Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~ 作:元ジャミトフの狗
白い町、フレバンス。
まるで童話に登場する雪国のように、真っ白で幻想的な王国だったという。建物を始めとした人工物は勿論のこと、草木から地面に至る全てのものが白一色。汚れを知らぬその美しい街並みは、珀鉛と呼ばれる鉱物によって生み出されていた。
フレバンス王国の地層から産出される珀鉛。その用途は多岐に渡った。顔料、甘味料、食器、建材、そして武器。珀鉛による産業はフレバンスに莫大な富をもたらしたのである。
それが今から100年前。少女が生まれるずっと前の出来事だった。
トラファルガー・ローは街道を歩いていた。かつては多くの人がいたこの路も、今では誰一人としていない。
当然だ。フレバンスは既に滅亡している。盛者必衰という言葉の例にもれず、栄華を極めた王国は隣国と世界政府によって滅ぼされた。
底なしの金を生んだのが珀鉛ならば、滅亡を齎したのもまた珀鉛。その白い鉱物に含まれる成分は、生き物にとって有害だったのである。
微量ならば人体に影響を与える事はない。だが隔世的に蓄積された毒は、やがて人間を死に至らしめる。
王国と世界政府はその事実を
その結果、フレバンスの国民は全く同時期に中毒を患った。その症状は肌が白く変色し、全身の痛みと共に絶命するというもの。珀鉛病と名付けられたそれは、その発病のタイミングから世界から伝染病と誤解された。
当然ながら
そうしてフレバンスは滅んだ。罪なき人々が虐殺され、病原体とされた死体は骨も残らぬよう焼却された。歴史も人も、フレバンスが積み上げてきた何もかもが、跡形もなく消え去った。
「――もう、8年か」
かつて少女だったローを大人にさせるには、十分すぎる時間だった。
彼女の両親は医者だった。それも国一番の名医と称される程に。故に王国が亡ぶ間際、ローの父母は世界に呼び掛けていた。珀鉛病は単なる中毒だと。治療する手立てはきっと存在する筈だと。
両親は病だけでなく、世界と戦ったのである。だが彼らは政府の凶弾に倒れた。敬虔な神の信徒は信ずる神に見放され、学友と共に殺された。愛した妹もまた、放火された病院に取り残され――
「久しぶり、みんな」
ローは歩みを止めた。両親が務めていた病院、その跡地である。
「ごめんなさい。本当はもっと早く来たかったのだけれど、そうもいかなくって」
家族は皆ここで死した。内部は焼き尽くされ、ただ風化した建物の外郭のみが残されている。痛ましい惨状だけが、変わらずそこにあった。
――だが思い出は、今も胸の中にある。
墓を作った。丸太を十字に結んだだけの簡素な墓標。遺灰すら納められていないそれは、「フレバンスの民、ここに安らかに眠る」と刻まれている。彼女の相棒の仕事だった。
「受け売りだけど。死者を弔うのは、今を生きる者のためでもあるそうよ。だから父様、母様、ラミ。聞いて下さい」
己の気持ちと向き合うために葬式をする。そして何よりも、この惨たらしい過去を乗り越えるために、踏ん切りをつけるために、今彼女はここに居る。
「たくさん話したいことがあるの。何から話せば良いか分からないくらい、本当にたくさんの事が」
これまでの旅路を詳らかに語る。
無償の愛と命をくれた恩人。愛を説き命を分け合った朴念仁。自分を受け入れてくれる気の良い仲間たち。多くの出会いに恵まれ、そして今日を生きているということを。
「私の人生は、良い事ばかりじゃなかったし、辛い事だらけだったけど。それでも生きていて良かったと思う。辛い事と同じくらい、良き出会いにもいっぱい巡り会えたから」
ふと天を見上げる。遠く離れていても分かるほどに大きな怪鳥が、大空に羽搏いていた。弔いの時間を誰にも邪魔させぬ様に、今も目を光らせてくれている。
その献身が堪らなく嬉しかった。
「良い人でしょ。本当にお人好しで、少し面倒な人だけれど、それも可愛くって。ここにも彼の背中に乗ってきたの。後で紹介するから、待っててね」
父様が生きていたら何て言うのだろう。やはり世の父方がそうする様に、「娘はやらんっ!」と言うのだろうか。しかしローは、そんな父の姿がまるで想像できなくて笑ってしまった。
母様なら大いに応援してくれそうだ。ただその付き合い方は厳しく指導してきそうな気もする。というか、現状の情事を聞いたら大噴火を起こすかもしれない。
妹なら何て言うだろう。案外、あの活発さからして恋愛上手な女の子に育って、何かしらアドバイスを貰えるかもしれない。或いは――
「――ロー」
物思いに耽っていると、背後から声をかけられた。振り向けば先まで空を飛んでいたツバメがいる。その表情は少し険しく、ともすれば苦悩を滲ませていた。
「どうしたの」
「哨戒中の兵士が遠くに見えた。そう遠くない内に此処にくるだろう」
「そっか。ならもう発ちましょうか」
「……良いのか?」
ほら、やっぱり優しい。多分時間ギリギリまで待ってくれたのだろう。それが分かる。
「良い。その気になればいつでも来れるから。それに、また付き合ってくれるのでしょう?」
「そうか。いやそうだな。俺でよければいくらでも」
「貴方じゃないとダメなの。そこのところ分かってる?」
「――ああ、分かってるよ」
胸が高鳴っている。不愛想な顔つきをしているが、内心ではこんなにもドキドキしている。その表と裏の食い違いが本当に面白い。でもきっとそれは人の事は言えないのだろうと、彼女は思った。
「クルーの皆も待っている事でしょうし。さっさと行きましょうか」
「ああ、でもその前に」
「ん?」
ツバメは墓標の前に立った。そして深々と頭を下げる。そして彼は――
「――」
何かを呟いた。きっと柄にも無く歯が浮くような言葉を言ったのだろう。だからローは聞こえないフリをしてあげた。
「悪い。待たせた」
「いいえ。さ、行きましょう」
「行きと同じでいいか?」
「当然。私に楽させなさい」
「言い方」
笑顔を浮かべ合う両者。
その間に温かい風が吹いた。それは二人の旅路を祝福する様に。
感想欄を見ていると、時折とんでもなく素敵な言葉選びをする方が現れます。
その文章能力が欲しいと思うと同時に、自分も負けない様頑張ろうという駆動力にもなるのです。
つまり何が言いたいのかと言うと、みんなの性癖をオラに分けてくれー!