇下降、メインウェポンにサブウェポン、カメラ移動やら何やら。
コントローラーにおいて使わないボタンがなく、指の動きが忙しない。
だからやっとこさ一面をクリアしたとして、次の二面が始まる頃には......
「あっ!! 指がつっった!」
「はいはい、交代ねー」
なれない動きで指を攣るのだ。
だがYami_Q_rayにとってはまだ1人目がやられただけ、まだまだプレイヤーは残っている。
「闇カナ頑張れー」
「はーい。 ......味方に裏切られた......」
「え、そんな事までされるの?」
『騙して悪いが、仕事なんでな』
「なあ闇フレ、これ全部クリアすんのか?」
「......ちょっと後悔してるかも」
と、闇フレイアが呟くものの、始めてしまった物語は終わらせなければならない。
今回はこのゲームをクリアして配信を終えることが物語を終わらせる事。
気合いを入れ、皆が結束して攻略法を模索する。
勿論視聴者も一緒にだ。
「被弾が多くなるのが課題かしら」
「装甲を増やしてどうにか生き残れる様にする?」
『ブレード付けて軽量にして避けて一撃で倒すのオススメやで』
「あ、ブレードつけるのオススメだって!」
「は? 使いにくいぞこれ?」
「やってみないことには!」
しかし、地獄の始まりでもあった。
「ただいまー」
帰宅。
想定より遅れてしまった、携帯から確認する事もしないで帰ってきたしまったが、まだ配信はやっているだろうか?
想定していたよりも静かな廊下を歩いてリビングに辿りつくと、そこにあったのはまるで地獄の様な空気。
ぐったりした様子の4人はパソコンに映るコメントへ律儀に返事を返し、その一方で闇レイナはプレイヤーとして人を殺しそうな顔で細やかなコントローラー捌きを見せている。
買ってきた晩御飯の材料を机の上に置くと、まるで息を吹き返したかの様に寄ってきた。
驚いて一歩下がり、闇カナメにはカナメさんから貰ってきたお酒を渡して横に逸らす。
抱きつきそうな闇フレの肩を掴んで抑え、どうにか落ち着けて話を聞くことにした。
「ど、どうしたのさ?」
「おかえり! その、買ったゲームがすごく難しくてさ、本当はすぐに終わらす予定だったんだけど...... あの......」
「あー......」
そりゃそうだろうな、といった感じ。
そう言う系が得意な闇レイナでさえ、ここから横目に見えるだけで苦戦している様子が見えるのだ。
そりゃあこの4人がそんなゲームを頑張っても1日じゃ限度がある、か。
ひとまずリビングへ4人を戻し、材料の入った袋から適度な量を引っ張り出してキッチンへ持って行く。
「風呂使って良いよ、こうなるかもしれないと思ってもうシャワーは浴びて来たし......
晩飯作っちゃうから待っててね」
「ありがとー......」
「辛いのではないのよね」
「それはもちろん」
「量は......」
「多めにしたげるよ。」
まあ、見ているだけも悪くはない。
今日はいつかの様に保護者として、彼女達を見守ることにした。
「ああっ!」
あ、また負けたらしい。
どうやら一作目のラスボスまでは来ているようで、ここで何度もつまづいている様だ。
そろそろ交代の時間だろう、冷えピタを持ってコントローラーを離した闇レイナの頭に貼り付ける。
「あ〜、ありがとな...」
「楽しい?」
「おう、5人だからなんでも楽しいよ」
「次私がやるよ?」
「おーう、頑張れ闇フレイア〜」
少し嬉しい返事だった。
楽しければ、いいか。
さっさとご飯を作ってしまおう。
「「「「「いただきまーす」」」」」
「はーい」
なんやかやで二作目も終了。
残るは三作目の『アーマードセンター マスターオブコロシアム』だ。
少しだけ調べてみたが、この作品のラスボスは引くほど強いらしい。
今日の終わりまであと6時間だ、それまでに倒せるだろうかと不安になる。
ちなみに二作目のラスボスは俺が倒した。
1発だった。
なんにしても、
コントローラーを握った時には『なんだお前』といった感じに騒ぎ立っていたコメントも、終わる頃には『ヒエッ......』と静まり返っていた。
静かなのはいいことだよ。
休憩と言うことで、コメントへの反応は俺に任された。
なんでYami_Q_rayの配信なのにデルタ6が返事してるのかと問われれば、そういう流れだったからという他ない。
『VF操縦で気をつけてることはあります?』
「仲間と激突しない様にしてるかな。
何にしても危ない事には気をつけてる」
『1人でYami_Q_rayのエアパフォーマンスを担当して重圧とか無い?』
「無いことはないけど、気にしてちゃ怒られるからね。
闇フレを怒らせるとその...... 大変、だから」
『上着脱いで』
「ああ、良い──」
「チャンネル止まるからダメ!」
「ダメらしいです」
『VFってAIとか付いてるの?』
「普通はついてるね。
俺のは外してて、ロックオンとかは全部瞳孔とリンクさせてるんじゃなかったかな?
ハヤテもそうだよ」
『レイン・クロニアにとってYami_Q_rayとは?』
「守るべき大切な人!」
「よし、よし......!」
「いけいけいけ!」
「右に避けて!」
「ここ!」
「「「「「やったぁぁぁぁあ!!!」」」」」
「おおー!」
それから少し経ち、最後の敵である『テンボール・セラフ』を撃墜した。
つまり彼女達の挑戦は身を結び、三部作のクリアを達成したのだ。
トドメを刺した闇レイナに皆で抱きつき、達成感に涙を滲ませる姿を見てにっこりと微笑む。
みんなで何かをやると言うのは良いことだね、本当に。
『おおおおおおお』
『おめでとぉぉぉお』
『愛してるんだ!君たちを!』
コメントも祝福一色。
視聴者も帰ってきた時から2倍近くに増え、この配信は成功と言っていいだろう。
喜びもそこそこに、カメラの前に皆が集合する。
エンディングというやつか。
「見てくれてありがとう!
クリアできました! これからもこんな感じで配信していくから、よろしくね! ばいばーい!!」
配信終了。 5人で1つのYami_Q_ray。
これで長い様で短かった挑戦は、幕を閉じた。
「おつかれ」
「ん......」
ベッドに入り、頬を撫でて闇フレの努力を労う。
彼女達が自分で考えて行動に移した事を誉めないわけにはいかないだろう。
平和を感じる頬の温もりを手に感じ、眠気に瞼を閉じようと言う時。
「えいっ!」
「わっ」
寝たふりをしていた闇フレが飛び上がり、まるで押し倒した後の様に俺の上へ四つん這いになって視界を染める。
......正直に言うと、その時の俺はたかを括っていた。
彼女が寝てる俺にキスしようとしてやめている事は闇カナメ経由で知っていたし、ならば今回もそうだろうと。
だから気づかなかった。
獣の様に一直線な目で、妖しく笑った彼女の顔に。
「んっ──」
避ける暇もなく彼女の顔が降りてきて、長い時間の間肌と肌が触れ合う。
数十秒した頃か、水音と共に肌が離れた。
彼女はまたも妖しく笑い、ぎゅっと体に密着した。
「ふふ、覚悟してよね?」
そう言った次の瞬間には既に寝息を立てており、今再び寝室へ静けさが戻る。
火照る顔を冷やす様に額は手を乗せ、つい少し笑ってしまった。
「一本取られた......な。」
静かな夜。
月は一際輝いている。
読んでいただきありがとうございます。
これにてヤミ夜の雨、夜空の星で自分が書きたいことは書き切りました。
一旦の完結となりますが、もし気が向いたらまた更新するかもしれません。
今後はアンケートにもある様に、ペルソナ、チェンソーマン、BLEACHのどれか。 またはその他に投票していただいた方の書いてほしい作品を書いていきたいと思っております。
また近いうちに会えたら幸いです。
アンケートへのご協力、その他に投票してくださった方は活動報告の方に書いてほしい原作名を記入していただければ嬉しいです。
それでは、本当にありがとうございました。
光ちくわ